2人が出会った頃に比べて、もはや彼女のデレ度が半端ない(笑)
「遅い!! 何分待ったと思ってるの!?」
「いやまだ3分前だろ……。つうか何分待ったんだ?」
「っ!? そ、そんなことはどうでもいいのよ!!」
「お前が聞いてきたんだろ!? 理不尽すぎるよ全く……」
これは俺とのデート(仮)が楽しみすぎて、集合時間の20分前にはここへ来ていたなコイツ。中二病のせいでリアルで友達が皆無だった影響か、お出かけの待ち合わせという行為自体にも楽しみを覚えているのだろう。でなければ待ち時間を聞かれただけでここまで取り乱さないはずだ。そもそもこんなところでいきなりツンデレを発揮するなんて、ただでさえ長い待ち時間で精神を使っていそうなのにこの先のデート(仮)を楽しめるのだろうか。素直になれない子は大変だよな、他人事だけど。
先程からデート(仮)と言っているが、傍から見れば若い男女2人が街の中と完全にカップルであることには変わりない。もちろん俺も善子も互いにそのような色気付いた意識はないものの、2人で出かけるという事実はやはり相手を意識してしまうものだ。彼女はどう思っているかは分からないが、いつも以上に顔を赤くしてツンデレを発揮しているあたり、そこそこ意識はしてくれているのだろう。まあ今回はとある目的があるので、親交を深め合うというよりは目的の達成に重きを置いているんだけどな。
そしてその目的なのだが、既に善子の外見から目的達成の足踏みを食らっていた。
「お前さぁ、今回の目的分かってるよな?」
「な、なによ早速……。もう私何かやっちゃった?」
「気付いてないのかよ、自分の格好……」
「格好? あっ……!!」
善子は黒を基調とした若干ゴスロリ調の服を着用している。いつもは彼女の趣味もあるから今更その格好にツッコミを入れることはしないのだが、今回ばかりはあまりにも目的に反しているので突っ込まざるを得なかった。
そう、今回のデート(仮)は善子の中二病脱却の足掛かりを作るのが当面の目的だ。以前に希のおかげで彼女の不幸体質はある程度改善されたものの、心の芯に根付いた中二病だけは学院であってもそれ以外であっても所構わず発揮されてしまう事態は変わらずだった。彼女が非リア充になったのは不幸体質ではなくて中二病が100%の原因であることから、残り2年半の高校生活を謳歌するためにもここで中二病体質を改善しておきたいと彼女からの連絡でデート(仮)の予定が立ったのだ。
しかしスクールアイドルで一気にリア充路線を走り始めたうえに、スクールアイドル界で人気になれば中二病というステータスは逆に武器になる。俺はそう彼女に伝えたのだが、せめてそれはキャラとしてだけで扱い、普段の日常で自然と中二病を発動させてしまうのを抑えたいといのが彼女の頼みらしい。そこまで必死ならばということで渋々引き受けたのだが……蓋を開けてみたらいきなりこの格好だから前途多難だ。
「中二病を払拭したいんだろ? だったらゴスロリ調の服なんて着てくんなよ……」
「ゴスロリ調ではあってゴスロリではないわよ! それにただ単に黒色が好きなだけなんだから」
「だとしても暑い日に上も下も黒は明らかに不自然だろ。いい加減に認めたらどうだ? 何も意識せずゴスロリを着てきたって」
「うっ、まあそうだけど……」
「早速どうしたもんかねぇこりゃ」
一応ここでツンを発揮せずに弁明したあたり、中二病を治そうとは思っているらしい。いくらゴスロリではなくゴスロリ調とは言っても、見た目だけでコスプレみたいな衣装だってことはバレバレなため、まずは外見から治していくのが妥当だろう。恋愛でもまず外壁から固めろという名言もあるくらいだし、先人のありがたいお言葉に
「普通の服は持ってないのか?」
「持ってるわよ、多分……」
「その反応で随分とまともな服を着てないことが分かったよ。唯一まともなのが練習着と制服だけなんてなぁ」
「仕方ないじゃない。趣味だったんだから」
「だったら普段も制服でいいんじゃね? 休日に制服を着るのは抵抗あるかもしれないけど、少なくともゴスロリみたいな服よりかは全然変な目で見られないだろ」
「休日に制服を着てお出かけをする女子高生がどこにいるって言うのよ!! 私はあくまで普通でいたいの普通で!!」
「普通ねぇ……」
そもそもAqoursのグループメンバーなんて普通である奴の方が少ないのだが、そこのところコイツは分かっているのだろうか。まあAqours内でのネタキャラを脱却したい気持ちは察してやらないこともないが、今まで中二病やってた奴がいきなり普通になるのはそれはもう普通ではないだろう。明日から突然善子がお淑やかになった場合、中二病をやってた時以上に千歌たちに引かれると思うぞ。
「そうだなぁ、まずは口調から直すか。その闇に染まりし邪悪な心を浄化するところからだ」
「フッ、我が心域に踏み込むとは愚かな人間ね。ヨハネの心には闇の炎を纏いし暗黒のドラゴンが住み着いているというのに……。下手に踏み込んだら最後、命どころか精神一滴まで焼却されることになるわよ――――あっ!!」
「それだよそれ。簡単に釣られてんじゃねぇよ」
「今のはアンタから誘ってきたんでしょうが!!」
「だ~か~ら、普通の女の子はそんな受け売りみたいな誘いに乗らないの。理論はナンパと一緒だよ」
「その言い方だと、私が怪しいナンパに引っかかる世間知らずのJKみたいじゃない!!」
「中二病が世間語るな」
「辛辣!! だから中二病たちは社会と同調することを諦めるのよ」
だったら中二病をやめろという言葉も辛辣なのだろうか。まあそう簡単にやめられるんだったら善子もここまで苦労はしてないか。自我が急速に成長する思春期に中二病にどっぷりと浸かった奴って、黒歴史を払拭しようとしてもできないと聞く。やめたくても心の中で闇の力とかカッコいいとか思っちゃう限り、中二病という名札は自分からは外せないだろう。
でも外せないからといってそれで諦めるのは些か短絡的すぎる。要するに重要なのは意識改革だ。俺だって厨二っぽいセリフは好きだけど流石に中二病患者ではないから、少なくとも外見さえ整えれば周りから奇々怪々な目で見られることもないだろう。自分の外見さえ直せば口調も自然と改まるに違いない。ほら、クソ高い腕時計を付けたら雰囲気的にリッチな感覚を味わえるだろ? それと同じ、だから意識改革をするんだよ。
「じゃあまずは服から買いに行くか。イマドキ女子なのに、おしゃれな服を持ってないのは致命的すぎるだろ」
「そ、それってブティックに行くってことよね?」
「なんだ? 今更ヘタレてんのか?」
「そういうことじゃなくて、それって本当のデートみたい……」
「ん、なんだって? よく聞こえなかった」
「ッ~~!?!? ラノベによくいる難聴鈍感最低主人公じゃないアンタ!? ほらとっとと行くわよ!!」
「お、おい!? 行きたいのか渋ってんのかどっちなんだよ!?」
善子に手首を強く掴まれ、半ば引っ張られる形で歩き始める。
さっき色々と汚名をペタペタと貼り付けられてしまったが、少なくとも難聴ではない……と自分では思っている。難聴ってキャラのことだろ? つまり聞こえているのに聞こえてないフリをしてとぼけている奴のことだ。だってさっきの善子の言葉は本当に聞こえなかったんだから仕方ないじゃん!! ちなみに鈍感や最低かと言われたら……まあ当たってそうな気がするので否定はできない。
ていうか俺のことはどうでもいい。女の子に手を引かれて歩いてるって、これもうどこからどう見てもデート(仮)の『仮』の部分はいらないのでは……? あっ、もしかして善子の奴、マジ物のデートっぽいから顔を真っ赤にしていつも以上に慌てているのか? そう考えてみれば、もうこの時点で普通の女の子じゃないのかこれ。
~※~
「こ、これでいいの?」
「おぉっ! 想像以上に似合ってるよ」
「は、恥ずかしいからあまり見ないで!!」
俺たちはそこそこ高級感が煽るるブティックに足を運び、そこで中二病ちゃんの服を選定している。そして今は善子に着せ替え人形のごとく試着室で色々と服を着てもらっている最中だ。
俺はカッコ良さというビジュアルで全ての服を着こなしてきたから、元々ファッションセンスは皆無の人間だった。でもμ'sが恋人になって以降は女の子のファッションにも触れる機会が増えたため、こうして女子高生に服を選んでやることができるくらいの知識は出来上がっている。俺だってただ女の子たちからの好意に浸ってる生活をしてないんだよ。こうして女の子をドキドキさせる言動を徐々にマスターしているって訳だ。
ちなみに今善子に着させているのは、さっきまでの黒ベースとは全くの逆で、夏の涼しさを感じさせる白いシフォンブラウスとベージュのスカートだ。彼女の髪色的にも雰囲気的にも黒が似合うと思いがちだが、こうして見ると普通の服だって全然似合っている。今まであまりにも善子=堕天使のイメージが根付き過ぎて、意識的に黒が似合うと刷り込むように信じ込んでしまっていた。
「うわぁ何この純白さ、まるで天使じゃない。堕天使なのに光属性って、もう訳が分からないわね」
「だからそれだよそれ。どうして普通の服を着てもそういう反応しちゃうかねぇ~」
「うっ……もう反射的に言っちゃうんだから仕方ないじゃない」
「まあ外見が変われば、そのうち内面も変わっていくだろ」
「う~ん。でもやっぱり白は私にとって明るすぎる気も……」
「そんなことないって。むしろお前はいつでも輝いてるよ。普段でもスクールアイドルの時もな」
「な゛っ……サラッとそういうことを言うのはやめなさい!! 心の準備が出来ていないんだから!!」
「いやいや。今からドキドキさせるよなことを言うぞって宣言されて、お前は嬉しいのか……」
「そ、それは魅力半減だけど……。とにかくただでさえ明るい服を着て恥ずかしいんだから、人の心を揺さぶって遊ぶのはやめなさい!!」
いや遊んでるつもりは一切ないんだけどなぁ。実際に暗い感じの服だけでなく明るい感じの服も似合っているし、もうそこら辺にいる女子高生なんかよりも数百倍は可愛いと言い張れる自信がある。そんなことを言ったらまた怒られるので多用はしないが、怒ったり恥ずかしがったり、時より笑顔になったりとコロコロと変わる表情変化が面白いので見てみたくはある。そしてツンデレ特有のストレートに褒められると
「お気に召したようだから、買う服はそれにするか」
「えっ、でもこれ結構値段するんだけど……。そんなに手持ちあったっけ……?」
「何言ってんだ。買ってやるよそれくらい」
「はぁ!? こんなところで彼氏面しなくてもいいから!!」
「へぇ、彼氏もどきとは思ってくれているんだ」
「ッ!?!? だ、だからそんなことを言うのはやめなさいって!! もうっ、言ったからには全額支払いなさいよ!!」
「はいはい分かってますよ、お嬢様」
「くっ……いつか絶対に堕天使の元に裁きを下してやるんだから」
「そういうところな。そういうところ」
まあそうすぐには身体に染み付いた性格が治る訳がない。しかし外見を変えたことで普通の女の子としての第一歩を歩み始めたのだから、そのうち意識も勝手に変わっていくだろう。そもそも本人自身が男と2人きりで服選びというシチュエーションに緊張しっぱなしで、それほど中二語録を発揮していないのが現状だが。やはり擬似でもいいから彼氏ができると女の子は変わるものなのかねぇ。だからと言って善子を他の男にあげるような馬鹿なことは絶対にしないがな。
しかし、このまま彼女を普通の女の子にしてしまっていいのかと疑問を感じてもいた。中二病を更生させてやらないと意地悪をするつもりはないのだが、俺の中ではまだ若干だけど躊躇いというものが残っている。普通の女の子になることが善子の頼みだけど、本当にそれでいいのかと引っかかるところがあるんだ。
「もうその服全部買うから、着替えずにそのまま着ておけ。金払ったら店員さんにタグとか外してもらうから」
「アンタ、さっきからどうしてそんなにリッチ思考なの……」
「父さんも母さんも姉も金持ってるからさ」
「つまり人生ずっと幸福だったって訳ね。呪われればいのに……」
「ボソッと言っても聞こえてるからな」
どうして女の子が言った重要そうなことは聞こえないのに、どうでもいい悪口だけは聞こえるのか……。あっ、もしかしてこれが俗に言う難聴キャラってやつ? いやでも俺はそんな女の子を苛立たせるような立ち振る舞いをしていないと思うんだけど、周りはどう思っているんだろ。気になる!!
~※~
「ねぇ、次はどこへ行くの?」
「昼飯でいいんじゃないか。いい感じに腹も減ってきたし」
「あまり高級な店はやめてよね。ただでさえ緊張してるのに、そんなところへ行ったら萎縮しちゃうから」
「安心しろ。俺の胃袋は生まれた時からファーストフードによって鍛えられたんだ。だから高級なモノを食っても、どうせ味なんてそこらのジャンクフードと見分けが付かないんだよ」
「それはそれで悲しいわね……」
「ほら、あそこの公園でよくねぇか? 屋台もたくさん並んでるからさ」
「そうね。先生の話を聞いていたら、贅沢なんて言いたくなくなったわよ……」
ファッションに関しては高校時代に比べて大人になったせいか、多少の気遣いはできるようになった。だが食に関しては本当に無欲で、作るのも食べるのも大雑把。自炊する時は見た目よりも味重視で、そもそも休日の場合は作るのすら面倒で飯を食べないことがある。家にずっといて動かなかったら腹も減らないから仕方がない。つまり食に関しては大人になった今でもかなり無頓着なのだ。唯一貪欲になれる飯は楓の作る料理と、その手法を受け継いだ秋葉の料理だけだ。
俺たちは適当な屋台で焼きそばと飲み物を買うと、近くのベンチに腰を掛けて並んで昼食を取る。屋台のあるそこそこ大きな公園だから人も多く、こんなところで昼食なんてデート(仮)にしてみればかなり不適合だろう。変態男子と中二病女子のデートなんてこんなものかもしれないが……。
「ん? 思ったより美味しいわね」
「屋台で食う飯ってやたら美味く感じるよな。周りが賑やかな雰囲気だから、それに煽られるってのもあるんだろうけど」
「確かに。屋台に焼きそばにしては味にコクのあるソースで、まるで堕天使の羽の色のように濃いわね」
「おい、食レポにまで侵食してるぞ……」
「あっ……!!」
油断するとすぐこれだよ……。これがデート(仮)中の食事だったから良かったものの、マジのデートだった場合は雰囲気ぶち壊し確定だなこりゃ。そもそも屋台で昼食を取っている時点で雰囲気もクソもあったものじゃないし、更に言ってしまえば俺と善子が2人きりでいるのにムードなんてものが必要かと言われれば……微妙なところである。
「全く……全然治らないわねこの口調」
「もうこの際、治らないなら治らないで良くないか?」
「はぁ!? 私の輝かしい青春を見捨てる気なの!?」
「違う違う。もうそれがお前の個性なんだよ。だから無理に治す必要なんてないってこと」
「な、何よ急に手のひら返して……」
「お前に頼まれた時はその必死さから手伝ってやろうと思ったんだけど、よく考えてみたらこのままのお前でもいいかなぁって」
確かにここへ来て意見を翻すなんて、手のひら返しもいいところだと思われても仕方がない。だけど善子がこのまま普通の女の子になってしまうのが、自分的にどうしても我慢ならなかったんだ。つまり単なる俺のワガママだけど、もう既に俺たちはお互いのワガママを言える関係になっているんだから、多少強引でも自分の気持ちを伝えるのは悪いことではないだろう。
「俺は好きだよ」
「ふぇっ!?!? そ、そんないきなり告白だなんて……」
「いやそうじゃなくて、お前の中二病のことだよ」
「えっ、そ、そう……。でもどうして?」
「俺が好きだからだよ、今のお前がな。ただそれだけ」
「そんな適当な理由で……」
「ありのままの自分ってのは重要だと思うぞ。お前は幾度となく普通の女の子になりたいって言ってるけど、俺からしたら今の善子が普通なんだよ。だからお前が普通の女の子を目指した瞬間に、俺やAqoursのみんなからしたらお前が普通でなくなっちまう」
「普通の、私……」
さっきも言ったけど、言葉遣いも振る舞いも全てお淑やかになった善子はもう俺たちにとっての善子ではなくなってしまう。それだけ中二病というキャラが彼女のアイデンティティとして確立され、周りにもそれが周知されているのだ。
そして、俺はそんな善子が好きなんだ。堕天使キャラに向かって輝いていると言ったら変かもしれないけど、それだけ彼女が元気よく、誇り高く自信満々に中二病キャラを演じる彼女のことがな。もしかしたらもはやキャラ付けとかではなく、それこそが善子という人間なのかもしれない。
「当たり前だけど、お前が世間一般で言う普通の女の子に戻りたいって言うのなら止めはしないよ。お前がそれを望んでいるのなら、俺も最大限に手伝ってやる」
「どっちに見える? 私が普通の女の子に戻りたいのか、それともこのままであり続けたいのか……」
「最初は一般的な女の子に戻りたいと思っていたみたいだけど、こうして2人きりでデートをしながら話してみると、やっぱり中二病を捨てるに捨てきれていないと思うぞ。それにだ、今日のお前はごく自然にありのままの自分を俺に見せてくれた。だったら今のお前こそが普通なんじゃないのかなぁって思うよ」
世間で言われる普通の女の子を目指そうとしても、どこかぎこちない言動になるのが善子の癖みたいなものになっている。服だって自然と黒ゴスロリ調の服を選んでしまうし、口調だってどこか厨二臭いセリフが混じってしまう。そして毎回それで頭を悩ませるんだったら、それはもう更生しなくてもいいんじゃないかと思うんだ。そんな性格を引っ括めて俺は彼女のことが好きだし、千歌たちも俺と同じ気持ちだろう。
「俺やAqoursはもちろんだけど、最近クラスメイトとも打ち解けられているだろ? お前の教室に授業に行った時、そんな様子が見て取れたから」
「え、えぇ。もう自分を包み隠さずとも、花丸やルビィ以外の人とも話せるようになってきたわ」
「だったらなおさら無理をしなくてもいいんじゃないか? もう今のお前は周りに受け入れられているんだからさ」
「そう……。そうね」
俺の言葉で心の
「飯も食ったし、次はどこへ行く? それかもう目的を達成する意味がなくなったから、このまま解散にするか?」
「いえ、私の家に……来ませんか?」
「えっ、お前の!?」
「ありがとうってお礼もしたいし、今日は夜まで親がいないから……。それに騒がしいところじゃなくて、2人きりになりたいの……」
「マジ……?」
善子は顔を赤くして、そっぽを向きながらも小さく頷く。今の彼女はもはや中二病キャラとか全く関係ない、至って普通の1人の乙女の顔になっている。痛いキャラを演じている彼女だが、容姿だけを見ればそこらの女子に負けないくらいの美少女だ。そんな美少女が羞恥心に耐えながら自宅に誘ってくるなんて、並の男なら一発KOだぞ……。俺は並の男ではないから辛うじて耐えてはいるものの、親がいないことを言い訳に男を自宅に誘い込む展開は決まって1つしかない。
そう、身体と身体のドッキング――――!!!!
「い、一応言っておくけど、アンタが想像しているようなことはしないから!!」
「え゛っ!?」
「ちょっとそんな図星みたいな顔しないでよ!! こっちが恥ずかしくなるでしょうが!!」
そういや以前に花丸にも言われたけど、やっぱり俺の思考って読まれやすいものなのか……? 気が動転している善子にすらあっさりと妄想を見抜かれてしまった。自分の妄想が相手にも伝わるって、これほど恥ずかしいことはねぇよな……。
「本っ当に変態なんだから。教師のくせに生徒に欲情するってどういう神経してんのよ」
「それは俺自身も疑問に思ってる……。でも嬉しいよ、今まで啀んでいたお前が自宅に誘ってくれるなんて」
「言ったでしょ、これはお礼だって。でも女の子の家だからって、あまり変な気を起こさないことね」
「はいはい分かってますよ、お嬢様」
「だからその言い方やめなさいってば!! もうっ、早く行くわよ!!」
そしてまた手首を掴まれ、引っ張られる形で歩き出す。
デート(仮)の最初の善子は普通の女の子を目指そうとするあまり、多少ぎこちない雰囲気はあったのだが、今ではすっかりいつものテンションに戻っている。結局堕天使を卒業することはできなかったが、もうそれでいい。だって今の彼女は、普通に恋する乙女なのだから。
ちなみに、善子と間違いは起きなかったから安心(?)してくれ。
流石にツンデレちゃんだから曜や果南のような事態にはならなかったものの、若干期待していた俺もいることは事実。でも今まで嫌悪されていたのにこうして2人きりで出かけられたのは、素直に嬉しいかな。
結局サブタイの通りに堕天使は消滅しませんでしたと(笑)
善子の家に行った後、曜や果南の時と同じ様な展開を考えていたのですが、彼女の心情を汲み取ればまだそこまでの勇気はないと思い今回は泣く泣く自宅へのお誘いだけに……。正直恋だけでなく徐々に性関連でも積極的になっていくAqoursを描きたいんですけどね(笑)
最近はずっとハーレムだったり恋愛系が続いていたので、次回は久々にネタしかない回にしてみようと思います!
ちなみに、このAqours編もあと15話程度で完結の兆しが……!