「お前ら知ってたか?高等部はクラス替えがないらしいぜ。ってことは、俺たち6年間も一緒だ」
入学式だから、珍しくスーツのテツがネクタイを整えながらトイレの鏡越しに言う。
「やっべー、湿気で髪が広がってきやがった」
ユーヤは少しくせ毛だから、雨が降りそうな天気の時は敏感なのだ。
「俺、なんか緊張してんのかなぁ。朝から腹イテー」
コータローが個室から出てきた。
制服のない学校だから、廊下での人の流れは色の洪水。特に今日は入学式とあって、みんな気合いが入っている。第一印象はとても重要だ。
右から183cmのコータロー、175cmのユーヤ、168cmのテツが並んで歩く。階段みたいに。
「おい!今すれ違った子、テツのど真ん中じゃね?」
早速ユーヤの女の子チェックが始まった。
「ビンゴ!さすがはユーヤだな。その友達もなかなかよかったぜ。おいコータロー、お前の身長は何のためにあるか知ってるか。俺たちのかわいい娘をサーチするためにあんだよ!しっかり働け」
「なんだそれ、人使い荒すぎだろ。自分のはじぶんで探せよ。俺の目は二つしかないからな」
コータローはそう言いながらも、3人の好みのタイプをくまなくサーチする。
「担任紹介遠くてあんまり見えなかったけど、結構イケてたくねぇ。セクシー系のおねえさんタイプで、俺ちょっと期待すんだけど」
ユーヤは最近セクシー系に凝っている。年上なら、さらに確立アップ。
「確かにいい感じだった。大人の色気全開だったな」
テツもうっとりとする。日頃は元気キャラがタイプなのだが、おねえさんにこの年頃なら一度は憧れるものだ。
「あっ、ここじゃないか?俺たちの教室」
コータローが1年A組の前で立ち止まった。空いたままのドアから、女の子の声がする。
「女子いるねぇ。3年間のたのしいスクールライフの始まりか?しくじんなよ、お前ら!」
ユーヤが先頭を切って教室へ入る。テツとコータローも後に続く。
クラスはほぼ埋まっていて、すでに打ち解けているグループもあった。三人まとまって、適当な席を見つけて座る。
「はーい、好きな席に座って」
ショートボブで、超絶スタイルの白いスーツ姿が教壇に立つ。
「さっきも紹介あったけど、このクラスの担任の大泉響子ね。担当教科は物理。それと女子寮の寮監もやってる。知ってる人もいるだろうけど、3年間クラス替えはないからみんな仲良くするように。それと、担任もずっとわたしだから、わたしに嫌われないように」
「先生!どうやったら先生に嫌われてしまうんすか?」
ユーヤが早速アピールタイムに入る。
「あんたは葉山悠哉ね」
「えっ、なんで知ってるんすか?」
「わたしの特技は記憶力。もう、このクラス全員の顔と名前と簡単な個人情報は頭に入ってる。わたしから嫌われない方法は特にない、だってその日の気分次第だから」
「はい!先生をご機嫌にするにはどうしたらいいんすか?」
「大丈夫。大体わたしはご機嫌だから。じゃあ次、明日からのレクリエーションについて説明するね。こっちでグループ分けしといたから、今から渡す資料をみて自分たちでグループに分かれて。このレクでリーダー性とか協調性とかを学校は調べたいみたいだけど、わたしは楽しければそれでいいと思ってる。だから、適当にやっちゃって。わからないことがあれば、なんでも答えるから。はい、資料を前から回して。行き渡ったら各自グループに分かれる。はい、始め」
天才のテツは目が速い。早速名簿を確認して言う。
「なぁ、俺たち3人同じグループだぜ。あの先生わかっててやってんだな、きっと。簡単な個人情報ってやつだ。で、女子は全員外部の子。岩下ゆかり・小早川アリス・渡桃子の3人。積極的な子だったら、さっきの先生とのやり取りでお前に声かけてくるから、探す必要ないかもな。ほら、来たぜ」
テツより背の高い子が近づいてくる。
「わたし、あなたたちと同じグループの小早川アリス。よろしく。」
少し低めの落ち着いた声。栗毛色でロングウエーブ、よく見ると瞳の色はヘーゼル。カラコンではなさそうだ。外国人の血が流れているのだろう。モデルのようなスタイルで、現在暫定1位の美人。テツがイケメンの声を作り、
「よろしく、俺は川原哲。こっちは後藤光太朗。こいつは言わなくてもわかるよな」
「うん。葉山君ね」
「もう覚えてくれたの、やったね。俺のことはユーヤって呼んでよ」
「そう、じゃあユーヤね。あなたたちはテツ君とコータロー君でいい?」
「あ、こいつらも呼び捨てでいいよ」
「ならそうする。わたしもアリスで・・・」
アリスの言葉の途中で
「わたしたちも仲間に入れてっ」
普通の大きさと超小柄の女子が入ってきた。
「わたし岩下ゆかり。こっちがワコちゃん。ワタリモモコの頭としっぽでワコちゃん。ワコちゃん、すっごい人見知りだからみんな優しくしてあげてね」
その人見知りが突然アリスに話しかけてきた。
「その服、買ったままじゃなくて何かしてるの?」
未来からきた女スパイのようなクールなデザインのスーツがよく似合っているアリスがびっくりする。
「うん。自分の体に合わせていろんなとこいじってるの。よくわかるね」
「ワコちゃん、お洋服についてはものすごいんだからぁ。わたしの服もワコちゃんが作ってくれたんだ」
ゆかりが自慢げにその場でターンする。
「ゆかりちゃん、恥ずかしいからやめてよ・・・」
超小柄がゆかりの背中に隠れてしまう。グループの全員が揃ったところで、もう一度男子の自己紹介をする。
「はーい、そろそろまとまったみたいだから静かにする。いちいち説明しなくてもわかるね。資料に書いてあることをきちんと読み込んで、明日から行動すること。どんな理由でも遅刻してバスに乗れなければ欠席扱いになるから、絶対に遅れないこと。質問は後から個人的に受け付ける。じゃ今日はここまで、解散!」
ぞろぞろと生徒が移動を始める。ユーヤは早速、狩りの時間。女教師の前にすすみ出る。
「先生。彼氏とかいるんすか?」
「葉山、またあんたか。わたし、先月まで『小泉』だったんだ」
「ああ人妻かぁ、残念」
「逆だ。離婚したんだよ」
「うわっ。なんかワリーこと聞いちまった。先生すんません」
「気にするな。もう完全に吹っ切れてるから」
「先生、何カップですかぁ?」
突然、ゆかりが乱入してきた。
「岩下、あんたも唐突だね。Fカップだけど」
「わたし、先生みたいになりたいの。いろいろ試してるんだけど、全然効果がなくって・・・」
「いろいろねぇ。よく寝るのが一番!成長ホルモンは夜分泌されるっていうからね。わたしが学生の時は夜の10時に寝て、朝7時に起きてたな」
「ほんとに?じゃあわたしも10時に寝ちゃおうかなぁ?」
「そんなんじゃ、遊べないし勉強もできないじゃない」
アリスも入ってきた。
「要領よくやれば遊ぶ時間あるんだよ。アリス、あんた今日寮当番じゃない?」
「そうだっ、準備しなきゃ!じゃ、お先に」
アリスはくるりと踵を返し、足早に教室を出て行った。
「もう質問のあるやつはいない?じゃあわたしも帰ろう。みんな、さよなら」
いい香りを教壇に残して、女教師も教室を後にした。
学校の帰り道、小雨が降り始めた。傘を持たない3人は足早にfeuilleへと急ぐ。ユーヤがスキップしながら
「もう俺、響子ちゃんしか見えねぇなぁ。聞いたかFカップだぜ。それに完全フリーだし!」
「もう響子ちゃんか、速いんだよお前。あれは絶対強いぜ、いろんな意味で。それに離婚の原因だって新しい男かもしんねーだろ?」
テツは道路の白線の上を落ちないように歩く。
「Fカップはお手柄だったな。あの岩下って子」
コータローはなぜか岩下の部分だけ小声になっている。
「マジで『いい質問』だったよな。テツ、お前ってお子チャマだなぁ。ああいう大人の女に振り回されてーんだよ俺は。俺の心は響子ちゃんに鷲掴みにされちまったぁ~♪」
降り落ちる雨に向かって手を差し出し、ミュージカルのように節をつけて歌い踊るユーヤに向って、
「ハズい!勝手にやってろ」
他の二人はユーヤを路上に残し、走り去って行った。
またまた個人的イメージのコーナー~
大泉響子先生=小池栄子さん
高校生の女の子3人=皆さんのご想像にお任せ♥
さて、皆さまはいかがですか?