遊戯王ARC-V 異世界転生の召喚指導官   作:神聖SmD

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work2、不穏な路地裏で②

「滾るッ……滾ってきやがるゥううう――――」

 

 たとえ話でなく周りの空気がびりびりと震える。《降雷皇ハモン》。

アニメの世界じゃ“伝説”として語られる一枚だ。それが今、目の前に

立ちふさがっているのだ。元の次元じゃよく友人の【宝玉獣】なんかに

アクセントとして入っていたハモンだが、もうしてリアルソリッドヴィジョン

として対峙すると、凄まじい圧迫感を感じる。上から押しつぶされるような視線、

圧倒的なまでのプレッシャーを感じる。

 

「……冗談じゃねぇ。なんで、そいつを持ってる、何処で手に入れたッ!」

「ハァ? 答えるわきゃねぇだろ……ハッハハハハ――――最高だァ」

 

相手は《降雷皇ハモン》を召喚できたことで達したような光悦とした顔で答える。

 

「さァさァ、こいつの力を見せてやるよォ――――バトルだァッ!

その木偶を蹴散らせェエエエエエッ! 《失楽の霹靂》ィィイイイイッ!!」

 

 ハモンの周囲に雷が収束、そしてそのまま――――デーモンに降り注ぐ。

そしてその雷はデーモンを焼き尽くすに留まらず俺を襲う。

 

「――――ッぐァァアアアアアアアッ!! ……ガハッ……はぁ――――」

「は、ぁッハハハハ……どうだァ? 今のが、《地獄の贖罪》だァ」

 

 身体を貫く電気。そのダメージはうっかりコンセントに触れちゃったときの

比じゃない。この本当にソリッド・ヴィジョンかよ。

 

遊介:1700LP

 

「さらに、さらにィ! デーモンで追加攻撃だァ!」

「ぐォオオオオッ!!!」

 

遊介:900LP

 

 4000フルであったLPが一瞬で消飛ぶ。ついでに意識すら消飛ばされそうだ。

そのままアスファルトに倒れ伏す。だが――――

 

「まだ、だ……」

「けッ、まァだ立てるだけの体力があったのかよ」

「はッ! モンハンは2乙から、デュエルはLP500からが本番……だろうが。

まだまだ序盤じゃないか」

「まァいい。次で刈り取ってやるぜェ。俺は、ターンエンドだ」

 

 虚勢を張ったまではいいが、正直万策尽きかけてるんだよなァ。

もうこのまま倒れた方が楽なんじゃないの?

 現実で「めのまえが まっくらに なった ! ▼」ってなってポケセンに戻れたら

どれだけ楽だろうか。いや、ポケセンがないか。

 

「んなこと言っても始まらないよなァ……」

「何、ぐちゃぐちゃ言ってやがる! おう、あくしろよ」

 

 んなことはどうでもいいか。さて、どうしたものか。ハモンを突破しないと、

どうにもならないわけだ。攻撃力4000のハモンを戦闘で退かすのは不可能。

なら効果で退かすのがセオリーでありベストだが……手札のこいつと、トップが

《スクラップ・エリア》か。……ん、なんだ行けるやん。

 

「よし。やってみるか」

「ん、なんだァ? やられる算段は出来たかァ?」

「――――いや、“勝つ”算段が出来た」

「……お前、この状況が分かってんのかァ?」

 

知ってるが。

 

「関係ないね。相手が伝説のカードだろうが、神だろうが関係ないさ。

可能性は常に――――ここにある。俺のタァアアアアンッ! 魔法カード《スクラップ・

エリア》を発動ッ! デッキから《スクラップ・ビースト》を手札に加える。

さらに相手の場にモンスターが存在するとき、このモンスターを特殊召喚する!

《スクラップ・ブレイカー》ッ!」

 

《スクラップ・ブレイカー》☆6

攻2100/守700

相手フィールド上にモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する

事ができる。

この効果で特殊召喚に成功した時、自分フィールド上に表側表示で存在する

「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して破壊する。

 

「ブレイカーの効果発動! 自身の効果で特殊召喚されたとき、場のスクラップ

一体を破壊する! ブレイカー破壊! この時、ファクトリーの効果発動ッ!

デッキから、《スクラップ・ゴーレム》を特殊召喚!」

「チッ、んだよまたそいつかよ……」

 

 そういうガチな反応やめてね? こいつ、過労死かよみたいなね。

ゴーレム君過労死認定されちゃうから。けど実際デッキの要みたいなところ

あるから実際過労死要員。ゴーレム君マジ過労死。

 

「ゴーレムの効果、発動! 墓地からワームを蘇生。

俺はまだ通常召喚を行っていない。手札から、《スクラップ・ビースト》を召喚」

 

役者は揃った。さぁ、反撃と行くか。

 

「俺は、レベル5の《スクラップ・ゴーレム》にレベル4の《スクラップ・ビースト》

をチューニングッ!」

「またシンクロか、けど何を出そうとも無駄無駄無駄ァ、無駄なんだよォ!」

「お前の切り札がハモンだってんなら、今度は俺の切り札を見せてやるッ!

……双頭で敵を捕え、鋼鉄の双翼で敵を討てッ! シンクロ召喚ッ! 来いッ!

レベル9、《スクラップ・ツイン・ドラゴン》ッ!!!」

 

ツインドラゴンがハモンに向かって咆哮を上げる。

 

「切り札って奴はこう使うんだッ! 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》の効果、

発動! 俺の場の《スクラップ・ワーム》を破壊し、お前の場のハモンとトリック・

デーモンを手札に戻すッ! ――――消えろ、Scrap Vanish」

「な、何だとッ!?」

 

効果耐性がないことを恨むんだな。

 

「これでお前のハモンは攻略した。さらに、ワームの効果発動。スクラップ・ビースト

を手札に加える。さぁ、お前を守るモンスターはいなくなったぞ? サレンダーするか? 今ならもれなくそのハモンのカードを置いて逃げればポリスマンに通報はしない

でいてやるぞ?」

「ふざけんじゃねぇッ! 逃げろだァ? 舐めんじゃねぇ! 俺たちは確かに

デュエルの表舞台から逃げた所詮は破落戸だ。それでも、無様な真似はしねぇん

だよォッ!」

「……そうかい。なら、その信念にだけは敬意を示してやるさ。

――――やれ! 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》、Scrap Viseッ!」

 

 スクラップ・ツイン・ドラゴンの攻撃で男のLPは尽きる。あぶね……

ハモンとか出た時本当にビビったかんね、なまらびっくりしたべや!って感じ。

 ちなみに俺は北海道民では無かったです。埼玉県民でした。

 

「あんたの敗因は、伝説のカードを持っているという状況に奢ったからだ。

さて、それじゃあその物騒なカードは頂戴するぜ。然るべき機関に渡すから」

 

危険物は警察へって基本だよな。

 

「や、やめろォ! やめてくれ……俺は、俺はこいつでもう一度……勝ち続けて

やるんだァ。もう嫌なんだ、負けるのはよォ!!」

 

 男はハモンを抱きかかえるようにして覆いかぶさる。

大男が駄々をこねる子供用にアスファルトで暴れてる絵図らを想像して頂ければ

大体間違いない。

 

「俺は、俺はこいつで返り咲くんんだァ!! 見返してやるんだ、俺を、

俺を負かした連中をッ!!」

 

こいつの過去に何があったか知らんが、

 

「舐めんじゃねぇッ! 返り咲く? 見返す? お前が何者か知らないがなぁ、

それはお前のものじゃねぇんだろうが!? なら、それはお前の力じゃねぇじゃ

ねぇか!」

 

 状況からしてそこに倒れてる奴の物だったのだろう、ハモンは。

この倒れている男も普通じゃないだろうなぁ。

 

「負けることのどこが悪いッ! 甘えるな!」

「この世界じゃ弱者は生きられねぇんだよォオオオオ!!」

 

 男が立ち上がり拳を握り、俺に放つ! 俺はそれを顔面に受けた。

……躱せるわけないよ。来たパンチをスッと躱せるのなんてアニメだけだ。

 俺の鼻からヌルっとしたものが滴り足元のアスファルトに紅いシミを作る。

 

「ってぇ……」

「俺はある塾の門下生だった。その塾はプロの排出も多く周囲から期待されていた」

 

俺をいきなり殴った男が急に語りだした件。一丁前に説教垂れたらこうなった。

 

「俺も期待に応えようとデュエルに明け暮れた。毎日、毎日……

次第に俺にとってのデュエルはただの使命でしかなくなった――――」

「やっべ、Yシャツに鼻血が……これ帰ったら怒られるやつだ」

 

最悪捨てて帰ろうかな。どうせ1枚980円のやつだし。

 

「――――だから俺は示さねぇといけねぇんだ」

 

あー後半ほぼ聞いて無かった……

 

「へへ……こいつで俺はこの世界に証明すんだァ、俺の力を!」

「まだ言ってやがる」

 

だが、そんな下衆に天罰が下るのにはそう時間はかからなかった。

 

「――――な、なんだァ!? カードがッ!? ハモンが……燃えるゥッ!?」

「い、一体、何が起きてるんだ……」

 

男の持つハモンが燃えている? というより、火花を散らして爆ぜた。

 

「――――やはり、まだ未完成ですね。けど助かりました」

「あ、あんた大丈夫か……?」

 

背後で倒れていた研究者然とした男が俺に並び言った。

 

「えぇ。問題ありません。身体は負傷しましたが、いいデータが採れました」

「データ?」

「それでは、私はこれで。さて、他の2枚はどうなりましたかねぇ」

「あ、おいちょっと待ぃ!」

 

 俺の制止を聞かず、研究者男は不気味な笑みを浮かべて街へ消えて行った。

後には放心した男と俺のみが残る。どうすんのこれ……

 

「とりあえず、警察へ連絡だな」

 

 

「ってことがあってですねぇ、Tシャツが1枚逝ったんだ」

「なるほど」

「だから、俺は悪くない! ので、新しいTシャツ代を下さい!」

「小遣いから引くね?」

「あ、そっかぁ……」

 

 鼻血で実質逝ったTシャツを見て妹に「これなに?」と言われて説明したが、

俺の説得虚しく小遣いから1000円が消えた。ほんと今日は厄日だなぁ……

 

「けど、そんな伝説のカードがあったんだねぇ」

「あってたまるか。あのカードはどう見ても普通じゃない」

「普通じゃないのは当たり前でしょう? 伝説だもん」

「伝説のカードだろうと火花散らして爆発したんだぞ?」

 

 カードが爆発って……いや、考えてみればカードがスリケンとして使われる

世界だぞ、ここは。アイエェェ……

 

「爆発するんでしょう? 伝説だもん」

「伝説ってなんですか」

「皆知らないから伝説なのよ。じゃ、その私寝るから」

「あぁ。お休み……」

 

 結局、今日の事は分からず終いだった。けど、突っ込んでは行けないことの

類なのははっきり分かる気がする。

 

「あの男の最後の言葉、後2枚ってのはウリアとラビエルか。

その2枚もあるんだろうか」

 

情報が足りない。

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