#6 ~ナンバーシックス~   作:古波栗待

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初めての作品なので、2話同時アップです。


2.出会い

「お前ら知ってたか?高等部はクラス替えがないらしいぜ。ってことは、俺たち6年間も一緒だ」

 入学式だから、珍しくスーツのテツがネクタイを整えながらトイレの鏡越しに言う。

「やっべー、湿気で髪が広がってきやがった」

 ユーヤは少しくせ毛だから、雨が降りそうな天気の時は敏感なのだ。

「俺、なんか緊張してんのかなぁ。朝から腹イテー」

 コータローが個室から出てきた。

 

 制服のない学校だから、廊下での人の流れは色の洪水。特に今日は入学式とあって、みんな気合いが入っている。第一印象はとても重要だ。

 右から183cmのコータロー、175cmのユーヤ、168cmのテツが並んで歩く。階段みたいに。

「おい!今すれ違った子、テツのど真ん中じゃね?」

 早速ユーヤの女の子チェックが始まった。

「ビンゴ!さすがはユーヤだな。その友達もなかなかよかったぜ。おいコータロー、お前の身長は何のためにあるか知ってるか。俺たちのかわいい娘をサーチするためにあんだよ!しっかり働け」

「なんだそれ、人使い荒すぎだろ。自分のはじぶんで探せよ。俺の目は二つしかないからな」

 コータローはそう言いながらも、3人の好みのタイプをくまなくサーチする。

「担任紹介遠くてあんまり見えなかったけど、結構イケてたくねぇ。セクシー系のおねえさんタイプで、俺ちょっと期待すんだけど」

 ユーヤは最近セクシー系に凝っている。年上なら、さらに確立アップ。

「確かにいい感じだった。大人の色気全開だったな」

 テツもうっとりとする。日頃は元気キャラがタイプなのだが、おねえさんにこの年頃なら一度は憧れるものだ。

「あっ、ここじゃないか?俺たちの教室」

 コータローが1年A組の前で立ち止まった。空いたままのドアから、女の子の声がする。

「女子いるねぇ。3年間のたのしいスクールライフの始まりか?しくじんなよ、お前ら!」

 ユーヤが先頭を切って教室へ入る。テツとコータローも後に続く。

 

 クラスはほぼ埋まっていて、すでに打ち解けているグループもあった。三人まとまって、適当な席を見つけて座る。

「はーい、好きな席に座って」

 ショートボブで、超絶スタイルの白いスーツ姿が教壇に立つ。

「さっきも紹介あったけど、このクラスの担任の大泉響子ね。担当教科は物理。それと女子寮の寮監もやってる。知ってる人もいるだろうけど、3年間クラス替えはないからみんな仲良くするように。それと、担任もずっとわたしだから、わたしに嫌われないように」

「先生!どうやったら先生に嫌われてしまうんすか?」

 ユーヤが早速アピールタイムに入る。

「あんたは葉山悠哉ね」

「えっ、なんで知ってるんすか?」

「わたしの特技は記憶力。もう、このクラス全員の顔と名前と簡単な個人情報は頭に入ってる。わたしから嫌われない方法は特にない、だってその日の気分次第だから」

「はい!先生をご機嫌にするにはどうしたらいいんすか?」

「大丈夫。大体わたしはご機嫌だから。じゃあ次、明日からのレクリエーションについて説明するね。こっちでグループ分けしといたから、今から渡す資料をみて自分たちでグループに分かれて。このレクでリーダー性とか協調性とかを学校は調べたいみたいだけど、わたしは楽しければそれでいいと思ってる。だから、適当にやっちゃって。わからないことがあれば、なんでも答えるから。はい、資料を前から回して。行き渡ったら各自グループに分かれる。はい、始め」

 

 天才のテツは目が速い。早速名簿を確認して言う。

「なぁ、俺たち3人同じグループだぜ。あの先生わかっててやってんだな、きっと。簡単な個人情報ってやつだ。で、女子は全員外部の子。岩下ゆかり・小早川アリス・渡桃子の3人。積極的な子だったら、さっきの先生とのやり取りでお前に声かけてくるから、探す必要ないかもな。ほら、来たぜ」

 テツより背の高い子が近づいてくる。

「わたし、あなたたちと同じグループの小早川アリス。よろしく。」

 少し低めの落ち着いた声。栗毛色でロングウエーブ、よく見ると瞳の色はヘーゼル。カラコンではなさそうだ。外国人の血が流れているのだろう。モデルのようなスタイルで、現在暫定1位の美人。テツがイケメンの声を作り、

「よろしく、俺は川原哲。こっちは後藤光太朗。こいつは言わなくてもわかるよな」

「うん。葉山君ね」

「もう覚えてくれたの、やったね。俺のことはユーヤって呼んでよ」

「そう、じゃあユーヤね。あなたたちはテツ君とコータロー君でいい?」

「あ、こいつらも呼び捨てでいいよ」

「ならそうする。わたしもアリスで・・・」

 アリスの言葉の途中で

「わたしたちも仲間に入れてっ」

 普通の大きさと超小柄の女子が入ってきた。

「わたし岩下ゆかり。こっちがワコちゃん。ワタリモモコの頭としっぽでワコちゃん。ワコちゃん、すっごい人見知りだからみんな優しくしてあげてね」

 その人見知りが突然アリスに話しかけてきた。

「その服、買ったままじゃなくて何かしてるの?」

 未来からきた女スパイのようなクールなデザインのスーツがよく似合っているアリスがびっくりする。

「うん。自分の体に合わせていろんなとこいじってるの。よくわかるね」

「ワコちゃん、お洋服についてはものすごいんだからぁ。わたしの服もワコちゃんが作ってくれたんだ」

 ゆかりが自慢げにその場でターンする。

「ゆかりちゃん、恥ずかしいからやめてよ・・・」

 超小柄がゆかりの背中に隠れてしまう。グループの全員が揃ったところで、もう一度男子の自己紹介をする。

「はーい、そろそろまとまったみたいだから静かにする。いちいち説明しなくてもわかるね。資料に書いてあることをきちんと読み込んで、明日から行動すること。どんな理由でも遅刻してバスに乗れなければ欠席扱いになるから、絶対に遅れないこと。質問は後から個人的に受け付ける。じゃ今日はここまで、解散!」

 ぞろぞろと生徒が移動を始める。ユーヤは早速、狩りの時間。女教師の前にすすみ出る。

「先生。彼氏とかいるんすか?」

「葉山、またあんたか。わたし、先月まで『小泉』だったんだ」

「ああ人妻かぁ、残念」

「逆だ。離婚したんだよ」

「うわっ。なんかワリーこと聞いちまった。先生すんません」

「気にするな。もう完全に吹っ切れてるから」

「先生、何カップですかぁ?」

 突然、ゆかりが乱入してきた。

「岩下、あんたも唐突だね。Fカップだけど」

「わたし、先生みたいになりたいの。いろいろ試してるんだけど、全然効果がなくって・・・」

「いろいろねぇ。よく寝るのが一番!成長ホルモンは夜分泌されるっていうからね。わたしが学生の時は夜の10時に寝て、朝7時に起きてたな」

「ほんとに?じゃあわたしも10時に寝ちゃおうかなぁ?」

「そんなんじゃ、遊べないし勉強もできないじゃない」

 アリスも入ってきた。

「要領よくやれば遊ぶ時間あるんだよ。アリス、あんた今日寮当番じゃない?」

「そうだっ、準備しなきゃ!じゃ、お先に」

 アリスはくるりと踵を返し、足早に教室を出て行った。

「もう質問のあるやつはいない?じゃあわたしも帰ろう。みんな、さよなら」

 いい香りを教壇に残して、女教師も教室を後にした。

 

 学校の帰り道、小雨が降り始めた。傘を持たない3人は足早にfeuilleへと急ぐ。ユーヤがスキップしながら

「もう俺、響子ちゃんしか見えねぇなぁ。聞いたかFカップだぜ。それに完全フリーだし!」

「もう響子ちゃんか、速いんだよお前。あれは絶対強いぜ、いろんな意味で。それに離婚の原因だって新しい男かもしんねーだろ?」

テツは道路の白線の上を落ちないように歩く。

「Fカップはお手柄だったな。あの岩下って子」

 コータローはなぜか岩下の部分だけ小声になっている。

「マジで『いい質問』だったよな。テツ、お前ってお子チャマだなぁ。ああいう大人の女に振り回されてーんだよ俺は。俺の心は響子ちゃんに鷲掴みにされちまったぁ~♪」

 降り落ちる雨に向かって手を差し出し、ミュージカルのように節をつけて歌い踊るユーヤに向って、

「ハズい!勝手にやってろ」

 他の二人はユーヤを路上に残し、走り去って行った。

 




またまた個人的イメージのコーナー~
大泉響子先生=小池栄子さん
高校生の女の子3人=皆さんのご想像にお任せ♥
さて、皆さまはいかがですか?
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