ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 前回からの続きとなります、読んでいない方はそちらを是非!
 新生μ's結成までは1つの物語が続きます。短編集に入るのはそれからですね。

 今後の予定について、後書きにちょろっと書いてあるのでそちらもご覧下さい。


ヤンデレる恋人たち

前回のラブライブ!

 

 遂に最後の高校生活の初日が訪れた!!春と言えば新入生!!まだ新品の綺麗な制服に包まれた女の子を拝むことのできる大切な季節だ!!

 だが真姫たち2年生組にそれを阻止され、俺は出鼻をくじかれた。しかし俺は諦めない。高校生活の最後に相応しい輝かしき日々を送るため、可愛い女の子をチェックしておかなければならないんだ!!やってやる……やってやるぞぉおお!!よし、こんな時はこのセリフだ。やるったらやる!!

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「雪穂!?亜里沙!?」

 

 

 真姫によって縄でぐるぐる巻きにされ、地面に横たわっていた俺の側の現れたのは、高坂雪穂と絢瀬亜里沙だった。

 彼女たちはどちらも今年から音ノ木坂学院に通う1年生だ。言うまでもないと思うが、雪穂が穂乃果の妹で、亜里沙が絵里の妹である。まるで世襲みたいに入れ替わりで入学してきたようだ。

 

 

「気を付けた方がいいわよ。この馬鹿、女の子のスカート覗きを趣味としてるから」

「えっ!?」

「違う!!断じて違う!!だから雪穂!!俺から遠ざからないでくれ!!」

 

 

 雪穂はササッと俺から遠ざかる。それと同時に憐れむような目を向けられ、俺の株もどんどん急下降していく。

 元から株は低いと思うけど、これ以上の低下は俺に残されている極僅かなプライドが許さない。何とか逆転する方法を考えなくては…………今までヤンデレたμ'sを更生させてきたんだ、こんな事態なんて楽々乗り越えてみせる!!

 

 

「大丈夫ですか零さん!?手首のところとか固く結ばれていますけど、痛くないですか?」

「…………天使だ」

「へ!?」

「天使様がご降臨なされた……」

 

 

 よく見ればクリクリっとした可愛い目、守ってあげたくなる幼い容姿、そして俺の脳を溶かすあまあまボイス。これはことりや花陽に続く天使様と言わざるを得ない。

 確かに絵里の妹というだけあって、目が綺麗で今にも吸い込まれそうだ。しかも前に会った時よりも胸が大きくなってないか?これもあの絵里の妹なだけのことはある。

 

 

「亜里沙!!その人に近づいちゃ危ないよ!!」

「俺を変質者扱いするな!!これでも女の子には優しい紳士なんだぞ!?度を超えたセクハラもしないし、みんなが嫌がることも絶対にしないから!!」

「そもそもセクハラする前提なのがおかしいのよ!!」

「なにを!?俺から変態気質を奪ったら、ただのイケメンで周りからモテモテ、頭脳明晰文武両道という完璧な部分しか残らねぇぞ?」

「よくそこまで自分を持ち上げられるわね……まぁ知っていることだけど」

 

 

 俺が完璧になってしまったら、この学院の可愛い女子生徒や若く綺麗な女性教師がこぞって俺の虜になっちまうぞ。だからこの学院の秩序が乱れないように、変態行為によってバランスを保っているのだ。どうだ?俺も陰ながら努力しているんだぞ。

 

 

「とりあえず生徒会室に行きたいから、この縄外してくれないか?」

「はい。では動かないでくださいね」

「ありがとな亜里沙。最近みんな冷たくて参ってたんだよ……」

「誰のせいだと思っているのよ……これはもう少し零がまっとうな人間になるために特訓しないといけないわね」

「やめろ、それだけはやめてくれ!!」

 

 

 最近は段々と彼女たちに行動を縛られている。ちょっとでも他の女の子に手を出したら即制裁だからな……

 なんか昔のヤンデレてた頃のみんなを思い出す。しかも今はあの時とは違ってみんなで結託して俺を襲ってくるから余計にタチが悪い。俺が何をしたっていうんだ……

 

 

「解けましたよ零さん」

「おおサンキュー!!ずっと変な体勢で寝てたから首が痛い……」

「自業自得じゃないんですか……?」

「そうよ。木の上から女の子を観察、自分から土下座してスカート覗き……もう変態の域を超えているわね。今度同じことしたら後頭部踏みつけだけじゃ収まらないから」

「今一度確認するけど、俺たち恋人同士なんだよな。まだ付き合い始めてから半年も経ってないのに、もうみんなの尻に敷かれているんですけど!?」

 

 

 特にSっ気の強い真姫からは、度重なる上から目線や頭踏みつけにより段々と調教されているような感じがしてならない。このまま真姫のM奴隷になっちまったらどうしよう!?

 

 

「まぁいいや、それより雪穂と亜里沙はこれから入学式だろ?親は一緒じゃないのか?」

「それが、私のお母さんと亜里沙のお母さんが意気投合しちゃって、この学院を一緒に見て周りに行っちゃったんです」

「そういやお前のお母さんはこの学院の卒業生なんだっけか」

 

 

 穂乃果がこの学院を廃校から守りたい理由の1つとして、自分のお母さんの母校を潰したくないという理由も含まれていた。高坂一族はこの学院が好きなんだな。

 

 

「あっ!?雪穂、もうこんな時間だよ!!」

「ホントだ!!それじゃあまたあとで、零さん西木野さん」

「おう、またな」

 

 

 そして雪穂と亜里沙は早足で講堂へと向かった。

 それにしても2人共初々しかったな。やっぱり可愛い女の子にはこの学院の制服が似合う。制服萌えの男にストーカーされないか心配だ。俺?俺は別にいんだよ。後で写真を撮らせてもらおうかな?

 

 

「雪穂ちゃん、零のこと名前で呼んでたけど、もしかしてもう手を出したの?また変なことしてないでしょうね?」

「だ・か・ら!!なんで手を出している前提なんだよ!?ただ一緒にデートしただけだって!!」

「デート……?」

「待て待て落ち着け、黒いオーラが出ようとしてるから!!違うんだ!!お前らと付き合う前の話だって!!穂乃果に聞けばわかるから」

「ふ~ん……まぁいいわ」

「こえぇよお前……」

 

 

 あの時は何とかヤンデレた真姫を更生させられたが、次ヤンデレ化したらもう止めることはできないだろう。監禁され一日中M奴隷として真姫を悦ばせるためだけの人形となってしまう。

 

 

「とりあえず生徒会室に戻るよ。なんか色々と萎えちゃったし」

「その色々っていうのが気になるけど、私も花陽が心配だし教室に戻るわ」

「そうか、じゃあまた後でな」

「えぇ、精々穂乃果たちにしごかれなさい」

 

 

 どうでもいいけど、萎えるって言った後にしごかれるって言われるとちょっとアレな表現に聞こえる。ここでそれを言うとまた生徒会室に行くのが遅れるのでやめておくが。

 

 

 そんな気持ちをグッと堪え、俺は生徒会室、真姫は教室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「お~す、やってるか?」

 

 

 生徒会室に行くといっても俺は生徒会役員じゃない。ただいつも穂乃果たちの手伝いをそれなりにしているため、この入学式の日にまで駆り出されたというわけだ。

 

 

「あっ!!零君やっと来た!!」

「も~う、遅いよ~」

「一体今まで何をやってたんですか?」

 

 

 生徒会室にいるのは、いつも仲良し幼馴染3人組。そうは言っても俺とコイツらとは知り合ってまだ1年だったりする。同じ学年なだけあって一緒にいることは多かったが、俺も3人の幼馴染かのように付き合いが長く思える。

 わざわざ紹介する必要もないと思うが一応。サイドポニーと見た目で分かる元気が取り柄、そして音ノ木坂学院史上もっとも生徒会長に不釣合いな人間こそ高坂穂乃果だ。

 

 

「入学式で話す内容、一緒に考えてくれるって約束だったでしょ?」

「えっ!?むしろまだ考えてなかったのかよ!?もうすぐ始まるぞ」

「だって、海未ちゃんに見せたら訂正ばっかされて返ってきたんだもん」

「あんな文章で新入生や親御さんに聞かせるわけにはいかないでしょう……」

 

 

 この常に敬語で大和撫子、だが規律には人一倍厳しく俺への制裁率はナンバー1の彼女こそ園田海未だ。生徒会長は穂乃果だが、実質海未が生徒会としての権力を握っているのは間違いない。

 

 

「なんで直前になって訂正してんだよ。今まで見てやってたんだろ?」

「卒業式の送辞みたいに、新入生や親御さんの前で歌いだそうとする文章を許すとでも?」

「…………マジか」

「はい」

「だって普通の文章じゃ面白くないかなぁ~って」

「入学式だから、流石に面白さを追求したらダメなんじゃないかな……?アハハハ……」

 

 

 今穂乃果にツッコミを入れた彼女こそ、我らが大天使の一員の南ことりだ。おっとりとしてぼけ~としている時もあるが、そのことりが可愛いんだよ。癖の強い穂乃果や海未に流されないように、"俺が"支えてやらなければ!!

 

 

「よし、この俺に任せとけ!!新入生が泣いて喜ぶ文章に仕立て上げてやる!!」

「やった!!零君最高!!」

「最高じゃありません!!泣かせてどうするんですか!?」

「入学式で感動の涙を流すなんて、すごくいい思い出になるとは思わないか?」

 

 

 しかも高校生活の初日に思い出を作れるとは、今年の新入生は羨ましいな。そしてあわよくば可愛い女子生徒に俺のことを覚えてもらって…………あっ、喋るのは穂乃果だった。

 

 

「それより零はこっちの書類仕事を手伝ってください。2人じゃ中々進まなくて」

「えぇ~……メンドくせぇ」

 

 

 μ'sのためなら全力で働くが、生徒会のためには働きたくない。だって俺がマジメな仕事ってなんだか似合わないじゃん?俺のキャラが拒否するんだよね。決してやりたくないからとか、そういう理由ではないぞ。仕事をやらないという道を強制的に選ばされているんだ。

 自分の中で変な自論を並べていると、ことりが俺の目の前までやって来て、上目遣い+顔を赤面+両手を胸の前に会わせた。

 ――――マズイ……これはいつもの……

 

 

「零くん♪おねがぁい♪」

 

 

「がぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 今年度初の『おねがぁい♪』によりノックアウト。

 コイツ、お願いの威力が日々増しているような気がする。春休み中もメイド喫茶でバイトしていたって聞くし、そこでまた腕を上げたんだな。

 実はこの前までは耐えられていたんだが、もう悟った。『おねがぁい♪』には勝てないと。

 

 

「おうお前ら!!とっとと仕事しろ!!穂乃果もサッサと文章考えろよ!!海未もボサッと突っ立てないでテキパキ動く!!ことりは休んでいていいよ☆」

「ズルイよ零君!!ことりちゃんばっか贔屓して!!」

「天使だからな」

「もう~♪零くんたら~♪」

 

 

 付き合い始めてからというもの、ことりの魅力がそれまで以上に伝わってきた。もちろんそれは彼女だけではなく、穂乃果たち全員もだ。やっぱり素直に告白して良かったなと今でもずっと思ってるよ。

 

 

「はぁ~……私は穂乃果と一緒に文章を考えますから、零とことりは書類仕事をお願いします」

「は~い♪」

「へ~い」

 

 

 入学式までの時間も迫ってきているので、穂乃果と海未はスピーチ文章に専念。俺たちは雑用をすることになった。

 この俺が雑用だなんて……もっとビッグになりたいものだ。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「ねぇ零くん」

「ん?」

 

 

 突然、隣に座っていることりが俺に話しかけてきた。話しかけてくるのは別に普通なのだが、書類を頭も使わず機械的に捌いているので脳みそがあまり働いていない状態であった。

 

 

「さっき、ここへ来る前になにしてたの?」

「あぁ、新入生の子を…………ハッ!!」

「へぇ~……新入生の子を……なに?」

 

 

 ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ……脳が働いていないせいでつい口走ってしまった!?

 ことりから圧倒的負のオーラを感じる。ことりだけじゃない、隣で文章を考えていた穂乃果と海未までドス黒いオーラを放ち、あっという間に生徒会室がRPGの魔王城のような雰囲気に変わる。

 

 

「零君、穂乃果たち言ったよね?変態行為は慎むようにって」

「待ってくれ、なぜお前らはそうまでして俺が変態行為をした前提で話を進めたがるんだ!?」

「黙りなさい。あなたに弁解の余地は残されてないんですから」

「なんでぇ!?」

 

 

 またしても彼女たちの理不尽な攻撃に俺は戦慄する。

 じゃあなにか?黙ってやられろって言うのか?そんなのイヤだ!!

 

 

「まぁまぁ、一応聞いてあげようよ♪処遇はそれからでもいいでしょ?」

「なにかされるのは確定なのね……」

「仏の顔は三度までって言うけど、穂乃果の顔は一度しかないからね。一応聞いてあげるよ」

「し、新入生の子を……」

「新入生の子を?」

「観察してました……」

 

 

「「「……」」」

 

 

 あれ?みんなの言葉が途切れてしまった。もしかして逆鱗に触れてしまったのか!?さっき制裁をもらったばかりなのに、またやられちまうのか……

 逃げられ……ないなこれは。隣にはことりがいるし、逆側には穂乃果と海未もいる。両方から道を封鎖されて動くに動けない状況だ。

 

 

「えぇ~と、新入生の子を見てただけ?」

「そうだよ!!お前らが勝手に被害妄想をしているだけで、俺は手を出してなんかないからな!!」

「ふぅ~ん……」

 

 

 これって……もしかして助かるパターンのやつ?流石に見てただけならコイツらも文句はないだろう。あくまで見てただけだから、清い心と清純な目で見てただけですから。先輩として後輩の顔を知っておきたいと思っただけですからね。

 

 

「ねぇ零くん♪」

「なにことり?」

「ことりたちは付き合ってるんだよね?」

「あぁ、恋人同士だな」

 

 

 ん?どうしていきなりそんな初歩的なことを確認するんだ?

 俺はふとことりの顔を見ると、明らかに笑っていない笑顔がそこにはあった。

 

 ――――まだだ……まだ終わってないらしい……

 

 

「穂乃果たちが彼女で、零君は彼氏なんだよね?」

「そうだ、俺が彼氏でお前らが彼女だ」

「そうですか……じゃあこの手帳はなんなんでしょうね?」

「はいぃ?…………あっ!?それはっ!?」

 

 

 海未が持っていたのは、俺が毎年春に新入生の可愛い女の子をリストアップしている手帳だ。

 もちろんそこには具体的な容姿から、俺の得意技である『見るだけでスリーサイズ測定』により、その女の子たちのスリーサイズまでが事細かに記されている。

 もちろんその手帳の内容をこの3人に見られたら……

 

 

「い、いつの間にそれを!?」

「零くんのポケットから飛び出していたのが気になっちゃて。でもお陰で……ね?」

「ね?ってなんだよ!?ことりさん、ここは穏便に……」

 

 

 数分前は新入生を暖かく迎えるかのような春の暖かさだったのに、今は別次元に飛ばされたかのような冷たい空気。

 3人からはとてつもなくドス黒いオーラが放たれていて、俺を包み殺すかのような雰囲気だ。

 

 

 ――――殺される……確実に……コイツらは他のみんなと比べて無慈悲で容赦がない。この3人が暴走すると、真姫たちも震え上がるような地獄が待ち受けている。もちろん地獄に落とされるのは毎回俺なのだが……

 

 

「何度も言っているのに、凝りない人ですね……全く」

「本当に、困った彼氏さん♪」

「分からせてあげるよ……零君は穂乃果たちのモノだって……」

 

「待て!!そのセリフは色々とヤバイ!!それにもうすぐ入学式が始まるぞ!!俺なんかで油を売っていていいのかよ!?」

「心配はありません。もう終わりましたから」

「あっ、そうですか……」

 

 

 腹をくくろう。もう何度も同じことをやられているんだ、今更ビビって恐れおののくことはない。また天国へ昇らされるだけなんだ。いつものことじゃないか。

 

 

「それじゃあオシオキた~いむ!!」

「久しぶりに零くんをイジメられるんだぁ~楽しみぃ~♪」

「私たちの"愛"、たっぷり受け取ってくださいね」

 

「いいだろう。それがお前たちの愛情だというのなら、俺が全身全霊を込めて相手をしてやる!!」

 

「穂乃果、零君のそういうところ大好きだよ!!」

「流石ことりたちの零くん、カッコいい♪惚れ惚れしちゃうよ♪」

「私もあなたの潔いところは大好きですよ♪」

 

「俺もみんな大好きだ!!だから…………さぁ来い!!」

 

 

 

 

 そして、音ノ木坂学院に男の断末魔が響き渡った。

 新入生やその親御さんの間では、しばらく謎の叫び声が聞こえるホラーな学院だと噂されることになる。

 

 

 




 これを読んだ人はこう思うだろう、『零君とμ'sのみんなって、本当に付き合っているんですか?』と。自分でもそう思います(笑)


 前書きでも言った通り、しばらくは1つの物語として進んでいきます。『日常』のような短編集をお望みの方はもうしばらくお待ちください。


 投稿時間に関してですが、『日常』や『非日常』みたいに18時固定の方がいいですかね?ご意見があればお申し付けください。


 次回は"あの妹"が登場!!音ノ木坂学院が恐怖のどん底に!?

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