ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

10 / 588
 久々の連続投稿!!ストーリー性がない話というのは早く書けるのが利点ですね。今後もそんな話ばかりです(笑)


先輩禁止!リターンズ!!

 

 

 春といってもやはりまだ朝は寒い。『夜暑いから薄着で寝よう』なんて思っていると、朝になってたっぷりとそのツケが回ってくる。それゆえ布団が気持ちいい。起きなければいけないという焦燥感を、布団のぬくもりとそれによって掻き立てられる睡魔が完全にかき消してくれる。また遅刻だ。

 

 今日は新生μ'sが結成してから初めての朝練だったりする。最近は忙しかったため朝練もめっきり少なくなったが、一年生が高校生活を慣れたのを期にまた再開された。そのせいで早く起きることを強要され、俺は若干鬱陶しく思っている。だって朝だよ!?朝は寝るのが常識でしょ!!

 

 しかし、階段を駆け上がってくるこの足音を聞くとそうも言ってられないようだ。もう俺はこの春から一人暮らしではないからな。どうしようもないブラコン妹のせいで、俺の日常は崩壊の道を歩んでいる。家にいても学校にいても休息の時はほとんどないに等しい。このまま俺が過労死したら手厚く葬ってくれ。

 

 

「お兄ちゃん!!いつまで寝てるの?今日から朝練だよ!!」

「来やがった……」

 

 

 もうちょっと静かにドアを開けれくれないものか。毎日毎日ドアさんも乱暴に開けられて痛がってると思うぞ。楓によって痛みつけられているのを見ると、同情しちゃうね俺は。

 

 

「お前……随分とやる気あるのな」

「それはお兄ちゃんが焚きつけたんでしょ?それに完璧な自分を目指すって目標は諦めてないから」

 

 

 高校生になって、やっとコイツも成長したらしい。今までは自画自賛ばかりで成長しようという気迫が一切感じられなかったからな。また一歩大人になったんだろう。

 

 

「そしてμ'sのみんなを圧倒して、優越感に浸ってやる!!」

「……」

 

 

 前言撤回。やっぱり楓は楓だった。

 これは初めにハイハイ言うことを聞いておいて後から裏切る、アニメや映画などの展開によく似ている。『色々教えてくれてありがとよ!!だからお前にはもう用はない!!ブスリ』的な感じだ。何が怖いって、楓がそれを実行する姿が容易に想像出来るところだ。

 

 

「朝練なら一人で行けばいいだろ、俺はμ'sのメンバーじゃないし……」

「そう言って、ただ寝たいだけでしょ?」

「ここで寝とかないと授業中寝ちまうだろ?そうなったら海未に怒られる」

「朝練に来なくても怒られると思うけどね」

 

 

 どっちにしろダメじゃん!!そもそもどうして俺が朝練に出なくちゃいかんのだ!!ずっと端っこから見てるだけだぞ!?そのまま寝落ちしてしまったことだってあるというのに……

 

 

「どうしても起きないっていうのなら……」

「な、何をする!?」

 

 

「お兄ちゃんにぃ~~濃厚で熱いベーゼをお届け♪」

 

 

「はいっ起きた!!」

 

 

「えぇ!?何それぶ~ぶ~!!」

 

 

 楓の場合、この手のジョークはジョークではないからな。この春一緒に2人暮らしを始めてもう一週間以上経過しているが、朝襲われない日がない。下手したら兄妹で一線を超えてしまうかもしれないぞ。

 

 

「気持ちのいい朝だな!!よ~し、朝練に行くか!!アハハハハハ!!」

「いつか絶対にお兄ちゃんを……」

 

「め、飯食ってくる……」

 

 

 不穏なオーラを醸し出し、ブツブツと危険なことを言っている楓の横をスッと通り抜けて部屋を出た。

 これはもしかして、近親相姦な展開になるのも近いかも……?いや近くなったらダメだろ!!

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「おっ、おはよう花陽」

「おはようございますぅ~」

 

「あっ、おはよう零くん、楓ちゃん」

 

 

 朝練会場(神社前)へ向かう途中、同じく神社に向かっていた花陽と出会った。やっぱり花陽って見てるだけで目の保養になるよな。特に朝から悪魔のような妹にじゃれつかれているので、花陽という存在だけでも安心する。彼女から『おはよう』と笑顔を向けられるだけで眠気なんて吹っ飛んでしまいそうだ。

 

 

「れ、零君!?私の顔に何か付いてる!?」

 

 

 最近穂乃果たちのせいで俺は頬っぺ中毒になってしまった。そのせいか知らないが、やけに女の子の頬っぺに目が行ってしまう。しかも今回の相手は、見た目で柔らかい頬っぺと分かる花陽だ。朝の日差しが彼女の顔に照りつけて、頬っぺが神々しくも見える。

 

 そして俺は、この時無心となっていた。無意識の間に指を花陽、いや彼女の頬へ伸ばし――――

 

 

「ぴゃあっ!!」

 

「!!!」

 

 

 花陽の叫び声でここでやっと我に返った。

 今でも分かる、花陽の頬っぺの感触が。まさかここまで余韻が残るものだとは……恐るべし花陽頬っぺ……

 

 

「流石お兄ちゃん!!女の子に平気で手を出すとは!!痺れるし憧れるねぇ~~」

「ち、違うんだ花陽!!決して手を出そうなんて思っていなくてだな……」

「はわわわ……」

 

 

 花陽と付き合い始めてからというもの、彼女が昇天する回数が増えたような気がする。キスはよくて頬っぺを触るのがダメってどういうことだよ……

 

 

「無心だったんだ!!だから別に他意はないぞ!!変なこととか考えてないから!!」

「だ、大丈夫だよ……零君が私のこと大切にしてくれてるって知ってるから」

「は、花陽!!」

 

 

 またしても無心で花陽を抱きしめてしまった。どうして花陽やことりは言うこと1つ1つが俺の心をくすぐるんだ!?こんなの抱きしめざるを得ないじゃないか!!

 

 

「俺もお前をずっと大切にするからな!!だから一生俺の側にいてくれ!!」

「零君……もちろんだよ♪よろしくお願いします!!」

 

 

 お互いに顔を見合わせて、恥ずかしいセリフを連発する。今度は花陽のプリプリと柔らかそうな唇に目がいってしまう。顔が高揚している彼女と相まって、俺の心をさらに刺激する。春の朝は肌寒いと言ったが、花陽の体温が感じられる今はそんなことが全くの嘘のようだ。

 

 

「ちょっとちょっとちょっとちょっとちょっとちょっとちょっとちょっと!!何2人の世界にのめり込んでるの!?完全に私のこと忘れてるでしょ!!」

 

「お前……いたのかよ。興ざめだわ」

「段々と私の扱いが雑になってきているのは気のせい……?」

 

 

 コイツも意外とそんなことを気にするんだな。ブッ飛んだ性格だから、てっきり自らハブられに行っているのかと思ったぞ。変人すぎて誰にも扱えないだけかもしれないが。

 

 

「小泉先輩もいつまで抱きしめられているんですか!?あなたどう見ても男に耐性がない純粋女子でしょ!?」

「で、でも零君なら私……」

「またラブコメしてる……私の目が黒いうちは不純異性交遊禁止ですよ!!」

「一番不純なことしているお前が言うか……」

 

 

 兄妹で交わろうとしている奴が今更何を言うか。しかも毎朝その危険に晒されているからな。

 それにしても花陽は暖かい。もう毎年冬はホッカイロとして俺に張り付いていてもらいたいぐらいだ。結局楓に言われても花陽は俺に抱きついたままだった。

 

 

「あっ!!零くんとかよちんが愛し合ってるにゃ!!」

「オイッ!!公園でイケナイことをしているカップルみたいに言うな!!」

 

 

 突如として星空凛が乱入!!この辺で花陽と待ち合わせでもしていたのだろうが、如何せんタイミングが悪い。凛も中々の被害妄想を作り出すからな。それがμ'sのみんなに広がって、ボコにされるのまでがお決まりの流れだ。

 

 

「星空先輩おはようございますぅ~♪」

「おはようにゃ楓ちゃん!!」

 

 

 テンションが高すぎるなこの2人。朝練がある日だと、早朝からこのテンションに付き合わされるので朝起きるのが尚更グロッキーになる。

 そして楓の挨拶……まだμ'sを舐め腐っているのか、結局全然変わらないなコイツも。まぁこのウザさが楓だから仕方ないのか。

 

 

「星空先輩!!お兄ちゃんが小泉先輩を襲っているんです!!私だけではお兄ちゃんに敵わないので一緒に戦ってくれませんかぁ?」

「なにィ!!それなら凛も助太刀するにゃ!!」

「お前ら朝っぱらから暑苦しいな!!それにファイティングポーズ取るな!!」

 

 

 正直、凛の運動神経と素早さから繰り出されるパンチは一発もらうだけでノックアウトだ。下手したら海未や真姫の制裁よりも重い。特に花陽と戯れいている時は高確率で凛が憤る。その時の俺の顔は誰がどうみても変質者の顔らしいが。

 

 

「それを言うなら、さっきからずっと抱きついているのも暑苦しいでしょ!!」

「さっきから!?いつまでかよちんと抱きついているつもりなのかにゃ!?」

「一生だ……」

「一生!?だけど私はそれでもいいかも……」

「かよちん!?」

 

 

 花陽は磁石のように俺に張り付いて離れない。それに対し、今にも俺に襲いかかって来ようとする凛と楓。このままでは目が覚めるどころか、それを乗り越えて永遠の眠りについてしまう。

 何かあるはずだ!!花陽に抱きつかれたまま、かつコイツらを何とかする素晴らしくも幸せになれる方法が!!

 

 

 

 

「あなたたち、何をやってるのよ……?」

 

 

 

 

「真姫!?」

「「真姫ちゃん!?」」

「西木野先輩!?」

 

 

 来た!!これぞ救世主!!……なのか?真姫だと凛や楓の暴走を止められないような気もするが。

 

 

「騒ぎ声が聞こえたから来てみれば、まさかまた馬鹿なことをやっていたとはね。しかもこんな道端で……そうよね、零?」

「待て!!なぜいつも俺が目の敵にされているんだ!!騒いでたのはコイツらであって俺は花陽で暖をとっていただけだ!!」

「そう?大体こういう時は零が悪いと相場が決まっているでしょ」

「ひでぇ……」

 

 

 とりあえず騒ぎがあったら何でもかんでも俺のせいにしておくという困った風潮が、今のμ'sで流れている。百歩譲って俺のせいでもいいとして、俺を"いつもの展開"に持っていくことだけは勘弁して欲しい。

 

 

「ほら、遅刻すると海未や絵里に怒られるわよ」

「そうだな。暖かかったけど仕方がない」

「あっ……」

 

 

 俺がパッと手を離すと、花陽は名残惜しそうに俺を見つめてきた。

 くそォおおおおおおおおおおおおおおお!!そんな子犬のような目で俺を見るなぁああああああああ!!何もやってないけどとてつもなく大きな犯罪を犯した気分だ!!今までにない罪悪感に包まれてく!!

 

 

「これ以上イチャイチャしてたら、暴走するところだったよ。命拾いしたね、お兄ちゃん♪」

「お前、あれで暴走してなかったのか……」

 

 

 今まで自分が暴走していたことを自覚していたのかコイツは。知ってて暴走している奴ほど恐ろしい者はいない。計画性があると言うか、裏で何かを画策しているヤバさを感じる。まるで我が最凶の"姉"のようだ。

 

 

「そういえば楓ちゃんに聞きたいことがあったんだにゃ!!」

「何ですか星空先輩?」

「それだよそれ!!μ'sに入ったんだから、先輩は禁止ね!!」

「確かにμ'sの皆さんは普通に名前呼びで呼び合っていますよね」

 

 

 先輩禁止は去年の夏合宿の際、μ's内で気を使わないように、そして絆を深めるために絵里が提案したルールだ。ルールという語っ苦しいものではないな、要するに分け隔てなく仲良くしましょうということだ。

 

 

「だから楓ちゃんも凛たちのことを先輩呼び禁止で!!」

「じゃあなんて呼びましょうかねぇ……『おいそこの星空ァ!!』とかですか?」

「それは怖いにゃ!!」

「お前ヤクザか何かかよ……」

 

 

 そういえばコイツ、雪穂と亜里沙以外のメンバーには「苗字」+「先輩」付けだったな。名前呼びって意外と勇気がいるものだ。俺も今はこうして普通にみんなを名前呼びできるが、実はみんなと出会ったばかりの頃は楓のように苗字呼びだった。この年になって異性を名前呼びするのは結構恥ずかしい。

 

 

「私は普通に名前呼びして欲しいなぁ。楓ちゃんともっともっと仲良くなりたいもん!!」

「小泉先輩…………じゃあ花陽、これからもよろしくね♪」

「楓ちゃん……うん!!こちらこそよろしくお願いします♪」

 

 

 おぉ、青春してますねぇ~~!!楓のことだから花陽を手玉に取ってなんやかやすると思っていたのだが、一番初めに名前呼びして親しくなるとはな。

 

 

「真姫もよろしく!!」

「何で私への挨拶はそんなに軽いのよ……」

「いや~~何となく相手の性格に合わせたくなっちゃってぇ~~ダメ?」

「意味分かんない!!でも、まぁ……よろしく」

 

 

 真姫も真姫で先輩禁止には苦労させられていた。合宿の時なんかは1人だけ馴染めてなかったしな。今回あっさりと受け入れたのは大きな成長だ。まぁ去年楓と何回も合ってたから、そのせいでもあると思うが。

 

 

「ワクワク!!」

「…………」

「あれ?凛のことは名前で呼んでくれないの?」

「非常に申し上げにくいのですが……」

「な、なに?」

「星空先輩って、先輩って感じがしないですよね。後輩というか、マスコットというべきか」

「ガビーーーん!!」

 

 

 後輩そしてマスコット、これは去年の夏合宿の時に凛がにこに言ったセリフだ。まさか今年になってそれが返ってくるとは思ってもいなかっただろう。それもしょうがない話だ。なんたってにこと同じ体型なんだからな。

 

 

「1割冗談ですから気にしないでください♪」

「じゃあ9割本気なんだにゃ~~!!」

「おおっ!!凛、計算できるんだね♪」

「馬鹿にするにゃぁあああああ!!……ん?あれ?さっき名前……」

「1割冗談は本当だけど、これからもよろしくね、凛!!」

「か、楓ちゃん……こちらこそよろしくだにゃ!!」

 

 

 いい光景だ、いい光景なんだけどサラッと毒吐かれてるぞ凛。でもこれでまた楓とμ'sのみんなとの距離が近づいたと思うと兄として安心だ。去年も夏合宿以降からみんながどんどん仲良くなっていったから、絵里の計画も成功だったと言える。雪穂と亜里沙も早く馴染めるといいんだけどな。

 

 

「よし!!それじゃあ朝練頑張るか!!」

「「「お~!!」」」

「零は座ってるだけでしょ」

「真姫、お前空気読めよな!!」

 

 

 その後、朝練前に先輩禁止が雪穂と亜里沙にも適用された。亜里沙は迷うことなく俺を『零くん』と呼び、雪穂はまだ恥らいながらも『零君』と呼んでくれた。正直それだけで心が踊ったのはまた別の話。

 




 『新日常』も早いものでもう10話目です。初めは雪穂や亜里沙、そしてオリキャラである楓を織り交ぜて話を展開できるのかとても不安でしたが、たくさんの方々に読んでもらって嬉しい限りです!!
 ですが未だにレギュラーキャラが多すぎて、話の展開が雑になってしまうこともあるのですが読者様からの視点ではどうなのでしょう?多分これからも前回や今回のように、1話辺りの登場キャラは絞っていくと思われます。13人ものキャラを一斉に登場させると収拾がつかなくなりますからね(笑)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。