1月下旬の朝。部屋を凍てつかせるような寒さに身を震わせながら、俺はベッドから抜け出した。
ふと時計を見てみると、短針は既に11時を指しており、今日が休日だということを改めて実感する。もはや昨日、いや今日か、何時に寝たのかすらも覚えてないくらい吞気な生活を送っているもんだ。しかも俺はこれでも受験生。もう私立大学の入試は始まっているというのにこの体たらく、みんなは見習っちゃダメだぞ。
俺はその場で適当に部屋着に着替えると、あくびをしながら階段を下りてリビングへと向かう。
この時間だったら、もう朝飯と昼飯は兼用した方が良さそうだな。今日はずっと家にいるからたいして腹も減らないだろうし、また昼寝をする可能性もあるからそこまでモノを食べたくはない。こんなだらしない生活を送っているようで、案外健康には気を使っているのだ。
まだ寝起きで頭がぼぉ~っとしながらもリビングのドアを開けると、そこには母さんと楓の姿が――――じゃない!?エプロンを装着してキッチンで料理をしているのは母さんだが、テーブルについているのは特徴的な黒髪ツインテールの――――
「にこ?」
「あっ零、おはよ」
「零くんおはよ~」
「お、おはよう……」
俺は目の前に映る意外な組み合わせに少し驚いてしまう。母さんはいつもの調子と変わらず鼻歌を歌いながら料理をしているのだが、にこはかなり畏まって、借りてきた猫のようにおとなしい。
「お前どうしてここに?来るって連絡してきたっけ?」
「いや、してないわ。ちょっと相談があってね」
「そっか。それにしてもやけに萎縮してないか?その小さな身体が余計に一回り縮小されてる感じがするんだが」
「し、失礼ね!緊張しちゃうのは当たり前でしょうが!!」
「はぁ?俺の家ならもう腐るほど来てるだろ」
「違うわよ!!まさか詩織さんがいるなんて思ってなかったの!!」
「あぁ……」
そういや母さんが帰国したこと、誰にも話してなかったな。特に言う必要がないからってのもあるが、単純に忘れてた。そりゃあ俺の家に来て、楓じゃなく突然母さんが現れたら驚くわ。まあ勝手に息子のベッドに潜り込んでビックリさせられた俺の方が、圧倒的に衝撃はデカイが……。
「それでもさ、母さんとは一度会ってるじゃん」
「にこだって、ただμ'sのメンバーの家に行って、そこのお母さんに会うだけなら特別緊張したりはしないわよ。でもね!にこが一番尊敬していて世界に羽ばたく女優の詩織さんと2人きりだなんて、萎縮しちゃうのは当たり前でしょうが!!こんな時に限って楓はいないし……」
確かににこと花陽は母さんのファンでもあるから、そんな憧れの人と家で突然2人きりだなんて気が動転してしまうのも無理ないか。だから今でも石像のように身体がガチガチになっていると。俺が来たことで少しは気持ちが和らいだようだが、声はまだまだ震えが残っていた。目も瞳孔が開いてテンパっているみたいだし、これは母さんと対面した時のコイツの表情を見たくなってきたぞ。そしてそれをネタに弄ってやりてぇ……。
「そこまで畏まらなくてもいいって言ったんだけどねぇ~。にこちゃんさっきから私の問いかけに"はい"か"いいえ"しか答えてくれないのよ」
「どれだけガッチガチなんだお前は……」
「す、すみません!!やっぱり詩織さんの前ではどうもいつもの調子が出なくて……」
「まあそこまで尊敬してくれるのは嬉しいけどね。それに私はμ'sのみんなのことも尊敬してるから♪」
「う、うそっ!?あの詩織さんがにこたちを!?ほ、ほほほほほほほんとですか!?!?」
「落ち着けって。これじゃあなんのために俺の家に来たのか分かんねぇぞ……」
母さんは女優として、世界の著名人たちと何度か顔を合わせているはずだ。だからこの母さんがμ'sに特別注目していると知れば、にこだけでなく穂乃果たちも意外に思うに違いない。今だってほら、現ににこのやつ卒倒しそうだし――――って!?
「おいっ!気絶しそうになってんじゃねぇよ!!」
「ご、ごめん。つい嬉しくて……。喜びで有頂天になるって、こういうことなのね……」
「なに悟ってんだよ。それに母さんじゃなくて俺に用事があるんじゃないのか?」
「あっ、そうそうそうなのよ!早くアンタの部屋に行くわよ!」
「急に切り替わったな。分かったから引っ張るなって!」
にこはハッと思い出したような表情で俺の手首を掴む。憧れの女優さんを目の前にして嬉しいという気持ちと、この気まずい空気から抜け出したいという気持ち、どうやら後者が勝ったらしい。
そして俺をズルズルと引きずりながらリビングを出ようとする、その直後だった。
「やるなら絶対に避妊をしなきゃダメよ~!私もこの歳でおばあちゃんなんて言われるのイヤなんだからね~!」
「な゛っ!?」
「…………!?」
その言葉を聞いた途端、俺たちの顔は燃えるように赤くなる。
なんてこと言い出すんだあのクソ母は!!あまり俺の言えたことではないかもしれないが、いい大人が変態発言してんじゃねぇと一度説教をしなければならんようだな。しかし、にこは否定言葉を口にすることもなくさっきより俺の手首を強く引っ張ってくるため、俺は何も言えずにリビングをあとにする形となった。
あぁ、もう一体何が何やら。でもとにかく、母さんのあのいい笑顔だけは許せねぇ……。
~※~
「えっ、スカウトされた?誰が?」
「だからにこがってさっき言ったでしょ?」
「マジで?」
「マジで」
さっきの母さんの爆弾発言も凄まじかったが、にこの相談内容もそこそこに衝撃的だった。
にこの話した内容を簡単に言ってしまえば、街中で芸能プロダクションからスカウトを受けたらしい。芸能界にはそこまで詳しくないのでイマイチ把握はしていないが、どうやら有名なところらしく、彼女曰くアイドルを目指す人からすればその事務所に入ることこそ成功への近道だそうだ。
街中でのスカウトと聞くとあまり信用できないが、現にこのようなスカウトでトップアイドルになっている女優が何人もその事務所から誕生しているみたいだし、これは本物と見て間違いないのかも。それに将来アイドルを目指す彼女としては願ったり叶ったりのオファーである。だからむしろどこに相談事があるのか気になるくらいだ。
「概要は大体分かったけど、どうして誰よりも真っ先に俺に相談を?」
「そのぉ……ね、スカウトされたことはとても嬉しいんだけど、まだにこの中に迷いがあって……」
「宇宙スーパーアイドルになりたいんだろ?この機会を逃す手はないじゃん」
「それはそうだけど、にこがその事務所に行くってことは、μ'sから抜けなきゃいけないってことでしょ?」
「そっか、なるほど」
確かにスクールアイドルと芸能アイドルの両立は難しいかもな。自分の夢を叶えるためにμ'sを脱退するのか、それともみんなとの夢を紡ぐために自分だけの夢を諦めるのか、にこにとっては究極の選択だってことだ。しかし流石の俺でも、他人の道を勝手に選ぶなんて真似はできない。申し訳ないがここはにこ自身に道を決めてもらって――――
その時だった。にこはその場で静かに立ち上がると、ベッドに腰を掛けている俺の目の前まで歩み寄ってきた。さっきまで真剣で堅い面持ちだったのに、いつの間にか頬を染めて、まるで結婚初夜の女性のような初々しい雰囲気が漂っている。ま、まさかとは思うけどこんな状況で!?
「にこ自身の夢とかμ'sの夢とか、それももちろん大切よ。でもね、にこにはもっと重要なことがあるの」
「な、なんだよ……」
「それはね――――」
すると突然、俺の身体がにこによって押し倒され、ベッドの上に仰向けの状態で軽くバウンドする。一瞬の出来事で、何が起こったのかを把握した時には既に俺の身体の上ににこが四つん這いになっていた。
女の子に押し倒される屈辱よりも、あんな超真面目な話から唐突にベッドインの展開になるなんて思ってもみなかったため、俺はそっちに驚いてしまった。そしてこの体勢、俺はただ彼女の顔を見つめることしかできない。
「どういうつもりだ……?」
「だってプロのアイドルになったら、零とこんなことをする機会なんて滅多になくなるでしょ?」
「もうプロ気取りなのか……まあいいけど」
「当たり前よ、にこなんだから。話を戻すと、つまりは未練タラタラってわけ。夢が叶うチャンスがあるならにこ自身も決断できるし、μ'sのみんなも喜んで送り出してくれると思う」
「だったら――」
「でもね、にこは絶対に零のことだけは忘れられない。もうこの身も心も、常にあなたを求めているのよ。部屋で1人でいる時もそう、妹たちに聞こえないように自分を慰めているくらいにはね。まだ回数はそこまでだけど、零と交わった記憶が蘇るたびにアイドルへの道を躊躇しちゃうの。そこで分かったことが1つ。にこはプロのアイドルになるよりも、今はあなたと一緒にいたい。あなたと一緒に――――交わりたい」
にこのルビー色の目が、切なげに輝いた。
彼女の話を総合すると、未練があるのはμ'sのことでも俺のことでもなく、自分の夢を断ち切ることだ。もちろん将来の夢だから
だがそんな迷いはすぐに消え失せた。気づけばいつの間にか、にこが自分の服を脱ぎ始めていたからだ。シュルッと肌に布が擦れる音が艶かしく、いくら彼女が小柄な女の子と言ってもやはり女子大学生、色気が半端ではない。徐々に垣間見える彼女の白い肌を見て、俺は唾を飲む。そして最後に上が下着1枚だけになり、その最後の防壁さえも彼女はあっさりと脱ぎ捨てた。
俺の目の前には胸をさらけ出した小さな恋人が、四つん這いとなって俺に跨っている。しかも脱いでいるのは上だけで下はちゃっかりスカートを履いているので、俺の興奮の刺激ポイントをしっかりと押さえているようだ。胸は擁護すらできないほど控えめな大きさのため、そもそも垂れるという概念すら存在しないが、眼前に乳首をピンと立たせた胸があるって事実だけでも俺の欲情は止まらない。
「にこの身体、好きなように使って?自分が零のモノだって感じられれば、未練や迷いなんか全て捨てられるはずだから……」
この時、俺の中で何かが切れたような音がした。
俺はにこの背中に腕を回すと、四つん這いになっている彼女の身体を腕で押しつぶすように力を入れる。すると仰向けとなっている俺の身体と、うつ伏せとなっているにこの身体は正面から密着した。しかしあんな小さい胸でも、ちゃんと俺の胸に押し潰される感触がするんだな。
そして、俺たちはしばらくの間お互いの瞳を見つめ合う。アイドル活動に日々闘士を燃やし、夢へと一直線へ突き進んできた情熱の籠った赤い瞳。この瞳に飲み込まれたら最後、俺は彼女の魅力にどっぷり浸かって抜け出せなくなるだろう。だったらこっちから仕掛けるまでだ。
俺はにこの頭の後ろに手を当てると、そのまま自分の顔へと彼女の顔を近づけた。にこは今から起こることを察知したのか、目を瞑り、唇を僅かに開く。もちろん俺はそれに応えるように、唇と唇を触れ合わせた。
「ん……」
にこが小さく吐息を漏らす。
彼女から微かな甘い匂いを感じて、俺はそれに誘惑されるように自然と舌を差し入れた。にこは当然の如くそれを受け入れ、向こうからもゆっくりと舌を絡めてくる。
「はぁ……ちゅ……」
分泌されてきた唾液と、ねっとりと絡み合う舌の音が直接脳内に響く。久々の口付けだからだろうか、慣れているはずなのにやけに劣情を感じてしまう。自分の夢を諦めてまで俺のことを求めてくれた喜びが、形容し難い背徳感を含んだ興奮へと変換されていく。どうして何度もやってきたキスに、ここまで激しい劣情を抱いているのかは分からない。だが、そんなことはどうでもいい。ただ目の前の女の子が雌の顔になるのを楽しむ、それだけで俺は満足なんだ。
だから俺たちは理性を失った獣のように、お互いの舌を貪る。久々だから若干のぎこちなさはあるが、舌の粘膜同士が熱く絡み合う感覚は、俺の頭をすっかりどろどろに蕩けさせていた。
「はぁっ、ん……はぁ、んちゅ……」
下の階にいる母さんにこの声を聞かれたら絶対に弄られると思い、にこの口を必死に塞ごうとしたが、結局それは全くの無意味だった。こうして吐息交じりの喘ぎ声が溢れ出してしまっている。部屋の外にこの声が漏れ出している懸念もあるが、それでもなお俺たちはお互いに口付けをやめない。そんな事実が考えられるとしても、目の前の口付けに気分が高揚し、もっとお互いを求めたくなるのだ。
そこで俺はにこの身体を少し浮かし、右手で彼女の胸を先端を弄りだす。その間ももちろん口付けをやめることはなく、口内と胸の両方を同時に蹂躙していく。
「んむっ、はぁっ……ん……ぁ」
にこの口から漏れ出す吐息が、段々と淫らなものへと変わっていく。
俺の指先がにこの胸の先端をくりくりっと攻め上げるたびに溢れる彼女の可愛い声は、俺の欲情を一気に膨れ上がらせる。小さくても感度は抜群、手触りも良好。まさに俺好みの胸へと進化していた。
そして胸を攻め続けている間も、口内攻めの勢いを衰えさせない。本来なら身体に
「ふぁっ、あっ……はぁむ、ちゅっ……んっ」
にこの吐息が一段と高くなる。
俺が指で胸の先端を弄ると、律儀にビクッビクッと跳ねるにこの身体。今度は両手で巧みに胸を揉みしだいてやると、その反応も強くなっていく。しかも催促するかのように彼女は腰の位置をずらして座り直したため、それを察知した俺は更に強く乳首への刺激を始める。胸は柔らかいのに乳首は固い、そのギャップこそが俺のサディスト精神を大いに引き立たせた。
そろそろ素の反応を見て楽しみたくもあったため、彼女の顔から顎を引いて唇を離した。そして起き上がって彼女をベッドに座らせると、俺は後ろから抱きしめる形で腕を回す。そこですっかり固くなった突起を指で摘んで、擦り合わせるように刺激を開始した。
「んっ……あ、あぁっ!!」
俺の唇から解放された反動からか、にこの口から部屋中に響き渡る淫声が漏れ出した。今まで溜め込んでいた快楽を声によって一気に放出し、それでもなお刺激され身体に走る快感に身をよじらせて感じている。
丹念な愛撫の甲斐もあり、にこの身体は相当温まってきているようだ。もう全身に力が入らないためか、背中を俺に預けてもたれ掛かってきている。その体温のせいか、俺の手もしっとりと汗で湿り気を帯び始めていた。彼女の胸を触るたびに熱く、その熱気は与える刺激をより一層強くしているようだ。
そこでこれまで言葉にならない吐息ばかり漏らしていたにこが、ここへ来てはっきりと口を動かした。
「ね、ねぇ……」
「なんだ?」
「もっと……もっと強くして。そんなんじゃにこがアンタのモノだって証に、全然ならないんだから……」
「ならこんな風にしてみるか」
「ひゃっ!!あっ、そ、それよそんな感じ……んっ、あぁっ!!」
俺は右手で胸を、左手はスカートの中に入れて、下着の上から秘所を人差し指で軽く撫で回した。明らかに性に乱れて感じていたと思われる、ぐっしょりと湿った下着。胸は激しく、下半身は優しくと緩急を付けながら攻め立てる。太ももですら手が触れるとピクッと身体が揺れるため、これは初めからこのような展開を期待していたに違いないだろう。
そして、俺の指が太ももを伝って再び彼女の敏感なところに辿り着くと、にこの身体が一際強く跳ねる。胸と秘所の
「こんな顔をしたアイドル、みんなの前では見せられねぇな」
「んっ、あぁ……別にいいわよ、にこはアンタだけのアイドルなんだから。あぁんっ、んんっ……にこの色んな姿、全部見せてあげる」
「そっか。ならもっとイキ狂え!!」
「や、あぁんっ!!はぁ……あっ、もっと!零の手で、もっとにこを気持ちよくして!!にこは零のモノだって、ご主人様のモノだって身体に刻み込んで!!」
「あぁ、俺の手でしっかりと快楽に堕としてやるから」
「あ、ぁん、それだめ、いくっ、ん……忘れさせて、アイドルの未練もなにもかも。あなた以外のことを考えられなくなるくらいに、にこの身体に快楽を叩き込んでぇええええええええええええええ!!」
にこはもう声を我慢することもなく、服従の言葉と共に嬌声を大きく響かせた。
彼女は
~※~
そしてその頃、神崎家のリビングでは――――
「この音、そして微かに聞こえるにこちゃんの声……なぁ~るほど♪近い内におばあちゃんになっちゃうのかなぁ~?」
この後、俺たちがここぞとばかりに弄られたのは言うまでもない……。
にこの誕生日に合わせてこの回を執筆したと思っている人が多いでしょうが、実はたまたまです。でも、どの小説のにこ誕生日回よりもエロい自信はあります(予言)
そして前回せっかく詩織さんがしばらくメインに加わったので、今回はいい感じに彼女も出していました。ちょい役なのにインパクト大きすぎましたかね(笑)
次回はまた個人回になるのかそれ以外になるのかは未定。だったら次回予告の文章を書かなかったらいいじゃん、っていう意見はなしで(笑)
新たに高評価をくださった
カプレンさん
ありがとうございます!
最近高評価が少なくなってきたのですが、貰えると普通に嬉しいですね!
Twitter始めてみた。
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