ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 この小説にとって、"性欲"が消えるとこの小説の存在意義そのものも消えてしまう由々しき事態の回(笑)


性欲の消える日

 

 性欲。

 今やこの私、"神崎楓"にとっては生きる原動力のようなもの。お兄ちゃんを想うことで分泌される性的欲求は、もはや留まるところを知らない。お兄ちゃんをオカズにしてオナニーをしたり、たまにお兄ちゃんの性欲処理を手伝ってあげたりと、高校入学当初と比べればかなり性に塗れた生活を送ってる。私のライフサイクルは、お兄ちゃんと性欲だけで回っているといっても過言じゃないね。

 

 それもこれも、妹だけには堅物だったお兄ちゃんがやる気、もといヤる気になってくれたからだ。去年のクリスマスに恋人同士となり、それ以降お兄ちゃんは私にμ'sの先輩方と変わらぬ愛情を注いでくれている。妹として、そして1人の女性として。まあその話はおいおいしていこうかな。

 

 

 さて、話の本題はここから。まさか私のライフスタイルを脅かす事態が起こるなんて……。その号砲となったのが、後ろから誰かがこちらに向けて走ってくる足音だった。

 

 

「楓ち゛ゃぁあああああああああああああああああああああああああああん!!」

「こ、ことり先輩!?柄にもなく取り乱してどうしたんですか!?ていうか苦しい!!」

 

 

 突如としてことり先輩が、私の首を絞めるかのように抱きつきてきた。ふわりと背中に触れる私より大きな胸にイラッと来るけど、どうやら緊急事態のようなので呪い殺すのは後回しにしよう。巨乳死すべし。貧乳は笑い飛ばす。

 

 そんなことよりも、あのいつもニコニコしていて何を考えているのか全く分からない先輩が、ここまで感情を顕にするなんて珍しいこともあるんだ。あっ、でもどうせお兄ちゃんか性欲処理の方法しか考えていないか。だって先輩、淫乱だし。

 

 

「楓ちゃん!零くんがぁ……零くんがぁ~!」

「お兄ちゃんがどうかしたんですか?」

「さっきことりが階段を上っていたらね、零くんが下の階にいるのが見えたから、パンツが見えやすい位置に移動してあげたんだ」

「へ、へぇ~。また痴女みたいなことを……」

「でもね!零くんそれを無視したんだよ!!ことりに気づいていたのにも関わらず、パンツを覗こうともしないで!!」

「は、はぁ……」

 

 

 内容的にはかなりくだらない話だけど、まあ言われてみれば確かに不可解だね。性の権化と言われたお兄ちゃんが、女性のパンチラに興味を示さないなんて。普通ならこっちがパンチラをしようと画策せずとも、お兄ちゃんなら自分から覗いてきそうなものなのに。

 

 

「1つ考えられることとすれば、お兄ちゃんはもう先輩のパンツに興味ないってことじゃないですか?」

「ガーーーーーーーーーーーーーーーン!!そ、そんなぁ……今までの統計的に、今日の柄のパンツは零くんのお気に入りのはずなのに、どうして!?」

「統計?」

「零くんがことりのパンチラに反応した回数と、パンツを見つめていた時間を毎回記録してあるんだよ。その記録から総合して、毎日穿いていく下着を決めているんだけど……えへへ♪」

「へ、へぇ~……」

 

 

 なんか怖い!!ことり先輩怖い!!

 私もお兄ちゃんに1秒でも長く見てもらうためなら何だってするけど、ここまで戦略的なのは私としたことが尊敬しちゃうよ。しかもそれを何の恥じらいもなく、明るい笑顔で言えることがスゴイ。先輩からしたら多分それは当然ことで、むしろ"抵抗なにそれ美味しいの?"レベルなんだと思うけどさぁ。

 

 私自身も自覚がありつつブッ飛んでる性格をしているけど、ことり先輩はその逆、天然でブッ飛んでいるんだ。まさかこの私がここまで勢いに押されてツッコミ役にさせられるとは、相当性欲キメてるよこの人……。いずれ公然猥褻罪で、お兄ちゃんよりも早くお縄になりそう。

 

 

「とにかく楓ちゃん!ことりと一緒に零くんを元に戻すの手伝って!」

「えぇ……」

「楓ちゃんも、もし零くんが変態さんじゃなくなったらイヤでしょ?」

「ま、まぁそれはそうですけど……」

 

 

 確かにお兄ちゃんが変態からド真面目な人間になったら、ただカッコよくて勉強もでき、さらに女の子に優しい今度こそ非の打ち所が無い完璧超人になっちゃもんね。あれ?別にそれでもよくない?でもお兄ちゃんから性欲が消えたら、私のライフスタイルも崩れちゃうし……。それに、お兄ちゃんから押し倒して犯してもらう夢も潰えてしまう。

 

 はぁ、仕方ないか。

 

 

「ねぇ、おねがぁ~い♪」

「だから、女の私にその攻撃は通用しませんって。でもお兄ちゃんのことならば、力は貸してあげますよ」

「ホントに!?じゃあ早く零くんのところに行こ!」

「ちょっ、引っ張らなくっても行きますって!!」

 

 

 ことり先輩は私の手首を手錠で繋ぐかのごとくガッチリと掴み、元生徒会役員の称号を捨て廊下を全速力で走り出した。

 先輩を見ていると、お兄ちゃん溺愛されてるなぁって思うよ。お兄ちゃんが先輩をヤンデレに一番近いと認めていた理由がようやく分かったような気がする。だって、話しているだけで愛が重いもん。表面上では純粋そうに見えるけど、絶対に心は邪念しかないね。

 

 でも今は先輩よりお兄ちゃんの件。女の子のパンチラに反応しないなんて、ある意味地球の滅亡より次にありえないことだから。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「さあ零くん吐いて!どうしてことりのパンツに反応しなくなったのかを!!」

「えっ、えぇ……」

「落ち着いてください先輩。目、血走ってますよ……」

 

 

 ことり先輩は廊下でお兄ちゃんを見かけた途端、無理矢理壁に追い込んで尋問を始めた。いつもなら立場は逆のはずだから、なんか違和感があるねこの状況。

 でも当の本人はというと、女の子に追い詰められて顔を間近にまで接近させられているのにも関わらず、頬をほんのり赤くするだけで困惑した表情丸出しだ。いつものお兄ちゃんなら迷惑がりながらも、鼻の下くらいは自然と伸びそうなものだけど。反応からして初心が出まくりのウブさで、まるで偽物や影武者みたい。

 

 

「はぁ、はぁ……零くんどうしちゃったの?」

「俺はなんともないぞ、いつも通りだ」

「嘘!!だったらさっきどうしてことりのパンツを覗かずにスルーしたの!?ねぇねぇねぇ!!」

「だから落ち着いてくださいって!息も切れてますよ!!」

「はぁ、はぁ……ゴメン、取り乱しちゃったね」

 

 

「そうです。周りに人もいるというのに、破廉恥な話題で騒がないでください」

 

 

「海未ちゃん!?」

「海未先輩……」

「……」

 

 

 いつの間にか私たちの隣に海未先輩が腕を組んで、こちらをジト目で睨んでいた。

 いつも猥談で暴走するお兄ちゃんたち3年生を取り仕切る海未先輩が来たってことは、お兄ちゃん非変態化の原因を探るのがちょっと難しくなったかも。元々卑猥な話で攻めて見ようって考えてたからね。

 

 

「勝手ながら、話は全て聞かせてもらいました。零もこれまでの行為を反省しているってことなので、無理に追求しなくても良いのでは?」

「れ、零くんが変態を卒業だなんて……本当?」

「あ、あぁ、まあそんなところかな……」

「「う、嘘ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?」」

 

 

 私とことり先輩の叫び声が、3年生教室前の廊下に響き渡る。

 あ、あのお兄ちゃんが変態をやめた?つまり自身の性欲を抑えることができたってことだよね……?性欲リミッターがガバガバで、通報されるのも時間の問題と言われたあのお兄ちゃんが!?う、嘘でしょ……。

 

 ここでふとことり先輩の様子を確認してみると、口から魂が抜けていくのが見えてしまった。自慢の白い肌が更に純白になって石化し、今にもヒビが入って崩れてしまいそうだ。私以上にお兄ちゃんとは淫行で深く結びついていた仲だったせいか、お兄ちゃんの性欲が消えているショックが大きいらしい。

 

 

「そういうことなので、こんな破廉恥な話はここで終わりにしましょう。はい終了です」

「終わらせないよ!本当の零くんを取り戻すまでは!!」

「いやだから、これが本当の俺なんだって……」

「違う!ことりの知っている零くんは、女の子を無理矢理襲って、勝手に気持ちよくさせて、そしていつの間にか性に従順になるよう調教してくる変態さんなんだから!!」

「それ、零を褒めてます……?」

「そんな大きな声で俺の印象話すなよな……」

 

 

 あまりの衝撃的な暴露に、流石の私も口をポカーンとさせて見守るしかないんだけど……。なにが凄いって、その内容を大声で、しかもお兄ちゃんの長所として堂々と言えることだよね。確かに誰にも真似できない能力だとは思う。真似したいかどうかは別として……。

 

 

「じゃあ零くん!ことりのスカート好きに捲ってもいいよ!ほらっ!!」

「えっ!?え、あぁ、や、やめとけそんなこと……」

「ことりを好きにしていいって言ってるんだよ!?それでも手を出さないの!?」

「お前のことは大切だから、そんなことできねぇだろ」

「大切だからこそ襲ってくれる零くんだったのに……。いいよ、もう勝手にスカート捲っちゃうもん!」

「ちょっ、スカート掴むな勝手に捲るな!うおっ、い、いやとにかくやめろ!!」

「ことりぃ~!あまり過度な行為は、いくらことりと言えども制裁ですよ!」

「ことり、もう海未ちゃんには屈しないから!!零くんを取り戻すまでは絶対にっ!!」

 

 

 自分からスカートを捲りに行くだなんて、もう完全に痴女だよ先輩ぃ~……。それだけお兄ちゃんが好きだって気持ちは伝わってくるけどね。

 

 そんなことよりも、私はこの一連の騒動を部外者目線で冷静に観察していた。

 気になったことは2つ。まずお兄ちゃんがことり先輩の痴女行為に対して、若干期待していたことだ。先輩がスカートを捲っていいよと勧めてきた時、どちらかといえば期待の眼差しで驚いていたしね。そして先輩が自ら捲ろうとした時も、チラッと見えた生太ももに目玉が飛び出るほど食いついていた。

 

 そしてもう1つは海未先輩の言動。いつもお兄ちゃんたちの暴走を止めているのはよく見かけるけど、今日は明らかに必死になっていることが見て取れる。ことり先輩だけには甘い海未先輩が、さっき"制裁"の言葉を出してまで止めようとしていたしねぇ~。

 

 私は当初、お兄ちゃんの性欲がなくなったのはお姉ちゃんのせいだと思ってたんだけど、どうも違うみたい。とにかく、もっと様子を見てみますか。

 

 するとその時、ことり先輩は一大決心を着けた真剣な表情で、お兄ちゃんへと向き直った。

 

 

「もうこうなったら、奥手のを使うしかないね……」

「お、奥の手?」

「うん。零くん、ちょっと手を貸してね」

「へ……?」

 

 

 ことり先輩はお兄ちゃんの右手を両手で掴むと、そのまま自分の胸へ――――むにゅっと押し付けた。

 

 

「んっ!」

「えぇっ!?」

「こ、ことり!?」

「これは……」

 

 

 もうね、さっきから先輩の行動がぶっ飛びすぎて驚かなくなっちゃったよ。先輩ならこれくらいはするだろうとは思ってたしね。でもお兄ちゃんと海未先輩は、ことり先輩の大胆行動に困惑している。特にお兄ちゃん。自分は変態じゃないと主張していたくせに、今は鼻を伸ばしそうになっているんだけど。

 

 やっぱりお兄ちゃんも男の子、本当は性欲なんて消えてないんじゃないかな?だって性欲を持たない人間なんていないでしょ!人間は性行為で繁殖する、つまり性欲は本能的に組み込まれているものだからね。あの性の権化と言われたお兄ちゃんだからこそ、性欲がなくなるなんてありえない話なんだよ。

 

 

「どう?柔らかいでしょ?いつもみたいにたくさん揉んでもいいんだよ……?」

「ま、マジか……」

「零!!」

「今ちょっといつもの零くんに戻った!戻ったよね楓ちゃん!!」

「そうですね。湧き上がる性欲に勝てないのがお兄ちゃんですから!」

「またケモノになった零くんを見たいよぉ~。だから胸に触るだけじゃなくて、もっと激しくして」

「う、ぐっ……」

 

 

 お兄ちゃんの仮面が徐々に剥がれていくのが分かる。やっぱり我慢していたみたいだね。ことり先輩に甘く誘われた途端、顔を真っ赤にして胸を触っている手の指がプルプルと震えだしてるから。心の中では、先輩の胸を揉みたくて仕方がないと思っているに違いない。せっかくだし、もう少し後押ししてあげますか。

 

 お兄ちゃんと海未先輩が何を考えているのかはまだ検討は付かないけど、2人共必死になってことり先輩の誘惑を拒絶しようとしているってことは、ことり先輩の手助けをすれば邪魔できるってことだしね♪ほら私、人の邪魔をして愉しむのが趣味だから!

 

 

「お兄ちゃ~ん♪ずっと我慢していてツライんでしょ?女の子が自分からおっぱい揉んでいいよって言ってくれてるんだよ。それなのに、手をこまねいて躊躇するような臆病者だったっけ?例え学院内でも、女の子が自分を求めてくるなら襲う。それがお兄ちゃんじゃないの?」

「そうだよ!いつも軽くあしらわれてるけど、零くんを見てたらヤりたいって雰囲気ビンビンに伝わってくるんだから。だから下半身もビンビンにして、ことりを襲ってもいいんだよ?海未ちゃんなんかの邪魔に負けるな!!」

「な゛ぁ!?私なんかってどういうことですか!?ただ私たちは健全なお付き合いをしようとですね」

「ぐっ、うぅ……」

 

 

 あーあーお兄ちゃんったら唸り声を上げてまで耐えちゃってぇ~。でもその右手はもうことり先輩の胸を鷲掴みにし、あと少しでも指を動かせば揉みしだきが成立する寸前まで来ている。それにμ'sメンバーの胸を知り尽くしているお兄ちゃんなら、なおさらこの状況は耐えられないはず。だからもう私が余計なことをしなくても、あとは勝手に――――

 

 

「う゛ぁあ゛ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!ことり、こっちに来い!!」

「ひゃんっ!れ、零くんがいつもの雰囲気に……元に戻ったんだ!!」

「いいから早く来い!!俺を誘惑した罪は重いぞ……」

「いいよぉ~ゾクゾクするよそのセリフぅ~♪」

 

 

 ほらね!結局男ってのはただ欲望に支配された、どうしようもない生き物なんだよ。女の子をどう犯すかしか考えていないよどうせ。きゃ~怖い♪

 

 

「零、やっぱりあなた……」

「せんぱ~い♪」

「うっ、楓……」

「お兄ちゃんたちが戻ってきたら、何があったのかを洗いざらい話してくださいね!」

「は、はい……バレているのだったら仕方ないですね」

 

 

 正直、そこまで事の概要を知ることはできなかったんだけど、これも結果オーライってことで!

 それにしても、どこからともなくことり先輩の淫猥な声が微かに聞こえてくるのは、多分気のせいじゃないよね。クソッ、羨ましい!!

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「じゃあ、やっぱりあれは演技だったんだね」

「あぁ。約束を守れば自分を好きにしていいって言うからさ」

「それは言葉の綾だったんですけど、それで零の変態が少しでも解消されるならって……」

「なぁ~んだ。本当に零くんの性欲が消えたのかと思ったよぉ~」

 

 

 2人の話によれば、お兄ちゃんは海未先輩と約束事をしていたらしい。それはさっきの流れからお察しの通り、性欲を抑えること。1日だけ学院内で変態な振る舞いをせず、真っ当な人間として生活することができたのなら、海未先輩を好きにしていいって言われたみたいなんだよ。あの堅物先輩を好きにできると聞いて、もちろんお兄ちゃんはその賭けに乗った。

 

 だからことり先輩に誘惑されても耐えてたんだね。ことり先輩はいつでも可愛がれるけど、海未先輩はそうもいかないから仕方ないしねぇ~。

 

 

「でもさぁ、変態を解消した結果が海未先輩を好きにするって、それ本末転倒でしょ」

「私もそう言ったのですが、零がもうやる気になってしまって。私も思わず『言ってしまった』と後悔したのですが、一度言ったことを撤回するのは私としてどうかと……」

「先輩も変に負けず嫌いなところがありますからねぇ」

「そこは否定できませんね……」

 

 

 根は負けず嫌いじゃなかったら、このスクールアイドル戦争真っ只中で伝説なんて言われてないだろうしね。それでもさっき先輩はお兄ちゃん側についていたから、そう考えるとお兄ちゃんとあ~んなことやこ~んなことをしたいって願望はあったってことか。お兄ちゃんがことり先輩の誘惑に耐えて健全なままでいれば、確実にエッチができた訳だし……ホント、素直じゃないなぁ海未先輩は!

 

 

「それで、約束の方は?」

「なしに決まってるでしょう!バレてしまったんですから!!」

「だよなぁ~……くっそぉ~……」

「だったらぁ、ことりがいくらでもしてあげるよ♪全然相手をしてくれない海未ちゃんとは違ってね!」

「マジで!?」

「ダメです!私の目が黒いうちは――――」

「零く~ん♪」

「お、おいここでかよ!?」

「ちょっと!無視しないでください!!」

 

 

 はぁ、やっぱりこうなっちゃうのか。でもお兄ちゃんたちはこの関係が一番似合ってるかも。それにもしお兄ちゃんから性欲が消えたら……ブルブル、ダメだ想像するだけで死んじゃいそう。やっぱお兄ちゃんは変態さんじゃないとねっ!

 




 なんとかこの小説を存続させることができましたとさ。ことりと楓に感謝!零君の性欲が消える=この小説の終わりと言っても過言じゃなかったですから(笑)

 次回は絵里の個人回の予定です。



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