ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 今回は鞠莉とダイヤの回です!
 この小説で講座と言ったらあの子を思い浮かべますが、今回は敢えて純粋な読者さんに媚を売って超初級編にしてみました。果たしてこの小説の読者さんにウブな人がいるかどうかですが(笑)


鞠莉の羞恥心克服講座(超初級編)

 

「なぁ。俺はAqoursの顧問であって、生徒会の顧問にまでなった覚えはないんだけど……」

「これは罰です。教師なのにも関わらずルビィにあんな仕打ちを……」

「だからあれは俺がやったんじゃないって言ってるだろ!!」

 

 

 俺はダイヤに無理矢理生徒会室に連れ込まれ、強制的に仕事を手伝わされていた。

 こうなったきっかけは、先日花丸とルビィのハンドマッサージ器騒動の件だ。どうやらダイヤは俺がアイツらにバイブを当ててイカせたと思っているらしいのだが、それは事実無根。犯人はそれこそあのバイブ自身なのだ。勝手に女の子のGスポットを付け狙うストーカーみたいな機能が付いたあのバイブこそが諸悪の根源。いくら痴漢や覗きなどの犯罪を重ねている俺と言えども、バイブを握って女の子を攻めるというエロ本のような教科書プレイなどしないからな。

 

 だがダイヤはそれを信じようともしない。彼女が言うにはバイブにそんな機能が付いてる訳がないと主張しているのだが、まあその通りなんだよね。秋葉の発明は奇想天外なモノが多くて、見た目だけではどんな仕掛けがあるのか分からない場合も多い。だから充電切れで息消沈しているバイブを見せても、そのバイブが根源だと信じてはもらえなかった。

 

 その結果、こうして俺はAqoursの活動だけでなく生徒会にまでコキを使われるようになったのだ。毎回定時帰宅のように訪れるオチに同情してもらおうとは思ってないけど、今回ばかりは俺が徹底的に不憫じゃね?

 

 

「ほらほらダイヤ、顔が怖いよ。スクールアイドルならもっとプリティにね♪ 頬っぺ抓って柔らかくしてあげる!」

「ふがっ!? ま、鞠莉しゃん頬伸ばさないでくらしゃい!!」

「おぉ~いい感じに愉快な顔になってきたね!」

 

 

 どうして生徒会業務を俺に手伝わせているのか分かった。しばしば鞠莉がダイヤにちょっかいをかけて仕事が進まないからだ。話を聞くところによると鞠莉は生徒会役員ではなく、Aqoursの活動と生徒会を両立しているダイヤの手伝いでよくここへ来ているみたいなのだが、さっきから彼女を見ているとダイヤの邪魔しかしていない。やんちゃガールで生徒会と言えば希だが、アイツはまともに副会長を努めていたぞ。どうして鞠莉はこうなった……ていうか、そういや理事長だったなコイツ。まあそんなご大層な肩書きも生徒会では何の意味もないが。

 

 

「まだ先生のこと怒ってるの?」

「もちろんですわ! いくら教育実習生とはいえ教師なのです。なのにルビィにあんな……あんな淫らな……!!」

「だから違うって言ってんだろ!!」

「あの状況で弁解の余地があるとでも?」

「だからあれは俺の姉の仕業で……」

「お姉さんがこの学院に来る理由は!? ルビィと花丸さんにあんなことをする理由は!? それを全て筋が通るように説明してもらわないと納得できません!!」

 

 

 あの時から一貫して理由を求め続けられているが、俺がここで『秋葉は超天才な研究家でイタズラが好き』だと言っても絶対に納得しないだろう。そもそもそんな人がいること自体2次創作のフィクション世界みたいなんだから、信じられないのも無理はない。だけどそれが事実だからこれまた信じてもらえないのがむず痒いんだよな……。

 

 

「確かにダイヤの言うことも一理あるけど、先生が嘘を付いているとも思えないなぁ私は」

「鞠莉、お前だけだよ信じてくれるのは……」

「ん? 別にそこまで信じてないけどね♪」

「なんだよそれ!?」

「そんなことよりも、ダイヤと先生の問題を解決できる素敵でビューティフルな方法があるんだけど!」

「なんか胡散くせぇなぁオイ……」

 

 

 鞠莉も千歌みたいに突拍子もないことを言うから正直期待はしていない。だけどダイヤとの仲がこれ以上拗れるのもどうにかしたいし、俺では何を言っても彼女の心を動かせないので今は藁にもすがる思いだ。

 

 

「それで? その解決方法と言うのは?」

「簡単なことだよ。ダイヤがエッチなことを耐えられるようになればそれでOK!」

「は……? え、えっちってそんな……あ、あなたまたそんなことを!!」

「それそれ! ちょっとアダルティな言葉だけでそうやってすぐに顔を赤くするところを直さないと!」

「あぁ、確かにそれは一理ある」

「先生も納得しないでください!!」

 

 

 鞠莉の奴いきなり何を言い出すのかと思ったが、よくよく考えてみたらダイヤがもう少しエロ耐性があれば花丸とルビィがイキ倒れていたあの状況を見ても大して取り乱さなかったのかもしれない。そうなれば俺が無実の罪を着せられることもなかった訳だ。ダイヤがもっと大人の雰囲気に慣れてさえくれれば、今まで行ってきた俺の淫行のツケも多少は和らぐかもしれない。正直鞠莉の提案は意味不明だが、敢えてここは己の保身のために便乗させてもらおう。

 

 

「ダイヤってば、胸を少し触られただけです~ぐ怒るんだもん!」

「怒るに決まってますわ!! むしろ怒らない女性の方が少ないでしょう!?」

「スクールアイドルとしては、そんなハプニングすらも可愛く、そして手馴れた大人の女性を見せつけながら余裕を持って対処しなきゃ!」

「スクールアイドルは清楚さが命ですわ!! μ'sを見てみなさい。皆さん本物の女神のように純潔でキラキラと輝いているんですから!」

「いやそれはないわ」

「女性を卑猥な目で見る下衆な男は黙っていてくれません? 私はもう穴があくほどμ'sのライブ映像を見ているのですから分かります!」

 

 

 いや、お前なんかよりも遥かにアイツらと結び付きが強いというか、もう恋人同士だからね。それにアイツらが女神だってぇ? そんなバカな話がある訳ないだろう。確かにステージ上では輝いているけど、純潔さがあると言われたら首をかしげざるを得ない。だってあの中の半分くらいは性の魔人に取り憑かれているぞ。もう既に何回か身体を交えてるから知ってるけど、性欲って言葉を具現化したら穂乃果(あいつ)ことり(あいつ)みたいなのが出来上がると言ってもいい。だから俺はもうアイツらを清楚とか純潔とか、そんな清い目で見られなくなっているんだ。もうμ'sは解散していると言ってもイメージは崩したくないから敢えてここでは黙っておくけども、本当は物凄くツッコミたい。

 

 

「とにかく始めるよ! ダイヤの羞恥心克服大作せ~ん♪」

 

 

 1人でやたらテンションが上がっている鞠莉は、ホワイトボードの左半分に黒ペンで『羞恥心を克服する3カ条』とタイトルを書き出した。ちなみに右半分は浦の星女学院の風紀改訂について色々と書かれているため、ホワイトボードに書かれている内容のギャップが凄まじい。

 

 

「これからダイヤには、私が提示した課題を1つずつ達成してもらうから。課題は全部で3つ。それを全てクリアした暁には、ダイヤも少々エッチなことでは動揺しない鋼のマインドを手に入れられるよ!」

「どうして私がそんなことを……」

「男の人って性欲の塊でしょ? だから先生に更生しろって言っても絶対に無理だから、ここはダイヤの方からエッチな耐性を付けるしかないんだよ」

「俺、サラッとバカにされてる……?」

 

 

 今更俺に変態を更生しろって言っても無駄なことは自分でも分かっているのだが、そう簡単に諦められるのも何か癪だ。これでも一度禁欲を目指したことはあるんだぞ、理由は不純だったけども。

 

 

「それじゃあまずはこれからね!」

 

 

 鞠莉は第一のお題をホワイトボードに書き出した。

 

 

『パイタッチ』

 

 

「なんですのこれは……?」

「知らない? 男性がどさくさに紛れて女性のおっぱいを触ることだよ♪」

「そのくらい知ってますわ!! 聞きたいのはそのお題で私はどうすればいいってことですの!!」

「パイタッチは男性がするものなんだから、ダイヤはそのまま何もしなくてOK! ほら先生、出番出番!」

「は……?」

「ここにいる男性は先生だけでしょ? だからダイヤにパイタッチするのは先生じゃなきゃ♪」

「ちょっ、私がこんな不潔大魔王に黙ってめちゃくちゃにされろと!?」

「おい待て、仮にも先生に向かってなんてあだ名付けてんだ!?」

 

 

 まあ最悪あだ名に関してはこの際どうでもいい。だがダイヤの胸を触るのだけは勘弁してくれ!! 男としてならもちろん触りたいのだが、触ったら最後俺の身体が五体満足を保っていられるのかと聞かれれば確実にノーである。ただでさえダイヤの鋭い目つきが更に釣り上がってるし、その目線だけでも身体を貫き殺されそうだ。

 

 

「スクールアイドルなら自分の周りにファンが集まってくることがあると思うの。そして人が押し寄せてきた拍子にちょこぉっと胸をタッチされることくらい、人気アイドルにとっては日常茶飯事だよ」

「だから胸を触られていちいち怒らないよう、先生に触られて慣れておけ、つまりそういうことですの……?」

「That's right! アイドルたるもの、多少エッチなことをされても取り乱しちゃダメってこと」

「そ、そんな横暴な……。せ、先生! 教師の立場としてはどうお思いになってますの!?」

「えぇ、俺に聞かれても……」

「ま、まさか私の胸が触りたいからわざと惚けたフリを!? 穢らわしい……」

「どうしてそうなる!?」

 

 

 女の子のおっぱいを触ってみたいと思うのは男の本能なんだから仕方ないだろう。それにエロに対して反抗してくる女の子の胸ほど弄り回して遊んでやりたい気持ちも強い。その後でどんな仕打ちを受けることになってもだ。相変わらず自分の学習能力の無さに笑いが込み上げてくるが、徐々に高ぶってくる性欲を前に我慢する方が身体に毒ってものだ。

 

 

「ダイヤの胸を揉むのは本来は私の役目なんだけど、この際はリアルを追求して泣く泣く先生にお願いしてみました! だから先生、私の分までダイヤの胸をしっかりとたくさんこねくり回してあげてね♪」

「もう何からツッコミを入れればいいのやら……とにかくあなたに役目も何もないですし、まだ触らせてあげると一言も言ってませんわ!!」

「逃げるの? 果南と3人でスクールアイドルを組んでいたあの時みたいにまた諦めるの??」

「こんな穢らわしいことに、あの時の輝かしい青春を重ねないでください!!」

「ちっ、上手くいくと思ったのに……」

「本音ダダ漏れだなオイ」

 

 

 鞠莉の口調的に胡散臭い奴だと思っていたが、案の定腹黒ろかったと言うか、人の過去を利用するほど残忍だったとは。特徴的な喋り方で平気で人を騙そうとするやんちゃな性格は、まるで希を彷彿とさせる。妙に相手の性事情に興味を持っているところとかまさにアイツみたいだ。

 

 

「でも流石にさっきのはいきなり難易度が高過ぎたかもね。だったら次はこれ!!」

「心配事しかないんですけど……」

 

 

 鞠莉は第二のお題をホワイトボードに書き出した。

 

 

『エロス』

 

 

「またこんな破廉恥な話題ばかり!!」

「どうどう落ち着いて。スクールアイドルで人気になるためには女の子の魅力が一番光る、つまりエロスを磨くのが最大の近道なんだから!」

「いいえ! スクールアイドルは清純さが一番です!!」

「そんな考えだから甘いんだよダイヤは。清純さなんてどのスクールアイドルも目指すべき目標な訳でしょ? だからこそ敢えて清純さから離れた方が個人としてもグループとしても色濃いキャラになれると思うんだよ私は」

「上手く言いくるめようと画策してるようですがそうはいきませんわ! いつもいつもあなたの話にまんまと乗せられていますけど、今回ばかりは騙されませんから!!」

 

 

 確かにエロを売りにするスクールアイドルってのは未だかつて見たことがない。まあそんなことをしたら学校の方から活動停止になっちまうだろうが。ちなみにμ'sのメンバーに関しては脳内ピンクちゃんが多い反面、ステージ上ではその淫らな色気を全く感じない。淫乱と清純、一体どちらが本当の彼女たちなのか……。どうであれ、ダイヤに色気はあると思うがそれを自分から見せびらかすのは到底不可能な話だろう。

 

 

「あまり男に媚びるエロスはスクールアイドルとしていただけないけど、大人の魅力を出すってのなら全然アリだと思うぞ」

「それはそんな私たちが見たいからでは……?」

「いやいや、これマジのアドバイスだから。これでも清らかな心と穢れた心が表裏一体なスクールアイドルを手伝っていたこともあるんだぞ? 間違いねぇよ」

「先生、そろそろどのスクールアイドルを指導していたのか教えてくれてもいいんじゃない?」

「秘密だ。絶対に秘密」

 

 

 俺についての情報は大体Aqoursのメンバーに伝わっているのだが、唯一言っていないのがμ'sを指導していたことだ。指導っつっても、アイツらが練習をしている横でぼぉ~っと眺めていただけだけど。それでも2年間スクールアイドル業務に携わってきたので、まだぺーぺーのAqoursよりかは断然スクールアイドルの知識もあるし効率の良い練習方法も知っている。その経験を顧問なった今かなり活かしているのだが、たった1つ、μ'sとの関係については一切打ち明けてはいなかった。

 

 だって俺がμ'sの関係者だと千歌たちにバレたとするじゃん? そうしたら学内SNSや地方特有の高速伝達ネットワークにより、瞬く間に浦の星女学院全体に俺の正体が明らかとなるだろう。ただでさえ俺のことを謎崇拝している女生徒もいるのに、トップスクールアイドルの指導役とバレたら更に大騒ぎになるに違いない。そしてここからが真骨頂なのだが、もし何らかの因果でμ'sにこの事実が伝わったとしよう。そうしたらアイツらはきっとこう思うだろう、神崎零がJKに言い寄られるために自分たちをダシに使った、と。もしそうなった場合、アイツらに何をされるのか想像もしたくない。ただでさえ数日離れているだけでヤンデレになってる奴もいるってのに……。

 

 

「ダイヤはそうやってすぐに『破廉恥ですわ!!』とか『不潔です!!』って怒るからいけないんだよ。逆にその反応が面白くて私もおっぱい触りたくなっちゃうんだから♪」

「鞠莉さんさっきからセクハラオヤジみたいな思考ですわね……」

「どうとでも言って。ダイヤ自身がエロティックでアダルティになれば高嶺の花みたいな雰囲気が出て、逆に手を出されなくなるかもしれないよ?」

「別にそこまで高貴な存在になろうとは思っていませんけど……」

「思っていなくても、女にはやらなければならないことがあるの。だから先生、ダイヤにセクハラしてあげて」

「おいっ!! それは俺の人生で一、二を争うくらいの無茶ぶりだぞ!?」

 

 

 自分からやるならまだしも、誰かに見られた状態でセクハラ魔を演じるなんて流石の俺でも恥ずかしい。嫌がる女の子を無理矢理襲うって展開は好きだけどね。

 

 

「タダで女の子の胸を触ることができるのに、それを拒否する男がいるなんてショッキング!!」

「誰が好き好んで公開セクハラするんだよ。お前AVとか薄い本の見過ぎじゃねぇのか??」

「それ以前にタダで触らせるとは言っていませんけど。私の貞操観念が低いと思われるじゃないですか……」

「もうっ、私はただダイヤが先生におっぱいを揉みまくられて淫らな声で叫ぶ姿が見たいだけなの!!」

「とうとう素を出しましたわね……」

 

 

 男女のセクハラシーンを見たいとか、マジで鞠莉の趣味がAV視聴なんじゃないかと疑いたくなってくる。同性でしかも親友の興奮状態を見たいって相当だぞ……。まあ自分からセクハラ願望を持ってる奴よりは幾分マシ……いや、やっぱどっちもやべぇわ。

 

 

「ダイヤもいつも言ってるでしょ、日々精進あるのみって。まさか私たちにだけその信念を押し付けて、自分だけは尻尾を巻いて逃げる気?」

「そもそもの話、私自分で羞恥の耐性を付けたいとは一切言っていないのですが……」

「言い訳無用! 最悪制服の上からでもいいから先生に触ってもらってよ!!」

「どうしてそんなに必死なんですの!? それに最初は直に揉ませようとしていたのですか!?」

「言ったでしょ? 私はダイヤがセクシィーな声で乱れるところを見てみたいの!! 口では嫌がってるけど、段々と先生の手付きが気持ちよくなって次第に堕ちていくダイヤが見たい!!」

 

 

 鞠莉が神聖なる生徒会室で女子高生の放ってはいけない言葉を連発している。女の子に興味があるとかコイツも梨子と同じ属性なのか、それとも本当にAVのようなシチュエーションに興味があるのか。どちらにせよ優しいお姉さんキャラの彼女の印象が、この数分で一気にガタ落ちした。一応言っていることは共感できるので、謎のシンパシーを感じてはいるが……。

 

 

「先生、もう覚悟を決めましょう」

「えっ、結局やんのかよ?」

「暴走した鞠莉さんは自分が満足するまで熱が冷めることはありませんから。仕方のないことです」

「いや俺はいいけどさ、お前はどうなんだ?」

「もう腹をくくりました。ですが触ると言っても指一本で、そして一瞬だけですからね!! 鷲掴みにするとか言語道断です!!」

「分かった分かった! 鞠莉もそれでいいか?」

「まぁそこまで言うのなら妥協してあげる」

「どうして私たちが妥協される側になっているのでしょうか……」

 

 

 あのお堅いダイヤまでもが自ら引かないと鞠莉の暴走は止まらないってことか。相変わらず俺はとんでもないスクールアイドルの顧問を引き受けてしまったと思う。かつて12人の癖者たちをまとめていたとはいえ、コイツらを指導していくのも骨が折れそうだ。

 

 そんなことよりも今はこの状況。ダイヤは本当に覚悟を決めたみたいで俺の対面に座った。俺に自分の胸が触られる瞬間を見たくないのだろう、目をギュッと瞑り座ったまま硬直している。そんなに嫌ならやめておけばいいのにと思ったが、隣で鞠莉が新しい玩具を買ってもらったかのような子供の好奇心丸出しのキラキラとした目をしているのでやめるにやめられない。

 

 

「いいのか? 触るぞ?」

「もう声をかけないでください! 余計に緊張しますから!!」

「Oh! とうとう見られるのね! ダイヤが男の欲に溺れる瞬間を!!」

「お前も俺のこと言えねぇくらい変態だよな……」

 

 

 親友が男によって手篭めされている現場を見て悦ぶ変態ちゃんはさておき、俺はダイヤの胸に人差し指を伸ばし始めた。俺も色々と文句を垂れつつこの展開になったのだが、正直女の子の胸に触れるのならこれほど役得なことはない。しかも今回は今までの痴漢や覗きとは違い、相手の許可を得ているのだから合法なのだ。これまで何度も脅されたり説教されたりしたけど、それにめげず心を強く持って生きてりゃいいことはあるもんだ。

 

 

「触られても怒っちゃダメだよ」

「分かってますから、先生早く!!」

 

 

 俺の右人差し指が、ダイヤの左胸へと徐々に接近する。さっきまで騒がしかった生徒会室がお通夜のような緊張感で静まり返っているが、見ようによっては男が女のおっぱいに触れるというちょっとしたAV現場さながらとなる。その雰囲気に俺も思わず唾を飲み、今までお高くまとまってきたダイヤの胸に触れる興奮だけを一身に感じていた。

 

 あと数センチ。俺の人差し指の先がぷるぷると震えだし、今から彼女の胸を触手固めしそうなくらい小刻みに蠢く。それを見た鞠莉は手で顔を隠しながらも、指の間でしっかりと見開いて凝視していた。

 

 

 触れる。今まで俺を罵倒の嵐に(さいな)ませてきたこの子に、品行方正で美人という言葉をそのまま具現化したようなこの子に、もうすぐ性的興奮という新たなる境地の第一歩を踏み出させる時だ。

 

 

 そして人差し指が、彼女の程よく膨らんだ丘に――――ぷにっと触れた。

 

 

「あっ……」

 

 

 その時だった、突然生徒会室の扉が開け放たれたのは。

 

 

「お姉ちゃん、頼まれた資料持ってきたよ―――って、ピギィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!?!?」

「ルビィ!?」

「ルビィあなたなんというタイミングで!?」

 

 

 入口でルビィが持っていた書類を辺りに撒き散らし、目をぐるぐるとさせて混乱の渦に巻き込まれていた。自分がセクハラされている訳でもないのに顔を真っ赤にし、その場であたふたとふためている。

 

 

「ま、まさかお姉ちゃんと先生がそんな関係だっただなんて……ご、ゴメンなさい、ルビィ空気が読めない子で!!」

「ち、違いますわルビィ!! これは鞠莉さんの策略で……!!」

「お、お母さんたちには私から言っておくから、あまり遅くならないでねそれじゃあバイバイ!!」

「待ちなさいルビィ!! だから違うって言ってますでしょォおおおおおおおおおおおおお!!」

「あらら、行っちゃった……」

 

 

 ダイヤは生徒会室から逃げていったルビィを音速を超えるスピードで追いかけていった。

 部屋でポツンと残された俺は、行き場のない指先を眺めながら一瞬だけ感じた彼女の胸の感触に浸る。やっぱり女の子の象徴はいいな。指先でちょっと触れただけでも形がふにょんと変形するから、その感覚を愉しむのが堪らないと再認識した。

 

 ちなみに諸悪の根源は……。

 

 

「胸を触られた時のダイヤの崩れたあの表情、もしかしたら性の目覚めかも!? よしっ、これからもっともぉ~っと弄っちゃお♪」

「お前、友達なくすぞ……」

 

 

 そういやこれって鞠莉が掲げた『羞恥心を克服する3カ条』の2つ目だったんだよな? 3つ目がこれ以上と考えると、まだまだダイヤは羞恥心を克服できそうにない。

 




 本当はμ's編の時に大好評だったことりの淫語講座みたいにやりたかったのですが、やはりあのカオスな雰囲気はことりにしか作り出せなかったです(笑) なのでもし機会があればまたいつかやってみようと思っていたりします。

 次回は千歌と曜の回になります。もしかしたら2人別々の回に分けるかも……?


新たに☆10評価をくださった

宇宙天狗さん

ありがとうございます!



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