#6 ~ナンバーシックス~   作:古波栗待

6 / 9
今回はゆかりのおはなし。


6.ゆかりの日曜日

 ワコちゃんに選んでもらったかわいいセットアップを着て待ち合わせ場所に向かってるの。先に家を出たお父さんとホテルのロビーで待ち合わせ。坂田のおじさんたちが入学祝にって、フレンチに招待してくれたんだ。おじさんて言っても親戚ではなくって、お父さんの上司なの。お父さんはボスって呼んでる。わたしいつもパンツだから、スカートってなんだかスースーして落ち着かないんだ。あ、お父さんだ。

「おお、来たきた。ゆかりは黄色も似合うなぁ。ワコちゃんに手伝ってもらったんだろ、ゆかりがチョイスしない感じだもんな。でも、お父さんは好きだぞ、そういうの」

「そう?なんかスースーしちゃうんだけど、女の子って大変だよね」

「ゆかり・・・お前も女の子だからな。さぁ、行こう。ボスがお待ちかねだ」

 ソファからお父さんが立ちあがって歩き出した。横をついて行く。

「いいホテルってさ、背筋が伸びるよねぇ。久しぶりだなぁ、みんなでお食事するの」

「そうだなぁ。何か俺たちに相談があるらしいぞ」

「何だろうね?」

「さぁ?全くわからんな」

 エレベーターは何の音も立てずに40階まで一気に上っていく。耳がキーンってならないのが不思議だよね。扉が開くと大きな花瓶があって、右に行くといつものフレンチのお店。係の人におじさんの名前を言うと、いつもの景色がものすごくきれいな角部屋の個室に案内される。二人はもう、シャンパンか何かを飲んでる。

「今日はお招き頂きありがとうございます。奥様、ご無沙汰しております」

 お父さんが挨拶をした後で、わたしも挨拶。

「こんばんは、おじさん、おばさん」

「ゆかりちゃん、入学おめでとう。そんなかわいらしい服着てると佐世ちゃんっ、いえお母さんにそっくりねぇ」

 おばさんが立ちあがって、抱きしめてくれた。

「ほんとに?お母さんきれいだから、うれしいなぁ!」

「そうだな、佐世ちゃんは美人だった。こいつにはもったいないくらいにな」

 言えないけど、おじさんまた少しおでこが広くなってる。

「さぁ、二人とも座って。今日は楽しみましょう」

 おばさんは何歳かよくわからないけど、女優さんみたいにキレイな人。お母さんはわたしが5歳の時に死んじゃったから、ワコちゃんのお母さんと子どものいないおばさんが、お母さんの代わりに色々教えてくれたの。

 

 席について乾杯をしたら、前菜が出てきた。個室って、カメラでも仕込んでるのかな?今ですよ!のタイミングでお料理やお水が出てくるんだよね。おじさんとおばさんが学校の話を聞きたいって言うから、大泉先生やアリスちゃんのこと、ユーヤ君とテツ君とコータロー君とも仲良くなったことを適当にお話する。だって、先生が離婚してることやユーヤ君がチャラいことって、大人には内緒にしといた方がいいもん。テツ君の成績がすごくって頼りになる話をするとおじさんが、

「そのテツって子は、まだ将来決めてないんだろ?うちに来るよう、ゆかりちゃんスカウトしといてよ」

 だって。そしたらお父さんが

「ボス、気が早いです。まだ高校生ですよ」

「何言ってるんだ、鉄は熱いうちに打てと言うだろ」

「あらやだ、あなた。『てつ』つながり?ウフフ・・・」

 おばさんがツッコんでる。気付かなかったなぁ、夫婦ってさすがだね。

 

 おいしいお料理がどんどんきてデザートも食べちゃった。紅茶のお代わりをしてるとおじさんが、

「今日集まったのは、このことだ。二人とも、よく見てくれ」

 って、卒業証書が入ってるような薄くてしっかりした表装の何かをテーブルに置いた。中を覗くと、きれいな着物を着たきれいな女の人が写ってる。お見合い写真?

「あの、どなたかお見合いなさるんですか?」

 お父さんがおじさんに尋ねる。

「何言ってんだ、お前だよ。どうだ?きれいな人だろ」

「えぇーーーー」

 お父さんと一緒に声が出ちゃった。おばさんがニコニコ笑って、

「ねぇ二人ともそろそろ考えなきゃ、ゆかりちゃんももう大人よ。いつかは一人立ちするんだから」

「あのいえ・・・ワタシハ再婚なんて・・・その・・・」

 いつもはキレッキレのお父さんもグダグダ。わたしも思わず、

「いやだよ、再婚なんて!新しいお母さんなんていらない!お父さん何かあるたびにお母さんの写真見てるし、この前ケンカしたときも写真見ながら泣いてたでしょ!お母さんのこと、まだ大好きでしょお父さん?」

 見てない振りしてたけど言っちゃた。そしたらおばさんが、

「ゆかりちゃん。あなたもいつか好きな人ができて、その人と一緒に暮らす日がくるのよ。そしたら、岩下君は一人ぼっちになってしまう。かわいそうでしょう?家の中に話し相手がいないなんて」

「お父さんも一緒に住めばいいじゃない!」

「俺には子どもがないけど、想像はつくぞ。いやだぜ、それ。孫でもできれば別だが、新婚夫婦と同居でしかも娘だろ。大事な娘取られて悲しいのに仲良くしてるの見せつけられたら、おじさんは泣いちまうな」

「あなたが泣いてしまうのはどうでもいいけど、世の中のお父さんってみんなそんなもんよ。男のほうが断然さびしがり屋なの。だから、今でも岩下君が佐世ちゃんの写真見て泣いちゃうのね」

「いえ、それは、あの・・・」

「とにかく、新しいお母さんなんていらないよ!仲良くなんてしないんだから!もし来たら、意地悪して追い出してやるっ!」

「ゆかりちゃん・・・あなたの気持もわかるよ。でも、本当に一人って大変なの。お父さんにずっと元気でいてもらいたいなら、このことは真面目に考えなくちゃいけないことなの。この方、長谷川しのぶさんっていうんだけど本当にいい人なんだから。ねぇお願いだから二人ともよく話し合って。今日のところは、お写真持って帰ります」

「岩下、この件は俺の命令だと思え」

「ボス・・・」

 

 お父さんはきちんと挨拶したけど、わたしは二人の顔も見ずにさようならを言って別れた。だって、あんまりにも急な話だったし、びっくりしたんだもん。確かにお父さんに彼女がいたっておかしくはないと思う。まだお腹も出てないし、わたしが言うのもなんだけどカッコいいし。それに独身だもんね。そういえば、お母さんが死んじゃってからそんな人いたのかなぁ?

「ねぇ、お父さん。彼女とかいないの?」

「はあっ!いるわけないだろ、そんなもの」

「そっかぁ、いないんだ」

「お前のこともあるし、仕事も忙しいんだ。そんなことしてる暇ないだろ」

「ちょっとぉ、わたしのせいにしないで!そんなに邪魔なら出ていくよ!」

「お前何怒ってるんだ?邪魔だなんて一言も言ってないぞ」

「もういい!再婚でもなんでもしてしまえ!」

「おい、ゆかり!まだ俺はなんにも言ってないぞ。どうしたんだ、そんなにイライラして」

「イライラなんかしてないっ!もう、話しかけないで!」

 お父さんは困った顔して、黙ってしまった。

 

 わたし、何に怒ってるのかよくわからないんだ。お父さんがわたしから離れていくのが嫌なの?それとも、やきもち?お母さんのこと捨てちゃうのが気に喰わない?あの写真の人がキレイだったから?なんでだろう・・・おいしい料理を食べたんだけど、何食べたか、どんな味だったか全部忘れちゃった。こんなにモヤモヤする気分、誰にどう相談したらいいのかわかんないや・・・。

 

 




毎回恒例の妄想キャスティング~!
ボス坂田は断然この人、船越英一郎さん。で、夫人は実際にも御夫人の松居一代さん。特に松居さんは本当にお見合い話を持ってきそう。
お母さんの佐世さんは、安田美沙子さんかな・・・。
そして、写真の長谷川さんは吉瀬美智子さんか本上まなみさん。


今、気がついた。坂田と長谷川って『銀魂』じゃん!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。