ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 今回は"ラブライブ!サンシャイン!!"のアニメ化があと一ヶ月と直前に迫ってきているので、私と皆さんの期待を高めるための特別編です。

※この話の時系列に関しては、通常のラブライブとサンシャイン相互の時系列がまだ明らかになっていないので、今回は無視しました。本編にも一切リンクしません。


【特別編】最高で最悪の出会い!?

 

 

『いて座のあなたの運勢は――――――サイアク。あなたの人生が終わりを告げるかも……。今日は外へ出歩かず、家の中でのんびりと過ごすのがよいでしょう』

 

 

 俺は、唐突にニート生活を強要されていた。

 たまたまテレビを点けてみたら、ニュース番組の終了間際によくやっている占いコーナーが映った。もう知っての通り、俺は占いなどに一切興味もなければ信じてもいない。しかしこうして露骨に不幸を通達されると、多少なりとも身構えてしまう。しかも出かけなければならない日に限ってだ。

 

 

「アホらし。こんな占いごときで俺の運命を左右できると思うなよ」

 

 

 ――――とは言いながらも、俺は適当に楓が作り置きしてくれた朝食を食いながら片手間に携帯を弄り、『血液型 占い』で検索を掛ける。星座占いがダメならせめて血液型占いと、俺の心の中では悪い結果を受け入れられないようだ。俺の運命は常に最高でなければならない、これ世界の真理な。

 

 そして血液型占いのページを開くと、血液型入力欄に『AB』と入力して占いの結果を表示する。

 

 

『AB型のあなたの運勢は――――――超最高!!もしかしたら思いがけない出会いがあるかも!?』

 

 

 最悪なのか最高なのかどっちかにしろや!!ここは敢えて最悪と言ってくれた方がネタになっただろ分かってねぇな!!

 

 まあネタ云々はさて置き、思いがけない出会いとは一体……。正直μ'sのみんなに出会えたこと自体が奇跡なのに、これ以上俺の人生を揺るがす出会いがあるってのか?流石にμ'sと同等の出会いがあるとはもう思えねぇな。ま、所詮占いは占い、信じすぎない方が気持ちも軽い。

 

 

 そう心の中で軽い期待を抱きつつも、朝食の皿を洗っている最中にはもう占いのことなど既に忘れていた。朝の占いなんて見ても、出かける支度をしている時にはとっくに忘却の彼方なのが常だ。いちいち結果を思い出したりもしない。

 

 

 

 だがその時の俺は、まだ気付いていなかった。

 最高の運命と最悪の運命、その両方が俺に迫ってきていることに――――――

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「久々にここへ来たなぁ~。相変わらず人多いし……」

 

 

 俺は人混み嫌いの柄にもなく秋葉原へとやって来た。本来なら1人でこんな人の密集地帯へ来ることなんてありえないのだが、今日は達成しなければならないミッションがある。そのためなら俺は例え火の中水の中、地球を割って裏側へ行くことも辞さないぞ。

 

 

「待ってろ……あのエロ漫画」

 

 

 そう、俺のミッションはとあるエロ漫画の購入だ。

 普段からエロ漫画を買っていると言われればそうではない。実は昨日、戯れにネット上であるエロ漫画を見ていた時、エロサイトの広告に俺好みのイラスト、シチュエーションの漫画っぽい宣伝を見つけたのだ。しかしお金を出して購入するのは俺のポリシーに反するので、その漫画のタイトルで検索を掛けネット上にないか一晩中探し回っていたのだが、その努力も虚しく見つかることはなかった。

 

 なるべくお金を掛けずにエロを求める、この精神が分かる人いるだろ?昨日までの俺はまさにそれだった。だけど、俺はその漫画の魅力に負けた。あんなに女の子のカラダが綺麗で肉付きがよく、そして艶かしい絵は始めてみた。しかもシチュエーションがセクハラ痴漢モノ、これをただ指を咥えて我慢している方が無理ってもんだ。

 

 だから俺は自ら足を伸ばした。待っていればいつかはネット上にアップロードされるだろうが、そんな悠長に待機できるほど俺の性欲は持ち堪えられない。例え大嫌いな人混みであっても、この性欲エンジンがあれば切り抜けられるはずだ。

 

 

 待っていろ、俺を誘惑しわざわざ外へと連れ出したエロ漫画よ。無事購入できた暁には、お前に俺の子供(種子)を見せつけてやるからな!!

 

 

 

 

 よーし!なんだか活力が漲ってきた!!早く目的のブツを買って早急に帰って、自室に籠って自分磨きを――――――

 

 

 俺がそう決意し、歩き始めたその時だった。建物の陰から女の子が飛び出してきた。ぶつかると思ったその一瞬の間に、女の子同士の会話が耳に入る。

 

 

「待ってよ梨子ちゃ~ん!これ可愛いよ♪」

「千歌ちゃん!それ持ってこっちに来ないでぇ~!!」

 

 

 聞こえた会話はそれだけ。もう建物の陰から見えた女の子の姿が、眼前にまで迫っていた。この後の展開が容易に想像できた俺は、反射的にその女の子を受け止める体勢を作り、自らが受身となろうとした。

 

 

「きゃっ!!」

「うわぁ!!」

「り、梨子ちゃん!?」

 

 

 もちろん彼女の飛び出してきた勢いには耐え切れず、俺たちは正面から抱き合う形で道に倒れる。幸いにも頭だけは守ろうと必死だったので、道端で気絶して人々の晒し者になる事態だけは避けられた。我ながらナイス回避、伊達にヤンデレμ'sからの猛攻を凌ぎきってはいない。

 

 まあ今はそんなことよりも、俺に受け止めてもらえた人生幸運な女の子の様子を確認しようか。

 

 

「う、う~ん――――って、えぇっ!?!?」

「梨子ちゃん大丈夫――――――え……!?」

 

 

 どうした?俺が受け止めた女の子と、駆け寄ってきた友達らしき女の子の様子がおかしい。明らかにさっきまでの衝突事故などなかったかのような、別の何かで驚いているような顔だ。そして2人の目は俺の手元、彼女の胸辺りに向いていた。

 

 そういや、さっきから俺の手がそこそこ弾力あふるる物体に触れている。しかも両手。大き過ぎず小さ過ぎず、俺の手にすっぽりと収まる球体状のようなもの。女の子の身体でこれほど柔らかいところと言ったら、やっぱり二の腕か?俺は彼女を受け止める時に両腕を掴もうとしたからその可能性は高い。

 

 だけど、この感触は過去に何度も味わったことのある。俺は二の腕マイスターではないのだが、この感触が明らかに二の腕とは程遠いことが分かる。女の子の身体で球体状の形をしているモノと言えばもちろん……。多分この手を動かすと、彼女の口から女の子の声が漏れ出すだろう。試しにやってみるか。

 

 俺は綺麗に張っている2つの双丘に対し、両手の計10本の指に力を入れた。すると一瞬の内に指が食い込み、身に覚えのある感触が伝わってくる。

 

 

「ひゃっ!!あっ、ちょ、ちょっと……んっ!!」

 

 

 やはりこの感触は、μ'sのみんなのモノを触っているあの柔軟性と全く一緒だ!!

 もうここまで来たら言わなくても分かるだろうが、俺は彼女を正面から受け止めて倒れた際に、無意識的に手が彼女の胸へと伸びていたらしい。これが男の性ってやつか、いやはや恐ろしいものだ。もう慣れたけど……。

 

 

 しかし今回の相手は恋人同士のμ'sではなく、全く見ず知らずの女の子だ。μ's相手ならなんだかんだで許してもらえるのだが、今の相手は通りすがりの女の子……なるほどねぇ~。

 

 よ~し!逮捕されるくらいなら今の間に思いっきりおっぱいを堪能しておくか!μ'sの彼氏なった現状、彼女たちへ卑猥な行為をしても、それは純愛行動にしかならない。つまりだ、マジモノのセクハラ痴漢プレイを楽しめるのは今だけなのだ!!

 

 

 だがまあ、そんなに上手くいけば俺の欲求も満たされた上で人生を終了させられたのだが、現実はそう甘くなく、女の子の目には涙が溜まっていた。

 

 

 そして、大きく手のひらが振り上げられれる。

 

 

「きっ……!」

「き?」

「きゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

「うぐぁあ゛あああああ!!」

 

 

 人が大勢いる秋葉原で、男の頬を打ち抜くかのような平手打ちが炸裂した。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「梨子ちゃんを助けた王子様が、まさかセクハラ魔だったなんて!」

「セクハラ魔言うな!あれは事故なんだよ!!」

 

 

 あの平手打ちの後、初めて周りから注目されていると気付いた俺たちは、世間の目を掻い潜るためそそくさと大通りから外れた。正直助けた女の子やその友達の子、周りからも通報されないか心配だったが、どうやら女の子の胸を弄っていた事実は俺たち3人以外には明らかになっていないらしくて助かった。

 

 だがしかし、穂乃果より若干明るいオレンジ色の髪をした女の子が、ひたすら俺をセクハラ魔と罵ってきやがる。まさか警察に内緒にする代わりに、巨額の金を要求してくるとかそういうパターンか……。

 

 

「分かった皆まで言うな。いくら欲しいんだ?1万?10万?それ以上は出世払いで頼む」

「いやいや、それを被害者じゃない私に言われても……」

「確かに……」

 

 

 冷静になってみれば、どうして俺は被害者でもない子にここまで罵倒されなければならないのだろうか?まあセクハラしようと思っていたことは事実だから、ぐうの音も出ねぇけどさ。でもセクハラをしようと狙って女の子を庇った訳じゃないから許して欲しい。

 

 

 ちなみに俺が助けた髪がローズバイオレット(横文字がカッコいい)色の女の子は、俺たちよりも少し離れたところでベンチに座っている。まああんな目に遭った上に、そのセクハラ野郎が近くにいるんだからそりゃあ畏まるわな。あの行為に関しては完全に俺の欲望のせいだから、彼女に謝っておこう。

 

 

「あのさ、さっきは――――」

「すみませんでした!!!!」

「は……?」

「え……?」

 

 

 まさか俺の謝罪読みで先に謝罪を仕掛けてくるなんて、この女……できる!!

 まあそんな冗談はさて置き、あまりに予想だにしない事態に俺の隣にいたオレンジ色の髪の子までもがポカーンとしていた。俺、逆に何か謝られることあったっけ?

 

 

「先程は倒れそうなところを助けていただいたのに、引っぱたいてしまうなんてとんでもないことを……すみませんでした!!」

「なるほどそういうことか。でもあれは当然のことだから。可愛い女の子を助けるのは俺の義務だ」

「か、可愛い!?あ、ありがとうございます……」

「え、あ、あぁ。どうしたしまして」

 

 

 なんか俺の方が全面的に非があったのに、こうして感謝されると流石の俺もしどろもどろになってしまう。見た目は海未っぽくて清楚だが、中身は控えめそうで落ち着いていて時には慌てもの、まるで花陽みたいな性格だ。そう考えるとこうしてペコペコと丁寧に謝ってくるのは納得できるな。

 

 それになにより、可愛いと言った時に顔が燃えるように赤くなったその表情に、μ'sの面影を感じて心が揺れ動かされた。この俺の心をμ's以外が動かすなんて、この子やはりできる!!

 

 

「セクハラの次はナンパですか~?」

「お前……折角いい雰囲気だったのにぶち壊すなよな」

「お前……?そんな態度でいいんです?千歌が今すぐ通報すればあなたの人生なんて――――」

「分かった分かった!すまなかった!!」

「あははっ!冗談ですよ冗談♪」

 

 

 このアマ、街中だけど服引っペ返してこの場でブチ犯してやろうか……?さっきのコイツの表情、もう悪魔ではなく男の人生を刈り取る死神の笑顔だったぞ。

 

 そしてここでようやく分かった。今朝の占いの人生が終わりを告げるかもって、さっきのセクハラのことだと……。

 

 

「でもさっきは本当にゴメンな」

「いえいえ!助けてもらわなかったらそのまま地面に激突してましたし、むしろお礼を言うのは私の方です!それにあれは……不可抗力だったんですよね?」

「えっ、そ、そうだな。キミを受け止めることに必死で、手の位置なんて全然気にしてなかったら。そう全然……」

「そうですよね!だったらその件に関しては目を瞑ります」

 

 

 ヤバイ、この子の優しさが心にグサグサと突き刺さる!!でも故意に胸を揉んでしまったと、清楚なこの子に言えるはずがない。ここは俺の人生のためだ、事実は永遠に隠蔽させてもらおう。そしてタダでおっぱいを触ることができたと、心の中でガッツポーズでもしておくか。

 

 

「本当に事故だったんですかぁ~?梨子ちゃんの胸を触りたいから触ったとか……?だってセクハラさんだし!」

「お前はちょっと黙ろうか!!」

 

 

 コイツさっきからずっと俺を笑顔で煽ってきやがる。これは捕まってはいけない奴に捕まってしまったぞ。適当なところで2人とおさらばして、早く漫画を買いに行きたかったのだがどうもそう上手くはいかなそうだ。

 

 

「いやぁ~実は私、朝ごはんをほとんど食べていなくて今とってもお腹が空いているんですよね~」

「それを俺に言ってどうする気だ……」

「さっきいい感じのメイドカフェ見つけたんですけど、学生の千歌からしたらちょ~っと値段が張りましてぇ~」

「俺に奢らせようという魂胆か。出会ってばかりの男と飯を食うだなんて、お前も相当危ない思考してるな」

「だってこうして喋っている感じ、とても優しそうですから!セクハラ魔でナンパ野郎だけど優しそうです♪」

「もうっ!千歌ちゃん失礼だよ!」

「ホントに余計な一言ばかり付けるよなお前は……しかもまた不名誉な異名が増えてるし」

 

 

 しかしセクハラ魔もナンパ野郎も一概に間違ってはいないので、強く言い返せないから困る。このオレンジ髪の子に言われるのだけは腹が立つけど……。

 

 

 そんなことよりも、そろそろ身体的特徴で2人を判別するのが面倒になってきた。確かこの子達の名前は今までの会話から察するに、オレンジ色の髪をした生意気でアホっぽいのが千歌ちゃんで、ローズバイオレットの髪をした控えめで大人しそうな子が梨子ちゃんだろう。あまり親しくない女の子の名前を下の名前で呼ぶのは慣れないが、苗字が分からない以上仕方ないか。

 

 

「えぇと、千歌に梨子……で合ってるよな?」

「どうして私たちの名前を!?ま、まさか……千歌たちのファンとか!?」

「えぇっ!?まだ私たち活動し始めてそこまで時間経ってないよ!?それなのにファンがいる訳……え、えぇ!?」

「ファン……?」

「千歌たち、スクールアイドルをやっているんです!」

「なるほど、だからお前らの名前を知っているからファンだと思ったのか。でも残念、さっきまでの会話から推測しただけだ」

「デスヨネ~……」

 

 

 千歌が真っ白な灰となって風に飛ばされそうになる。案外ショックが大きかったんだな、それは悪かったと心の中で謝罪しておいてやろう。

 

 それにしてもスクールアイドルか、これは占い通りの思いがけない出会いだ。何だかんだ今までA-RISE以外に他のスクールアイドルと関わりを持つことはなかったからな。でもまだグループ結成から時間が経ってないとなると、まだまだ駆け出しってことか。そう考えると相対的にμ'sが大きく見える。

 

 

「スクールアイドルで秋葉原にいるってことは、もしかしてライブでもやりに来たのか?」

「いえ、今日はただ遊びに来ただけです。千歌たちの学校は静岡の方ですから」

「元々私が秋葉原に住んでいて、しかも東京はスクールアイドルの聖地でもあるので、どうしても行きたいって千歌ちゃんが」

「要はアニメで言う聖地巡礼みたいなものか」

「そうです!梨子ちゃんに案内してもらって、あのμ'sやA-RISEがライブをした聖地を回っているんですよ!」

「μ's、A-RISE……」

「どうしました?」

「えっ、いや何も!」

 

 

 もしここで俺がその2グループのメンバー全員の連絡先を知っていると告白したら、彼女たちはどんな反応をするのだろうか?千歌には『それもナンパで手に入れた連絡先ですかぁ~?』と罵られるか、『会わせてください!!』と懇願されそうな気もする。どちらにせよ、彼女たちの士気が上がるなら会わせてやってもいいかもしれない。たったそれだけで女の子の笑顔が見られるのならばな。

 

 

「千歌、穂乃果ちゃんたちやツバサちゃんたちのようなスクールアイドルになるのが夢なんです!歌とダンスでみんなを笑顔にできる、そんなスクールアイドルに!千歌たちの高校は生徒不足で廃校が決まっているけど、最後の最後くらいはみんな笑顔にしてあげたいなって」

「私も同じです。千歌ちゃんに誘われていつの間にかスクールアイドルになっていたけど、千歌ちゃんたちの夢を聞いたら、それを一緒に叶えたい!そう思ったんです」

 

 

 そっか、この2人は今まさに夢に向かって突っ走っている最中なのか。だったら俺から余計なことはしなくていいな。穂乃果たちμ'sやツバサたちA-RISEに会うのは、自分たちの力で叶えさせよう。スクールアイドルとして成長していけば、いつかライブの舞台で一緒に踊れる日が訪れるだろうから。

 

 

「ありきたりな言葉しか掛けられなくて悪いけど――――頑張れよ」

「ありがとうございます!今はまだ駆け出しなので、応援してくれる人が1人でもいると俄然張り切っちゃいます♪あっ、そう言えばお名前はえぇ~っと……」

「神崎零だ。俺がどんな奴かと言えばそうだな……スクールアイドルたちを導く男かな」

「あははっ!今度は零さんが冗談ですかぁ?」

 

 

 それは全然冗談でもなんでもないんだよなぁ~。μ'sを導いて更に全員恋人にしたってことを自慢したいんだけど、それができないこのもどかしさ。まあこの告白は、コイツらがμ'sやA-RISEと同じ舞台に立った時の出世払いにしておこう。

 

 

 

 

 あぁそう言えば全く関係ない話題になるけど、どうして梨子は千歌に追われていたのだろうか?その疑問だけ解決しないと夜も8時間しか眠れねぇ。

 

 

「なあ、話は初めに戻るけど、梨子はどうして俺に突っ込んできたんだ?」

「あっ、それはですね~」

「千歌ちゃん!?もうそれ出さなくていいから!!」

「えぇ~可愛いのにぃ~。まさか秋葉原でこんな運命的な出会いがあるなんてね~♪」

「私にとっては最悪の出会いだよぉ~……」

 

 

 千歌はカバンをゴソゴソ漁って、何かを取り出そうとしているみたいだ。しかし梨子はその行為を必死に食い止めようとしている。逆にそこまで恐怖に怯えていると、何が出てくるのか無駄に期待が高まるじゃねぇか。

 

 そして千歌はカバンから淡い緑色の物体、どこか両生類のアレ似た――――というか、完全にカエルそのものにしか見えない玩具を取り出した。

 

 

「ちょ、ちょっと早くそれ閉まって……リアル過ぎて近くで見るのは……」

「確かに本物と全く変わらない造形だな。梨子はこれを見て逃げ出したのか」

「それだけじゃないんですよ!ここのネジを回すと――――」

「や、やめて!せめてカエルをこっちに向けないでぇ~!」

「今度はしっかりと梨子ちゃんに挨拶をするんだよ、カエルさん。さあ行っておいで!」

「や……やめてぇえええええええええええええええええええええええ!!」

「うおぉ!!」

 

 

 カエルが梨子に飛びかかろうとしているのは、2人のやり取りを見て想像が付いていた。だけど予想外なのは、梨子がまた俺に飛びついてきたことだ。思わずさっきと同じ反射行動で彼女を正面から抱きしめる。だがもちろん突撃の勢いには耐え切れず、またしても後ろに――――――って、これどんなデジャブ??

 

 

「きゃっ!!」

「うわぁ!!」

 

 

 叫び声までさっきと全く同じじゃないか……?だったらまたセクハラ魔になる前に、手の場所を意識しないと!!でもそんな暇は――――――

 

 

 俺は対策をする間もなく、梨子を抱えたまま再び倒れ込んでしまった。

 そして手を通じて伝わってくるひと時の安らぎ。このずっと触っていたくなる揉み心地、服の上からでも分かる程よい張りの良さ、まさに芸術。手を離そうとしても俺の本能がそうはさせない。俺はおっぱい魔人だ。目の前に触ってもいいおっぱいがあるんだから、その機会を逃すことなどありえない。

 

 

「れ、零さぁん……」

 

 

 いい声だ。男の欲情を唆ってくるいい声をしている。

 よく考えてみれば、突っ込んできたのは梨子の方なんだ。これは事故、これは不可抗力、決して故意ではない。だからもう少しだけ触っても……いいよな?

 

 

 ここで俺が両手の計10本の指に力を入れると、梨子は『ひぃ!』と声を漏らす。そして再び、右手が天高く振り上げられた。

 

 

 うん、まあ、この展開は甘んじて受け入れよう。どうやら俺にまともなオチは訪れないようだ。

 

 

「き……」

「うん、来いよ」

「きゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

「があ゛っ!!」

 

 

 人が大勢いる秋葉原で、またしても男の頬を打ち抜くかのような平手打ちが炸裂した。しかも今度は3割増のパワーで……知り合いになったことで容赦がなくなったのかなこの子は??

 

 

「やっぱりセクハラ魔だったんですね♪」

「うるせぇ元凶」

 

 

 千歌だけは色んな意味で性的に復讐してやろうと、今この時心に誓った俺なのであった。

 




 ラッキースケベは男の基本!


 今回はサンシャイン特別編ということで、千歌と梨子に登場してもらいました。本当は全員出演させたかったのですが、流石に引き伸ばしたくはなかったので敢え無くこの2人に。元々先月行われていたサンシャイン企画でキャラの口調や動かし方はなんとなく分かっていたので、その中でも一番動かしやすい子たちを選んだ次第です。確かスクフェスにもこの2人が先行で出演すると聞いたので、このタイミングでの特別編は丁度良かったのではないでしょうか。

 今回の話でもし今までサンシャインに興味がなかった人が、少しでも興味を向けてくれたら嬉しいです!

 前書きでも書いた通り作品ごとの時系列が分からないため、今回は無視しました。それに伴ってこの話はこの小説本編と一切リンクしないので、一応ご留意ください。



 12月編はこれにて終了し、次回からは新章(1月~)として再びスタートしていきます!



新たに高評価をくださった

AirMacさん

ありがとうございます!


Twitter始めてみた。
 https://twitter.com/CamelliaDahlia

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