『セックスですよ! セックス!!』
虚空に響く淫語筆頭の言葉。凍りつく空気。幽霊ちゃんの興奮具合。全ての要素が混じり合い、文字通りカオスな雰囲気が漂っている。ただでさえAqoursのみんなは幽霊の登場で驚いてるっていうのに、ソイツの口から突然淫語が飛び出すんだから凍りつかない方がおかしいレベルだ。まあ華の女子高生にセックスという言葉は早すぎたか。千歌たちの様子を見るに、μ'sの連中がいかに特殊で変態だったのかがよく分かる。
そしてこの幽霊、
よし、そろそろ本題に入ろう。現実逃避をしていても愛莉の暴走を止められる訳じゃないからな。
「おい愛莉、一応聞くがどういう意味だ?」
『私はセックスをしたいんですよセックスが!! 苦節17年、一度もセックスをせずにその生涯を終えてしまいました。ですから一度でいい、私はセックスをしてみたいのです!! しなければおちおち成仏もできません!!』
「唯一現世に願うのがそれかよ。とんだ淫乱幽霊だ全く……」
明るい雰囲気でフレンドリーな幽霊かと思っていたのだが、蓋を開けてみればあの脳内ラブホテルの淫乱鳥と同様の思考を持つ危ない子だった。千歌たちは未だに状況が把握できてないのか、それとも目の前の現実を受け入れたくないのか、どちらかは知らないが固まったままだ。逆に冷静に淫乱幽霊を分析できている俺自身に自分で驚いている。まあもう何年もあの淫乱鳥と一緒にいるから、こんな捻れた性格の女の子の対処も手馴れたものだ。
『でもですね、セックスをするのにも1つ問題があるのです』
「勝手に話を進めんな。それに1つどころじゃねぇだろ、もう全部問題だわ!!」
『この幽霊の身体では、生身の身体の人とはセックスできないんですよぉ~!!』
「知らねぇよ……」
『しかぁ~し!! それもバッチリ解決方法があるのです!!』
「もうやかましくなってきたなこの幽霊……」
愛莉のテンションと俺たちのテンションの落差がヤバイ。この子、生前では相当空気の読めない子だったに違いない。それともセックスしたさでここまでキャラが変貌してしまったとか。性欲は人間を変えるとも言う。その一番の経験者は間違いなく俺だから分かるんだよ。
それにしても、もう俺とセックスする気でいやがるなコイツ。俺としても愛莉のような巨乳美少女とセックスできるならこれほど役得なことはないが、一応教師としての立場上、生徒の目の前で野外プレイを繰り広げるほどモラルに欠けた人間ではない。
『それじゃあちょっと試してみますか! そ~れっ!!』
「えっ、ちょっ、わ、私!?」
愛莉は上空から千歌に狙いを定めると、そのまま一直線に彼女の身体へ突撃した。幽霊だからそのまますり抜けると思ったが、愛莉は千歌に突撃して消えたっきり姿を現さない。同時に千歌の身体がピクピクと震えだし、目から光彩が消えて灰色の半透明になった。
「ち、千歌ちゃん……? 大丈夫?」
『あぁ~♪ やっぱり生身の身体はいいですねぇ~♪』
「千歌ちゃん!? 突然自分の身体を触ってどうしたの!?」
『ん~おっぱいは私より小さいかなぁ~??』
「わわわっ!? 自分で自分の胸揉んじゃダメぇ~!!」
梨子は顔を真っ赤にしながらいきなり自分の胸を揉み始めた千歌の手を押さえ込む。隣で見ていた他のメンバーも次から次へと起こる謎の現象にようやく思考が追いついたみたいだったのだが、千歌の奇抜な行動にまたしても驚きの表情を浮かべていた。
千歌は俺に告白してきた時、自らの身体を差し出そうとした。だけど人前で胸を弄るほどの淫乱ではなかったはずだ。だけど今の彼女は羞恥心など一切見せず、自分の身体の至るところをまるで今まで知らなかったかのようにベタベタ触って確かめている。そして千歌に突撃したまま消えた愛莉。愛莉が幽霊だってことを考えると、まさかアイツ……!!
「ちょっと千歌さんやめなさい!! さっきから破廉恥ですわ!!」
「千歌どうしちゃったの……? ちょっとどころじゃなくてかなり変なんだけど……」
「まさか千歌っちがダイヤと同じく淫乱少女に!? ワ~オ♪」
「鞠莉さん!? 嘘を平然と振りまくのはやめてくださりません!?」
「え~? だってダイヤ、先生におっぱいを――――」
「あーあーあー!! 何も聞こえませんわーーー!!」
「そんなことで騒いでないで、今は千歌の様子を確かめようよ」
「果南さん、そんなことって言いましたわねそんなことって……」
3年生組はダイヤと鞠莉が相変わらずのテンションで勝手に暴走している。やはり果南が唯一の良心だったか。俺に着替えを覗かれても羞恥に塗れる気配すらなかったしな。そんな彼女も幼馴染の千歌がいきなり自分の胸を揉み出す奇行にはビックリしてるみたいだけど……。
そして鞠莉、俺がダイヤのおっぱいを指で突っついたことをバラすなよ。絶対にだぞ!?
「あわわわ……千歌さんどうしちゃったのかなぁ」
「さっきから幽霊だの千歌さんがおかしくなるだのもう頭が痛いずら……」
「こ、これは夢よ!! 幽霊も先輩が変なことをしてるのも全部夢よ!!」
「善子ちゃん、まだ現実を受け入れてないの? 冷汗もたっぷり」
「逆にずら丸はどうしてそこまで平気でいられるのよ!?」
「う~ん、そこまで怖い幽霊さんじゃなかったからかな?」
「ルビィも。意外とフレンドリーな幽霊さんで助かったよ。でもあの人が成仏するためには……」
「うぅ……そのことは思い出せさないで欲しいずら」
1年生組は愛莉の成仏条件を思い出して顔を真っ赤にしている。2年や3年と比べれば見た目だけでもウブな子が多い1年生組。多少の下ネタすらも抵抗がなさそうだが、それ以前に淫語を全然知らなさそうな純白さが伺える。流石に現代女子だからセックスくらいは知っていたみたいだけどな。
「どうしよう曜ちゃん、この千歌ちゃん全然手がつけられないよ……」
「どうしようって言われても……。まるでさっきの愛莉って幽霊に取り憑かれちゃってみたいだね」
「そう、それだよ曜」
「えっ……?」
「お前、千歌じゃねぇだろ?」
『あは♪ 気付いちゃいました? さっすが私の初体験となる人、イケメンなうえに聡明だなんてもうドキドキしちゃう♪』
もうコイツの言うことにいちいちツッコミを入れていたらこっちがもたなくなる。だから無視だ無視! 淫乱属性だけでなくビッチ属性も浮き彫りになってきやがったが全部無視!!
「先生、どういうことですの?」
「愛莉が千歌に憑依しているんだよ。だから目の色が濁って、性格も愛莉のモノになってんだ」
『いやぁ別に騙すつもりはなかったんですけどねぇ~♪ 私はとりあえずセックスできればそれでいいかなぁって』
「あなた、さっきからそのセック……破廉恥な言葉を連呼するのはやめなさい!!」
『え~欲望を失ったら人間は本当の意味で死んじゃうんだよぉ~』
「あっ、私その言葉気に入っちゃった♪ とってもディープだね!」
『えっへん!』
「おい鞠莉、コイツを調子に乗らせるな」
胸を張ると程よい大きさの千歌の胸が揺れて、目がそこにしか行かなくなるからやめてくれ。しかも隣では梨子と曜がその気配を察してか、俺の身体を貫通するかのような鋭い目つきを向けてくるし……。男ってのはみんなおっぱい星人なんだ許してくれ。
『う~ん、でもおっぱいの大きさが足りないなぁ~。それにもっとスレンダーな身体付きの方が私に合うっていうかぁ~』
「勝手に人の身体に入っておいてそこまで文句を言えるのもすげぇな……」
『よしっ、それじゃあ次は――――えいっ!!』
「うひゃぁっ!!」
「は、花丸ちゃん!?」
「ズラ丸!?」
愛莉は千歌の身体から抜け出すと、今度は花丸の中へと憑依した。千歌は彼女の魂が抜けた勢いでその場でよろめき、花丸は彼女が入り込んだ勢いで後ずさりする。
花丸の目はさっき愛莉に憑依されていた千歌と同様に灰色の半透明となり、俗に言うレイプ目みたいになっていた。花丸に憑依した愛莉は手足を適当に動かし身体の適合具合を確かめる。そして隣では千歌が羞恥丸出しの顔で顔面を真っ赤に染め上げていた。
「ちょっ、わ、私なんてことを……!!」
「もしかして、愛莉に憑依されていた時の記憶があるのか?」
「はい。何度も追い出そうとしたんですけど全然身体を取り戻せなくて、ずっと胸を揉まれてる感触だけが伝わってきて……うぅぅぅううううう!!」
「ただ黙って自分が自分の胸を揉む感触を味わうしかないってか。もうやりたい放題だな……」
しかし愛莉がちょっと羨ましいと思ったのは内緒だ。そして千歌が無抵抗のままおっぱいに刺激が伝わってくるのを我慢している姿を想像してしまったのも内緒。
『おぉっ!? この子のおっぱい大きぃ~♪ いい揉み心地だね!』
「は、花丸ちゃん!! いや愛莉さん花丸ちゃんにそんなことさせないでください!! ルビィの知る花丸ちゃんのイメージがどんどん崩れて……」
「いつもは大人しい花丸がまさかこんな……」
「先生、鼻の下が伸びてますよ」
「果南、これは男の生理現象の1つなんだ。だから見なかったことにしてくれないか」
「相変わらず欲望に従順ですね。だからこんな変態な幽霊に目をつけられるんですよ。似た者同士惹かれあってるのかもしれませんが」
だって目の前で花丸が売春少女のようなビッチ顔で自分の胸を揉んでるんだぞ? 普段の彼女の清楚さを考えるに、そんなのギャップで興奮しちまうに決まってるだろ!! しかもその小さな手で大きなおっぱいを揉みしだいているため胸の形崩れが凄まじい。今は夏だからみんな薄着ってのもあるけど、女の子のおっぱいってあそこまで形が変形するものなんだな……ちょっとまたいつか試したくなってきた。
『他の人の身体はどうかな? えいっ!!』
「うっ……!!」
「ダイヤ!?」
『おぉっ!? このスタイル、まさに私にピッタリ!! でもおっぱいがちょっとなぁ~……それじゃあ次!!』
「きゃっ!!」
「善子ちゃん!?」
『う~ん……チェンジ。次!!』
「あっ……!!」
「果南……?」
愛莉は次から次へとAqoursのメンバーに憑依し、身体を卑しい手つきで触って適合具合を確かめる。見たところ胸の大きさとスタイルを重点的に考えているようで、ダイヤと善子の身体は受け付けなかったようだ。当の2人は愛莉が自分の身体から抜け安心した様子を見せるも、どこか腑に落ちない様子も浮かべていた。そりゃあ自分の身体を否定されたらそうもなるわな……。
そして次に愛莉が標的にしたのは果南。ダイヤと善子からはちょっと胸を触っただけで抜け出したのに、果南に憑依したところたちまち目の色を変えやがった。それもそのはず、Aqoursの中ではスタイルが抜群であり、胸のボリュームもダイナミックで愛莉が認める女性のスタイルに見事合致している。愛莉に憑依された果南は、指をわきわきと蠢かせながら胸や腰のくびれを痴漢のように卑猥に触り始めた。
『こ、これは素晴らしいです!! 胸の大きさと柔らかさ、そして身体付きから脚の細さまで、まさに生前の私を彷彿とさせます!!』
「か、果南ちゃんが嬉しそうに自分の胸を揉んでる……。シュールというか衝撃映像だよこれは……。長い間幼馴染をやってきてこんなこと初めてだよ見てられない!!」
「果南っていうか、果南に憑依している愛莉だけどな」
「これはもうスクールアイドルのお宝映像として記録をして、Aqoursのブログにアップロードしちゃおうかなぁ♪」
「鞠莉、携帯で撮影してやるな。いくら温厚な果南でもキレるぞそれは……」
さっきの花丸の時もそうだったけど、普段エロに微塵も興味のないやつが唐突に目の前で胸を揉み始めると、もうその光景とギャップだけで心を惑わされてしまう。憑依している愛莉の仕業だと分かってはいるのだが見た目はAqoursのメンツなんだ。初対面の子よりもいつも一緒にいる子がエロくなった方がより興奮するだろ? つまりそういうことだ。
「おい愛莉、いい加減みんなの身体で遊ぶのはやめろ。一旦外に出て来い」
『む~仕方ないですね――――――ほら、出てあげましたよ』
「うっ……」
「果南ちゃん大丈夫……?」
「ちょっとビックリしちゃったけど平気だよ。そして鞠莉、あとからその携帯壊すから……」
「ええぇっ!? 折角果南のとってもセクシィ~な一面が撮れたのにぃ~」
「それが余計だって言ってるの!!」
まあ果南のファンからしてみれば、その映像は貴重以外の何者でもないけどな。むしろファンが増えるって意味ではAqoursの意外な一面として公開した方がいいのかもしれない。もちろん果南のSAN値が犠牲になるのは承知の上でだけど……。
それよりも問題は愛莉だ。果南の身体から抜け出した愛莉は、再び空中をプカプカと浮いていた。
このままコイツを野放しにしておけば、Aqoursメンバーの黒歴史が秒単位で刻まれていくことになる。既に自分で自分の胸を揉むという衝撃映像を連発しているだけに、千歌たちは幽霊の恐怖とは全く別の恐怖に身を震わせていた。教師としては厳格にこの状況を対処してやらねば。
「お前の目的は千歌たちの身体で遊ぶことじゃないだろ……」
『そうですセックスですよセックス!! 生身の身体を借りてあなたとセックスしたいんですよ私は!!』
「つまりこういうことだろ。Aqoursのメンバーの誰か1人に憑依して、その子と俺で擬似的にお前と性交渉をすると」
『ですです!』
「それじゃあやっぱり、私たちの中の誰かが先生とそのぉ……しないといけないってことですか?」
「愛莉が成仏するのはそれが条件らしい」
「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」
今まで敢えて目を背けていた事実を再び突きつけられ凍りつくAqoursメンバー。愛莉を満足させてこの世から追放するには、この中の誰かと俺がセックスをしなければならない。みんなは俯いたりそわそわしたり、そっぽを向いていたりおどおどしていたりと三者三様の反応を見せる。そう、Aqoursはμ'sと違ってほとんどが純粋っ子ばかりなのだ。そんな子たちにいきなり男と、しかも顧問とセックスしろだなんてハードルが雲で見えなくなるくらい高すぎる。だから千歌たちがそんなのを承諾する訳が――――
「し、仕方ないから、わ、私がみんなの身代わりになります!!」
「ち、千歌!? お前何言ってんだ!?」
「ほ、本気です……!!」
「嘘つけ、声震えてるぞ!」
「千歌ちゃん!! そ、それはどうかなぁって思うんだけど……」
「梨子ちゃん……?」
「千歌ちゃんにそんなことはさせられないよ。だからここは私が先生と……」
「もう2人共もっと自分を大切にして!!」
「「曜ちゃん!?」」
「ま、まぁここは2人の代わりに私が……ね?」
な、なにこのやり取りは……? 3人共ぎこちないながらも自ら俺とのセックスに身を委ねようとしてるなんて何を考えてんだ?? 3人と俺の間には謎に包まれた微妙な空気が流れている。千歌と梨子、そして曜は順番に相手を見つめ合い黙ったまま動かない。3人共笑顔とは程遠い引きつった微笑みを浮かべつつも、どこか相手を牽制しているようだ。もしかして、これって修羅場ってやつ……?
「2年生たちは何を考えてるのよ!! ヨハネは先生となんて絶対に嫌だから!!」
『あっ、初めからあなたの身体に憑依する気はないので大丈夫です』
「なんでよ!!」
『できればあなたとかいいんだけどなぁ~』
「えっ、ま、マル!?」
『生前の私は背が高かったですから、ロリ巨乳体型に興味があるんですよ♪』
「ま、マルがせ、先生と……あわわわわわわわ!!」
「花丸ちゃん落ち着いて!! 文字通り泡吹いて倒れそうだよ!!」
そりゃあいきなり男性教諭とセックスしろだなんて過酷なミッションを与えられたら泡も吹きたくなるわな。愛莉が憑依するから自分の意思ではないとは言え、大切な純潔が奪われるのだからたまったものではないだろう。
「あなた、それ以外に成仏する条件はありませんの!? 聞いていればさっきから破廉恥なことばかり……生前が女子高生ならもっとお淑やかにしなさい!!」
『えぇ~女子高生だからこそ色々と遊ぶんじゃないの?』
「まさかこんな人が浦の星にいたなんて……」
『浦の星? あぁ違う違う、私は別の学校の生徒だったんだよ。たまたま1人観光でここの山に登った時に足を滑らせてドーンってね。そして気付いたらこの身体に、つまり死んじゃってたって訳』
「なのに雰囲気明るいよなお前」
『まあ死んじゃったものはしょうがないし、だったらせめて最期にやりたいことをやって本当の意味で死んじゃおうかなぁって思ってるだけですよ』
先程の凍りついた空気とはまた別の、しんみりとした空気がこの場を支配した。
いくら愛莉がお騒がせ淫乱幽霊だとしても、亡くなってしまった事実を知らされると同情せざるを得ない。俺たちの目の前では明るく振舞っているが、もしかしたら幽霊になった直後はとてつもない悲しみに苛まれたのかもしれない。だからと言ってセックスをするかどうかは別の問題なのだが、彼女を見捨てて"はいさようなら"と言う訳にもいかないだろう。セックス以外の成仏方法を考えてやらないと。
「俺たちもお前を見捨てることはできない。だけどセックスだけは勘弁してやってくれ」
『ん~それでも私の望みは快楽を得ることですし……』
「1つ言っておく。コイツらは俺のモノだ。千歌も梨子も曜も、花丸も善子もルビィも、ダイヤも鞠莉も果南も、みんな俺のモノだ。だからお前が無理矢理手出しをしようとしたら、俺も無理矢理にでも止めてやる。もちろんお前には同情するけど、みんなに憑依して勝手にセックスしようとしても俺は絶対に応じないからな」
『あ、あなたって……』
「千歌たちの処女は俺のモノだ。よく覚えとけ」
『…………』
「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」
あ、あれ?? なにこの今日一番の微妙な空気は?? まさか愛莉がセックスを連呼していた時よりもみんなが黙りこくるとは思ってもいなかったぞ。俺そんなに変なこと言ったかな……?
『想像以上に面白い方ですねあなた。お名前を伺ってもいいですか?』
「神崎零だ」
『神崎零さん……うん、名前までカッコいい! ますます好みになっちゃいましたよ♪』
「そりゃあどうも。でもお前とヤる気はないからな」
『もちろん! あんな愛の篭った演説を聞かされたら、こっちからヤる気にもなれませんよ! こんな素敵な方に大切にされているなんて、皆さんが羨ましいです♪』
愛莉がAqoursのメンバーにそう声をかけると、みんなの顔にそれぞれ恥じらいの色が溢れた。自ら俺との性交渉に立候補していた千歌たちはもちろん、俺を敵視しているダイヤや善子までもが千歌たちと遜色ないほどに顔を赤くしている。
『いやぁ満足しました! 今まで性こと青春と思っていたのですが、それ以上にこれぞ青春ってモノを見せつけられて大満足ですよ!』
「えっ、それじゃあ」
『はい、このまま成仏しようと思います。皆さんご迷惑をお掛けして申し訳ありません、と私が驚かせちゃった人にも伝えておいてもらえますか?』
「あ、あぁ。あれだけ拒否してこんなことを言うのはアレだけど、本当にいいのか?」
『まあ誰かの身体を使っても自分がセックスしたことにはなりませんしね。もしかしたら本当はセックスをしたいのではなくて、最後に自分が笑って満足してこの世を去りたかっただけなのかもしれません』
「そうか。ならセックスせずに満足してもらえたみたいで、俺たちとしてはなによりだよ」
完全に余談なのだが、セックスって言葉をゲシュタルト崩壊な勢いで普通に言ってるけど、傍から見たら意味不明な会話だよなこれって。更によくよく考えてみれば、Aqoursのみんなもこの雰囲気を受け入れているのが今まででは考えられないくらいだ。本当に余談だけどね。
どうやら愛莉はセックスしたいという欲望よりも、自分がこの世に未練を残さない欲の方が強かったみたいだ。高校生で亡くなってしまったから、もう一度こうして同じ年代の子たちと楽しく騒ぎたかっただけなのかもな。
『それでは私はこの辺で』
「もう行くのか?」
『はい。この世に残り続けると、それこそまた未練が残っちゃいそうですから』
「分かった。元気でな」
『ありがとうございます! それでは神崎さん、Aqoursの皆さん!』
愛莉も俺たちもそれ以上の言葉はなかった。そして俺たちは夜空に昇っていく愛莉の背中を、その姿が見えなくなるまでずっと見つめていた。空には無数の星が輝いていたが、愛莉の姿よりも綺麗に映っていたものはない。彼女の姿が消えてからもしばらく俺たちは無言のまま夜空を眺めていた。
「騒がしい奴だったけど、いなくなっちまうと寂しいもんだな」
「でも私たちのここにはしっかり残ってますよ。記憶の中にずっと……」
「…………千歌のくせに案外クサいセリフ言うんだな」
「どう言う意味ですかそれ! それにクサさで言えば先生の方が断然クサいですよ!!」
「はぁ? どこがぁ!?」
また意地悪そうな顔をしていると思って千歌の方を振り向いてみたら、それとは真逆の優しい笑顔を俺に向けていた。そしてそれは千歌以外のみんなも同じだ。
「先生、私惚れ直しちゃいました♪」
「まさか先生がそこまで私たちのことを考えてくれていたなんて……更に見直しました!」
「私たちを守ってくれた時、とても嬉しかったです!」
「まぁ、リトルデーモンがヨハネを守るのは当然だけど……あ、ありがとう」
「先生とってもカッコよかったずら!」
「私もそのぉ……嬉しかったです♪」
「ただの変態さんじゃなかったんですね。意外ですけど素敵でしたよ」
「先生のこと、少し誤解していたかもしれません。今回の件に関しては、ありがとうございました」
「女の子みんなを自分のモノだなんて大胆な発言だったけど、逆にそのダイナミックなところが好きになっちゃいそう♪」
「お前ら……」
うわっ、すっごい照れくさい!! Aqoursのみんなからこうして素直に感謝を言われたことがほとんどないため、どう受け取っていいのか分からず柄にもなくあたふたしている俺がいる。しかも善子やダイヤまで……。あぁ、やっぱり俺ってストレートに好意を伝えられると弱いわ。もっと完璧なご主人様体質になっていかなければ。
「よしっ、帰るぞみんな!」
「あっ、先生照れてますぅ?」
「うるさい!! 俺より後に山を降りた奴は宿題2倍な!!」
「えっ、なんですかそれぇ~!?!?」
あんなこと言ってしまった以上、もうコイツらを守らなければならなくなってしまった。そしてそれは新たなるハーレムの入口だってことに、俺もAqoursもまだ気付いてはいない。
今回の話を経て、本格的に零君とAqoursの仲が深まりました。今まで敵視していた善子やダイヤも少しは零君を見直して、ここからが10人の本当のスタートになりそうです。だからこそ今後ちょっとしたエッチな展開も解禁になったり……?
そして次からは新章となります。新章ではμ'sのメンバーが続々登場する予定で、特にこの展開を待ち望んでいた方が多かったのでご期待下さい!
流石に全員を一度に登場させるのは難しいので、1話につき1、2人のペースになると思われます。もちろん普通にAqoursのメンバーにスポット当てた通常回も織り交ぜていくつもりです。
早速、新章一発目の次回には穂乃果が登場!
新たに☆10評価をくださった
泡§さん
ありがとうございます!