前回、秋葉さんの薬によって、私は激しく尿意を感じる体質に変えられてしまいました。登校途中に膀胱が破裂しそうになった時には、周りの目線に己の人生の終わりを予感してしまうくらい追い込まれ……。
しかし、そんな私を救ってくれたのは、我が想い人である零でした。彼が私の肩に手を触れると、尿が溜まってずっしり重かった膀胱が、みるみる内に軽くなったのです。どんなマジックを使ったのかは知りませんが、彼ならば秋葉さんの薬の力に対抗できる!そう思った私は今――――――
「おい海未……近くないか?」
「たまにはこうして触れ合っていてもいいじゃないですか。恋人同士なんですし」
「そりゃあそうだし俺も嬉しいけどさ――――ここ、教室だぞ?」
「たまにはいいんです!!」
普段は穂乃果やことりが零にベタベタと引っ付き、私が叱りつけるといった流れが定番なのですが、今日に限っては事情が事情、2人を跳ね除けてでも彼とくっついていたいのです!だってそうしないと……も、漏れちゃいそうですし。緊張が高まれば高まるほど、尿意が強くなっている気がします。
「それにほら、あなたに引っ付いていると暖かいですし!湯たんぽ代わりに家に欲しいくらいですよ、ハハハ……」
「そんな一家に一台神崎零みたいな言い方すんなよ。それよりお前、なんか無理してね?」
「そ、そんなことないですよえぇ。ただ単に私があなたの隣にいたいだけです。嬉しいでしょう?」
「最後の煽りさえなければ良かったんだが……ま、女の子にくっつかれるのは悪くないし、好きにしろ」
「言われなくても好きにします」
「お前そんなに強情だったっけ……?まあいっか」
ふぅ~。いくら零でも、私の身に起きていることは察せなかったようですね。流石にいくら相手が自分の彼氏であっても、『あなたと一緒にいないと漏らしちゃうのです!!』とは恥ずかしくて言えませんから。それを羞恥を感じずに相談できれば、もっと楽に日常生活を過ごせると思うんですけどね。こういう時だけは穂乃果やことりの積極さと無頓着さが羨ましく思います。
「む~なんか零君、穂乃果たちが抱きつく時と海未ちゃんにくっつかれる時で、全然対応が違うよね??」
「ことりたちが抱きついたら、零くん全力で拒否してくるのにね」
「お前らは人目が付くところでも突然抱きついてくるからだろうが。あれ結構恥ずかしいんだからな」
「じゃあこれからは『抱きつくよ♪』って言ってから抱き掛かるね!」
「事前申告の問題じゃねぇよ!それ以前に海未が自ら俺に引っ付いてくるなんて珍しいから、敢えて許容している部分はある」
「ぶーぶー!エコ贔屓だーー!!」
「ことりたちも海未ちゃんも同じ零くんの恋人なんだから、差別は禁止だよ!!」
「お前ら、これまでの自分の行動を振り返ってみろって……」
いつもは2人を叱ってばかりの私ですが、彼の隣りにいると尿意とか関係なく、心がドキドキしてしまうのも事実です。穂乃果とことりには悪いですが、もうしばらく彼の隣りを陣取らせてもらいましょう。普段は2人に譲っているのですから、今日くらいは別にいいですよね?
しかし、ここで授業開始のチャイムが鳴ってしまいました。ここまで休み時間が短いと感じたのはこれが初めてかもしれません。名残惜しいですがもう離れないと……。彼と私の席はそこそこ離れてしまっているので、ここから45分、またなんとしてでも膀胱の重圧を耐え切らなければ!!
~※~
「うぅ……早く!早く!!」
授業終了のチャイムが鳴ると同時に、私は教室を飛び出しました。
目的はもちろん女子トイレに突撃すること。授業開始直前まで零に触れていたので、授業中は安心だと思っていたのですが、そこは秋葉さんの作った薬、そう甘い展開にはならないみたいです。授業開始十数分後にはもう尿意を催し、授業時間残り10分を切った時点で登校中に襲いかかってきた尿意と、全く同じ勢いで襲いかかってきました。
幸いなことに、教室からトイレまでは近いので、途中で漏らしてしまうなんてことはないでしょう。しかも授業終了と同時に飛び出してきたので、誰かがトイレに入っているなんてこともない。さらに、コンビニでの失敗を活かして、事前にトイレが故障で使用不可になっていないことまでも確認してあるという用意周到っぷりです。これで私の勝利は確定!もうなにも邪魔するものはありません!!
しかし、勝利を確信したその直後でした。
トイレ直前の階段から、誰かがこちらの階に上がってくるのが見えたのです。そしてその人影は、私の目の前に――――――
「あれ、海未先輩。こんにちはです~♪」
「か、楓……」
その時、私は戦慄しました。
あの姉にしてこの妹。もし私の身に起こっているこの状況を察知でもされたら、彼女は確実に私の邪魔をするでしょう。どうして彼女が3年生のフロアに上がってきたのかは分かりませんが、そんなことよりもとりあえずここを穏便に切り抜けなければ!!こんなところで黄色の水たまりを作る訳にはいきませんから。
「先輩、なにか急いでます?」
「べ、別にそんなことは……あなたは零に会いに来たのですか?」
「はい♪学院内でもたまにはお兄ちゃんと一緒に過ごしたいなと思いまして。それにお兄ちゃんのクラスの女にも、私がお兄ちゃんの恋人だってことを見せつけないと!」
「そうですか……。それでは私はこれで……」
「ま、それよりももっと――――」
「えっ!?」
私が楓の隣りを通り抜けようとした時、彼女は私の進路を塞ぐように立ちはだかりました。私は何とか切り返して彼女をスルーしようとするも、私よりも何倍もフットワークが上の楓には敵わず、尽く進路を防がれてしまいます。そしてその時の彼女の表情を見て、私の戦慄が高まりつつありました。一言で言えば"黒"、彼女に小悪魔の片鱗が現れ始めていたのです!
「なっ……一体何を!!」
「まあお兄ちゃんとも戯れたいけど、今はそれ以上にもっと面白いことを思いついちゃいましたから♪」
「楓、あなたって人は……」
「フフッ、トイレに行きたいんでしょ先輩?折角なので邪魔しちゃいます♪」
やっぱりィいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!
一瞬小悪魔の笑顔が見えたのでもしやと思ったのですが、やはりこの展開に……。どうして神様は私に試練ばかりをお与えになるのですか!!日頃の行いなら穂乃果やことりに比べれば、全然真っ当だと思うんですけど!?どうして今日はこんなにも不幸が立て続けに……。
んっ……あ、ふぁ……にょ、尿意がまた強く!?このままでは楓に邪魔されている間に限界を迎えて、廊下で垂れ流してしまうはめに……。
「楓、もし私に可能な範囲であれば、なんでも1つ言うことを聞いてあげましょう。だからこの場だけは通してください!!」
「皆まで言わなくていいですよ。私、分かってますから」
「分かってるのなら尚更通してくださいよ……」
「まあお兄ちゃんが海未先輩の変化に気付けないのも無理はないです。やはり女の子は女の子同士でしか、分かり合えないこともありますよね」
「は、はい……?」
「とぼけたって無駄ですよ?女性特有のアレですよね?アレですよ、生理」
「へ……?」
「え……?」
私たちはお互いにキョトンとした表情で相手の顔を見つめます。もしかして、これはチャンスかも?このまま女性特有の生理ということで話を進めれば、楓も納得してここを通してくれるかもしれません。もう膀胱に一刻の猶予もないので、こちらから早急に仕掛けなければ!!
「あれ、違うんですか?」
「じ、実はそうなんですよ~。困っちゃいますよね~……アハハ」
「ですよね!私も分かりますよぉ~」
「だったら早くここを通してもらっていいですか?ていうか通りますね」
「――――――ダメです」
「はぁ!?!?」
女の子同士お互いに理解し合ったはずなのに、何故そうまでして私の邪魔を!?もう漏れそうなんですけど!!あぁ、こうしている間にも廊下に生徒たちが教室から出てきています。同級生だらけのこんなところで漏らすなんて……。
「先輩、普通にトイレに行きたいんでしょ?無意識だと思うけど、さっきからずっと下半身に手を当ててるし、そんなの見ただけですぐ分かりますって。でも邪魔したいってことには変わりません。敢えて生理の話題で先輩を誘導して安心させて、そこから一気に突き落とすこの快楽、いいですねぇ~♪」
「あなたは小悪魔なんかじゃありません、本当の悪魔ですね……」
「どうです?尿意貯まりましたぁ?」
「あなたって人は本当に……」
やはりあの姉にしてこの妹ありです。自分の興味本位だけで他人を絶望の底に突き落とすことに、全くの躊躇がない。零の彼女となって一生を共にするということは、彼女たちとも一生付き合っていかなければならないということ。もう恐怖しかありません……。
それに楓の煽りに同調して、私の尿意は限界まで膨れ上がってきています。一瞬トイレに行けそうだと、ホッと安心させられたのが逆に膀胱を緩める原因となってしまいました。楓の策略に、私もうここで人生を終わらされるかもしれません。
「まあ、そろそろ許してあげますよ。流石にあのμ'sのメンバーが、校内で垂れ流しをしたなんて情報が流れたら、同じメンバーの私にまで被害を受けますから」
「そ、それなら初めから邪魔せずにですね……」
「先輩の尿意に悶え苦しむ姿を見られたので、私はそれで満足です!逆に今度私が何か奢ってあげますから、期待しててください♪」
すると楓は私の横に移動し、道を開けてくれました。いつも通っている廊下なのに、今は天国へ続く道にしか見えないほど、私の目には目の前の道が神々しく映っています。ようやく、ようやくなのですね!!
「ほら行った行った。早くしないと、先に誰かにトイレ取られちゃいますよ」
目の前には天国、そしてヘブンへと続く道のり。あと数秒後には私も至高の快楽を堪能している。本当にも、邪魔するものは何もない。
――――――そのはずだったのですが……。
楓からトイレに行くことを急かされ、背中を"どんっ!"と押されました。
その時、膀胱が急激に締まる感覚がしたと思うと、中の尿が私の意思に反して蠢きだしたのです。もう自分でも何が何やら、身に起こっている事態を理解できません!!とにかく言いたいことは、少しでも動いたらもう垂れ流してしまうほど、尿意メーターももう限界に近づいてきているということです!!
「あぁ、んっ、はぁ……あっ!」
「ちょ、ちょっと先輩!こんなところで発情しないでくださいよ!!」
「ち、違います……さっき何故か急激に尿意が……」
「先輩?マジで大丈夫ですか??」
「はぅ!!うぅ……」
「えぇ!?触っただけなのにこの反応!?」
さっきから、楓が私の身体に触れてくるたびに尿意がどんどん増していきます。ただでさえ限界が近いのにこれ以上尿意を高ぶらせられたら、もう私自身の意思で膀胱を止めることができなくなってしまいます!!他の生徒にこんな姿を見せたくないので、なんとか必死をこいて廊下の陰にまで漕ぎ着けたのですが、逆に妙な安心感を感じてしまってもう出ちゃいそうです……。
でも身体を触られただけでここまで反応するなんて。穂乃果やことりに触れられた時は何ともなかったのですが……。楓に触れられる前も、彼女と対面していた時からやたら尿意を感じるようになっていました。まるで彼女から尿意のオーラが出ているかのようです。
「先輩?」
あぁっ!!尿意のオーラを意識すればするほど、楓と一緒にいると膀胱が破裂しそうになってしまいます!!この今まで感じたことのない尿意は、明らかに彼女からの尿意の気迫、つまり"尿気"のせいでしょう。ようやく彼女の束縛から解放されたというのに、今度は彼女の"尿気"に捕らわれてしまうとは!!
「あ、先輩がモタモタしてるから、あそこのトイレもう埋まっちゃいましたよ」
「え……ふぁ、あぁ……」
「だからどうしてそんなに色っぽい声を出してるんですか!とにかく、他のトイレを探しましょう。手を貸してあげますから、早く行きますよ」
「ひゃっ!!あぅ……」
「触れただけで尿意を感じるとか、今までどれだけ我慢してたんですか!?今更ながらとてつもない罪悪感が……なんかゴメンなさい」
あの楓が謝罪するなんて、貴重すぎて録音して起きたいレベルなのですが、今はそんなことを気にしている場合ではありません!それに楓は何も悪くなく、こうなってしまった元凶である、あの悪女こそが諸悪の根源。楓から溢れ出るこの"尿気"も、薬の力によって感じるものなのでしょう。とことん私の苦しむ姿を想像したいようですね。その罠に尽く嵌ってしまう私も私ですが……。
「はぁ、も、もうダメです。私に構わず教室へ戻ってください」
「いやそうしたいのは山々ですけど、変に罪悪感が残るのが嫌なんですよねぇ。ほら、座り込んでないで気合で歩いてください!」
「そんなの無理ですよぉ~……もうちょっとでも動くと――――漏らしちゃいます」
「あの海未先輩から、そんな汚い言葉が飛び出すなんて……」
正直な話、近くに楓がいなかったらもう少し我慢することができたでしょう。でもあの小悪魔の楓がここまで私のことを心配してくれて、しかも善意で手まで貸してくれているのに、『あなたのせいで尿意が爆発してしまいそうだから帰って』と言えるでしょうか?いえ、私には言えません!!
もうプライドも何もかも捨てます。μ'sのメンバーだからとか、生徒会役員だとか、淑女だとか、そんなもの関係ありません!下手に動いて漏らしているところを誰かに見つかってしまうのなら、丁度廊下の陰になっているここで垂れ流し、楓に後処理をしてもらった方がまだマシです。後々彼女からネタにされることは間違いないでしょうが、それだけで私の人生が保たれるのなら安いもの。学院で晒し者になる事態だけは避けなければなりません。
「う、うぅ……か、楓、せめて私のスカートを上げて下着だけでも脱がしてもらってもいいですか?替えを持ってきていないので……」
「はぁ!?もうここでやる気満々じゃないですか」
「もうそれしか方法がないのです!!あなたも責任の一端を感じているのなら、どうかお願いします」
「えぇ~。私が脱がすパンツはお兄ちゃんのだけって決めてるのに、仕方ないなぁもう」
楓は座り込んでいる私のスカートを捲ると、私の下半身に向かって手を伸ばします。しかし、下着を脱がす行為を彼女に頼んだのは間違いだとすぐに気付きました。彼女の手が私の脚に当たるたびに、身体がビクリと震えるほど尿意を感じてしまうからです。
「あっ、はぁっ!!」
「女の子の手で身体をビクつかせるなんて、レズ属性でもあるんですか?ジッとしててくださいね、脱がせにくいですから」
「はぁ、だ、ダメです、あまり肌に触れては……」
「触れないと脱がせられないでしょ!!」
「そんなに触られると――――あっ、あぁ!!も、もう限界……」
「へ!?もう少しの辛抱ですから我慢我慢!!」
ゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさい!!誰に謝っているのかも分かりませんがゴメンなさい!!もう無理です!!
「ほら、今から脱がしますから」
膀胱をギュッと締め、最後の気力を振り絞って何とか耐えてはいますが、楓の"尿気"にもう敗北してしまいました。やってしまうならせめて楓の前だけで、誰にも見つからないようにこっそりと――――――
だがしかし、不幸は連鎖するもの。
「海未に楓?お前ら、こんなところで何してんだ?」
廊下の影に隠れていた私たちを見つけたのは、私がこの世でこの姿を一番見られたくないと思った人物――――――
「お、お兄ちゃん!?」
「零、あ、あぁああああああああああ!!」
「先輩!?抑えて――――あ……」
「あっ、ああああああああああ……」
「う、海未!?パンツが黄色くなってるぞ――――って、こ、これってまさか!?」
「うぅ……」
零に見つかった衝撃で、遂に私は人生の汚点を1つ生み出してしまいました……。
~※~
「まあ、その~なんだ、俺たち以外にバレなかったから、とりあえず安心しろって」
「一番バレたくない人にバレてしまったのがショックなんです!!」
あの後、零と楓の機転により廊下は早急に掃除され、保健室で替えのスカートと下着を調達してもらって現在に至ります。学院内でやってしまったことを、多分これからずっと引きずって生きていくのでしょうね……。
「あの出来事は忘れてください!!あなたの頭を掻っ捌いてでも記憶を消します!!」
「えらく過激だなオイ!つうか忘れられる訳ねぇだろ、あんな衝撃的な展開。むしろ脳内HDに保存してるわ」
「コロス……」
「恨むべき対象を間違ってるだろ。元凶はあの悪魔だ。まあ恨んだところで、アイツの暴走が止まることはないだろうが」
「さっき電話でお姉ちゃんに聞いたんだけど、先輩の飲まされた薬の効果は、一度お漏らしすれば消えるみたい。だからもう安心ですよ」
これは安心していいのかどうか。漏らしてしまった時点で安心も何もないんですよねぇ……。しかも彼氏に垂れ流すところを見られ、後輩にまで手を貸してもらったとなると、恥ずかしさや申し訳なさで心も頭もいっぱいです!はぁ、まだ朝ですが今日はもう疲れました……。
「どうやらお兄ちゃんに触れると尿意が引いて、私の近くにいると尿意が高まるような薬だったみたいですよ。全く、お姉ちゃんって無駄にこういうところ手が込んでるんだよね~」
「秋葉さんが言っていた、零に自然と近付けるとはそういう意味だったんですね。だけど楓と一緒にいると尿意が高まるというのは、完全に罠でした」
「お姉ちゃんが救済処置を用意するのは珍しいけど、人を恐怖に突き落とす罠を用意しているのはいつものことです」
「ま、これでアイツに復讐したいメンバーがまた1人増えた訳だ」
「そうですね、いつか絶対に秋葉さんの悶え苦しむ表情を見てみたいと思いましたよ……」
「一気に顔が怖くなったぞ、お前……」
この屈辱は、いつか何万倍にも肥大化させて返してやります!私に一生の枷を背負わせたあなたに……フフフ、楽しみです♪
尿意を我慢している女の子って可愛いですよね?ね??
もうこのようなプレイはにこと真姫に続いて海未で3人目なのですが、全員分のシチュエーションを執筆してみたいと思った今日この頃でした(笑)
次回はこれまた久々にことり回を予定しています。あのことりちゃんなので、内容はまあ……お察しを。
新たに高評価をくださった
なこHIMさん
ありがとうございました!
Twitter始めてみた。
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