こういった古い古いカードは、よっぽどの事がない限り再販されないんでしょうね。売れないし。
そう考えると下手なレアカードより珍しい気もしてきます。ストレージをあさってでてくるのは、子どもゆえの乱雑な扱いですりきれてたりして、ちょっと涙。
バニラをテーマにしたストラクチャーとかで、ギリギリパラメーターの子が収録、とかないかなあ。タクヒの1450とか絶妙だと思うの。
一人の男が、ぶらぶらと舞網市の町を歩いている。
この町のあるデュエルセラピー医院につとめる、雇われデュエリスト……ジョン・ドゥだ。
雇われているといっても、彼の場合事務や雑用という意味合いが強い。彼の使うデッキ、戦術はセラピーには向いていないのだ。ある意味用心棒である。
だから、だいたい彼は病院の受付か、こうして町を買い出しで出歩いていたりする。
今日も、彼は手にした買い物鞄の中身をいっぱいにして、のんびりと病院への帰路をたどっているのだった。
「……買い忘れは……なし。今日はブロッコリーがやすかったな。アメリカ産でもないのに120円とは……」
今日の買い物は上々だったらしい。ジョンは無愛想な顔にうっすらと笑みを浮かべながら、見えてきた病院に足を早めた。
だが、ふいにその足が止まる。
なにやら、病院の方が騒がしいのだ。
「……」
記憶が正しければ、今、病院の主である医者は留守にしており、その娘が留守番をしているはずだった。
急いだ方がいいかもしれない。ジョンは鞄を持ち直すと、懐からデュエルディスクを取り出した。
「だから、うちはデュエルセラピーなんだってば! 勝ち負けの決闘じゃないの!!」
「それが、きにいらないってんだよ」
騒ぎの源は、病院の出入り口だった。
そこで、複数の男が病院に押し入ろうとし、少女がそれを阻んでいる。
「だから、何度もいってるでしょ! これは医療なの!」
「なにが医療だ! 気に入らねえんだよ、そういうの!」
「ぶっこわしてやる、どけ!」
男の一人が、手を振りかぶって少女を払いのけようとする。その手を、背後からジョンはがっしりとつかみ取った。そして、振り返ったその顔面に全力でアッパーをたたき込む。
「な……ぷげら!?」
錐揉み回転して吹っ飛ばされる男。仲間をおそった突然の事態に凍り付く男達を前に、ジョンは手を軽く払うと、少女を背に庇うように男達へと向き合った。
「……何事だい」
「ジョン! あのね、この男達が、デュエルセラピーはデュエリストの恥曝しだ、ぶっこわしてやるって……」
「……恥曝し?」
「おうともさ!」
鼻息荒く、男の一人が声をあげる。彼は手にしたデュエルディスクを突きつけながら、己の勿論をいいあげた。
「俺たちデュエリストにとっちゃ、勝利こそが全てだ! その為に、高い金はらってカードを手に入れ、頭を使ってデッキを組み、体を動かしてデュエルに備える! 人生の全てを、勝つことにかけてんだ。それがなんだ、デュエルセラピーとかいいやがって! 医療だから負けてもいいだあ? 勝っても負けてもいいってぇ? 馬鹿にしてんのか!」
「そうだそうだ! セラピーだから負けていいとか、ふざけんな!」
頭痛がしてきて、ジョンは頭を押さえた。
一見筋が通っているようだが、根本的に勘違いしている。が、それを指摘しても納得はしないだろう。どうしたものか。
と、そこである事を思いついたジョンは、デュエルディスクを手に男達に詰め寄った。とたんに黙り込む男達。
「な、なんだよ」
「用は、お前達はセラピーがデュエリストのまがい物だといいたいのだろう。ならば、そうではない事を証明してやる」
「な、なに……?」
「俺が、相手をしてやろう。もし俺が負ければ、好きなだけいえばいい。だが、俺が勝ったら、黙って帰るんだな」
「ジョ、ジョン!?」
「……ごめんね。でもこうするのが一番だと思うんだ。勝手して、ごめんね」
「いや、そうじゃなくて……ジョン!?」
「へっ、いいぜいいぜ。そっちがその気なら……先生、どうぞ!」
男達が横にひいて道をあける。と、その向こうから、黒いスーツをぴっちりきめた青年が歩み寄ってくる。その手には、高級そうなデュエルディスク。
「……呆れたな。デュエリストの誇りだのといいながら、肝心なところは用心棒頼りか」
「私は金さえもらえればそれでいいがね。それに、自分自身の力量をわきまえているとも取れる。……果たして、君はどうかね?」
「……。すまないが、僕の部屋からマントをとってきてくれないか? 頼む」
「え、ええ……。わかった」
少女が不安そうに頷き、病院の中へとかけていく。それを見送る事もなく、ジョンは新たに現れた男に目をむけたまま、中庭を指さした。
「……デュエルするなら、あっちだ。ついてこい」
「ああ。そうそう、私の名前は、保六クルスという。覚えておいてくれたまえ」
「ああ」
病院の中庭。普段は、セラピーの実践が行われるその場所は、今や異様な雰囲気に包まれていた。
祈るような仕草で、不安を押し殺そうとする少女。用心棒の勝利を疑わず、にやにやと対戦相手を品定めする男達。それらに囲まれながら、ジョンとクルスは向かい合っていた。
「さて、と」
デュエルディスクを展開しながら、クルスは目の前にたつ対戦相手を品定めした。
薄汚れたマントをまとった、目の前の男。ここの用心棒のようなものらしいその青年は、感情の凍り付いた視線でこちらを見つめている。
経験上、知っている。これは、無感情なのではない。激情が振り切れて一周しつつも、それを理性で押さえ込んでいる者の目だ。
「このセラピーの用心棒、出来る、とは聞いていたが……」
思ったより楽しめそうな相手が出てきたことに喜びながら、クルスは相手を促した。
「先攻は貴様にくれてやる。せいぜい、楽しませてみろ」
「……」
無言で、五枚カードを引くジョン。彼はしばし手札を眺めた後、ターンを開始する。
「カードを二枚セット。ターンエンド」
「守備表示すらないだと? 嘗めているのか……?」
ジョンの場
手札三枚
□□□□□
□□■■□
「俺のターン、ドロー!!」
(手札は……そう悪くはないな。ベルグザーグ、ルークロード、炸裂装甲、コアキメイル・ロック、コアキメイルの金剛核、岩石の巨兵か。十分だ。……金剛核は、とっておこう。マルチサーチは、状況に応じて使ってこそ、意味がある)
「俺は、コアキメイル・ベルグザーグを召喚する!」
コアキメイル・ベルグザーグ
効果モンスター
星4・地属性・戦士族・攻2000・守200
「バトルだ! コアキメイル・ベルグザーグで、ダイレクトアタック!!」
二刀の剣士が、ジョンむかって切りかかる。それを首を傾げて紙一重でかわすジョンだったが、ライフそのものを守れたわけではない。
ジョンLP4000→2000
「さらに、カードをセット! ターンエンド。この時、コアキメイルモンスターは、特定のカードを見せるか、コアキメイルの鋼核を捨てなければ自壊する。俺は、手札から戦士族、コアキメイル・ルークロードをおまえに見せる」
(結果的にみれば、奴の判断は正しかった、ということか。コアキメイル・ベルグザーグは相手モンスターを破壊したとき、もう一度攻撃ができる。奴がうかつに壁モンスターを出していれば、無駄に手札を減らすだけだった)
クルスの場
手札四枚
□□■□□
□□■□□
「俺のターン……ドロー!……俺は、モンスターをセットし、ターンエンド」
「……ふん。無理もないか。ベルグザーグは、下級としては最大級の攻撃力を持つ。守りにはいるしかないだろう」
ジョンの場
手札三枚
□□■□□
□□■■□
「俺のターン。ドロー!!」
(ほう、こいつは……)
引いたカードは、コアキメイル・パワーハンド。攻撃力2100を誇り、攻撃した相手が闇か光の属性を持つならば、先頭の間効果を無効にする効果をもつ。
クルスにとって、この状況では理想的なモンスターだ。
(最初伏せなかったモンスターを伏せてきた。モンスターをひけず、事故ったともとれるが、こちらに対策できるモンスターを引いてきたと考える方が自然。ここは、コアキメイル・パワーハンドで突破し、ベルグザーグで倒す。万が一生き残ってアドバンス召喚につないできても、炸裂装甲の餌食だ)
「俺は、コアキメイル・パワーハンドを召喚する」
コアキメイル・パワーハンド
効果モンスター
星4・地属性・機械族・攻2100・守1600
「その瞬間、俺のトラップ発動。ゴッドバードアタック。場のセットモンスター……ハーピィ・レディをリリースし、貴様の場のカードを二枚破壊する。俺は、コアキメイル・ベルグザーグと、コアキメイル・パワーハンドを指定する」
「なんだとっ!?」
ハーピィ・レディ
通常モンスター
星4・風属性・鳥獣族・攻1300・守1400
<人に羽のはえたけもの。美しく華麗に舞い、鋭く攻撃する>
ハーピィ・レディが、炎の鳥となって空を舞う。その突撃をうけ、フィールド上のコアキメイル達はまとめて粉砕される。直後、炸裂した爆発にハーピィ自身も巻き込まれるが、その最後の顔はどこか誇らしげだった。
(くそっ、そうか! 最初、あえて受け身にたったのはこの為か! ゴッドバードアタックは、必ず二枚のカードを選択し、破壊しなければならない。後攻1ターン目、私がモンスターを出しただけならば、自分のカードを破壊する必要がある……それを避けるために、展開させる為にわざと殴られたのか! 道理は通る……だがイカレているのか、コイツは!?)
道理は通る。だが、それでも自分自身のライフを攻撃にさらしてまで実行できる奴はまずいない。それが、いろいろなものがかかっているデュエルなら、なおさらの事。
「くそっ、特殊召喚できるモンスターもいない……ターンエンドだ!」
クルスの場
手札四枚
□□□□□
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「俺のターン、ドロー。……バードマンを召喚。バトルだ! 相手プレイヤーに、ダイレクトアタック!」
「通すか! 俺は、罠カード、炸裂装甲を発動! バードマンを破壊する!!」
右手に鉤爪を装備した鳥人のモンスターがクルスに殴りかかるも、直後発動した罠カードがクレイモアのように散弾をまき散らす。それに巻き込まれ、バードマンが苦悶の声をあげて破壊される。
「…………」
「残念だったな。これで状況は振り出しだ」
「……さっきのターン。なぜお前は、迷いなくモンスターを展開した? 何故、思い切ってターンエンドに踏み切った? 新しく、魔法罠を伏せる事もなく。それは、貴様が逃げ道を用意していたからだ」
「…………っ!?」
「貴様の背後に、川は流れているか……? メインフェイズ2を開始する。俺は、手札から魔法カード、龍の鏡を発動する! 墓地に落ちた、バードマンとハーピィ・レディを除外し、融合召喚!」
「墓地から融合召喚だとぉ!?」
「時の流れに忘れ去られし者達よ、今始まりの元に集いて、その至高たる翼で蒼天を覆え! 融合召喚! 始祖竜ワイアーム!!」
墓地から飛び立った二つの光が、解け合うように空で一つになる。その光の玉に照らされて雲に穴があき、その中から巨大な竜がその姿を表す。まるで空の全てを覆うかのような、巨大な翼をもった竜が。
始祖竜ワイアーム
融合モンスター
星9・闇属性・ドラゴン族・攻2700・守2000
通常モンスター×2
「ワイアームは、通常モンスターではないモンスターには破壊されず、また、このカード以外の効果モンスターの効果も受けない」
「なんだと……?! まさかそのカードを守るために、俺に罠を使わせたのか!?」
「さらに、俺はカードをセット。ターンエンド!」
ジョンの場
手札二枚
□□■□□
□□■■□
「俺の、ターン……ドロー!」
(引いたのは、コアキメイル・サンドマン。ダメだ、コイツじゃない! どうする、金剛核を使うか……いや、それでも持ってこれるのは効果モンスターだ、ワイアームを突破できない。ここは耐える!)
「俺は、モンスターカードをセットして、ターンエンド」
クルスの場
手札四枚
□□■□□
□□□□□
「俺のターン、ドロー。……俺は、手札から鳥獣族通常モンスター、タクヒを召喚する」
タクヒ
通常モンスター
星4・風属性・鳥獣族・攻1450・守1000
<このトリが現れた時は、何か不吉な事が起こる前ぶれ>
「……バカな。何故そんなカードを……」
「バトルだ! ワイアームで、裏守備モンスターを攻撃!」
巨大な竜が吠え、地上に落雷を落とす。それに巻き込まれた裏守備モンスターが一瞬、岩の固まりのような姿を見せるが、確認する暇もなく粉々に粉砕されてしまった。
「守備モンスターは、コアキメイル・ロックだ」
コアキメイル・ロック
星4・地属性・岩石族・攻1200・守1000
「残念だったな、壁モンスターを警戒したのだろうがワイアームの攻撃力の無駄遣いだ! さらに、コアキメイル・ロックの効果により、デッキからコアキメイルと名の付いたモンスターカードを手札に加える。俺は、コアキメイル・ウルナイトを手札に加える!」
「ならば、タクヒでダイレクトアタック!」
不幸を告げる凶鳥が、クルスに襲いかかる。ついばむような攻撃に、思わず顔を庇うクルス。が、タクヒはあざ笑うような声をあげると、くちばしではなく翼でクルスを打ち据えると、そのままジョンの場へと戻っていった。
クルスLP4000→2550
「俺はこれで、ターンエンド」
ジョンの場
手札二枚
□□■■□
□□■■□
「ちっ……俺のターン!! ドロー! ……きたぞ。反撃のカードが! 俺はまず、コアキメイルの金剛核を発動! デッキからコアキメイルの鋼核を手札に加える!! そして、今ドローしたカード……地砕きを発動! 貴様のフィールド上でもっとも守備力の高いカード……すなわち、始祖竜ワイアームを破壊する!」
突如として天が乱れ、無数の雷鳴が降り注ぐ。それはワイアームにも容赦なく降り注ぎ、その体を大地にたたきつけて”地を砕いた”。
消滅するワイアーム。
「……っ」
「そして、コアキメイル・ウルナイトを召喚!」
コアキメイル・ウルナイト
効果モンスター
星4・地属性・獣戦士族・攻2000・守1500
「コイツの能力は、手札のコアキメイルの鋼核を見せて、デッキからコアキメイルモンスターを特殊召喚できる。コアキメイル・ベルグザーグを特殊召喚する!」
「バトルだ! タクヒを、コアキメイル・ベルグザーグで……」
「メインフェイズ終了時に、罠発動! 威嚇する咆哮!!」
タクヒが、耳をつんざく禍々しい雄叫びをあげる。それによって、ウルナイトとベルグザーグは思わず耳をふさぎ、手にしていた武器をトリオとしてしまった。
「ちぃっ! しかたがない、ターンエンドだ。ウルナイトの維持コストとして手札からコアキメイルの鋼核を捨て、ベルグザーグのコストとしてルークロードを見せる」
クルス
手札三枚
□□■■□
□□□□□
「俺のターン。ドロー」
ジョンが、サングラスの下で目を細める。それを見逃さなかったクルスは、知らず手元のカードを握りしめていた。
(あの目。切り札でも引いたか?)
「俺は、チューナーモンスター、ガード・オブ・フレムベルを召喚する」
ガード・オブ・フレムベル
効果モンスター・チューナー
星1・炎属性・ドラゴン族・攻100・守2000
<炎を自在に操る事ができる、フレムベルの護衛戦士。灼熱のバリアを作り出して敵の攻撃を跳ね返す。>
「!? チューナーモンスター、だと!? 貴様、融合使いではなかったのか!?」
「俺は、レベル4、タクヒに、レベル1、ガード・オブ・フレムベルをチューニング!! 時の流れに忘れ去られし者達よ! 殲滅の荒野を駆け抜けて、叡智の眼で光を穿て。シンクロ召喚、レベル……5!! A・O・J(アーリーオブジャスティス)カタストル!!」
ガード・オブ・フレムベルが光に包まれ、一つの円形魔法陣に姿を帰る。それに、タクヒが甲高く鳴きながらつっこんでいく。二つの光が一つに重なり、その中から鋼鉄の殲滅者が姿を表す。
A・O・Jカタストル
シンクロ・効果モンスター
星5・闇属性・機械族・攻2200・守1200
「バトルだ! カタストルで、ウルナイトを攻撃! ……この瞬間、カタストルの効果が発動! 自身と戦闘する闇属性以外のモンスターを、ダメージ計算を行わず破壊する! レイ・サーチ・アイ!!」
カタストルの頭にそなわった、アーリー・マインド。それが走査光を放ち、それがウルナイトをとらえた瞬間、強烈なレーザーが放たれた。それは一瞬でウルナイトの鋼核を貫き、粉砕する。
「メインフェイズ2。俺は、永続魔法、凡骨の意地を発動して、ターン終了」
ジョンの場
手札一枚
□□■□□
□□■■□
「ええい、次から次へと面妖な。俺のターン……ドロー! さらに、手札のコアキメイル・サンドマンを手札から捨てて、墓地のコアキメイルの鋼核を手札に加えるっ」
(さて、これで準備は整った。ルークロードは、コアキメイル一体のリリースでアドバンス召喚できる効果と、召喚したとき、墓地のコアキメイルを除外することで最大二枚までカードを破壊できる効果を持っている。カタストルを破壊するのは確定として、問題はあの伏せカード。凡骨の意地も気にはなるが……。デュエルが始まってから何度もピンチに陥ったはずが、一度も発動していない。魔法、罠に対するトラップか?少なくとも、召喚阻害系なら、ウルナイトに間違いなく発動してくる。それとも、単体しか処理できない攻撃反応罠か? このターンで決めれば凡骨の意地は関係ない……よし、破壊するのはあのカードだ)
「いくぞ。俺は、コアキメイル・ベルグザーグをリリースして、コアキメイル・ルークロードをアドバンス召喚する!」
コアキメイル・ルークロード
星7・地属性・戦士族・攻2800・守2200
「この瞬間、神の宣告を発動する! コアキメイル・ルークロードの召喚を、無効化する」
「なんだとぉ!?」
ジョンLP2000→1000
「くそ……だが、ただでは死なんぞ! 俺は、手札からブラックホールを発動。カタストルを破壊する!」
突如発生した黒い渦が、フィールドのモンスター全て……カタストルをのみこむ。一瞬で超重力によってカタストルの体がねじ切られ、後にはなにも残らない。
「俺は、これでターンエンドだ!」
クルスの場
手札二枚
□□□□□
□□□□□
ジョンの手順が回ってくる。
ワイアームは倒され、カタストルは破壊され。手札はわずかに一枚だけ。苦境である。
だが、ジョンは動じない。何故ならば、彼には見えているからだ。
自分の背後に流れる川が。
不安そうに見つめている少女の姿が。
そして、いつか再会を約束した、大切な仲間の姿が。
「俺のターン。ドロー。……勝利を焦ったな、お前」
「貴様……!?」
「お前の背後には、流れる川も、庇うべき仲間もいない……そんな奴に、俺は負けない! 俺は、今引いた閃光の騎士を見せることで、凡骨の意地の効果を発動! ドロー! サファイア・ドラゴン! ドロー! バードマン! ドロー……こいつは通常モンスターじゃない。これで終了だ」
「ち……。だが、今引いたモンスターの攻撃力じゃ、2550の俺のライフは削りきれない! 次のターンがあれば、いくらでも挽回できる!」
「お前に次のターンはない。俺はスケール2のフーコーの魔砲石と、スケール7の閃光の騎士でペンデュラムスケールをセッティング!」
「ペンデュラム……召喚!? いや、まて。フーコーの魔砲石なんてカード、一度も……まさか最初の手札から!?」
「これで俺はレベル3から6までのモンスターを、同時に召喚可能となった。そして、俺の手札には2体の通常モンスターがいる! 現れよ、我がモンスター達よ!!」
サファイアドラゴン
通常モンスター
星4・風属性・ドラゴン族・攻1900・守1600
<全身がサファイアに覆われた、非常に美しい姿をしたドラゴン。争いは好まないが、とても高い攻撃力を備えている。>
バードマン
通常モンスター
星4・風属性・鳥獣族・攻1800・守600
<マッハ5で飛行する鳥人。その眼孔は鷹より鋭い>
「俺は、負ければ後のないデュエルを、何度も越えてきた……。その覚悟のないお前に、他人に強いるだけのお前らに、俺と! 俺のデッキは絶対に負けない!! バトルだ! お前に、ダイレクトアタック!!」
「バカな……最初から、最初から俺は貴様の思い通りに動かされていたとでもいうのか……っ!? うがあああああーーー!?」
クルスLP2550→950→0
決闘は終わった。
クルスはすでにいない。敗北によって、自分たちの言い分を否定された以上、彼らはセラピーを批判することはなかった。
これからは、彼らも客としてここを訪れるかもしれない。
商売とは、そういうものだ。
「……あの。ねえ、ジョンさん」
「なんでしょう」
「決闘中にいってたよね。仲間がいる、って。もしかして、記憶が」
「……なんだかね。このカードを握っていたら、そんな人たちがいた気がするんだ。顔も覚えていないし、名前も覚えてないけど、でも僕は、一人じゃなかった。そう思うんだ」
「そっか。……ねえ、ジョンさん」
「ん?」
「いつか、あえるといいね。その人たちと」
「ああ」
穏やかにほほえむジョン。その手の中では、RRライズ・ファルコンが、誇らしげに銀色の名前を輝かせていた……。
「社長、観測データの解析、終わりました」
「報告してくれ」
「はっ。観測されたエネルギーは、シンクロ、融合、ペンデュラムのものに間違いありません。そしてその数値は、今まで観測されたどのデュエリストのものとも一致しません。特にペンデュラム召喚についてはきわめて不安定で……極めて強大であり、しかし微弱でもあるという。専門家の話によれば、”存在が安定していない”との事」
「そうか、わかった。引き続き調査を頼む。ただし、接触は控えろ」
「はっ」
「………榊遊矢の他に、ペンデュラム召喚を使うものが? それに、シンクロと融合まで……。先日のデータもふまえて考えるなら、エクシーズさえも使うのか」
「面白い。もしやすると、我らが槍の一振りになるかもしれん……!」
オマケ
主人公がDDDに目をつけられました。
話題になってた時期、遊戯王からちょっと離れてたので戦ったのはTFSPが初めてだったんですが、あまりのソリティアっぷりに唖然としましたね、マジで。初めて聞いたときは儀式をのぞく全召喚方法ときいて無理だろそれーとか思ってたんですけどねえ。
ジョンさんは割とマイルドなスタンスでかつ、メタ視点は失っても多元世界ヤバイというのは覚えているので、状況を知れば社長には好意的だと思います。
だって融合次元って特大の厄ネタまみれじゃないですか……。もし無印GXの延長なら、海の底にはオレイカルコスが封印されてて、ダークネスがいて、付随する形で十一の次元があって、破滅の光があってetctec。機皇帝や地縛神がいるシンクロ次元も負けてないけど、それ全部まとめちゃったらもうどうしようもないんじゃ……。
そういえば、融合の頂点が超融合で、シンクロの極みがアクセルシンクロで、エクシーズの極みがランクアップなら、ペンデュラムはなにになるんでしょうね?