ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 皆さんが真姫の誕生日を祝ったり、他の作者様が誕生日小説を書いている最中、私は最低な話を書いていました(笑)
 いつも通り、誰かの誕生日だからといって贔屓することはないのです。しかも真姫すら出てこないのです。

 その代わり今回は、『新日常』となってあのお姉さんが初登場です。お待たせ(!?)しました!!


先輩方は発情期!?

 

「んーーー!!んーーー!!」

 

 

 今の状況を説明しよう。朝、目を覚ましたら自分の身体が縄で縛られていた。しかもご丁寧に口にテープが貼られている。遂に楓が耐え切れずに俺を拘束したのかと思ったが、アイツならもっとガチガチに拘束してくるだろうから犯人はアイツではない。

 そうなると、こんなことをする奴はこの世でたった一人……

 

 

「ハロハロ~~♪」

「やっぱお前か、秋葉ァああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 俺の部屋に入ってきたのは神崎秋葉。俺と楓の姉であり、俺たちが最も恐れている人物。去年コイツは自ら開発しているしょうもない発明品を試すため、俺やμ'sのメンバーを幾度となく実験台として扱ってきた。ちなみにマトモな結果になったことは一度もなく、自分さえ楽しめればそれでいいという史上最悪の思考を持っている。まさに俺たちにとって天敵だ。

 

 

「んーーー!!んーーー!!」

「はいはい今外してあげるって」

「ぷはっ!!テメェ、何しに来やがった!?俺に何をする気だ!?」

「テメェとはご挨拶ね。折角久しぶりに会えたのにそんな暴言を吐かれて、お姉ちゃん悲しいな……」

「今すぐ帰れ」

「Oh!!辛辣ぅ~!!」

 

 

 もう今すぐにでも暴れたくなってきた。この際多少家が壊れてもいい、早急にコイツを追い出さなければ俺の日常がバラバラに崩壊されてしまう。もう既に楓でバラバラになっているというのに、コイツが来たら塵一つ残らなくなる。

 

 

「まあ落ち着きなさいな。もうやることは全部終わったから」

「なにィ?終わっただと?」

「そうそう。だからもう帰るから」

「えっ!?もうっ!?」

「その反応……もしかしてお姉ちゃんと一緒にいたかった?やっぱり可愛いねぇ~零君は!!」

「そういう意味じゃねぇ!!」

 

 

 何事も肯定的に捉え自分の都合のいいように吸収してしまうところ、これが神崎3兄妹の特徴なのだが、コイツは特別に鬱陶しい。秋葉に比べれば楓なんてまだ可愛く見える。やはりコイツは俺の天敵だ。

 

 

 するとここで、俺の部屋のドアが開け放たれた。

 

 

「お兄ちゃん!!朝だよ!!目覚めのキスの時間だ…………よ?」

「あっ!!おっはーー楓ちゃん!!」

「さようなら」

「オイ!!助けてくれよ!!いつもなら迷わず俺に飛び込んでくるだろ!!」

 

 

 楓の奴、俺の部屋に入ってくるときはすごくいい顔をしてたのに、秋葉の顔を見るなり絶望に打ちひしがれた顔をして帰りやがった!!あの楓がここまで萎縮するとは……恐るべし人類の敵。

 

 

「じゃあそういうことで、これから仕事だから」

「大学へ行って、仕事へも行って大変だな……」

「労ってくれる?」

「1000年後ぐらいにな」

「アハハハ!!零君と話すのは飽きないねぇ~~じゃあ縄外してあげるから頑張りなさいな」

 

 

 コイツの仕事は研究。そうは言っても俺もどんな研究をしているのかは知らないが、その成果は世界に認めてもらえるほどらしい。そんな頭脳を持っているのに、どうして俺たちを弄ぶような発明品しか作らないのか……

 

 

「お前もこんなことばっかやってないで、いい男の一人や二人見つけたらどうだ?」

「へ?だって零君がいるじゃん」

「はい……?」

「それじゃね♪」

「お、オイ!!さっきのどういう意味だ!!オイ!!」

 

 

 意味深な言葉を残して出て行ってしまった。まさかアイツも"兄妹で"なんて考えている腹じゃねぇだろうな。本気か本気じゃないか、アイツの言葉は俺でも判別できないからな。

 

 そして結局、アイツがここに何をしに来たのかは全く話してくれなかった。確実によろしくないことが起きているのは間違いないが、今のところ身体に別状はない。まさかホントに立ち寄っただけ?そんな馬鹿な……

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 楓は秋葉から逃げるためかもう学校に行ってしまったため、今日は久しぶりに一人で登校だ。もう既に戦争を切り抜けてきたせいか、こうして一人で静かに学校に行くのは清々しくて気持ちいい。あれから特に俺やその周りでは何も起こっていないため、この先も何も起きないことを信じたい。

 

 

「あら、零じゃない。おはよう」

「絵里……おはよう。今から大学か?」

「えぇ、希とにこと合流して一緒にね」

「そうか、じゃあ途中まで一緒に行かないか?今日は久しぶりに一人だからさ」

「そういえば楓がいないわね。珍しいこと…………も?」

「ん?どうした?」

 

 

 急に絵里が言葉を区切った。そして本人は何故か驚いたような表情を浮かべている。眠いのか……?いや、そんな風には見えないけど。

 

 

(か、カラダが熱いわ!!どうして!?零に話しかけられるたびにカラダが疼くんだけど……)

 

「絵里?」

「な、何でもないわ!!行きましょうか」

 

(それに、さっきからすごくドキドキしてる……カラダもどんどん熱くなってくるし、どうなってるの!?)

 

 

 さっきまで普通そうだったのに、急にフラフラと歩き出した。本当に大丈夫なのか?熱があるとか……?いや、そんな突然体調が悪くなるとは考えにくい。これは希やにこに言って、絵里の様子を伺ってもらった方がよさそうだな。

 

 

「おっ、あそこにいるのって希とにこじゃん。おーーーい!!」

 

 

 俺の声を聞いて、既に待ち合わせ場所に来ていた希とにこがこちらを振り向いた。絵里の体調も優れないようだが本人は話す気がないらしいので、今はこの2人に任せるしかないだろう。

 

 

「おはよう、希、にこ」

「おはよう、今日は一人なの……ね?」

「おはようさん♪朝から零君に会えるなんてツイてるか……も?」

「2人共……?」

 

 

 えっ!?まさかこの2人も……?『おはよう』の言葉には元気があったのに、その後は急に黙り込んでしまった。心なしか、顔も少し赤いような気もするが。

 

 

(こ、これどうなってるのよ……こんなにカラダが熱くなるなんて、零と2人きりでいる時みたいじゃない……)

(なんやろ、零君を見るたびにウチのカラダが疼く……胸もムズムズしてきたし……)

 

 

「希……?にこ……?お前らも体調悪いのか?」

「だ、大丈夫……まだ眠たいだけやから……」

「に、にこに限ってそんなことないわよ……」

 

 

 希もにこも若干息が切れかけている。今日は朝練も何もなかったはずなのに、自主練でもしていたとか?でもそれだったら絵里が参加していない理由が気になるし、そもそもさっき会った時は元気に挨拶してくれたような……?

 

 

「はぁ……」

「え、絵里も大丈夫か?」

 

 

 重い息を吐く絵里の肩に、俺は咄嗟に手を置いた。

 

 

「ひゃうっ!!!!」

「え、絵里!?」

 

(嘘でしょ!?零にカラダを触られただけで全身が電流が走ったみたいにビリッって……ますます熱くなってきちゃった……)

 

 

 ただ肩に手を置いただけなのに……絵里が怖がりで驚きやすいっていうのは知ってるけど、まさかここまでとは。それに希やにこも絵里と同じような状態で俯いている。

 

 

「これは病院に行ったほうがいいんじゃないか?顔も赤いし、息も途切れ途切れだぞ」

「だから大丈夫だって言ってるでしょ……」

「大丈夫なわけあるか!!」

 

 

 いつまでも強がりを言うにこに、今度は両手で彼女の両肩をガシッと掴んだ。その瞬間にこのカラダをビクッと震わせ、目がトロンとして顔も高揚していた。

 

 

「ひゃぁ、あぁ!!!!」

「どうしたにこ!?どこか調子が悪いのか!?言ってみろ!!」

 

(だ、ダメ……そんなに近づかれたら、カラダがもっともっと熱くなって…………)

 

 

 

 

 

 

(気持ちよくなっちゃう……)

 

 

 

 

 

 

「どうした!?もしかして喋れないぐらい辛いのか!?」

 

 

 にこも絵里も希も、みんな黙り込んでしまった。体感的に周りの温度が上がっているような気がする。家を出た時より確実に暑いからな。

 3人の様子をよく見てみると、微量だが汗がにじみ出ている。いくら春だからとは言え、まだ朝は肌寒いくらいだ。だが3人はもの凄く暑そうにしている。運動もしていないのに……一体何が起こっているんだ!?

 

 

 

 

 何かが起こっている?いや、起こっているのはもしかしてコイツらじゃなくて俺なんじゃ……?だからコイツらは何も言えないんだ。原因が分からないから。

 

 

 そういえば今朝秋葉が……

 

 

『まあ落ち着きなさいな。もうやることは全部終わったから』

 

 

 もう終わったって言っていたな……やっぱりアイツは俺に何かをしてたんだ!!

 

 そこで俺はもう一度3人の様子を伺う。やはり今は熱さも収まっているようで、絵里たちは落ち着きを取り戻している。ちょっと申し訳ないけど、原因を探るためもう一度あの状態になってもらうか。

 

 悪い!!

 

 

「の、希……大丈夫か?」

「ひゃぅ!!あぁ……ま、また!!」

 

 

 この男心をくすぐる喘ぎ声こそ、コイツらのカラダに何かが起こっている証拠だ。しかもその原因は恐らく俺。俺が彼女たちに話しかけると発情(?)してしまうのだろう。女性にとっては迷惑極まりないが、男にとってはありとあらゆるものが高ぶってくる。何がとは言わないが……

 

 

「絵里、もしかして俺が話しかけると……」

「ひぅっ!!そ、そうよ……あなたに話しかけられるたびにカラダが火照るのよ……しかも全身に電流が走るみたいにビクビクって震えるの……」

 

 

 絵里は両腕を自分の身体に回しながら、弱々しい口調で自分の身に何が起こっているのかを説明した。

 いつもの大人っぽい絵里と違って、今日の絵里は守って抱きしめたくなる可愛さ、まるで花陽や亜里沙と同じ雰囲気になっている。普段は美人で端正なルックスの自分の彼女が、まるで俺を誘っているかのように卑猥なオーラを醸し出していた。

 

 もちろん絵里たちを助け出したい気持ちは山々だ。だけど俺は男なんだ、ここで動かなければどこで動く?いつまで経っても自分の欲望を押さえ込んでいていいのか?今まさに俺の中で天使と悪魔が戦っている。

 

 

「れ、零!!」

「に、にこ!?どうした!?辛いのか!?」

「ひゃっ!!ち、違うの……さっきからどんどんカラダが熱くなってきて……それで気持ちよくなってきて……すごくドキドキしてきて……そしてまたアンタを見ると心が高鳴って……」

 

 

 にこはこちらへフラフラと近づいてくる。いつもならこんな恥ずかしいセリフ、2人きりの時以外では絶対に言わないはずだ。こんなことを言うってことはにこが欲求不満の状態で、自分が満たされない時と相場が決まっている。

 

 だから今も……

 

 

「だからにこを……零の手でにこのカラダを!!」

「にこっち!!それ以上ゆうたらアカン!!」

「きゃぁっ!!」

 

 

 突然希がにこの口を手で完全に塞いだ。にこはうーうー唸りながら希の拘束から逃れようと抵抗する。一体希はどうしてそんなことを……?

 

 

「それ以上はダメや……こんな道端でそんなことしたらアカンよ。それに零君のことやから、もしかしたら本当に手を出されるかもしれへんし……」

 

 

 うぐっ!!ひ、否定できねぇ……俺の中で天使と悪魔が戦っているなんて言えねぇよな。でもさっきのにこの表情、希に止められず最後まで言い切っていたら迷わず手を出していただろう。それぐらい彼女の表情にはそそられるものがあった。ちょっと涙目になって、しかも上目遣いとか卑怯だろ……

 

 

「と、とにかくだな!!俺がここから離れれば解決するんだろ?だからもう俺、家に帰るから。じゃあな!!」

 

 

 結局俺の中で行われていた天使と悪魔の対決は、惜しくも天使が勝利したため健全な策を取ることになった。俺がここにいれば彼女たちに迷惑がかかるのは明白、そしてこのまま学院に行けば、穂乃果たちも発情(?)してしまうため自宅待機するしかない。

 

 

「へ?」

 

 

 家へ帰ろうとしたその時、誰かに自分の腕を掴まれる。振り向くと、絵里がモジモジしながらギュッと俺の腕を掴んで離さなかった。

 

 

「私たちをここへ置いていくの……?」

「でも俺がここにいるとだな……」

「ひゃっ!!うぅ……またカラダが疼く……」

「ほらそうなるから!!」

「ひゃうっ!!だけどあなたが行ってしまうと心細いっていうか……カラダの火照りが収まるまで一緒にいて欲しいというか……とにかくそういうことなのよ!!」

 

 

 いつものμ'sを仕切っているしっかり者の絵里はどこへ行った!?こんな小動物みたいに縮こまりながら、はぁはぁと発情(?)している絵里を見るのは初めてだぞ!?お前は俺に手を出せと言っているのか!?このまま俺がここに居続けたら、もう確実に警察のお世話になっちまう!!

 

 

(くぅ……もう抑えられないわ……早く希を振り払って、にこのすべてを零に!!)

(こうしてにこっちを抑えているけど、正直ウチも限界かもしれへん……零君を見るたびに心もカラダも爆発しそうや)

(ダメよ……自分を抑えないと……でも、零になら……零と一緒なら別に……いいかな?)

 

 

 マズイ……みんな本格的に苦しそうだ。苦しいというよりかはむしろ自分の欲求を必死になって押さえ込んでいると言った方が正しいか。でも俺から声をかけるわけにはいかない。これ以上彼女たちを快楽の底へ叩き落としたくはないからな。

 だったら一刻も早く秋葉に連絡しないと…………でも絵里はここから離れるなって言ってくるし。どうすんだこれ!!

 

 

 

 

「やーやーいいものを見させてもらったよ♪」

 

 

 突然、近くの裏路地から現れたコイツは……

 

 

「秋葉!?」

「「「秋葉先輩!?」」」

 

 

 ん?先輩?そうか絵里たちと秋葉は同じ大学なんだった。だから先輩呼びなのか。

 それにしても絵里たちが誰かを先輩呼ばわりするのはとても新鮮だ。μ'sでは最上級生だしな。

 

 

「おい、俺に何をした!?」

「この春から作っていたおクスリがようやく完成してね。グースカ寝ていた零君にちょちょっと飲ませてみましたぁ~♪」

「なんだその薬って?」

「それを飲んだ零君から不思議なオーラが発せられるんだ。そのオーラによって、零君を好きな女の子たちのカラダを火照らせ、快楽へと誘うのだ!!」

 

 

 俺たちは開いた口が塞がらなかった。どうしてコイツはこんなどうでもいいものを平気で作りたがるのだろうか?折角世界の各地からお呼ばれしているというのに、日本に留まって無駄な研究を続けているので勿体無すぎる。俺としては早く日本どころか地球から出て行って欲しいのだが。

 

 

「とにかくだ!!俺を元に戻せ!!」

「そうカッカしなさんな。いいデータも取れたし、この解毒剤を飲めば万事解決だよ♪」

「それ、本当に元に戻るんだろうな?」

「もちろん♪」

 

 

 『♪』なんて使っている時点で胡散臭さMAXだ。でも今俺にある選択肢はこの解毒剤らしきものを飲むしかない。絵里たちをずっとこのままにはしておけないからな。

 

 

 俺は覚悟を決め、解毒剤をグビッと一気に身体に流し込んだ。

 

 

 

 

 そして……

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 絵里たちは何とかカラダの火照りから解放され、いつもの状態へと戻ってきたのだが……

 

 

「あぁ~ヒドイ目に遭ったわ……にこたち、あんな先輩と一緒に大学生活を過ごすの?」

「今からでも欝になりそう……」

「それ以上に勉強できることがあればいいんやけど……なさそうやね」

 

 

 秋葉に目を付けられた3人は暗くどんよりとした気分に陥っていた。これからの大学生活、あんなマッドサイエンティストに付きまとわれたら、そりゃあそんな気持ちにもなるわな……

 ちなみ秋葉は笑いながら仕事へ向かいやがった。ぜってーいつか仕返ししてやる!!

 

 

「あの、その……どうしようもない姉ですみません!!」

 

 

 そして俺が毎回尻拭い。もう誰か!!あの悪魔をどうにかしてくれ!!

 




 他の作者様の書いた真姫誕生日小説を読んでいて、自分もデート回を書きたいなぁと思っていたら、まさかこんな話が出来上がるとは……これぞ変態の鏡!!(笑)
 むしろブレないでギャグ小説を執筆していたことを褒めて欲しいぐらいです!!(何様だよ!!)


 これで神崎3兄妹が『新日常』でも出揃いました。なにげにこの3人が共演したのは今回が初めてですね。楓はチラッとしか出ていませんが。

 秋葉さんの活躍(?)を見たい方は、是非前作の『日常』をご覧下さい。実は『非日常』の第六章の2話にも登場しています。一応そこではイケメンです(笑)

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