遊戯王ARC-V 異世界転生の召喚指導官   作:神聖SmD

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work3、課せられた任務

路地裏でのデュエルから数日が経った。特に何が変化することも無く

俺は日々を過ごしている。きっとアレは夢だったんじゃなかろうか? 

そう思えるくらいだ。そう思っていた矢先――――

 

「末城先生。――――社長がお呼びです」

「……っえ、赤馬社長が……ですか?」

 

 何故俺のようなバイトが呼ばれるのか。いや、まぁ大体の想像がつく。

だが、色々分からない以上行くしかないだろうな。レオ・コーポレーション社長、

赤馬零児の元へ。

 

「……分かりました。ありがとうございます」

 

俺はそれだけ答えると、社長室へと行くことにした。

 

 

「失礼、します」

「入りたまえ」

 

 《LDS》の最上階に近いワンフロア。厳かな扉を開くと赤馬零児が立っていた。

傍には中嶋も共に立っていた。怖えぇ……なにこの威圧感。

 16歳が放っていい風格じゃないぜ全く。この場に置いて歳の差なんてどうでも

よくなるぜ(18歳)。

 

「あの、今回は――――」

「あぁ。君にこれをまずは見て貰おうか」

 

 赤馬零児は手元のコンソールを操作する。そこにはおそらく操作パネルが

あるのだろう。天井から大型の幕が降りてくる。なんだ、映画鑑賞でもしようって

のか?

 

「これは?」

「……先日、市内の路地裏で正体不明の召喚反応が検知された。反応は融合・

シンクロ・エクシーズどれとも一致しない。が、それ以上の値を示していた」

「それは――――」

 

 既に事を把握していたか。流石、レオ・コーポレーション。その情報力は

然ることながらってやつだな。で、ここに呼ばれたって事は「お前、関係あるよな?」

って事だろうなぁ。

 幕に画像が映される。それは、《降雷皇ハモン》とあの男だった。そして、

それと対峙する、俺。画質は延ばしているからそこまでよくは無いがこれは弁明

の余地はなさそうだ。

 

「ここに映っているのは、君で間違いないな」

「――――俺です」

「これはどういう事だろうか」

 

 どうやら、《LDS》側もその場は捕えたが情報は無いようだ。

だから俺がここに呼ばれたわけか。事情聴取、という事だ。

 

「あれは――――」

 

俺はあの日の事を全て話すことにした。

 

 

「……まるで信じられない話だ」

「いや、そうでもない。なるほど……」

 

中嶋が唸り、赤馬零児がそれを否定した。

 

「ってなことで俺はそろそろ――――」

 

退散しようかなぁと……

 

「そうはいかない」

「ですよねぇ……けど、俺の知っていることは全てお話しましたよ」

 

 これ以上何を望むんだよ。後はご自慢の情報力とかその辺でサクッとどうにか

してくださいよ。

 

「私は前々から、君に興味があるんだ」

「え……」

 

 もしかしてホモなんですか? って言ったら即刻首が飛ぶだろう。リアルで。

しかし、一目置かれる理由がわからん。俺は善良なアルバイトな訳だが……

 

「君が担当するようになってからは君のクラスの成績は目を見張るばかりだ。

そして君自身。融合・シンクロ・エクシーズを使いこなし、シンクロモンスターを

用いた融合召喚までやってのける。君は、それをどこで取得したのだろうか……?」

「え、まぁ……独学?ってやつですかねぇ」

「独学、ねぇ……」

 

 どうやら事情聴取だけだと思ったら、俺自身の身元聴取だったか。

弱ったなぁ。この場時点で丸裸にされているようなもんだ。

 

「私が知る限りの君のデュエルスタイルは罠カードを多く使い相手を翻弄し、

その隙を崩してゆくスタイルだった。だが、一方今の君は主にシンクロモンスターを

使い大型モンスターで攻め立ててゆくスタイルだ」

「何が、言いたい……んですか」

 

 言いたいことがあるならはっきり言えよ。後、こっちの俺。

中々いやらしい戦い方してたのな。きっと、メタビートみたいなデッキを

組んでたんだろうなぁ。それは置いておいて、だ。

 

「確かに決闘者のデュエルスタイルは往々に変化するのだろう。だが、

いや、言葉遊びはここまででいいだろう。

これは、あくまで私の仮説に過ぎないのだが……」

 

そして赤馬零児は仮説に過ぎる推論を俺に叩きつける。

 

「――――君はこの“次元”の人間ではないのではないか?」

「っ!? じ、次元? ――――それは一体どういう事ですか」

 

 こいつ完全に分かった上で言ってやがるッ……!

赤馬零児は確信したかのように俺をその眼光で捕える。

 

「我々は今、来る次元戦争に備えた準備を進めている」

「社長ッ!」

 

 中嶋が制止する。流石にそれを俺に言うのはマズイと考えたのだろう。

俺の原作知識は舞網チャンピオンシップまでだ。赤馬零児が融合次元、アカデミア

に対抗しようと、その戦士を集めようとしていることは知っている。

 知っているが……

 

「仮にそうだとして、何故俺にそれを言うんですか?」

「当然、君のいた次元は我々の敵になりえるのか分からないからだ。

我々の相手は強大。少しでも反乱分子は減らして然るべきだ」

「あーそれなら大丈夫ですよ。俺の元居た世界にはデュエル・ディスクなんてものも

ソリッド・ヴィジョンなんてものもありませんから。土俵に立てない」

 

あーもうバラしちまってるけど。もう隠しきれないだろう。

 

「ソリッド・ヴィジョンが……信じられない」

 

 おう、中嶋。俺の居た次元を発展途上みたいに言うのやめれ?

軍事力はこの次元より上だぞ。きっと……

 

「俺のいたところじゃ、デュエル・モンスターズは“遊戯王”って呼ばれてて、

ただのテーブルゲームとして楽しまれてますから」

「なるほど。君はそこで融合やシンクロを?」

「あぁ。俺たちの世界じゃ皆使ってる。それこそ幼稚園児でも、ね」

「そうか。そんな次元が存在していたとは……」

 

 赤馬零児は考え込むような姿勢を作る。少し皮肉を混ぜけど動じもしないよ……

そもそも幼稚園児が完璧にルール知ってデュエルしてたら凄いな。

 

「それで、どうするんですか? 結局、俺は異端分子ってやつでしょう。

此処から去れというなら、いなくなりますよ。勿論ここで聞いたことは

他言しませんし」

「……いや、その必要はない。むしろ、君の力を借りたい」

「社長!?」

 

反対の意思を示す中嶋を赤馬零児は手で制する。

 

「君は今まで通り我が《LDS》の一員でいてもらう。

当然今日この場での事は、口外はしない。中嶋」

「心得ております」

「はぁ……それで俺に何をしろって言うんです? 

態々今日、この場で言ったんだ。裏があるんでしょう?」

 

 この男の事だ。どうせ俺のことも前々から気づいてたんだろう。

多分この前のデュエルから。その上で泳がされてたんだ、癪だが。

 

「あぁそうだ。君に一つ、任務を与えようと思ってね」

「任務?」

「君が対峙したと同様の所謂伝説のカードの“レプリカ”はまだ存在する」

「まぁ、そんな感じがしてましたよ……」

「アレは独自に開発されたもので、デュエル・ディスクからシステムにハッキングし

情報改ざんを行うことで実現していると推測される」

「推測?」

「まだ、情報不足でね。あくまで仮説だが既に同様の事例が数件挙がっている」

 

 つまり、俺のように伝説級のカードと対峙したって奴が他にも居るのか。

どんだけ量産されたんだよ……

 

「これから、舞網チャンピオンシップという時期。このままこれらのカードが

蔓延したとしたら、どうなるかは想像に易いだろう」

「……伝説モンスターのバーゲンセールって訳ですね」

 

あちらこちらで神がポンポン出てくる……地獄絵図かよ。

 

「あぁ。つまり我々としては早急に事の究明に当たらねばならない」

「はぁ。そこで、俺……ですか?」

「話が早くて助かるよ。一度対峙し退けた君が適任だ。

勿論、報酬は用意させてもらう」

 

マジすか? 期待するからな。

 

「必要とあればカードも提供しよう。相手の強大さは理解している」

「……そこまでお膳立てされたならやらずにはいかない、ですね」

「そうか。なら、これはまだ試作段階だが持っていくといい」

「こいつはッ……本当にいいんですか?」

 

 赤馬零児は手始めに数枚のカードを俺に手渡す。

開発しているのは知ってたが、俺の元に来るとは思わなかった。

 

「君なら使いこなせるだろう。では、頼んだ」

「けど、情報も無しに闇雲に当たるんですか?」

 

 この間のようなことは早々無いだろう。なら、この街でそれらしい

カードを持っている人を特定するのも難しい話だ。

 

「それなら心配はいらない。大体の目星は付いている、中嶋」

「はッ。市街の外れのビルの地下に賭けデュエルを行っている集団が屯している。

事例の一件はそこから挙がっていると報告がある。まずはそこを当たって欲しい」

 

 裏ルートから手に入れただろうか。そういや、この前の相手も破落戸って感じ

だったし。あの研究者もまだ未完成的な事を言っていたことからして、そのカードは

まだ実験段階なんだ。試すならリスクの少ない奴を選ぶのが妥当。その連中は実験の

モルモットって訳か。

 

「では、頼んだ」

 

 俺は社長室を後にし、まずは家へと戻ることにした。

とりあえず、このカードを使って新たなデッキを組むために。

 

 

「社長、本当に宜しかったのですか?」

「……彼もまた、“ランサーズ”のメンバーとしてなりえるか、そのテストに過ぎん。

そのために渡した“ペンデュラムカード”だ。――――引き続き、彼の動向を監視しろ」

「はッ!」

 

「全てはこの戦争の――――赤馬零王に勝利する為に……」


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