投稿して2時間くらいで10人以上の方が読んで下さっているなんて!
なので、少し早いペースで仕上げていきたいと思います。
きのうの雨は日付が変わる前に止んで、朝からいい天気だ。遅刻する者もなく、学校からバスは出発した。レクリエーションの先は学校の保養所。隣県の海辺にある景色のいい場所で、中学生の時から事あるごとに連れて行かれる。バスの座席はきのうのグループ毎に座らせられ、女の子たちはもう話がはずんでいる。普通のゆかりが会話のペースメーカーのようだ。
「ねぇアリスちゃんって、すごく大人っぽいよね」
「わたしみんなより少しだけ大人なの」
「え、どういうこと?」
「わたしオランダに住んでたの。お母さんの国ね。向こうとこっちは義務教育の年齢が違うからわたしはみんなの1こ上なの」
「そっかぁー!すこしだけお姉さんね。でも、なんで日本の学校へ来たの?」
「日本の女の子って、オシャレでカワイイの。だからよ」
「ふーん。オシャレのことはワコちゃんがホントすっごいから、まかせといてね!ねぇーワコちゃん。」
「あ、うん」
ワコはまだ人見知り中。
バスは順調に走り保養所へ着く。部屋割りは男女別でグループ毎。食事は食材だけ用意されていて、グループ毎に作るというスタイル。早速昼食から自分たちで作らないといけない。こんな時に重宝するのが料理自慢の友!
「今日だけはお前が俺の友達でホントに良かったと思う」
テツは不器用にインゲンを洗いながらユーヤを褒める。
「こんな時だけか?もっといろいろお世話してやってんだろ」
ユーヤは手元も見ずに人参の千切りをしている。
「ところで今何作ってんだ?」
ユーヤが作った謎のソースを混ぜながらコータローが聞く。
「豚肉があったから、この野菜たちを巻いてそのソースをからめて焼くんだよ」
女の子三人組が人数分の食器を持ってやってきた。
「うわー葉山君って、上手だね」
ゆかりがまな板を覗き込む。
「あっ、ユーヤでいいよ。俺んち店やってっから、手伝ううちに一通りできるようになったんだよね。今度3人ともうちへ来なよ。こいつらなんか、毎日来てるんだぜ」
「そう、こいつの料理マジでうまいんだ。学校のすぐそばだから寮生のアリスも大丈夫だよ」
そう言いながら3人の女の子を順番に見て、コータローは無駄にソースをかき混ぜている。
「ホント?絶対行くよ!ねぇ、アリスちゃんワコちゃんいつ行く?」
ゆかりは手際よくサラダを作りながら話している。
「岩下さんも上手だね」
コータローはまだソースをかき混ぜている。
「うん。うちはお母さんが早くに死んじゃったから、わたしも小さいときからいろいろ作ってんの。味はどうだかわかんないよ。それとぉ、ゆかりって呼んで!」
ゆかりは何か小さく企んだような顔で笑って、コータローを見る。コータローの手が止まる。
「ユーヤのお店って、どんなお店なの?」
アリスが皿を拭きながらテツに話しかけてきた。
「カフェレストランで、夜はバーにもなるなかなかおしゃれな店。マダムがフランスから買い付けてきた雑貨もあるから、女の子はきっと好きになるぜ。なぁ、アリスは料理できるか?インゲンの筋って、どうすんの?」
「筋、取ってくれたほうがわたしはいいかな。面白そうなお店ね。今度の土曜日行ってみようと思うんだけど、ゆかりちゃんワコちゃん空いてる?」
「うん、空いてる。」
ユーヤの指示で何かをしているワコがうつむき加減で返事をする。
「じゃあ、土曜日はトリプルデートだね!たっのしみ~」
ゆかりは無邪気にミニトマトのへたをちぎりながら、コータローに笑顔をむける。窓から差し込む陽が暑いのか、フライパンからくる熱なのか、コータローはなぜか体温が上がったような気がした。
ウォークラリーやクラスの目標決めなんかの、つまらなくてどうでもいいイベントが終わり、夜になってやっと自由行動の時間になった。男女別棟の建物に泊まるから、ここからは完全に別行動。部屋に戻る途中、
「アリスちゃんって、兄弟いるの?」
会話のスタートはいつもゆかり。
「わたし双子なの。ボリスって男の子とね」
「そうなんだぁ。やっぱり、アリスちゃんと一緒でスラーっとしてかっこいいの?」
「かっこいいかどうかはわからないけど、よく似てるって言われるかな」
「やっぱり双子って、仲良し?」
「仲はいいと思うよ。いろんな悩み事とか相談しあうから」
「いいなぁ。わたし一人っ子だから、兄弟や姉妹ってうらやましいんだ」
「ねぇ、ゆかりちゃんとワコちゃんってすごく仲よさそうだけど、いつから友達なの?」
「わたしたち誕生日が一緒なんだ。お母さんたちが同じ産婦人科に行ってて同じ日に同じ場所で生まれたの。だから、生まれる前からの友達だよね、ワコちゃん」
ゆかりがワコの腕に自分の腕を組んで笑うと、ワコもにっこりと笑う。
「うらやましいなぁ、わたしにはそんな友達いないから・・・」
アリスが伏し目がちに言う。
「わたし、アリスちゃんとも仲良くなれそうな気がするから、そんな悲しい顔はしないで。3人で仲良くしよう」
無口で小さなワコがアリスの腕をとって、自由な方の腕を組ませた。
「これから仲良しだねわたしたち。でも、ワコちゃんが真ん中だと、身長のバランスが悪いなぁ。あはは・・・」
ゆかりが笑いだした。つられて二人も笑いだした。
部屋に戻り荷物の片付けをしていると、ゆかりのバッグから白いウサギのキャラクターグッズがたくさんでてきた。アリスがうれしそうな声で、
「あ、ナインチェ!ゆかり、ナインチェ好きなの?」
「そうだ、ミッフィーってオランダではナインチェだよね。わたしミッフィー大好きなんだ。いつもはぬいぐるみと一緒に寝てるんだけど、今日は無理だから小物で連れて来ちゃった」
ゆかりはフワフワのタオルに顔をうずながら、
「こどもっぽいんだけど、お母さんとの思い出とミッフィーが重なるの。さびしい時や不安な時はミッフィーをギュってしたら大丈夫になるんだ」
「ゆかりちゃんは甘えん坊だからね。わたし、大きなお風呂に行こうと思うけど二人はどうする?」
ワコがニコニコしながらお風呂グッズを抱えている。ゆかりとアリスの声が揃う。
「一緒にいくー」
大浴場へ行くと担任の大泉がすでに入っていた。ゆかりがすり寄っていき、
「先生と一緒だぁ。アネゴ、お背中流しましょうかぁ~」
と、手もみする。大泉もふざけて、
「小娘の分際でわたしの背中に触れようなんぞ百年はやいわ。それにしても岩下、あんたほんとにつつましやかな胸ね」
「つつましやかって、なに?」
アリスがワコにたずねる。
「フフフ、ちいさいってこと!プッ!」
ワコは笑いをこらえきれない。
「なんでワコちゃんのがちっちゃいのに、カラダはワコちゃんの方が女の子なの?」
ゆかりはワコに向かっていきなりシャワーのお湯を乱射してきた。
「もうっ、八つ当たりしないで!」
ワコも笑いながらシャワーで応戦する。
「ついでにアリスちゃんも、えいっ!」
ゆかりがアリスにも掛けてきた。キャーキャーと声をあげながらシャワーを浴びる。いつの間にか湯船につかった大泉が、
「あんたたちも早くお湯につかりなさい。気持ちいいよー」
おじさんみたいに、頭に濡れたタオルをのせている。
「アネゴ、待ってくださいよぉ」
ゆかりはすっかり大泉に懐いている。
「ところで先生って何歳ですか?」
「岩下って会話のスタートがいつも個人情報の疑問で始まるね。32歳」
「へぇ、もっと若いのかと思ってた。お肌なんかツルツルだから」
「仕事ばっかだから外に出ないし、生活のリズムも一定だからね。今月から寮にも入ったし、もっと規則正しい生活になったなぁ」
「先生たちの寮ですか?」
「いや、アリスと一緒の寮。学校に無理言って入れてもらったんだよ。セキュリティーがしっかりしてるからね」
長い脚をのばしたアリスが会話に入る。
「先生が一番手のかかる新人だって、先輩が笑ってた。だって先生寝起きがすごく悪くて、二度寝しちゃうから必ず誰かが朝の監視に行くんだもん」
「いやぁ、わるい悪い。そこだけわたしの弱点。起床時間が6時って早いんだよ。わたしは7時にならないと目が覚めないんだ」
「じゃあ、先生今でも10時から7時まで寝てるの?」
ゆかりはきのう聞いた学生時代の睡眠時間を思い出した。
「今は11時に寝て、6時半だね」
「だから、それじゃだめでしょ。6時に起きてください」
浴槽の淵に頭をのせたワコが笑いながら言う。
「ウフフ・・・アリスちゃんが先生みたい」
「アリス、明日もわたしを起こしにきてね。頼んだよ」
「全然だめじゃん、アネゴ!」
お風呂場に女の子の笑い声が響く。
レクリエーションで自炊なんてあり得ませんが、ここは大目に見てください。小説なんで・・・。
ユーヤの作る謎のソースは甘辛なスパイシーソース、ゆかりのサラダは普通のグリーンサラダです。
アリスの双子の兄か弟(ボリス)は、ミッフィーのおともだち『こぐまのボリス』から取りました。