ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 唐突にほのぼのハーレムな話を執筆したくなったので。
 1話で9人全員出すはずが、いつものごとく文字数が膨れ上がったので今回は2年生組とのお話です。


いつの間にかAqoursハーレム(2年生編)

 教育実習生の朝は早い。いくら教師見習いであっても職員会議には毎朝参加しなければならず、朝に弱い俺にとってはそこそこの拷問だ。ウトウトするとその度に山内先生に小さく声を掛けられ起こされるのだが、正直先生の声はのほほんとしていて逆に眠気を誘ってくるからやめて欲しい。でも善意で起こしてくれる先生に対してやめてくださいとは言えないため、毎朝渋々ながら誘惑してくる眠気と戦っているのだ。

 

 そんな感じで頭が覚醒していない状態で会議を終え、俺が副担任をしている千歌たちの2年生教室へ向かう。一応家を出る前に目覚まし替わりの缶コーヒーを一気飲みしたのだが、結局目立った効果は現れず、ただ無駄に腹に溜まっただけでむしろ逆効果になってしまった。体調管理が上手くできないのはやはり学生と社会人の差なのか。俺、もしかしたら社会不適合者かもしれねぇ……。

 

 

 早朝特有のネガティブ思考になりながら廊下を歩いていると、後ろからドタドタと校則をガン無視する足音が聞こえてきた。俺ともなれば足音だけでその正体が誰なのか分かる――――というのは嘘で、この展開もほぼ毎朝のように起こっているからもはや生活音に近い。そして、この後に俺の目を覚まさせるほどの衝撃が訪れることももちろん知っていた。

 

 

「せんせぇ~!! おっはようございまーーーーすっ!!」

「あぁ、おは――――うぐぁっ!!」

「えへへ、今日は首に抱きついてみました♪」

「し、死ぬから!! 遺言がおはようだなんて未練にも程がある!!」

 

 

 いつもは朝練終わりの千歌が腰に抱きついて挨拶をしてくるのだが、今朝だけは違っていた。俺の首に巻きつくまでは最悪いいのだが、幾分背丈の差があるので彼女は俺にぶら下がる形となる。そうなれば俺の首は段々と締め付けられる訳で……。しかも勢いよく俺に飛びついてきたせいか、背中に胸が思いっきり当たっている。相変わらず女の子のおっぱいに弱い俺はそこで眠気から完全覚醒したのだが、今度は別の意味で眠ってしまいそうだった。

 

 

「苦しいから早く離れろ!!」

「もうっ、照れなくてもいいんですよ♪」

「お前本気で言ってんのか……!? 今時暴力系ヒロインなんて流行らないから」

「暴力系? ヒロイン……?」

「いや何でもない……」

 

 

 きょとんとした反応を見せるあたり、本当に無邪気なんだなコイツ……。まあそれだけ純粋な愛情を示してくれているんだから、それはそれで受け止めてやるべきなんだろうけど。それよりもさっき背中に当てられていた胸の感触で、昨晩果南にご奉仕された記憶を思い出してしまった。もしかして頼んだら千歌も()()()()()()()をやってくれるのだろうか。どちらかといえばロリに近い彼女が俺のモノを……。

 

 

「先生? あまりそのぉ、見つめられると恥ずかしいと言いますか……」

「あっ、悪い。別にそんなつもりじゃなかったんだけど」

「それはそれでなんか癪ですね……」

「じゃあどうすりゃいいんだよ!?」

 

 

 千歌も千歌で果南同様に面倒な性格をしている。言ってしまえば自分に目を向けてくれないと不満だってことね……。しかしAqoursの誰よりも表情変化が豊かで、機嫌が悪いとすぐ顔に出るのでそこは女心に鈍感な俺でも安心だ。

 

 

「罰として、また私の部屋に来てくださいね! お泊まりセット持参で!!」

「なんの罰だよ!? それに教師をそう安々と自室に誘うなって。JKだろお前……」

「JK以前に、1人の女の子ですから♪」

 

 

 とびきりの笑顔を向けられ思わずドキッとしてしまうが、もう何度も同じ光景を拝んでいるのに慣れることはない。いつ見ても彼女の笑顔は明るくて可愛くて、穂乃果とは違って幼さを持ち合わせているのでその無邪気さがまた堪らない。そんな幼気な女の子なのに身体付きはかなり扇情的で、制服を押し上げる胸は正面から見ても大きく強調されている。

 地方育ちだからかは知らないが、千歌だけでなくこの学院の子たちってみんな発育がいいんだよな。これが小さい頃から開放感あふれる自然に慣れ親しんだが故の魅惑的ボディなのか……。

 

 

 廊下の真ん中で千歌とじゃれていると、後ろから梨子と曜が遅れて俺たちの元へやって来た。朝練の汗をシャワーで洗い流した直後なのだろう、靡く髪の艶っぽさが朝日に照らされ際立っている。

 

 

「おはようございます!」

「おはようございます、先生」

「おはよう曜、梨子。とりあえずコイツを引き剥がしてくれ」

「えぇ~もう離れなきゃいけないんですかぁ~……。シャワーも浴びて身体も程よく暖まったから、このまま先生枕で寝ようと思ってたのにぃ~」

「お前な、まだ1時間目の授業も始まってないんだぞ。寝るの早すぎだから……」

 

 

 いつの間にか俺の正面に回り込んでいた千歌は、俺の胸に顔を埋めるように抱きついてくる。そして軽くあくびをしながら、胸板に頭を預けそのままぐっすりと――――って、コイツまさか!?!?

 

 

「お前本当に寝るなよ!!」

「相変わらず、千歌ちゃんの寝るスピードは世界一だね……」

「でもここで睡眠を取っておけば、千歌ちゃん授業中に寝なくなるかも」

「いや、コイツのことだから俺の身体に張り付いたまま一生ぐっすりの可能性も……」

「せんせぇ~……あったかい~」

 

 

 とうとう寝言まで言い始めたぞコイツ……。ここまで迅速に、そして立ったまま寝られるなんて、もしもの時にサバイバルしなければならなくなった場合にその能力は重宝しそうだ。まあそんな無駄スキルを身につけるよりも、素直に学業の成績を上げて欲しいものだが。

 

 

「それなら私も先生を枕にして寝ちゃおっかなぁ~♪」

「よ、曜ちゃんまで何言ってるの!?」

「失礼しま~す!」

「お、おい……」

 

 

 間髪入れず、今度は曜に後ろから抱きつかれる。俺の背中に犬のように頬を擦り付け気持ちよさそうにしているため、彼女もこのまま眠ってしまいそうだった。いつもはここまで甘えてくる子ではないのだが、雨の日のあの一件以降はそこそこ積極性が増しているような気がする。しかしあの一件のことは本人が恥ずかしいのか、あの日以降一度も話題に出たことはない。だがあの時に心の鎖が外れたのか、今までに見せていた恥じるという行為よりも千歌のようにまず行動してくることが多くなった。だから今の曜はその事実が如実に現れている。

 

 

「本当だ。先生の身体って暖かくてすぐに眠れそう……」

「人を安眠グッズみたいに言うなよ。ほら、もうすぐ朝礼始まるぞ」

「もう少し。もうちょっとだけですから」

「何その『先っちょだけだから』みたいな言い訳……」

「先生、いつでも煩悩全開ですね」

「すぐにいかがわしい妄想に結びつけるお前も大概だけどな」

「…………思春期の女の子なんてみんなこうですよ」

「とりあえず全世界の思春期女子に謝ろうな……」

 

 

 あの雨の日がいかにもな雰囲気を醸し出していたとはいえ、煩悩でないなら自ら進んで口で奉仕するなんて強引な行動に出るはずがない。本人はまだ気付いていないようだが、自身の振る舞いは着実に模倣してはならないμ'sメンバーを模している。それでこのようにスキンシップが増えるのなら、俺としても願ったり叶ったりだけどね。女の子にハグされるのは悪くないどころか、場所さえ弁えてくれればどんどんやってくれと思う。今みたいに廊下のド真ん中じゃなければな……。

 

 

「もう2人共、先生困ってるじゃない」

「梨子ちゃんも先生枕に抱きついてみなよ。心地よくてすぐ千歌ちゃんのようになっちゃうから♪」

「あのなぁ、梨子まで誘ってどうすんだよ。そもそも来る訳ねぇだろ……」

「でも2人が先生を前後で挟み込んでいて、私の場所がないから……」

「あれ? 来んの?」

「それじゃあ私が少し動いて――――はい、ここ空いたよ!」

「先生枕……千歌ちゃん、気持ちよさそうだもんね……」

「おい梨子? お~い!」

 

 

 梨子は曜が空けてくれた俺の抱きつくためのスペース(左脇腹あたり)を一点に見つめながら、瞬きもせずに考え込む。どうやらこのまま自分も抱きついていいのだろうか、3人同時に抱きついてしまったら誰がこの場を取り仕切るのか、そもそも俺に迷惑ではないかなど、真面目な彼女はそう考えているのだろう。

 しかし俺としては梨子のことだから、曜の抱きついて来いという提案なんて真っ向から拒否すると思っていた。だけど彼女は拒否するどころか、むしろハグする気満々のようである。そこに多少の葛藤はあるのだが、どうやら俺に嫌悪感を示していることはなさそうだ。それはそれで嬉しいんだけど、ただでさえサンドイッチになってるこの状況に梨子まで来たら……どうすりゃいい??

 

 

「先生!!」

「な、なんだ……?」

「今からやる行為は特別な意味がある訳ではありません。ただ千歌ちゃんも曜ちゃんがあっさりと虜になってしまった先生の身体なので、私としてもその危険性を暴くために抱きつかなければいけないと言うか……とにかく失礼します!!」

「うおっ!!」

 

 

 梨子は取って付けたような言い訳を垂れるが、結局のところ俺に抱きつきたかっただけらしい。その証拠に俺の身体に擦り寄ってきた瞬間に中々の力でハグをしてきた。抱きつく前とは違って既に千歌と曜が抱きついているからとか、俺の迷惑になるとかそんな遠慮は一切感じない。あっという間に俺の身体に取り憑かれたように、互の身体が溶接されているかのごとく引っ付いてくる。さっきまでの葛藤は一体どこへ行ったのか……。

 

 そして、遂にAqoursの2年生組全員に四方八方から囲まれた。千歌は寝てるし、曜は笑顔で気持ちよさそうにしているし、梨子は完全に俺の身体に顔を埋めて表情が見えないので、恐らく無我夢中になっているのだろう。どいつもコイツも離れる気は一切なく、俺がこうして佇んでいれば放課後、いや1日中ずっとこのままの状態でいるのも厭わないだろう。

 

 それにしても、いつの間にやら千歌たちにここまで好かれているとはなぁ……。確かにこれまで好感度アップイベントは多々あったけど、複数の女の子たちに同時に囲まれるルート選択をした覚えはあまりない。女の子に対してはみんな平等に接するのが己の信念なので、自分でも気付かない内に全員攻略ルートの道を歩み始めていたのかもしれない。ギャルゲーなら苦難の道orバッドエンドルートなのだが、この華やかな光景を見てもらえればそんな危険など微塵も感じることがないと分かってもらえるだろう。

 

 前からはちょっと幼気な無邪気な少女に、後ろからは陽気なスタイル抜群少女に、横からは清楚な淑女にそれぞれ抱きつかれ、何物にも変え難い至福を覚える。単純に思えるかもしれないが、やはり俺はたくさんの女の子に囲まれる生活が大好きなのだ。歩けば女の子たちが振り向いて好意を向けてくれる、そんな日常に喜びを感じるのが堪らなく気持ちいい。そして女の子側からこうしてスキンシップに来てくれる高揚感、千歌たちスクールアイドルを独占している満足感、その他表現してもしきれない感情が爆発しそうになっている。口では戸惑っている風を装っていたが、本心ではバッチ来いだった訳だ。まあいきなり3人連続で抱きつかれて焦っていたのは確かだけど、それ以上に浮き足立っていた。

 

 やがてぐっすりと眠っている千歌が段々と俺の身体からずり落ちそうになったので身体を受け止めてやると、無意識なのにも関わらず今度は俺の腕に絡みついてきた。にへら顔でヨダレを垂らしながら、朝練疲れのせいなのかぐっすりと熟睡している。

 

 

「せんせぇ~」

「千歌ちゃん、先生のことがとっても大好きみたいですね♪」

「ただ寝てるだけだろ。どうしてそんなこと分かるんだ……?」

「いくら千歌ちゃんが社交的でコミュ力抜群だったとしても、異性に身体を預けて熟睡するなんて行動、普通すると思います?」

「そんなものなのか……」

 

 

 身近に穂乃果というコミュ力最大レベルで出会った男を勘違いさせるほどのスキンシップ達人がいるから、千歌の行為が特別なことだとは思わなかった。だが言われてみれば、教師云々以前に異性にここまでスキンシップを交わすことの方が異常だったりする。ということは千歌が俺に抱く好意は、自分が想像している以上に大きく膨れ上がっているのかもしれない。もうかなりの頻度で彼女からのアプローチを受けているが、それが更にパワーアップするってことか……。

 

 

「…………」

「梨子……? 抱きついてからずっと黙ってるけど、どうした?」

「へ? あっ、あれ? 私ってばどうして先生に……!?」

「俺の身体の心地よさに没頭してたのか?」

「き、気付きませんでした……。そうみたいですね……」

「梨子ちゃんもすっかり先生の虜だねぇ~♪」

「ち、違うのよこれは!! 催眠術の一貫か何かよ!!」

「人を歩く猥褻物みたいに言うんじゃねぇ……」

 

 

 身体に触れるだけで相手を催眠状態に陥らせるなんて、そんな体質だったら手っ取り早く世界中の美女美少女を俺のモノにしてるっつうの。それこそ例の淫乱鳥やブラコン妹に付けられた異名(汚名)を授かる時だ。しかし現役JKをここまで夢中にさせられるんだ、もしかしたら案外簡単に実現可能な夢なのかもしれない。

 

 そもそも催眠術といった脳内ピンク色の奴にしか到底出てこないであろう例えを放つあたり、梨子も曜と同じく段々ソッチ系に染まりつつあるようだ。元々レズの毛があったとはいえ、彼女曰く『女の子同士以外の薄い本もたまに読む』とのこと。つまり咄嗟に催眠術と言い訳したことを踏まえると、普段読んでいる本はかなりマニアックなプレイモノと見て間違いない。証拠はないので断定はできないが、彼女の部屋には俺の見つけた本以外の薄い本がまだ眠っていると睨んでいる。またいつか作曲に行くと偽って桜内家に突撃してやろうかな。もちろんアポなしで片付ける暇など与えずに……。

 

 

 俺としては何だかんだ言ってもう少しこのままでもいいのだが、遅れて教室に行けば同時に遅れてきた千歌たちと一緒にいた理由を他の子たちに説明しなければならない。この学院の女の子たちはみんな俺に夢中なため、ちょっとでも女絡みの下手な行動をするとしつこく尋問されてしまうはめになる。そうなると朝礼どころではないため、コイツらだけでも先に教室へ向かわせないと。

 

 

「ほら、もうすぐ朝礼だから早く教室に戻れ。いつでも……とは言わないけど、気が向いたらまた枕になってやるから」

「気が向いたらというのは、行けたら行くと同じくらいに信憑性のない言葉ですよ?」

「曜……人の言葉をホイホイ信じる奴の方が愚かなんだよ。まずは何でも疑え」

「意外と小さい人間だったんですね。まあ大きいところもありますけど……」

「大きいところって?」

「な、なんでもないから梨子ちゃん!! 変に追求しないでね??」

「えっ、う、うん……」

 

 

 曜はわなわなと震えながら梨子に弁解をするが、梨子自身は何故曜がここまでビビっているのか分からないみたいだ。ちなみに俺はなんとなく予想がつく。男に対して『大きいところ』で表現される身体の部分はただ1つ。しかも彼女は雨の日の一件で――――ここまで言えば察しは付くだろう。曜の反応を見るに故意に言ったというより無意識に口から漏れ出したと思われるので、それだけ脳内が桃色に侵食されているということだ。その現象を本人が気付いてないってのが一番危険なんだけども……。

 

 

 先程のほのぼのとした雰囲気とは対照的に微妙な空気になってしまったが、そのおかげで曜も梨子も気分が落ち着いたらしく、俺の身体から自然と腕が離れていた。いくら気温の低い朝だと言っても今は夏、抱きついて汗をかいたら何のために練習後にシャワーを浴びたか分からなくなる。それなのにも関わらず俺の身体を枕にして、しかも直立不動でぐっすり寝てる奴もいる訳だが。

 

 

「千歌ちゃ~ん。そろそろ起きなよ」

「う~ん……先生ってば、そんなところに手を突っ込んじゃダメですよぉ~」

「ち、千歌ちゃん!?」

「どんな夢見てんだコイツ……」

「千歌ちゃん起きて! 千歌ちゃんってば!!」

 

 

 千歌の寝言を聞いた瞬間、梨子も曜も顔を真っ赤にして彼女を叩き起こそうとする。千歌の見ている夢の内容は知らないが、梨子と曜が想像していることは大体予想がつく。全くどいつもコイツも、最近何気ない日常の端々に痴女っぽい片鱗が見え隠れするようになってるぞ……。これが思春期女子特有の仕草なのか、それともコイツらだからなのか検討は付かないが、これだから女子高のJKってのは貞操観念が低いとか言われるんだよ。特に浦の星の女の子たちは色んな意味で積極的で、将来汚い男に引っかからないか不安でもある。だったら他の男に目が移らないように自分が手を出しておくという選択肢もあるが、そんな暴挙に出られるのなら今頃俺はこの学院の支配者になってるよ。

 

 

「ふぇ? あ、あれ? もう朝……?」

「やっと起きたのか。朝と言えば朝だけど、もうすぐ朝礼だから」

「どうして先生が……? そういえばさっきヘビの入ってる箱に手を突っ込んでたような……」

「なるほど、お前が見てた夢はそれか。ん? と、言うことは……」

「…………」

「…………」

 

 

 今にも沸騰死しそうになっている梨子と曜。自分たちの勝手な勘違いで、何やら卑猥な妄想をしていたのが超ド級に恥ずかしかったのだろう。そんな2人を見ていると、相対的に千歌の子供っぽい純粋さがより際立って見える。2年生全員が脳内お花畑とか手が付けられないから、千歌くらいはいつまでもその無邪気さを保って欲しいものだ。もちろんちょっと大人に背が伸び始めた今の梨子も曜にも別の意味で期待してるけどね。

 

 

「うわぁ!? せ、先生?? どうして抱きついているんですか!?」

「抱きついてるのはお前の方だから。たった数分しか寝てねぇのにどこまで記憶飛んでんだよ……」

「抱きついてる……わっ! どうして私……あっ、でも先生暖かくて、枕にちょうどいいかも……」

「こらこらさっき起きたばかりだろ寝るな!! それにどうして抱きついてくるんだ!!」

「だって先生のこと好きなんですもん!!」

「そ、それは嬉しいけどさぁ……」

 

 

 千歌は眠気+やけくそ気味のせいか、ドストレートな告白をしたことにすら気付いていない。しかし裏を返せば、ナチュラルに告白できるほど俺のことが好きだってことだと解釈できるから嬉しいんだけどね。コイツが後でこのことを思い出したら悶え苦しむだろうなぁ。

 

 そしてまた眠気に誘われる千歌をよそに、梨子と曜がむっとした顔でこちらを眺めていることに気が付いた。

 

 

「わ、私も先生のこと……け、結構好きですよ?」

「私だって! 2人であんなことをした関係なんですから……」

 

 

 2人は俺から目を逸らながら言葉を濁して、告白紛いな告白を小さな声で呟く。千歌とは違ってイマイチ素直になれない梨子と曜ならではの告白だが、それはそれでウブな心が浮き彫りになっていて微笑ましい。さっきは桃色の妄想が全開だった2人だが、このようにお手本のような恋する乙女の姿を見せられると一概に淫乱色に染まっているとは言い難いのかも。そう考えるといつも可愛い子たちが更に愛おしく思えてきた。ぎこちないなりにも好意を示してくれた訳だし、こっちもそれなりにぎこちなく答えてやろう。

 

 

「俺も好きだよ。梨子のことも、曜のことも」

「「~~~~ッッ!?!?」」

 

 

 梨子と曜の顔色が真っ赤に燃え上がり、気が動転しているのか目の焦点も合っていない。俺も千歌と同様に何気なく自分の気持ちを吐露しただけなのに、相手に与えたダメージが案外大きくて自分自身でもビックリする。ジャブ程度でこの威力なんだったら、もしガチ告白をしたらこの2人気絶してしまうんじゃないか?

 

 

「あぁっ!? もう朝礼まで1分しかない!! 行こ梨子ちゃん!!」

「う、うんっ!! それじゃあ先生、また後でお会いしましょう!!」

「お、おいっ! 行くならコイツも連れてけ――――って、走るの早すぎだろアイツら……」

 

 

 梨子と曜は人間の速度を超越したスピードで教室へと戻っていった。未だに俺に抱きつきながらウトウトしている千歌を放置して……。

 

 しかし千歌とも梨子とも曜とも最初は最悪の出会いだったのに、よくここまでの関係を築き上げられたものだ。梨子なんて会うたびに悪態を付けられ虐げられてきたから、軽い告白だけであそこまで顔を赤くするなんてまるで別人のようだ。そう思えば、今こうして俺に抱きついている千歌は俺がバスの中で痴漢してしまった相手なんだよな。どうしてここまで懐かれたのやら。

 

 

「せんせぇ~。朝練で疲れたからお腹空いたぁ~」

「…………知るか」

「いたっ!! どうしてチョップするんですかぁ~!!」

「じゃあ俺は先に行くからな」

「え、待ってくださいよぉ!! えいっ!!」

「うおっ!? だから、どうしていちいち抱きつくんだよ!?!?」

「だから好きなんですよ、先生のこと♪」

 

 

 またしても俺の首に絡みついてきた千歌だが、みんなの初々しい姿を見られてほっこりしたので今だけは許してやるか。下手に注意をして彼女からのスキンシップが減ってしまったら元も子もないしな。まあそんなことでアプローチをやめる千歌ではないだろうが、女の子の好意に甘えるのもまた俺の風情でもある。たくさんの女の子に好意を向けられて、ハーレム感覚で順風満帆に生活するってよくない?

 

 

「ほら先生、早く歩かないと朝礼に遅れちゃいますよ!」

「う、ぐっ……」

 

 

 でも抱きつく力が強すぎて、首が締まっちゃうのだけはキツいっす!!

 




 ここでAqours編の1話と2話を読み返してみましょう。千歌たちのデレ度が半端ないほど変わってることにお気づきのはずです(笑)
μ's編の恋愛とは違ってAqours編はシリアスな回が少ないので、女の子の心が傾く描写がほとんどないのが現状です。その代わり新章に突入してからの曜や果南回のように、少々淫らな描写を含めながらちょっとでも彼女たちの内心を描けたらいいなぁと思っています。

 今回のサブタイに2年生編と記されている通り、近々1年生編と3年生編も執筆します。大人数のハーレムとなると、必然的に話数を分けなければならないのが面倒なところです(笑)


 次回はAqours屈指の純情ガールの花丸回です!



新たに☆10評価をくださった

山吹珊瑚さん、TENGA教徒さん、穂乃果ちゃん推しさん

ありがとうございます!

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