ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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 何気にこの『日常』シリーズを執筆し始めて2年になりました。今後共引き続きよろしくお願いします!


 Aqoursのメンバーが全員登場するまでは導入回なので、μ's編のようなドタバタ劇はもうしばしお待ちください。

 ちなみに原作名を『ラブライブ!サンシャイン!!』に変更しました。


みかん少女、痴漢魔を脅迫する

 バスは何事もなく無事に浦の星女学院前に到着した。いっそのことエンストやパンクなどの軽い事故が起こり、それで痴漢騒動もお流れになって欲しかったのだが現実はそこまで甘くない。どうやら俺の人生も終着点に到着したみたいだ。

 

 結局、バスを降りるまでずっと赤紫色の髪の子に手首を掴まれ……いや握り締められていた。脈が止まりそうなくらいの力を込められていたので、通報される以前に命が尽きるって意味で人生が終了しそうだったぞ。しかし傍から見たら女の子が男と手を繋いでいる光景に見えなくもなかったから、バスを降りる時のこの子はかなり戸惑っていた。その表情が地味に可愛かったのでそれを眼福として、そして自分への冥土の土産として受け取っておこう。

 

 ちなみに、千歌ちゃんと呼ばれていたオレンジ髪の子はバスを降りても眠気でウトウトしていた。この状況になってもまだ自分が一番の被害者だと認識していないあたり、都会の電車には乗せられないな。あまりに鈍感すぎると車両内で痴漢され放題だぞ。

 

 赤紫髪の子に視線を戻すと、見下すような冷たい目で俺を睨んできた。この雰囲気、うっすらと海未の面影を感じる……。

 

 

「まずは職員室に突き出します。懺悔できるのは今だけですよ」

「どうせ懺悔しても許してくれないんだろ……?」

「その言い方、遠回しに自分が痴漢魔だって認めてますよね」

「ウジウジしたって状況は変わらねぇんだ。だったら毅然としてやるさ」

「どうしてそこまで余裕なんですか……。もしかして、常習犯とか??」

「…………」

「沈黙は肯定ですよねこの不潔!!」

「不潔とか言うな!! 俺ほど自分の欲求に純粋な奴はいねぇって!!」

「その欲求が不潔なんですよ!!」

 

 

 出会ったばかりの美少女に痴漢魔やら不潔やら言われたら、男だったら誰でも傷つくんだぞ。そこのところこの子は分かってんのかなぁ。まぁ、俺が痴漢魔ってのはまさにその通りだから一切反論できねぇんだけどさ……。

 

 ちなみに俺たちの横では、グレー髪の子がオレンジ髪の子の眠気を覚まそうと身体を揺らしていた。

 

 

「千歌ちゃ~ん! そろそろ起きなよ~」

「うぅ~ん……曜ちゃん? おはよぉ~」

「はいおはよう。まだ眠い?」

「うん……」

「それじゃあ目が覚めるとっておきの話をしてあげるね」

「ん~……?」

 

 

 なんだか嫌な予感がする。いやそんなことはないと現実逃避しようとしても、たった1つの答えが頭の想像から消えることはない。遂に……遂にあの事実が露見してしまう!!

 

 

「千歌ちゃんはね、痴漢されたの。さっきのバスの中で……」

「ふぇ……? 今なんて……?」

「千歌ちゃんはね、痴漢されたの。さっきのバスの中で……」

「なぁ~んだそんなことか――――って、え゛ぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええええっ!?!?」

 

 

 オレンジ髪の子が放った驚愕の叫びが響き渡り、俺たちの横を通る生徒たちが一斉にこちらを振り向く。これこそ俺の恐れていた事態だ。この子に俺の所業が伝わることは覚悟していたが、外で痴漢行為をバラされると当然この反応で注目を浴びるのは目に見えている。今日来るはずだった教育実習生だが、実は逆に教育指導が必要な奴だったと噂が流れてしまえば俺はもうこの土地で生きてはいけない。

 

 さっきから俺の想定する最悪の事態が次々と正夢かのように訪れている。このままでは一番危惧していたブタ箱行きの予想が現実になる日も近い……?

 

 しかし幸運なことに、周りの生徒たちは歩を進めて俺たちをスルーしていった。もしかしたらこの子が穂乃果のように騒いで叫ぶことなんて日常茶飯事で、もうみんなその日常に慣れているからかもしれない。理由はよく分からないが、とりあえず危機は1つ過ぎ去った。しかし最大の驚異である赤紫髪の子がまだ俺の手首を握り締めたままなのだが。そろそろ脈止まりそう……。

 

 

「犯人はこの人よ。この人が千歌ちゃんの身体を触ろうと、いや完全に触っていたんだから!!」

「お、おいっ!! そんな大声で暴露すんな!!」

「こ、この人が……」

「あ、あぁ。悪かったよ……」

「…………」

 

 

 な、なんだこの沈黙は!? てっきりこの子からも冷たく蔑んだゴミを見るような目で見られると思ったのに、それとは全く違う、むしろ逆で瞳に謎の輝きを浮かべていた。まるで憧れの人を見つけたかのような、そんな感じ。でも流石に初対面だし、多分俺の勝手な思い込みだろう。

 

 

「おい、どうした?」

「ふぇ!? い、いやなんでもないです!!」

 

 

 オレンジ髪の子――――千歌と呼ばれる子は自分の顔の前で両手を振る。少々赤面しているのが気になるが、そこまで痴漢されたことが恥ずかしかったのだろうか。でも普通に考えれば、見ず知らずの男に太ももやら胸やら触られたらそりゃあ恥ずかしいわ。

 

 

「う~ん……」

「千歌ちゃん? どうしたの?」

「私思うんだけど、この人がそこまで悪い人には見えないんだよね」

「えっ、本当にそう思ってくれる!?」

「あなたは黙ってください! 千歌ちゃん、どうしてそう思うの?」

「いやぁなんとなく! なんとなく私の勘!!」

「「はぁ………」」

「梨子ちゃん!? 曜ちゃん!? どうしてため息つくの!?」

 

 

 この一連のやり取りで分かったことがある。この千歌って子、その場の思いつきで動く衝動的なタイプだな。でもそういった感覚だけで行動するタイプに限って、問題解決能力に長けてたり周りの統率を取れたりするんだよな。身近な例として穂乃果がいるが、この千歌って子からはまさに穂乃果と同じような雰囲気が感じ取れた。

 

 彼女の性格批評はひとまずここまでにして、今は最悪な状況を切り抜けるチャンスができたことを喜ぶべきだ。痴漢された本人が何故か俺に好意的だから、示談に持ち込めばお咎めなしで釈放される可能性がある。もちろん梨子ちゃんと呼ばれた子と曜ちゃんと呼ばれた子は反論派だろうから、この2人をどう丸め込むか作戦を練っておかないと。

 

 

「この人は千歌ちゃんの身体を触ったのよ? 男性は獣って言うし、身体を堪能しながら千歌ちゃんのあられもない姿を妄想していたのかも!!」

「落ち着いて梨子ちゃん。私その時ぐっすり寝てたから不快な思いはしてないし、別にいいかなぁって思ってるんだけど……」

「えっ、許しちゃうの!? よ、曜ちゃんはどう?」

「私!? 私は実際にその人が千歌ちゃんに手を出したところを見たわけじゃないから、なんとも言えないよ。梨子ちゃんもチラッと横目で見ただけなんでしょ? だったら本当にその人が手を出したって分からないんじゃないかな?」

「それはそうだけど……」

 

 

 おっ、急に流れが俺の方へと向いてきたぞ!! これは……これはもしかすると無実と偽ってこの場を切り抜けられるかも!? いやぁやっぱり諦めないものだねぇ~。やっぱりチャンスは待ってみるもんだよな、うんうん。

 

 だが、俺の心の中では安心感に混じって若干の怒りが生まれていた。せっかく俺が痴漢してやったのにも関わらず、羞恥に悶える姿も見せず笑顔で許してくれることに、今まで幾度となく女の子を昇天させてきた俺のプライドを傷付けられたような気がしたからだ。そんな薄汚れたプライドを捨ててこの子たちの会話に身を任せていれば穏便に事が運ぶ状況なのに、俺は無性にこの子たちの会話に口を挟みたくなる。人生が転落してもいいのか、と己の心に訴え掛けるが、やはり恋人12人を手玉に取ってきた男としてこの展開だけは見過ごせない。

 

 

「私もウトウトして身体が揺れてたから、たまたまこの人にぶつかっちゃっただけかも。ほら、あのバスの後部座席って席と席の間が全然空いてないでしょ?」

「う~ん、そうなのかな……? 私の見間違い?」

「断定はできないけど、決め付けるのも良くないと思うよ」

 

 

 許せ、俺! 男はプライドを失ったら死ぬんだ!! 俺はまだ死にたくねぇ!!

 

 

「違うな、全部俺が悪いんだ。君に手を出したのは……俺だよ」

 

 

「「「へ……?」」」

 

 

 3人から素っ頓狂な声が上がる。そんな反応をしてしまうのも仕方がない。だってついさっきまで全力で否定していた奴が突然自分がやったと自首したんだから。しかも焦りなどなく堂々と。傍から見たらこんな意味不明な行動、頭がおかしい奴としか思われないだろうが、俺としては自分のプライドを守るためにやったことだから後悔なんてしていない。むしろ俺が睡眠中の君を気持ちよくしてやったと、自らのテクニックを自慢したいくらいだ。

 

 

「えっ、あなたが……?」

「あぁ、さっきは嘘をついて悪かったな。本当は千歌って子と曜って子の話に便乗してこのまま退散するつもりだったんだが、3人がこのまま真実を知らずにモヤモヤすることを考えたら思わず口を挟んじまった」

 

 

 本当は自分のプライド保護のためなのだが、ここは便宜上で対応しておく。一応言ったことに嘘偽りはなく、もしこの場を嘘で切り抜けたとしても、3人は痴漢騒動に心残りが残ったままこの先の日常を過ごすことになるだろう。特に一番初めに俺を庇ってくれた千歌って子に対して申し訳ないと思ったんだ。だからプライドを守るのはもちろん、真実もここで白黒ハッキリと付けておいた方がいい。

 

 

「それでは認めるんですね? 故意に千歌ちゃんの身体を触ったと」

「だからそう言ってるだろ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

「そうですか。じゃあ一緒に職員室へ――――」

「ちょっと待って梨子ちゃん!!」

「ち、千歌ちゃん……?」

「ちょっとぉ~私に考えがあるんですけどぉ~。聞いてくれますかぁ~??」

「お、おぅ……」

 

 

 なんだなんだ!? 突然会話に割り込んできたと思ったら、今度はあざとい口調で俺の元へと歩み寄ってきた。そしてその顔は一目で分かるくらいのニヤリとした悪い表情をしている。さっきまでは俺を庇ってくれてまるで天使みたいだったのに、いつ小悪魔に転生したのか……。

 

 

「お願いというのは――――私たちの顧問になってください!」

「顧問!? 部活でもやってんのか……?」

「私たちAqoursの顧問ですよ! あっ、もしかして知りません? ここら辺だったら有名だと思ったんだけどなぁ」

「残念ながら俺、この土地の人間じゃないんだ」

「そうだったんですか。ならば教えてあげましょう! 私も梨子ちゃんも曜ちゃんも、スクールアイドルをやっているんです!」

「スクールアイドルだと……」

 

 

 いきなり顧問になれと言われたことも驚いたが、何より目の前の子たちがスクールアイドルだってことの衝撃の方が大きかった。μ'sとA-RISEの活躍で全国各地にスクールアイドルが爆発的に増えたと聞いていたので今更そのような子たちに遭遇するのは珍しくもないのだが、痴漢相手がスクールアイドルというのは運命的すぎる。俺ってつくづくスクールアイドルの女の子たちと縁があるらしい。

 

 

「ちょっと千歌ちゃん!? 顧問だなんて……この人痴漢魔なのよ!?」

「だからその呼び名、そろそろやめて欲しいんだが……」

「大丈夫だよ梨子ちゃん。私たちが痴漢のことを黙っている代わりに、この人に顧問をやってもらうように脅し――お願いしてるんだから」

「おい、今さっきはっきりと脅しって言ったよな!?」

「別にいいですよね? ていうか、顧問になってくれないとバラしますから色々と♪」

 

 

 コイツ……咄嗟にそこまでの策を張り巡らせるなんて、将来は詐欺師として活躍できそうだ。

 それにしても、結局逃げ場がなくなったのは痴漢を暴露する前と同じか。正直に言えば、スクールアイドルの顧問にはかなり自信がある。なんたってあのμ'sと2年間一緒に付き合ってきたくらいだから。しかしまだこの子たちのことは名前くらいしか知らないので、流れのまま顧問になるのはどうなのかなぁ。もちろん拒否権など一切ないお願い(脅し)なので、断ることすらできないのだが……。

 

 

「私も別にいいと思うな」

「曜ちゃんまで!?」

「だって顧問がいないせいで今まで何かと活動が窮屈だったでしょ? 東京に遠征へ行く時も鞠莉さんが手を回してくれなかったら行けなかったし。学院に顧問になってくれるほど手が空いてる先生もいないからね」

「それはそうだけど……」

「ここはほら、利害の一致だよ。私たちは顧問が手に入るけど、不本意ながら痴漢魔さんと活動を共にする。痴漢魔さんは痴漢をバラされない代わりに私たちの顧問になる。ちょうどいい取引だと思うけど」

 

 

 あっ、そこ不本意って言っちゃうんだ……。それに大人を上手く言いくるめて自分の土俵へ引きずり込むこのJKたち……怖い!! 完全に自分が利用されようとしているのは分かっているけれども、通報という最強にして最凶の切り札を持っている彼女たちには泣く泣く従わざるを得ないのが悔しい。

 それにしてもこんな犯罪者を顧問にするなんて、今まで相当困ってたんだな。それとも俺に脅しを吹っ掛けて遊んでいるだけなのか……。彼女たちが秋葉のような悪女だとは思いたくないぞ。

 

 

「どうですか? 顧問になってくれますぅ?」

「どうせ拒否権なんてないんだろ。だったら顧問にでも何でもなってやるよ」

「本当ですか!? ありがとうございます♪」

「これでAqoursの活動範囲も広がるね!」

「こうなることくらい分かってたくせに、白々しいなお前ら……」

 

 

 こうしてなし崩し的に顧問になってしまった。まだ教師として何も仕事をしてないっていうのに……。

 あれ? そういやこの子たち知ってんのかな……?

 

 

「千歌ちゃんも曜ちゃんも……。はぁ、仕方ありませんが私からもよろしくお願いします。ですがいくら顧問と言っても外部の方なんですから、あまり学院には近付かないでくださいね」

「なるほど、やっぱり知らなったのか。そりゃあそうだよな」

「どういうことですか?」

「教育実習生なんだよ俺。君たちの学院のな」

 

 

 その瞬間、3人は揃って目を丸くする。

 

 

「「「え゛ぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?」」」

 

 

 女の子が出してはいけない少々野太い声色の驚嘆が響いた。まあ驚くのも無理はないだろう。さっきまで見ず知らずの痴漢魔でしかなかった変態男が、急に生徒と教師という近しい間柄になったんだから。でも声が裏返るほど驚くって、俺ってそこまで教師の風格がないのか……?

 

 

「外部の人より教師が顧問になった方が色々と融通は効くだろ。やっぱ痴漢魔が教師や顧問だと不安か?」

「いえいえ! 教師の人が顧問になってくれた方が私たちも都合がいいですし♪」

「顧問をこき使う気満々な言い方だなオイ……」

「スクールアイドルである私の身体を触ったんです! それだけたぁ~っぷりと働いてもらいますから♪」

「こっちが下手に出ているからってコイツ……」

 

 

 千歌って子は自分の身体を触った男を顧問にするという寛容な心を持っているが、生意気な態度でこちらをズルズルと自分のペースに引きずり込む陰険さも持ち合わせているようだ。俺もμ'sの顧問だった秋葉みたいにもう少し貫禄があればよかったのだが、好感度が底辺のスタートを切ってしまった以上ここから頑張って信用を取り戻していくしかなさそうだ。

 

 

「あっ、そろそろ行かなきゃ朝礼に遅刻しちゃうよ!」

「ホントだ! それじゃあ私たちの顧問の件、よろしくお願いします! それともし私たちの授業を担当することがあれば、成績のほどを少しオマケして欲しいなぁ……とか!」

「残念ながらそれは君との契約外だ。もし授業で会うことがあったら、その時は厳しく指導してやるからそう思え」

「うぅ、鬼ぃ……」

 

 

 いくら痴漢をしたとは言えここまで散々脅されてコケにされてきたんだ、授業の場でくらい報復させてくれないと俺の気が済まない。彼女の言動から察するに、成績は(かんば)しくなさそうだから仕返しが捗りそうだ。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 学院に到着して職員室に挨拶へ行った後、教育実習期間に俺を指導をしてもらえる先生と共に廊下を歩いていた。

 

 

「まさか神崎君と一緒に教師生活を送るなんて、4年前までは思ってもいませんでしたよ」

「あの頃はただやんちゃ坊主でしたから俺。だから先輩としてよろしくお願いしますよ、山内先生」

 

 

 山内奈々子先生。俺が高校3年生だった時の副担任だ。1年前に音ノ木坂からこの浦の星に異動となり、現在は2年生のクラスの担任となっている。のんびりとした性格であり、生徒たちと同年代にしか見えない童顔と小柄な体格は4年経った今でも相変わらずだ。穏やかすぎて頼りなさそうな雰囲気の先生なのだが、こうして同じ教師の立場に並んでみるとこれほど優しくて頼りがいのある先生はいない。俺が教育実習生としてこの学院に来る手続きをする時も、先生にかなり助けてもらった。

 

 本来教育実習は自分の母校に行くのが普通なのだが、俺以外にも音ノ木坂で教育実習する人がいたのと、ここに山内先生がいると知った自分の希望により俺はここに配属されたのだ。それに音ノ木坂には俺のトラウマであるあの先生がいるので避けたかったってのが一番の理由なんだけどね……。

 

 

「神崎君が主に担当してもらうのは、私が受け持つ2年1組です。みんな良い子ですから、神崎君の社交性があればすぐに打ち解けられると思いますよ」

「そうですかねぇ。女子高だからテンション上がってたんですけど、いざ生徒たちを顔を合わせるとなるとちょっぴり気が引き締まります」

「あはは、神崎君でも緊張するんですね」

「そりゃあ女の子相手だし、その人の印象は顔を合わせて3秒で決まるとも言いますから」

「相手をそこまで意識するあたり、高校生から成長したってことですよ」

 

 

 いつもの俺なら女の子相手でもここまで畏まることはなく、むしろ自分の魅力をこれでもかってくらい曝け出すのだが、さっきの痴漢騒動のせいで女の子を妙に警戒してしまっている。高校時代の俺だったらそんなことすら気にせずもっとハジけられたんだけどなぁ。先生の言う通り、そこのところは成長したと思って納得しておくのがいいのか。

 

 そして心の中で項垂(うなだ)れている間に、先生の足がとある教室の前で止まった。

 

「ここが2年1組の教室です。私が先に入って朝礼をしますので、神崎君は私に呼ばれたら中へ入ってきてください」

「はい、分かりました」

 

 

 やべぇ、これまで生きていた中の緊張とは比べ物にならないくらい心臓がざわついているんだが……。一度にたくさんの女の子たちから好意的に見られるようにするには、どのような挨拶をしたらいいのだろうか? 普通に優男を気取る――のは俺のキャラじゃないし、ナルシストっぽく振る舞う――のは逆に引かれそう。教室の中から先生や生徒たちの挨拶の声が廊下に聞こえてくる。もう時間がないぞ、どうすりゃいんだ……??

 

 そうだ、ここは東京とは違って田舎だから、元気よくフレンドリーな雰囲気を出しておけば人当たりの良い田舎の女の子には受けがいいかもしれない。よしっ、それでいこう!

 

 

「それでは3週間だけですが、皆さんの副担任を努めます教育実習の先生をお呼びします。それでは神崎先生、どうぞ!」

 

 

 遂にこの時が来てしまったか……。変に気取ろうとするなよ俺、いつも通りに行けば大丈夫だ。

 そして教室の扉を開け、教卓へと歩を進める。教卓に着くまでは生徒たちの方を見ないように意識していたのだが、そこで何故か不自然な視線を感じた。ほとんどが珍しいものを見るような視線なのに対し、いくつかの視線に驚き混じりで凝視されているような気がする。

 

 その不可解な視線が気になって、思わず生徒たちの方へ目を向けてしまう。

 すると、そこには見覚えのあるオレンジ髪と赤紫髪、グレー髪の少女たちがまたしても目を丸くしてこちらを見つめていた。まさか、俺が副担任となるクラスって……!!

 

 

「お、お前ら……」

「さっきの先生……だよね?」

「あなたが私たちの……」

「なんか凄い……奇跡だ」

 

 

 やはり俺は、一度狙った女の子たちにとことん縁があるらしい。

 そして、ここから俺の新たなる日常が始まろうとしていた。

 

 

 

 

To Be Continued……




 痴漢は犯罪なので、経験がある人は是非自首を勧めます。では私もそろそろ警察へ行くかな……。


 次回はAqoursのメンバーが全員登場予定。早急に導入回を終わらせていつもの日常を執筆したいので、投稿ペース早めになるかも。


新たに☆10評価をくださった方(μ's編終盤~Aqours編1話まで)

スプリングスノーさん、豆打サロさん、fumiyan2000さん、nekomimi0304さん、リュウツさん、からしぃさん、ふぁいやー☆さん、明日明後日明明後日さん、シュワシュワバンブーさん、キース・シルバーさん、ユッキー@@さん、蘭陵王メビさん

ありがとうございます!


Twitter始めてみた。
https://twitter.com/CamelliaDahlia
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