ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 いつの間にかAqoursの3年生組にも熱い視線を向けられるようになっていた零君のお話。


いつの間にかAqoursハーレム(3年生編)

 こうして考えてみると、俺の周りのスクールアイドルたちはやたら裕福な家庭が多い。μ'sならことりや海未、真姫や絵里、亜里沙の家がそうだし、Aqoursなら旅館を営んでいる千歌、ダイヤとルビィ、鞠莉とそれぞれのグループメンバーの約半数が優雅な暮らしをしている。かと言ってそれ以外のメンバーも決して生活を切り詰めている訳ではなく、唯一裕福とは程遠いのはアパート暮らしのにこくらいだ。だが彼女は今新人アイドルとして既にメディアにも進出しているし、あと数年も経てば家族総出で立派な家に住んでそうだけどな。

 

 そんなことを考えながら、俺は黒澤家の風呂を贅沢に堪能している。ああ言いたいことは分かる、男の入浴シーンを想像させるなってことだろ? だって仕方ねぇだろ、ダイヤがお堅過ぎて混浴というジョークすら一刀両断されてしまったんだから。俺だってな、できれば女の子の入浴シーンをみんなにお届けしたいよ。腐女子でもない限り、こんな絵面を映す必要性は1%もないってことも知ってるから。

 

 ちなみに女子風呂ではダイヤの他に果南と鞠莉が一緒に入浴しているはずだ。今頃鞠莉あたりが舞い上がって、ダイヤや果南の胸を揉み比べしている頃だろう。そうやって猥褻な想像してしまうと、これほどまでにだだっ広い風呂にポツンと1人きりなんて寂しいどころの話ではない。流石は格式高い黒澤家の風呂と言ったところか。女の子が3人入っても広そうだもんな――――と考えると、そこに男1人くらい余裕で入れそうだと妄想してしまう。いかんいかん、これ以上叶わない妄想を重ねると余計に惨めになるだけだ。

 

 ここまでの話でお察しの通り、俺は黒澤家に一泊させてもらうつもりだ。果南と鞠莉も一緒なのだが、女子のお泊まり会の中に男1人なのはそれなりに理由がある。

 それはAqoursのメンバーの中で、3年生組は他の学年の子と比較して俺との交流が少ないと3人から文句があったのだ。言われてみればそれは事実で、教育実習で授業に出向くクラスは大抵が2年生と1年生であり、3年生にはそれほど出向くことはない。それは学院側が3年生の受験を見越しているからであり、いくら俺が天才と言ってもたかが教育実習生に受験生は任せられないという判断があるからだ。したがって3年生組は千歌たちに比べれば俺との交流が少ないので、あと数日で俺が東京に帰る前にこうしてお泊まり会で交流を深めようという魂胆らしい。もちろん快く引き受けたのだが、まさか黒澤家に泊めてもらうなんて思ってなかったぞ。

 

 しかもどうやら親は両方出張でルビィは善子の家に行っているらしいから、必然的に俺と彼女たちの4人だけとなる。親がいない女の子の家に泊まるって、言葉の響きだけでも淫猥に聞こえるのが困る。その気がないと言われると完全に否定はできないが、合宿とは違ってこのお泊まり会に特別なミッションは課せられていないため、何をするのかは単純に疑問ではあった。

 

 そんなことを考えつつも風呂から上がり、これまた無駄に広い脱衣所を1人で占領しながらもダイヤに用意してもらった浴衣に着替える。千歌の家じゃないけどこの家もかなり古風で風呂も銭湯みたいなものだから、もはや旅館と言っても差支えはない。やっぱりスクールアイドルの女の子って優雅な生活をしている子が多いよなぁ俺とは違って。

 

 風呂に入っていただけなのに少々格差を感じながらも、脱衣所から出て自室に向かう。その途中、俺と同時に脱衣所から出てきた3年生組と遭遇した。

 

 

「あら先生、お風呂場でお楽しみだった?」

「いきなり何を言い出すんだ……鞠莉」

「いやぁ私たちがお風呂でイチャコラしてる姿を想像してたのかと思ってね♪ ね、ダイヤ?」

「話しかけるなと言ったはずですが……?」

「もうっ、ダイヤのいけず!」

「おい果南、どうしてダイヤ怒ってんだ? しかも顔を真っ赤にして」

「鞠莉がお風呂で暴れだしたから――――と言えば分かりますよね」

「あぁ、全て察した」

 

 

 やはり俺の予想通り、鞠莉は風呂場でハッスルしていたみたいだ。しかも襲っていたのはダイヤだけではないようで、果南の少し恥じらっている様子から彼女も暴漢(鞠莉)に襲撃されたのだろう。笑顔で全裸の女の子を襲うとか、そこら辺のエロオヤジでもそんな暴挙に出ねぇぞ……。

 

 それにしても、風呂上がりの女の子ってのはいつもより数倍大人の魅力を感じるよな。髪の湿り具合、身体の火照り、シャンプーの香り、艶やかな肌――――様々な要素が混じり合い、その子の色気を最大限に引き出す。しかも果南もダイヤも鞠莉も、風呂上がりゆえか髪を下ろしているから余計に大人の雰囲気を感じられる。元々高校生とは思えないアダルティな彼女たちなのに、そこに風呂上りというオプションが加わればこれほど男を唆らせる姿はない。そのせいで俺の目は彼女たちに釘付けだった。

 

 

「あれぇ~先生の目、イヤらしぃ~♪」

「うぐっ、仕方ないだろお前らのそんな格好を見たら……」

「ただお風呂に入って浴衣に着替えただけですけどね。私にとっては日常的なことなのに、これでは先生と一緒に暮らすことなんて到底できませんわ」

「なに? ダイヤもしかして、俺と同棲でもしたいの?」

「な゛ぁ!? か、仮の話ですわ仮の!! いつものように行き過ぎた妄想は謹んでください!!」

「ダイヤが思わせぶりなことを言うからじゃないの?」

「果南さんはどっちの味方なのですか!? まさか、この男に篭絡されているのでは……?!」

「そんなことは……ないよ」

「今の間は!?」

 

 

 俺と果南の威厳と信用のために言っておくが、俺は彼女を篭絡した覚えはないし彼女もそれくらいは理解しているだろう。返答に一瞬悩んだのは、俺の家の風呂場で起こった一件を思い出したからに違いない。その証拠として、果南が微かに横目で俺を見つめてきた。Aqoursの誰よりも誠実な態度である果南だが、もしかしたら意外とむっつりとした面もあるのかもしれない。まあその大きな胸を武器にして男の剛直を挟み込む行為を自ら買って出たので、むっつりどころの話では済まないかもしれないが。

 

 

「あまり熱くなっちゃダメだよダイヤ。せっかくお風呂に入ったのに、また汗かいちゃうよ?」

「元はと言えば鞠莉さん、あなたのせいでしょう……」

「まあまあこんなところで喧嘩をしていても仕方ないし、一先ず部屋に戻ろうよ。鞠莉も今日は女子だけじゃなくて先生もいるんだから、あまり大騒ぎしないこと」

「先生がいるから大騒ぎするんだけどねぇ……」

 

 

 先日に起きた、鞠莉にホテルへ連れ込まれた逆レイプ未遂事件を思い出した。確かにあの時から鞠莉のアプローチはより積極的になり、持ち前のグラマラスなボディを俺の身体に刻み付けるかのように密着してくるようになったので、俺としては普段から大騒ぎどころか大慌てなんだけどね。

 

 

「それじゃ先生、明日の支度が終わったら先生の部屋に行くから! だから1人でシている最中に私たちが入っちゃっても、文句は言わせないからね♪」

「しねぇよ!! 少なくとも自分の家以外ではな!!」

 

 

 顔を真っ赤にするダイヤと、頬をじんわりと紅く染める果南。もちろん鞠莉は余裕の表情で、低俗な話題に3年生組は三者三様の反応をする。その手の話にそこそこ耐性のある2年生組と、逆に耐性のない1年生組と比べれば、ここまで異なったレベルの女の子が集まっている集団はそうそうない。だから鞠莉が果南とダイヤで遊ぶ構図が出来上がっちゃうのか……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 俺は自室(と言ってもダイヤが提供してくれた空き部屋)に戻り、3人が来るのを待っていた。だが果南もダイヤも鞠莉も一向にこちらへ来る気配を見せない。確かに女の子は男よりも風呂上がり後だったり明日の用意だったりが忙しいのは分かるが、もう30分以上も待たされているのだ。女の子の支度に茶々を入れるのは野暮だけど、こちとらいい感じに風呂の火照りが冷めてきて、既に脳が睡眠体制に入っている。このまま横になったら寝てしまうのは確実だが、あっという間に眠気に負けた俺は少しだけならとそそくさと布団に入ってしまった。

 

 そして、案の定すぐに夢の中へ旅立つ。一応部屋の鍵は開けてあるので、アイツらが俺の状態に気付かないことはないだろう。そういった無駄な安心感のせいで、交流合宿の目的を余裕ですっぽかす俺であった。

 

 

――――――

 

 

――――――

 

 

 

 こうして更に時間が過ぎていった。

 結局俺が爆睡している間にアイツらは来なかったため、恐らくアイツらも同じく風呂上がり後に寝てしまっていると思われる。だからこのまま朝を迎えるだけ。せっかく交流のためのお泊まり会だったのに彼女たちと交流らしき交流はあまり出来なかったのは残念だが、まだ残されている時間はある。わざわざ心地の良い睡眠を妨げてまで取る交流もないだろう。

 

 

 俺は夢の中で、そう思っていた。

 

 

 だが、突如として俺の両手首が縛られたことで事態は動き出す。

 目を開けると、俺の目の前には何やら恍惚な表情をしたダイヤの顔が映りこんだ。少し目を逸らすと、同じような表情をしている鞠莉の姿まで。そして手首だけでなく足首までリボンのようなもので縛られているのが感覚的に分かった。

 

 多分というか絶対これは彼女たちの仕業なんだろうが、まず状況が全然把握できない。まさか彼女たちの言う交流って、男を縛り付けて弄ぶドSプレイのことじゃないだろうな……? ダイヤと鞠莉って見た目的にも性格的にもサディスティックなところがあるし、普通に有り得そうなのがまた怖い。

 そしてもう1つ違和感があったのだが、それはたった今解けた。この部屋は俺の部屋ではなく彼女たちの部屋だ。つまりコイツらは俺の手と足を縛ったあと、隣の自分たちの部屋へ俺を運び込んだということだ。俺は3人分の布団の上に転がされ、卑しくも不服そうな顔をしているダイヤと鞠莉に取り囲まれている。

 

 その2人から目を逸らすと、少し離れたところに果南が座っていることに気が付いた。彼女は他の2人に比べるといつも通りのようで、呆れた顔で俺たち見ている。俺は現状を把握すべく、果南に助力を求めた。

 

 

「果南!!」

「いやぁ、一応やめておけばとは言ったんですよ。一応ですけど……」

 

 

 果南は自分だけは蚊帳の外にいたいらしく、苦い顔をしながら俺からの視線も外してくる。彼女がそんな行動を取るということは、とりあえず緊急的な状況でないことは確かだ。だとすれば、俺はまたしても彼女たちの意味不明な馬鹿騒動に巻き込まれたってことになる。そう思うと一気に力が抜けてしまった。

 

 とにかく、実行犯と思われる2人に話を聞いてみよう。

 

 

「おいダイヤ」

「ぐすっ、先生ヒドイですわ……」

「は……?」

 

 

 突発的な事態に謎の涙、さっきから訳の分からない展開が怒涛に続いて開いた口がふさがらない。

 ダイヤは何故か泣きながら俺の浴衣の裾を摘む。いつもは品行方正で威厳のある彼女だが、涙1つでここまで幼さを感じられる少女になるとは……。そのギャップに心を乱されながらも、あの真面目なダイヤが俺を束縛した一端を担っているのが未だに信じられなかった。

 

 使い物にならないダイヤは後回しにし、今度は実行犯の主犯格と疑われる鞠莉に事情を聞いてみる。

 

 

「鞠莉、これ一体どういうことだ? 教師に向かってこの仕打ちはヒドくねぇか?」

「ヒドイ……? 私たちをこんなにメチャクチャにしておいて、よくそんなことは言えるね先生……ヒック」

「いやメチャクチャなことをしてるのはお前だろ。それに、どうして嘔吐(えず)いた?」

 

 

 まさかとは思うが、コイツら……。

 俺はダイヤと鞠莉の気分を高ぶらせているモノの正体を暴くため、縛られて転がされながらも部屋を見渡す。すると机の上に、明らかに海外産であるチョコレートが乱雑に広げられていた。

 

 

「果南!!」

「いやぁ鞠莉の親が海外から送ってきたみたいで、おやつ代わりにちょっと摘んだら2人共こんな感じに……」

「マジかよ……ベタッベタのベタ展開じゃねぇか」

 

 

 女の子がアルコール入りのチョコレートを食って酔っ払い、性格が狂ったようになる展開はもはや使い古されたベタ中のベタ展開だ。こんな埃が被った化石のようなネタを今更持ち出すなんて、最古の化石であるシーラカンスもビックリするだろ……。

 

 

「ねぇ、先生はどうしたいの? 私たちAqoursのみんなを……」

「どうしたいって言われても、質問の意味が分かんねぇ……」

 

 

 あれ? 意外とシリアスな話になるのか? 俺はてっきりここからR-18展開になって、規制対策にこの話をここで打ち切りにしなければならないと思っていたが思惑が外れたっぽい。鞠莉は酔いの影響で顔を赤くしていることに変わりはないが、逆に酔ったことで本音をぶつける気になったのだろう。この前のホテルでも伝えられなかった本心を。

 

 

「Aqoursにはたくさん女の子がいるでしょ? なのに先生は手を出さずに私たちを放ったらかし。そんなの欲求不満になっちゃうよ……」

「あ、あれ……? 真面目な話題じゃなかったっけ??」

「私たちは毎日毎日先生から身体に刻み込まれるような激しい指導を受けているのに、ムチばかりでアメは1つも与えてくれない……。先生は私たちを好きなだけ弄んでいるというのに……」

「意味深な発言はやめろ!! 俺がお前らの身体目的で顧問になったみたいじゃねぇか!!」

「ぐすっ、やっぱりヒドイですわ先生……。私たちで散々遊んでおいて、満足したらヤり捨てだなんて!!」

「泣きながら言うとそれっぽく聞こえるからやめろ!!」

 

 

 シリアスな話題かと思ったら全然違うじゃん! さっきまで神経を尖らせていたその疲労を返してくれ!!

 しかし真面目ではない話題でないにしろ、逆ベクトルで面倒な話題を持ち出してきやがった。いや、そもそも事実無根の冤罪を吹っ掛けられている時点で話題もクソもない。酔っ払いのコイツらが無実の罪を着させてくるのをツッコミで切り抜ける、ただのギャグでありネタだよこれ。シリアスな空気かと思ってちょっとでも身構えた俺がバカみてぇじゃん……。

 

 無駄に抵抗して体力を消耗するのは賢くないので、俺たちから離れて傍観者となっている果南に助けを求めてみよう。さっき自ら酔っぱらいの席に関わらないようにしていたため望み薄だが。

 

 

「果南!!」

「大丈夫ですよ。ダイヤも鞠莉も酔ったら早く寝ちゃうんで、それまでの辛抱です」

「なんで未成年の癖に酔った後のことなんて分かるんだよ……」

「鞠莉が持ってくるチョコレートは大抵海外産のアルコール入りなので、私たち数回被害を受けているんですよね。私はアルコールに強いので2人みたいにはなりませんが」

「学べよお前ら!! どうして同じ手に何度も引っ掛かってんだ!?」

「むしろ引っ掛かりすぎて、2人共今度は耐えてみせるって躍起になるんですよ。それで毎回この結果です」

「負けず嫌いだもんな、ダイヤも鞠莉も……」

 

 

 でもここまで同じ罠に嵌められているんだったら、それは負けず嫌いというより往生際が悪いだけではと思ってしまう。だから果南は最初から呆れた顔をして傍観者に徹していたのか。そりゃ今までと同じ罠に掛かって、何も学ばないおバカな酔っ払いの親友の姿を見せられたらそうなるわ、俺だってそうするから。

 

 すると俺の顔の反対側から指が伸び、その指で頬をそこそこ強い力で摘まれる。犯人はもちろん鞠莉で、彼女と目が合った瞬間に更に摘む力が強くなった。

 

 

「いはいいはいって!!」

「それで先生はどうするの? 欲望というムチを振り回して私たちを弄ぶのか、それとも私たちの人形になるというアメを与えてくれるのか……」

「どうして攻めと受けしかねぇんだよ!? もっとお互いに温和で行こうよ!!」

「今まで私たちの身体をヘトヘトにするまで酷使してきたというのに、自分だけ穏便に事を運ぼうって言ったってそうはいかないんだから……ヒック」

「ヘトヘトになったのはスクールアイドルの練習だからだろ!!」

「穢されましたわ……うっぐ、ヒック……」

「今日のお前、ノリいいよな……。泣いてるけど」

 

 

 理由は分からないが、鞠莉とダイヤは俺に謎の決断を迫っている。そもそもコイツらの都合のいいように過去を改ざんれているので、どちらの選択肢を選ぶも何もないのだが。

 

 

「私、聞いてるよ先生。ヒック……先生が取っ替え引っ変え私たちを呼び出して、そしてエッチなご奉仕をしてもらってること……」

「ちょっ、ちょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?!? どうして知ってんだよ!? いや、それはそういうことじゃなくてだな!!」

「今更誤魔化しても無駄」

「え、い、いやだからそれは……」

「うぅ、ヒック、わ、私だけご奉仕してない……。これは見捨てられたのですわ……」

「お前からそんな言葉が出てくるなんてな……」

 

 

 ダイヤが奉仕活動(あっち系)にご執心なのは驚いたが、まあどう考えても酔いの影響なので気にしないことにする。当面の謎は何故俺がAqoursの一部メンバーからご奉仕を受けていた事実を、コイツらが認知しているかということだ。その事実の張本人である子たちはみんな恥ずかしがっていたから、周りに自らの熱愛報道など漏らすはずがないと思っていた。だがバレている、どうして??

 

 

「果南!!」

「いい加減に大声で名前呼ぶのやめてもらえません……? 部屋の中ですし聞こえてますから」

「そんなことはどうでもいい! どうしてあのことがバレてるんだ!? まさかお前が……」

「違いますよ! 鞠莉が言ってました。先生は女の子から奉仕されることに慣れすぎているって」

「それは今までμ'sに――――いや何でもない」

「……? μ'sがどう関係あるかは知りませんけど、さっきの鞠莉の発言はただの当てずっぽうだと思いますよ。証拠なんて一切ないですし」

「だよな……だよな!?」

「別にそこまで焦らなくても……」

「焦るよ!! 相変わらずドライだなお前!!」

 

 

 興味のないことにはとことん興味を示さないのが果南の性格だが、一応お前も関わってることだからなと大声でツッコミを入れてやりたい。でもあまり声を出すと鞠莉やダイヤに聞かれてしまうため、彼女に伝えられないのがもどかしい。風呂場でソープ嬢の如く胸で俺の剛直を挟んだり舌で舐めたりしてたじゃねぇか。だから関心を持たないフリをしても無駄だからな。

 

 

「いいもん! 浴衣姿のまま先生に襲われたって、学内SNSに投稿するから……ヒック」

「うぅ、ヒック……ならば私は生徒会長権限で学内新聞を張り出します」

「どこぞの悪徳週刊誌じゃないんだし、嘘を書くな嘘を!! それにまだ泣いてんのお前?」

「それどころか全く脈略がなさすぎて……。酔っぱらいの言いそうなことだけど」

「そう思うなら助けてくれよ」

「世界で一番酔っぱらいの世話が嫌いですから。特に酔っ払ってる鞠莉とダイヤに横槍を入れたらどうなるか、もう先生なら分かってるはずですよね」

「こんな緊急事態に持ち前のサバサバな性格を発揮しないで! もっと親身になってくれ!」

 

 

 お風呂場でご奉仕したされたの仲なのに、ここで裏切るのはどうなの!? と叫びたいけど叫べないこのジレンマ。まあどう考えても彼女を攻めるより、過去の失態を学びもせずにアルコール入りのチョコを食い無様に酔っちゃったコイツらが悪いんだけどね。

 

 でも今はとにかく2人の奇行を止めないと、教育実習の終了を穏やかに迎えることができねぇぞ。

 

 

「おい鞠莉、ダイヤ!! ちょっと落ち着け――――って、あれ?」

「「すぅ……」」

「あ、あれ? コイツら寝やがった!?」

「みたいですねぇ……」

「人を巻き込むだけ巻き込んで、酔いが覚めそうになったら寝るっていい身分だなオイ。こっちはバカ騒ぎしたせいで目がバッチリ覚めたっていうのに……」

 

 

 まあこちらとしても酔っぱらい相手に長丁場覚悟の直訴をしなくて良かったと思うが、やりたい放題されてこっちが反撃できないのは釈然としない。せめて酔っ払いを上手く言いくるめて気持ちよく寝たかったものだ。さっきの酔いオヤジのようなウザ絡みはどこへやら、今はしっかりと可愛い顔をして眠っているダイヤと鞠莉。こんな気持ちよさそうな顔を見たら怒るに怒れねぇじゃねぇか……。

 

 そして俺は、さっきから気になっていることが1つあった。

 

 

「なぁ果南、本当にバラしてないよな?」

「そんなことする訳ないじゃないですか。教師と生徒の関係以前に、あの時のことを思い出すだけで恥ずかしいんですから」

「あれ? 結構ドキドキしてたのか、へぇ~」

「してました!! むしろ好きな人にあんなことをするなんて、ドキドキしない方がおかしいですよ……」

「えっ、なに? 好きって言った?」

「い、言ってません!! 早く部屋に戻って寝てください!!」

 

 

 おぉ、ここまで声を荒げる果南も久しぶりに見たな。精神も強くアルコールでも酔わない彼女の顔を赤くさせただけで謎の征服感が生まれてしまう。やっぱ俺はさっきの尋問みたいな受けよりも、こうして女の子を羞恥で満たす攻めの方が性格上向いてるよ。でもやりすぎると羞恥の火山が爆発してしまうから、ここは名残惜しいけど引き上げてあげよう。

 

 

 …………

 

 

 …………あっ、そうだった。

 

 

「なぁ果南、このリボンだけ解いてもらっていいか?」

「あっ、忘れてました」

 

 

 ヤバイ、μ'sのヤンデレに慣れすぎて縛られていることすらも忘れてた!!

 このままM属性が付いたらどうしよう……。

 




 酔っ払った女の子がいつもよりグイグイ攻めてくる性格、私は大好きです(笑) この小説を読んでいる人なら多分同調してくれるはず!

 実はサンシャイン編に突入して、今回で50話目を達成しました!
 それを記念して、次回は特別編です。零君が教育実習をしている間にμ'sは何をしているのか気になっている人が多いと思うので、次回の特別編では楓と高坂姉妹の生活に焦点を当てたお話となります。流石に1話でμ'sを全員出すの大変なので(笑)
一応楓が襲来した時の話を読み返して、彼女の心境と状況を掴んでおくと楽しめる……かもしれません(?)

 『あれ? サンシャインの50話記念なのにμ'sの話かよ!?』 ってツッコミはなしで!!



新たに☆10評価をくださった

のんkkさん

ありがとうございます!

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