ちなみに今回の元ネタは某チビッコ探偵から取ってきています。
新生μ's結成から2週間近くが経過した。雪穂や亜里沙、楓も本格的に練習へ参加することとなったが、人数の増加に伴って今までの曲を再び見直す必要が出てきた。歌のパート分けやダンスの振り付け、ポジションや動き方など事細かく決めなければならない。
只今13人も押し込まれている窮屈な部室にて、第一回新生μ's大会議が開かれている。いつもの如く海未や絵里が仕切り役となり、各々のパートやポジションなどを再確認すると共に、新入部員である3人のパートやポジションも同時に決めていった。
普段のμ'sの会議は話が脱線して中々話が進まないのが定例行事なのだが、新年度一発目なのか、はたまた新入部員がいる手前なのか、意外にも会議は順調に進んでいる。俺も部室の端っこからぼぉ~とみんなの話し合いを聞いていた。真面目に会議をすればするほど俺の出番がなくなり暇になってくる。ちょこっとぐらい話を脱線してもいいのに……
「少し早口でしたけど、各々のポジション確認はできましたか?特に楓たちは初めてなので、質問などがあればいつでもどうぞ」
「大丈夫でぇ~す♪」
「私もOKです!!海未せんぱ……あっ、間違えちゃった、海未ちゃん」
「初めは私もそうでしたから、少しずつ慣れていくといいですよ」
相変わらず適当に返事をする楓と元気よく返事をする亜里沙。でも亜里沙はまだ『先輩禁止』に慣れていないようだ。彼女にとってμ'sは尊敬で憧れの人たちがいるグループだから、そう簡単に馴染めないだろう。
「雪穂も、確認できましたか?」
「は、はい!!じゃなかった……う、うん」
雪穂は亜里沙以上に『先輩禁止』に苦戦しているみたいだな。ここ最近も敬語はほとんど抜けずに今までと同じように会話をしている。もちろん無理強いはしないが、それ以前に大きな隔たりを感じる。
「なるほどな……しょうがない、この俺が一肌脱いでやるか」
事情は分かった。仕方ないからμ's見守り係……という名の撮影係の俺がμ'sに最大の試練を与えてやる!!
~※~
「よ~し!!早速練習だぁーー!!」
「放課後なのに、穂乃果ちゃん元気だね」
「授業中ずっと寝ていたので力が有り余っているのでしょう……」
次の日の放課後、練習着に着替えるため穂乃果たちは更衣室へとやって来た。ちなみに零は用事があると行って練習をサボり、絵里、希、にこの大学生組は講義で少し遅れるという連絡をもらっている。
「う~ん……これ一体なんなのにゃ?」
「数字が書いてあるけど……」
「それよりもどうしてこんなのが入ってるわけ?」
更衣室には既に凛たち2年生組と、楓たち1年生組が集まっていた。しかしまだ着替えておらず、机に何枚かの紙を広げて首を傾げている。穂乃果たちはカバンを置いて、凛たちが集まる中央の机へと向かった。
「なになに?何があったの?」
「あっ穂乃果ちゃん!!凛たちのロッカーにこんな紙が入ってたんだにゃ~」
凛が手に取った紙はA4サイズで、真ん中には大きく『2』とだけ書かれていた。しかも紙はそれだけではなく、机の上に何枚か置かれていた。
「私のロッカーにはこの紙が入ってたわ」
「私はこれが入ってたよ」
真姫の紙には凛と同じ大きさの文字で『6』と書かれ、花陽の紙には『7』と書かれている。白い紙に数字と、見ただけではゼッケンにも見えなくもないが、そんなものがそもそもなぜこんなところにあるのかが謎だ。
「実は私も……」
「えっ!?雪穂も?」
「うん、でも亜里沙と楓のロッカーにはなかったんだよね」
雪穂の紙には『5』と数字が書かれていた。しかし亜里沙と楓のロッカーにはそんな紙は入っていなかったらしい。どうやら全員のロッカーに入っているわけではなさそうだ。
「あっ!!ことりのロッカーにも入ってたよ!!」
「私もです!!」
「そうなの!?じゃあ穂乃果も…………あっ、あった!!」
穂乃果、ことり、海未は各々のロッカーから紙を取り出して机の上に並べる。3人共紙に書いてある数字は違っていて、穂乃果が『2』、ことりが『5』、海未が『4』である。
「もしかして、絵里ちゃんたちのロッカーにもあるかな?」
「こうなったら開けるしかないでしょ」
「楓、勝手に開けるのはやめておいた方が……お姉ちゃんたちの私物も入ってるだろうし」
「私はね、人のプライバシーを侵害するのが趣味なの」
「「「「「「「「……」」」」」」」」
「とりあえず開けるね♪」
最悪の趣味をカミングアウトし、一瞬にして場を凍りつかせ全員を黙らせる。楓はそんなことをお構いなしに亜里沙の制止を振り切って、絵里、にこ、希のロッカーを立て続けに開け放った。
「あっ、希のロッカーに紙があったよ。他の2人はなかったのに……」
楓は希のロッカーから『2』と書かれた紙を取り出し机の上に置く。紙が入っていたのは希のロッカーだけで、絵里とにこのロッカーに紙は見当たらなかったようだ。
「じゃあこれで全部だね。それにしてもなんだろこれ」
「「「「「「「「!!!」」」」」」」」
「あれ?どうしたのみんな?」
「ほ、穂乃果ちゃん!!今持っている紙の後ろを見て!!」
「へ?」
穂乃果は自分が持っている紙をクルッとひっくり返す。そこには何やら文章が書かれていた。
『新生μ'sの諸君、よくぞ見つけ出した。この数字の謎を解き、学院にいる私の居場所を見つけ出してみたまえ!! No.0より』
「な、なにこれ!?もしかして穂乃果たちへの挑戦状!?」
「だったら負けるわけにはいかないにゃ!!それよりナンバー0って?」
「零でしょ、どう考えても……数字の『0』は漢字にすると『零』だしね」
「スゴイ……真姫ちゃんスゴイです!!」
「べ、別にこんなもの、私にとっては簡単だし……」
あっさりと挑戦者の正体を見抜いた真姫に、亜里沙が驚嘆の声をあげる。だが真姫は相変わらず素直になれず、髪の毛をクルクルしている。
ちなみにこの文章が書かれていた紙は真姫のロッカーに入っていた紙で、他の紙には書かれていなかった。
「面白そうだね!!やってみようよ!!ねぇ海未ちゃんいいでしょ?」
「まぁ絵里たちが来るまでなら……」
「やった!!」
今ここに新生スクールアイドルμ's、初の共同作業が始まった!!
~※~
「それでは一旦、それぞれの紙にどんな数字が書かれているのかをまとめてみましょう」
穂乃果⇒2
ことり⇒5
海未⇒4
花陽⇒7
凛⇒2
真姫⇒6
希⇒2
雪穂⇒5
「う~ん、数字がバラバラじゃなくて被っているのがいくつかあるね。ことりと雪穂ちゃん、穂乃果ちゃんと凛ちゃん、そして希ちゃんは同じ数字……」
「何かの順番かなぁ……?でも1から順番じゃないよね」
花陽の言葉で、まずみんなは何かの順位付けがされているのかと予想した。だが1から始まっていないところを見るに、そこまで単純なものではないのだろう。
「もしかして、テストの点数とかかにゃ?凛と穂乃果ちゃんが同じ数字だから。凛もよく真姫ちゃんにビービーうるさく勉強しろって言われてるし、穂乃果ちゃんも海未ちゃんに言われてるでしょ?」
「ホントにね!!ビービービービー言われて、耳が壊れちゃいそうだよ」
「悪かったわね、ビービーうるさくて……」
「穂乃果、凛、練習量倍にしますよ……?」
「「ご、ゴメンなさぁ~い!!」」
穂乃果と凛のダラけ具合は進級しても何も変わらずで、学期初めに行われた実力テストでもいつも通りの結果を叩き出し、逆に安心するぐらいであった。これがμ'sの日常と言われれば日常なのだが……
「そもそも学年が違うから、テストの点数や順位で測れないと思うけど……」
「私もそう思います。それにまだ1年生はテストをしたことがありませんし」
ことりの反論に亜里沙が便乗する。入学したての1年生だけは4月初頭に行われた実力テストをやっていない。したがってテストの点数や順位で数字を付けるのは不可能なのだ。
「同じ理由で成績などもあり得ませんね。恐らく学年で基準が分かれるのものではないと思います」
「無難なところで身長とかだけど、それだと花陽が一番大きいことになるからそれもなさそうね」
真姫はこの数字が身長説を唱えるが、μ's内で背が高いのは絵里や希だ。小柄な花陽の数字が一番大きい時点でそれもあり得ない。ここで身長とくれば体重なのだが、流石の零でも女の子の体重までは分からないだろう。
「胸の大きさとかじゃないですかぁ~?」
「なっ!?いきなり何を言い出すんですか!?そんなわけないでしょう!?」
「えぇ!?確かにかよちんが大きいのは分かるけど……」
「ちょっと凛ちゃん恥ずかしいよ!」
楓は"なぜか"海未や凛に、ニヤニヤとした小悪魔のような顔を向けた。さらに凛の言葉でみんなが一斉に自分を見てきたため、花陽は恥ずかしさのあまり手で顔を隠す。
「む、胸の大きさだったら希ちゃんが一番じゃないかな?」
「ことりの言う通りです!!だからこの話はもうやめましょう!!」
「そ、そうだよ!!絶対に別の数字だよ!!もう恥ずかしいから他の意味を考えようよ!!」
「えぇ~!!絶対にバストサイズだと思ったのにぃ~~♪」
「さっきから顔、ずっと笑ってるわよ……」
海未と花陽は顔を真っ赤にして次の話題に移ろうとしている。もし胸の大きさだとしたら、バストサイズに天と地の差がある希と凛が同じ数字のはずがないのだが……そこは凛が暴れないように暗黙の了解ということで。
「ん?雪穂は話し合いに参加しないの?」
「楓……いや、だって分からないし。もしかして、楓は分かってる?」
「さぁね♪」
「絶対に分かってる顔だ……」
雪穂はこの2週間で楓の大体の性格と裏の顔を理解したつもりだ。キャラが濃すぎる彼女のことだ、一緒にいて理解できない方が難しい。こうしてニヤニヤしている時は大抵嘘を付いている時の顔だ。しかも謎を見抜けない自分たちを見下すような感じで……
そして雪穂の予想通り、楓はすべての謎が解けていた。性格は難があり過ぎて困ったちゃんだが、頭の良さは流石兄妹と言うべきか、零や秋葉と同じくかなりのキレ者だ。
(また回りくどいことしてるなぁ~お兄ちゃんは。しょうがない、私も手伝ってやるか!!)
楓は一人だけ分かったという優越感に浸りながらも、ずっと頭を悩ませているμ'sを手助けしようとみんなの輪に加わった。しかしそれは自分一人だけでなく、雪穂の手を引いて一緒に輪の中に引きずり込む。
「ちょっと楓、引っ張らないでよ!!」
「まぁまぁ、折角だし一緒に考えようよ。それに、この問題は雪穂がいないと解けないと思うなぁ~~」
「え……?」
完全に棒読みの楓だが、それよりも雪穂は『自分がいないと問題が解けない』というところに引っかかった。何より雪穂自身がまだ何も解けていないというのに、なぜ楓がそんなこと言ったのか気になったのだ。
楓が急に自分へ矛先を向けてきたことに戸惑いながらも、雪穂はみんなの輪に入って一緒に零が出題した問題を考えることにした。
「ダメだ!!穂乃果の頭じゃサッパリ分かんない!!」
「まぁ穂乃果パイセンなら仕方ないですね」
「楓ちゃんヒドイよ!!」
「自分で言ったんじゃないですかぁ?それより、例の数字をもう一度整理してみない?頭がリフレッシュされるかもしれないし」
「そうだね。もしかしたらお姉ちゃんたちが来たら何か分かるかもしれないし」
亜里沙は絵里たちを頼りにしているようだが、3人が来るまでまだまだ時間はある。あまり謎解きで時間を使いすぎると練習時間も少なくなってしまう。ここはスクールアイドルμ'sの9人で解くしかなさそうだ。
穂乃果⇒2
ことり⇒5
海未⇒4
花陽⇒7
凛⇒2
真姫⇒6
希⇒2
雪穂⇒5
「うぅ……眺めてても全然分からないにゃ……」
「みんな数字にとらわれすぎじゃない?たまには一歩引いた視点から見てみるのもいいかもね」
「一歩引いた視点……?」
楓の言葉を聞いた穂乃果は一歩どころか二歩三歩と後ろに下がり、挙げ句の果てに更衣室の端っこから机に置いてある紙をまとめて眺めた。
「ん……?あっ!!!!」
「ど、どうしたの穂乃果ちゃん!?」
「数字!!数字の大きさが違うものがあるよ!!」
「「「「「「えぇ!?」」」」」」
穂乃果の言葉に楓以外の全員が驚く。確認したところ8枚ある紙の中の2枚に書かれている数字の大きさが、他の6枚に比べると少し小さかった。その2枚とは花陽の紙に書かれている『7』と雪穂の紙に書かれている『5』だ。その2つの数字だけが、他の紙に書かれている数字より少しだけ大きさが小さい。
「それだけじゃないわ」
「なにか分かったの真姫ちゃん?」
「えぇ。今まで気づかなかったけど、ことりの紙に書かれている『5』と凛の紙に書かれている『2』の右上を見てみて」
真姫に言われ、全員が一斉に2枚の紙を覗き込んだ。真姫は自分が見つけたポイントを指で差して説明をする。
「本当に小さいけど、この2枚の紙に書かれている数字の右上に、小さな点が2つあるでしょ?」
「ホントだぁ~!!それは穂乃果も気づかなかったよ」
「それでそれで?これはどういう意味なのかにゃ?」
「そ、そこまではまだ……」
何気なく見つめていると、その点はただゴミが引っ付いているだけとしか思えないが、これは明らかに数字と共にプリントアウトされたものだ。そうなればもちろんこの謎を解く手がかりとなるに違いない。
ただし真姫はその手がかりを見つけただけで、まだ謎を解くには至っていないようだ。楓からのさり気ないヒントもあり、新生μ'sは零へと一歩近づいた。
「まだまだこの問題は分からないけど、絶対にみんなで解いて零君をギャフンと言わせよう!!今からでも零君の泣き顔が浮かんでくるよ」
「零くんが悔しがって地に這いつくばる姿、想像が捗るにゃ~~!!」
「あなたたちは零を屈服させたいのですか……」
特に穂乃果や凛は日頃零から馬鹿にされている恨みをここで晴らすことができると考えているため、妄想の中で零をイジメるというドス黒い思考と悪意に満ち溢れた顔をしている。もはや2人は零に勝ち誇った気でいた。まだ何も解けていないというのに……
「あぁ~~お兄ちゃんが私のことを好きになって襲ってくる姿も容易に想像できるね♪」
「「「「「「「「それはない(です)」」」」」」」」
「えぇっ!?こんなところだけ一致団結!?」
To Be Continued……
~※~
現時点まとめ
穂乃果⇒2
ことり⇒5(右上に小さな点が2つある)
海未⇒4
花陽⇒7(他の数字より大きさが小さい)
凛⇒2(右上に小さな点が2つある)
真姫⇒6
希⇒2
雪穂⇒5(他の数字より大きさが小さい)
一話にまとめようと思ったのですが、謎解き部分が思ったより肥大化したので次回に持ち越しです。
ヒントはこの話だけですべて出揃っているので、皆さんも少しだけ考えてみてはどうでしょうか?もし答えが分かった人がいましたら、次はなぜ零君がこんな問題を出したのかも考えてみると、次回がさらに面白くなるかもしれません。
前作『日常』でもありましたが、ゲームのような話は自分自身かなり大好きで、本当にたまにですが、思いつき次第これからもやりたいと思っています。しかし読者様に受けるのだろうか……?一応今回の話はただメンバーが謎を解くだけではないんですけどね。
多分ラブライブの小説で、こんな話を執筆したのは自分だけだろうなぁ~
ここからは完全に余談ですが、『新日常』から見てくれている方に宣伝を。実は私の活動報告にも『超短編小説』としてたまぁ~にですが小説を投稿しています。現在4つあり、どれも一分足らずで読めるのでこの機会に是非!!
次回は解決編です!