ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 最終章であり、最終回の直前回。
 こんなほのぼのとした日常も、もうこれで終わりかと思うとちょっぴり寂しくなったり。


ハーレムの条件

 3月、初頭。冬の寒さも少しは和らぎ、日中は心地よい暖かさであることが多くなった。駆け抜ける風に凍てつく冷たさはなくなり、肌をくすぐるかのように穏やかだ。木々の葉は目に見えて青みを増し、光は丸みを帯び柔らかくなっていく。寒さで神経質になっていた人の心も、春の陽気で少々浮かれつつある。

 

 そんな中、俺は相変わらず学院の芝生が広がるスペースに寝転がっていた。何かをやろうとしている訳でも、考え事をしている訳でもない。ただ単純にぼぉ~っと、取り留めもなくダラダラと過ぎ行く時間を過ごしている。そう、残り僅かな高校生活を。

 

 俺たち3年生は明日、ついに卒業式を迎える。高校生活最後の授業や卒業式のリハーサルなど、やるべきことは全て終え、あとは卒業を残すのみとなった。

 とは言うものの、正直卒業するっていう実感はあまり沸かない。俺たち3年生組の4人は絵里たちや秋葉のいる大学に通うことになるから、友達と離れ離れになる云々のお涙頂戴ストーリーは成り立たないのだ。それに学院と大学の距離も近いし、後輩たちにも会おうと思えばすぐにでも会える。だから大学生になっても、高校3年生から学年が1つ上がる程度の認識でしかないのだ。多分まだ子供なんだろうな、俺。それにあまりしみじみとした雰囲気は好きじゃない。これでいいんだよこれで。

 

 新緑の香りを含んだ、気持ちのいい芝生の暖かい空気が流れ込む。あぁ、このままうたた寝してしまいそう。別に授業をサボっている訳でもなく、卒業式のリハが終わってそのまま家に直行ってのも寂しいからここにいるだけだ。むしろこの学院にとっても俺の顔を拝めるのは今日と明日だけなんだ。むしろ顔を見せてやっているんだから感謝して欲しい。

 

 

 ――――って、何言ってんだ俺。自分でも言ってることがよく分からなくなってきた。これも春の心地よさが俺を腑抜けにしているせいだ。そうに違いない。

 

 

 そんな中、背後から太陽の光を遮るように影が差し込んだ。

 

 

「零、何してるのよこんなところで」

「真姫かよ……」

 

 

 仰向けで寝転がっている俺の視界にひょっこり現れたのは真姫だった。真姫は怪訝な表情で目をぱちぱちさせながら、俺の顔を覗き込む。相変わらず整った顔してるなぁと淡白な感想を抱きながらも、俺は彼女の顔から少し目線を下げた。

 

 特に何も考えていない、ふとして取った行動だった。だがこの状況から察しがつくだろう。寝転がっている俺、真姫は立ったまま俺を見下げている。つまりだ、顎を上げて目線をどんどん逸らせると、スカートの中身が――――!!!!

 

 気付くと、視界には真姫の顔ではなく靴の裏側が見えていた。

 もう回避は間に合わないと察知し、瞬時に首だけを数センチ動かす。その直後、地が響くような鈍い音が耳の奥まで振動した。恐る恐るさっきまで俺の顔が置いてあった場所を見てみると、芝の草は散り、土はボロボロとなり、真姫の靴と地面の接触面からは白い煙が上がっていた。あまりの破壊力に思わず声も出ない。淫乱ちゃんたちから逃れるための危機回避スキルを育成してなかったら、今頃鼻の高さがマイナスになっていただろう。てか、この押し潰し攻撃は過去に何度も受けそうになってきたことがあるから経験が生きた。

 

 

「危ねぇだろお前!!」

「勝手にスカート覗くような変態に、弁明なんて許されないわよ!!」

「お前がそんな位置にいるのが悪いんだ!!」

「あなた、そのうち『俺の前でスカートを履いてるのが悪い』とか極論吐きそうで怖いわ……」

 

 

 もっと言ってしまえば、おっぱいを触るのも『胸が膨らんでいるから悪い』と言えるし、最悪『お前が女の子だから悪い』と結論付ければ、どんな女の子に手出しをしようが許されるまである。まあそんな理由でセクハラが蔓延るのは、世界の終幕が訪れる直前くらいだろうが。

 

 

「それより、お前何しに来たんだ?もうすぐ卒業しちまう愛する彼氏の顔を見に来たってか。可愛い奴だ。素直にそう言えばいいのに相変わらずツンデレちゃんだな」

「自分で質問して自分で納得しないで!手伝って欲しいことがあるだけよ。どうせ暇でしょ?」

「必死に眠気と戦ってるから全然暇じゃない」

「暇そうね。じゃあ倉庫から一緒に椅子の運び出すから手伝って」

「お前こそ話聞けよ……」

 

 

 平日だろうが休日だろうが、いついかなる時問わず、周りの女の子たちが俺を呼び出す時は大抵『暇でしょ?』って言葉が文頭に来る。これほど失礼な挨拶の文章がかつてあっただろうか。俺だってぼぉ~っとしているようで、目の前を忙しなく通る女の子たちを観察する大義名分があるのだ。あの子のおっぱい半年前に比べて成長したなぁとか、あの子最近ちょっと色気付いてきたから毎晩オナニー捗ってるなぁとか、音ノ木坂学院の少女たちの健康診断も欠かさない。しかもタダで身体を見てやってるんだ、感謝くらいして欲しい。

 

 

「ただでさえ男手が少ないんだから、暇なら手伝ってよ」

「椅子の運び出しって言ったが、一体どこへ?」

「講堂よ。卒業式の会場作りのためのね。来賓の人たちの机や椅子はまだセッティングしてないから」

「あのさぁ、何が悲しくて自分の卒業式の会場の準備を手伝わなきゃならんのだ!!」

「案外そんな小さいことを気にするのね。もっと懐の大きい男かと思ってたわ」

「そんな淡々とした煽りで俺が動くとでも……?」

 

 

 煽りでムキになるお前とは違うんだから、そんな手に安々と引っかかる訳ないだろ。それにさっき言った通り、俺は女の子の観察で忙しいのだ。卒業する前に少なくとも俺が手を出してきた女の子たちの発育だけは確かめなければならん。それが男の義務ってものだろう?それに、人を働かせるならそれ相応の対価ってものが必要になるはずだ。

 

 

「どうしても俺に手伝って欲しいんだったらパンツ見せてみろ」

「はぁ!?」

「お前のパンツ見たらやる気でる。むしろお前は指示だけ出して、俺だけが働いてもいいぞ」

「そ、そんなこと……」

「それじゃあことりのパンツ見る?」

「マジで!?――――って、えぇっ!?」

「えへへ……♪」

「ことり……いつの間に!?」

 

 

 気配なんてものは一切ない。耳元でそよ風でも当たったと思っていたのだが、それはことりの囁きの声だった。ことりはいつの間にか寝転がっている俺の隣に座り込み、ニコニコとした怪しい笑顔で顔を覗き込んでいた。

 

 普段の日常でも気付かぬうちに音もなく接近されていることはままあるが、ここまで密着されたのは初めてだ。突然隣に女の子がいるとか、普通では喜ばしいことなんだけど、コイツに至っては怖い。ことりと付き合い始めてから彼女の女子力はグングン上がっているが、同時にこういった怪奇行動もどんどん増えている。油断してたらいつの間にか精液搾り取られてるとか、ありそうでビビっちまうんだけど……。

 

 

「ことりちゃん!急に走り出すなんてどうしたの!?」

「突然凛の目の前から消えたから、マジックかと思ってビックリしたにゃ!」

「ゴメンね~。ちょっと零くんの口からことりの欲求を刺激する言葉が聞こえてきたから♪」

「穂乃果、凛、お前らことりと一緒にさっきまでどこにいた?」

「講堂で卒業式の準備を手伝ってたんだけど……」

 

 

 その瞬間、俺の全身がブルブルと震えた。ここから講堂まではそこそこ離れていて、だからこそ真姫は俺に椅子の運び出しを頼んできたと思うのだが、問題はことりに俺の声が聞こえていたって事実だ。地獄耳なんてものじゃない、身体のどこかに盗聴器でも仕掛けられているんじゃねぇだろうな!?

 

 

「フフフ……♪」

 

 

 なんだことりのこの不敵な笑みは!?まさか本当に……本当に!?

 俺が手で身体中をゴソゴソ弄るたびに、ことりの笑みがどんどん黒濃くなっていく。これだけ探しても見つからないんだから、もしかして体内に埋め込まれているとか?俺が就寝中に持ち前の忍び足スキルで勝手に部屋に忍び込んで、秋葉直伝の手術で盗聴器を内蔵したとか……普通にありそうで怖い!!

 

 

「穂乃果、ことりちゃんともう十数年一緒にいるけど、1年でここまで変わったことりちゃんを見るのは初めてだよ……」

「留学騒動で涙を見せていた、あの純粋なことりちゃんはどこへ行ったのかにゃ……」

 

 

 あの頃のことりはもういない、全く別人に生まれ変わってしまったんだ。これは誰かの陰謀か、それとも因果律が狂ったのか、それは分からない。だけど今の彼女は歩く猥褻物の異名を誇らしげに掲げる、ただの脳内ラブホテルなのだ。決してあの時のことりを取り戻そうなんて考えてはいけない。逆に淫乱病を伝染されて仲間になってしまうぞ。

 

 

「全くあなたたち、サボってないで早く講堂に戻ってきてください」

「こっち全然人手が足りてないんだよぉ~」

「海未、花陽……」

「ゴメンゴメン、零君からことりちゃんを引き剥がすの大変で」

「零が素直に手伝ってくれれば、ことりも引っ付いてくるだろうから一石二鳥なんだけどね」

「ぜってー手伝わねぇからな俺は」

 

 

 ここまで命令されたら逆に手伝いたくなくなってくる。こうなったらもうヤケだ、絶対この身体を起こさねぇから。俺はここで高校生活最後の昼寝をするんだ!邪魔をする奴は例え恋人たちだって許さない!!

 

 

「ん?そういや海未たち、お前らも卒業式の準備手伝ってんのか?」

「えぇ、2年生だけでは大変そうだったので。私たちはもう帰るだけで暇もありましたし」

「自分がメインの卒業式なのに頑張るねぇ~」

「2年生は1クラスしかないから、花陽たち以外にも人手があると嬉しいなぁって……」

「だから、パンツ見せてくれたら行くって言ってるだろ」

「パ!?ぱ、ぱぱぱぱパン……!?!?」

「かよちんが壊れた!?」

 

 

 花陽の奴、実は自分が隠れ淫乱だってことをまだ隠しているのか。普段の優等生は仮の姿、ただ装ってるだけなんだよ。だって校舎裏に呼び出して、壁に手をつきおしりをこちらに向けてきたり、もっと触ってぇ~とか叫んでいたんだから。根の純粋さはまだ残っているんだろうけど、実際に()()()()()()()になった瞬間μ'sの誰よりも溜め込んだ性欲が爆発するに違いない。花陽も1年前と比べてエロくなったもんだ、身体も心も。

 

 

 そしてまた、俺の昼寝を脅かす影が後ろに――――

 

 

「こんな華奢で幼気な少女たちを働かせて、先輩たちは悠々とご休憩ですか。そうですかそうですか」

「楓!?雪穂に亜里沙も……」

「お姉ちゃんが手伝ってくれって言ってきたのに、こんなところでサボってるってどういうこと?」

「サボってないよ!零君に協力要請してるんだから!」

「一切動く気はないけどな。誰かがパンツを見せてくれるまで」

「ぱ、パン……!?」

「だ~か~ら~!ことりが見せてあげるって言ってるよねぇ~!」

「お前のは見飽きた」

「ヒドイ!?」

 

 

 だってなぁ、俺が望んでもないのに毎日見せつけられたらそりゃあマンネリ化もするって。そのせいでことりがどのような周期でどのパンツを履いてくるのか、大体分かるようになってしまった。だからと言ってそれで何かしようって訳ではないが、痴女プレイに慣れてきたのは自分でも割と驚いてしまう。女の子のパンツなんて、1年前の俺だったら鼻血が暴発して輸血パック必須レベルだったのになぁ。よくよく思い返せば、俺もかなりウブだった。

 

 

「な~んだ、パンツだったら妹の私のをいつも見てるじゃん」

「洗濯物としてならな。やっぱパンツはスカートと共に拝むのが一番興奮できるんだよ」

「そっかぁ~。それじゃあ亜里沙、お兄ちゃんに見せてあげて」

「えぇっ!?どうして私なの!?」

「この中では亜里沙が一番羞恥心がないと思ったからね」

「あるよ!!私にだって恥ずかしいって思う気持ちあるよ!!この前零くんにパンツ脱げって言われた時、とても身体熱かったんだから!!」

「おい亜里沙それは!!」

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

 

 亜里沙と雪穂以外の7人が、ある者はジト目で、ある者はゴミを見るような目で、ある者は羨むような目で俺を見つめる。三者三様の目線だが、共通しているのは呆然、軽蔑、嫉妬などの悲観的な思考だ。

 

 対して亜里沙と雪穂は、以前俺にコスプレをさせられて、とんでもなく卑猥な行為をされた苦い記憶を思い出しているのだろう。頬を紅潮させ弁解もせず黙ったままだ。あのコスプレプレイは他のメンバーには内緒ってことで3人の中で取り決めをしていたので、弁解も何もあったものではないのだが。

 

 

「雪穂たちズルイよ!!穂乃果だって色んな衣装で零君を喜ばせてあげたいのに!!」

「零くん!衣装担当のことりを呼ばないってどういうこと!?」

「全くあなたって人は、結局出会ってからの2年間全然成長していませんね……」

「あわわ……今日どんなパンツ履いてたっけ……??」

「変態の卒業は一生無理そうだにゃ……」

「強く抵抗できない2人に対して、まさに鬼畜の所業ね」

「どうして私も呼んでくれなかったのお兄ちゃん!!」

 

 

 コイツら好き好きに勝手なこと言いやがってぇ~!!俺はまだ恋人になりたてな雪穂と亜里沙に、男と付き合うってことはどういうことなのかを社会勉強させてやったんだ。それに2人は恥ずかしがっていた反面、流れに身を任せていたからそこそこ楽しんでいたんじゃないかと推測する。まあこれを口に出したら、また冷たい目線の矢を浴びることになるから言わねぇけどさ。

 

 

「相変わらず、ロクでもないことばかりしてるわねアンタ。にこにもやりなさいよ」

「でも逆に零君が健全になったらウチらが戸惑っちゃうから、今のままでいてくれた方が安心するけどね」

「分かってるじゃん。郷に入れば郷に従えって言うだろ?つまり俺と付き合うのなら俺の趣味に合わせてくれないと――――って、にこ!?希!?」

「気付くの遅すぎでしょ……」

「絵里もいたのか」

 

 

 いつの間にやら大学生組が自然と輪に加わっていた。そういや大学生は今頃春休みの真っ最中なんだっけ。2月から3月に掛けて長期間の休みがあるのはいいよなぁ~。まあ俺もみんなが受験でひーひー言ってる間に、何食わぬ顔で授業サボってたりした訳だが。しかし春休みの名目があるのとないのでは罪悪感の感じ方が違う。

 

 

「どうしてここにいるんだ?自分たちが春休みだからって、受験真っ盛りの俺たちを冷やかしにでも来たのか」

「そんな訳ないでしょ。音ノ木坂学院の卒業式前っていつも忙しくてバタバタしてるから、何か手伝えることがあればと思ってね」

「それじゃあ丁度よかった。真姫が手伝え手伝えうるせぇから、早く行ってやってくれ」

「へぇ~真姫は零に手伝ってもらいたくて仕方ないみたいねぇ~」

「なによにこちゃんその嫌味な言い方!!こっち見てニヤけないで!!」

「べっつにぃ~!他意はないわよ」

「真姫ちゃんはちょっとでも長く零君と一緒にいたいんやもんね♪」

「希!!」

 

 

 ま~たにこと希のμ'sメンバー弄りが始まったよ。その標的にされるのは大抵海未、真姫、絵里の3人。やっぱ素直にならずツンツンな性格を前面に押し出すと、結局こうやってボロが出るまでいびられることになるからやめておいた方がいいぞ。だからと言って、ことりや楓みたいに世間体を気にせず欲望丸出しの淫乱ちゃんになれとは言わないが……。

 

 

「それにしても、よく俺たちのいる場所が分かったな」

「分かったも何も、あなたたち目立ちすぎなのよ。遠くからでも騒いでる声がよく聞こえてきたし、すれ違った生徒さんたちに『μ'sの皆さんに会いに来たんですよね?なら芝生のところでいつも通り盛り上がってますよ』と言われたくらいなんだから」

「マジかよ。誰のせいだ?」

「強情な零のせいじゃない?」

「なんでやねん!ことりが暴走してたからじゃないか?」

「お姉ちゃんたちがサボり出した頃からうるさくなったと思う」

「それはおかしいよ雪穂!亜里沙ちゃんが素直にパンツを見せていれば……」

「わ、私のせいですか!?」

 

 

 もう俺を除くみんな悪いってことでいいよ。だって俺、寝てただけだもん。寝転がってるだけで何もしていないのに、周りに女の子たちがどんどん集まってくるんだから。そしていつの間にか、俺を取り囲むように芝生に立っていたり腰を下ろしたり、お前ら卒業式の手伝いをしていたんじゃないのかと思ってしまう。

 

 そう、女の子たちが向こうから勝手にやって来て勝手に話し掛けてくれる。自然と。みんな何の連絡も取り合っていないのに。我ながらいい身分にいるなぁと感じながらも、卒業してしまったらこの光景を拝みにくくなると思うとちょっぴり寂しくなってきた。μ'sが生まれたこの音ノ木坂学院で、このメンバー全員で集まるなんてことはもうこの先ないのかもしれない。卒業の実感が沸かないと言ったが、色々考えてみると募る思い出はたくさんあったんだ。涙は出ないけど感傷に浸るものはあるな。

 

 

「零……アンタ悟った顔してどうしたの?もしかして絶頂?」

「この淫乱ツインテールが。折角いい気分になってたのに邪魔すんなよ」

 

 

 μ'sのみんなのキャラが徐々に変わっていったのも、これまた思い出か。穂乃果たちに手を焼くことは幾度となくあったけど、それ以上に楽しかった記憶が蘇る。この1年本当にたくさんの出来事があったよなぁ。まあそれを思い出すのは卒業式の日が相応しいから、今はこの程度に留めておこう。

 

 

「ほら、零君いこ!」

 

 

 穂乃果が目の前で屈み、寝転がっている俺に向かって手を伸ばす。

 視界に映るのは、12人の彼女たちの微笑み。これだけの可愛い女の子たちに囲まれて、改めて自分が幸福の絶頂にいるのだと感じた。もうこの状況が普通であったから忘れてたけど、俺って相当厄介で癖者揃いで、そして美女美少女だらけの全国トップスクールアイドルメンバーの中心にいる。中心にいるからこそ終わらせない。例え卒業だとしても、この関係だけは絶対に。

 

 

 

 

 ここで俺は穂乃果の手を握る。仕方ないから卒業式の準備くらい手伝ってやるか。

そう意気込み、穂乃果が腕を引く力に身を任せようと思った、その時だった。

 

 

「ちょっ、零君!?」

「あっ……!!」

 

 

 思いのほか穂乃果の手を握る力が強くて、逆に彼女がその力に身を任せてしまう形となった。

 そうなればもちろん――――

 

 

「わっ!!」

「うぐっ!!」

 

 

 穂乃果が俺に覆いかぶさる形になる訳で。さらに彼女を受け止めようとした手が――――

 

 

「んっ……零くぅんそこはぁ〜!!」

 

 

 おっぱいをダイレクトに揉みしだいちゃってる訳で!!

 

 

「あっ、穂乃果ちゃんズルイ!!零くん、ことりにもやってくれなきゃ平等じゃないよ!!」

「本当に、あなたは一生変わることはないと断言できますね」

「あはは……私はそろそろ準備に……」

「いつもの零くんで凛は安心するにゃ~♪」

「いつか変態も卒業してくれないかしら……」

「お兄ちゃん、家に帰ったらもちろん私にも……ね♪」

「は、ハラショ~」

「なんかこの展開ももう慣れた……」

「ここまで来ると、むしろ才能よね」

「ウチにとっては親の顔より見た光景やけど♪」

「にこにもっと激しい方が満足できそうだけどね♪」

 

 

 俺たちのこんな日常だけは卒業なんて知らず、これから先ずっと続いていくんだろうな……。




なんと零君、今回寝転んでいただけ!何もしてないのにたくさんの女の子が集まってくることこそ、真のハーレムだと思います。完全に持論ですが(笑)

語りたいことは色々ありますが、それは全部最終回の後書きで思いの内をぶちまけようかと思います。

最終回の更新は、今週末か来週の頭の予定です。



新しく☆10評価をくださった

まーぶるちょこさん、由夢&音姫love♪さん

ありがとうございます!


Twitter始めてみた。
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