遊戯王ARC-V 異世界転生の召喚指導官   作:神聖SmD

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リアル多忙につき不定期更新になってます。


EX practice① エンタメ! 遊勝塾

「……それは一体なんの冗談なんだ?」

 

その日の朝食の席、ある一報が俺の箸を鈍らせた。

危うく落としかけた卵焼きを皿に一度戻す。

 

「だーかーら、ちょっとややこしいことになってね? 友達のお父さんが

やってる塾で一日講師やって来てほしいの」

「どうしてそうなったのか、経緯を聴く権利はあると思うんだけど?

とりあえずそれを聞いてからだな……」

「ダメ! 言ったら絶対行ってくれないでしょう?」

 

この娘っ子は詳しい事情を話さずに俺にタダ働きしろと言ってるのか?

世の中そんなに甘くないという事を教えるべきだろうか。

 

「お願い! お風呂掃除と食器洗い、3日間私がやるから!」

「安いな!? 俺の一日の働きってそんなものなの!?」

 

そこはせめて1週間とは言えなかったのだろうか? 

けど、まぁたまには妹の為に動くのもいいかもしれない。

 

「はぁ……分かったよ。受けるよ、その仕事」

 

こうして俺は一切の事情を知らぬまま、仕事を受けるのだった。

 

◆

 

「嘘だろ……ここは――――」

 

その塾はこじんまりとした佇まいでそこにあった。看板には《遊勝塾》の文字。

これマジ? 俺、ここで講師やれっての?

入っていいの? これ、入っていいの?

 

「――――そこに居るのは、誰だッ!!」

「うわぁああああああ!! ごめんなさいッ! ごめんなさい!!!」

 

背後から一喝入れられる。咄嗟に俺は後ろ向きに土下座。

 

「む、見たことの無い顔だな……入塾希望の方か?」

「へ、あぁ俺はそうじゃなく――――」

 

その相手を見るとデカイガタイに、鉄下駄が見えた。

 

「権現坂……」

「む、俺の名を知っているのか? まさか! 貴様、《LDS》の刺客では

あるまいなッ! またも、遊矢が犯人だとかなんだと言いがかりをッ!

許さんッ! ならば、この男権現坂――――」

「ちょっとちょっと待てッ! 話を――――ぐぅッ!」

 

《LDS》の刺客ではないけど、関係者だからどういえばいいのか!

その前に、胸倉をつかまれ弁解も出来ない。

 

「ちょっと、権現坂! 何してるの!?」

「あぁ、柚子か。見ろ、こやつ《LDS》の刺客に違いない!」

「その人は違うわ! ――――あなた、鏡花ちゃんのお兄さんですよね?」

 

柚子ちゃんがそう言うと権現坂は「何? 柚子の知り合いか?」と

いい俺の胸倉を解放する。

 

「ごっほ……あぁ、そうだけど。末城遊介って言うんだけど。

今日ここで授業をしてくれって妹に言われてね……」

「むぅ……そうであったか。この男権現坂……よもや早とちりを――――」

「まぁ誤解が解けたなら、ね」

 

俺は乱れたネクタイを直しながら権現坂にそう言った。

いきなり敵扱いとは随分な歓迎だ。

 

「じゃあ、案内しますね」

「あぁ。お願いするよ」

 

こうして俺の《遊勝塾》での1日講師が幕を開けたわけだが……

開幕早々凄く不安だ。主人公サイドとの関わりはこれが初だが、

何事も無いことを祈るばかりだな。

 

◆

 

「お父さん! 言ってた人を連れて来たわよ」

「おぉ!! 君が柚子の友達のお兄さんか?」

 

塾の中に案内された俺は、塾長の柊修造さんに出会う。

 

「はい。改めまして末城遊介です。娘さんには妹がお世話になっている

ようで。ところで、何故俺を?」

「あぁ。それなんだが……ウチの塾では融合・シンクロ・エクシーズに関して

詳しく教えられなくてね。話を聞けば君は――――《LDS》で講師をしている

そうじゃないか」

 

修造さんの言葉が一瞬重くなる。やはりこの人も元プロ決闘者。

それなりにオーラというか覇気というものを感じる。画面越しにはただの

熱い人だなという感想しか抱けなかったが、こうして対峙して分かる。

 

「なんだとッ! やはり《LDS》の刺客であったかッ!」

 

横から再権現坂の手が迫る!

 

「ちょっと、権現坂! いい加減にしなさい!」

「た、確かに。俺は《LDS》で講師をしてます。こちらの塾との話も耳に

届いてます。アレはこちらのとの行き違いというか……なんというか。

ですが、俺は刺客ではありません。今回は個人として来ました」

 

遊矢が犯人だと言われ、要らぬ喧嘩を吹っ掛けられたここは《LDS》とは

敵対関係とまではいかないが、よくない関係にはある。

 

「あぁ。それは分かっているさ。そこでお願いと言っては調子がいいが、

ウチの生徒達に一つ授業をお願いしたいんだ。いい刺激にもなるだろうしな。

あぁ、勿論お礼はさせてもらうよ! LDSほどではないかもしれなけどね」

 

そう言うと塾長は笑う。そこには先ほどの圧は感じなかった。

後、俺の給料はバイトなので決して高くはないんだよなぁ。

 

「なるほど、分かりました。俺も普段とは違う環境で教えるとなれば、

学べることもあると思いますし、やらせて頂いても宜しいですか?」

「あぁ、頼むよ」

 

こうして俺は《遊勝塾》の生徒達に授業をすることになった。

 

◆

 

「こんちわーって。知らない顔が居るな?」

「本当だ! 貴方は塾に入るの?」

 

暫くすると、アユちゃんとタツヤ君それから……あれ、このぽっちゃりして

る子はえっと……マンソンじゃなく。そうだ! シビレデブだ。

彼らが塾にやって来た。俺は見た目的には高校生なので新規の塾生と

間違われたのだろう。

 

「こんにちは。俺は、今日1日ここで授業をさせて貰う末城っていうんだ」

「じゃあ、先生ですか?」

「あぁ。そうだよ」

 

ちびっこ達が興味深々といった目を向けてくる。

 

「あら、皆来てたの?」

「あ、柚子おねぇちゃん!」

「今日はこの人が授業してくれるってホントか?」

 

シビレデブが俺を指さす。ん~人を指さすのはやめような? 

 

「そうよ。この人は私の友達のお兄さんなの」

「へぇ~じゃあ今日はいつもの塾長の退屈な授業じゃないんだな!」

「やったー楽しみ!」

 

子供の素直さは時として凶器にもなる。ごらん皆、塾長が寂しそうだぞ?

俺は塾長の熱血授業を受けてみたいと思うんだけどなぁ。

 

◆

 

「こんにちはー。掃除当番してたら遅くなっちゃたよ」

「遊矢が遅くてくたびれちゃったよ~」

「なんだよそれ、別に待って無くてもいいのに……」

 

最後に登場するのは、ペンデュラムの始祖こと榊遊矢だ。

その横にはキャンディを舐めながら紫雲院素良が続く。

おぉ。これが主人公というものなのか。なんだかこう――――普通だ。

何処にでもいるただの少年。そんな印象を受ける。

 

「あれぇ? 見たことない人が居る~」

 

素良が俺を見ながら言う。

 

「あれ、本当だ。あんたは?」

 

遊矢もそこで俺に気が付き尋ねてくる。俺は先ほどのように挨拶を繰り返す。

 

「こんにちは、今日1日ここで授業をさせてもらう。末城だ」

「へぇ~。ん? 待てよ……末城って名字、聞き覚えがあるぞ」

「鏡花ちゃんのお兄さんなのよ、その人は」

 

そこで柚子ちゃんがフォローしてくれる。説明の手間が省けるな。

しかし、鏡花はこの2人と同じクラスなのか。すげぇ偶然。

 

「そうだったんだ。俺、榊遊矢。よろしく」

「よろしく。妹がお世話になってるよ、それに遊矢君の話はよく聞くしね」

「え?」

「彼は、《LDS》で講師をしてるのよ」

「え! 《LDS》?」

 

そこからまた事情を説明するのに数分を要した。

 

◆

 

「……という訳で授業をやって行こうと思うんだけど」

 

講義室に入った俺はホワイトボードの前に立つ。やっと始められそうだ。

なにせここには開始時刻というものの決まりが無いようで、やる時に

やるしやらない時はやらないという主義の様だ。だが、エンターテイメント

を重んじる此処らしい方針とも言える。それぞれの塾には特色があるのも

当然と言えば当然だ。

 

「それで今日は何を教えてくれるんだ?」

「ん~そうだな。召喚方法についてだらだら喋ってるのもあれだから、

実際見てもらいながらって考えてるんだけど」

 

俺は今日特にこれといって用意をしてきていない。何故なら、講師をやり始めて

分かったことだが、生徒にも様々いるのは当然として、どのような授業なら

ウケがいいとかは何回かやらないと分からないのだ。なら、単発の今日は実際

見てもらいながらの方がいいと俺は判断した。

……決して、面倒だったとかではない。無いんだからな。

 

「へぇ、なら僕がお兄さんと決闘しようかな。

お兄さん《LDS》の人なんでしょ? なら、当然強いんだよね?」

 

授業中でも相変わらずキャンディを舐めながら素良が言う。

 

「そうでもないさ。俺はあくまで雇われバイトだからね。

それに今日の相手はもう決めているんだ」

 

そう。もう俺の中には対戦する相手は決っている。

ここの塾が実戦形式で学ぶ塾であるなら、当然彼とやらないとな。

 

「というわけで、今回の授業の相手を頼むよ。榊遊矢君?」

「えぇ! 俺か!」

 

離れた席で聞いていた遊矢が素っ頓狂な声を上げる。

 

「ぜひ、見せてもらいたいな。君の――――ペンデュラム召喚」

 

こんな機会は滅多にないだろうし、ここでやらない方がどうかしてる。

 

「遊矢兄ちゃんと《LDS》の先生との決闘! 凄い面白そう!」

 

ちびっこ達も期待の声を上げる。さぁ、どうする? 

 

「……いいよ、分かった。その決闘、受けるよ」

「ありがとう、遊矢君」

 

こうして俺は晴れて主人公と決闘することになった。

 

◆

 

塾内のリアルソリッドヴィジョンシステムのある部屋へ移動する俺達。

システムを投影する簡素な部屋には俺と遊矢のみが立っている。

残りの人たちは、ガラス窓の外で観戦という形になった。

 

『準備はいいか? 2人共!』

 

スピーカーを通して修三さんの声が響く。

 

「俺はいつでもいいよ」

「はい、こちらもいつでも。お願いします」

 

俺はYシャツの袖を捲ってデュエルディスクを装着する。

 

「すまないね、遊矢君。突然決闘なんて」

「いいや、俺ももっと強くならないとって思うし。

むしろラッキーって感じだよ」

「そうか。なら互いに全力でってことでいいね?」

「勿論! 父さんのエンタメデュエルを見せてやる!」

 

『よし! それじゃあいくぞッ! 

フィールド魔法、《マジカル・ブロードウェイ》……発動ッ!』

 

刹那、簡素だった部屋が煌びやかなサーカス会場のように姿を変える。

やっぱ科学の力ってすげぇ……

 

「戦いの殿堂に集いし決闘者達が――――」

 

遊矢が例のアレを言い始める。俺も言うのかそういや。

 

「モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る」

「見よ! これぞデュエルの最強進化系!」

 

最後はガラスの向こうの皆も声を揃える。

 

「「「アクショォォォオオオオン……」」」

「「デュエルだッ!!」」

 

そして、宙でカードが散らばり決闘が始まった。

 

 

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