ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 メンバー集め、6人目
 あの天然な亜里沙に、過酷な試練が……(?)


天然少女、初めての(大人の)お使い

 

「さぁ~てやって参りました! 毎度お馴染み『初めてのお使い』シリーズ。今日お買い物に出かけるちびっこは亜里沙ちゃんです! 白いワンピースと麦わら帽子が、彼女の清楚さを表していて可愛いですねぇ~♪」

「なにこの茶番……」

 

 

 絵里を強引にμ'sへ引き込んだ後、穂乃果が次に勧誘の相手に選んだのは亜里沙だった。

 だが今回は真っ向勝負を挑むこれまでの勧誘形式とは異なり、何故か物陰からコソコソと亜里沙の様子を伺っている。本人曰く、毎回同じような勧誘ばかりでは展開がマンネリ化してしまうというどこぞの皆さんへの配慮らしい。

 しかし、よりにもよって勧誘が一番楽そうな亜里沙を相手に下手な趣向を凝らすのはどうなんだ? 彼女相手こそ真っ向に挑んだ方が難易度は劇的に低いと思うのだが……。

 まあ一度言いだしたら聞かない穂乃果に何を言っても無駄なので、俺は暖かい目で経過を見届けることにしよう。

 

 

 ここらで『初めてのお使い』を知らない人のために、少し解説しておいてやるか。

 元ネタはとあるテレビ番組であり、その内容はまさにタイトル通り。まだ垢抜けないちびっこが人生初めてのお買いものに出かけ、親に頼まれたモノを各地で購入する様子をこっそりとカメラで追ったものだ。ちびっこが故に今まで親と出かけていたルートであっても道に迷ったり、間違えて親に頼まれたモノと別のモノを買ってしまったりと、ツッコミどころと笑いに満ち溢れた企画である。それだけでなく、無事に買い物を終えた喜びや、帰宅した際に親の顔を見て泣き出しちゃう子もいるなど、多少のお涙頂戴イベントも兼ね備えた人気企画なのだ。

 

 そして今回、穂乃果はその企画を亜里沙をメインにして仕立て上げるらしい。とりあえずその時点でツッコミどころは満載なので、慌てず騒がす1つ1つ解決していこう。

 

 

「どうして買い物する役が亜里沙なんだ? アイツもう大学生だぞ?」

「面白そうだから!」

「えぇ……。じゃあここからどう勧誘に繋がるんだ? 突然この企画を打ち立てた意味が分からないんだけど」

「面白そうだから!」

「…………。どうして――」

「面白そうだから!」

「真面目にやれよ!!」

 

 

 そうだな、穂乃果に理由を求める俺がバカだった。コイツの勢いに任せた思い付きは今に始まったことではなく、そもそもμ'sだってコイツの思い付きで始まったことだ。つまり穂乃果のやることやることにいちいちツッコミを入れていたらこちらが持たない。しかしここまで5人の勧誘に成功した実績があるから、その勢いはあながち斜め上の方向とは言いづらいかもしれない。

 

 ちなみにμ'sの中で『初めてのお使い』のちびっこ役に任命するなら、穂乃果の選択通り亜里沙がピッタリだろう。クセ者揃いのμ'sの中では比較的まともな部類の彼女だが、持ち前の天然さだけはどうにも擁護できない。流れる情報は例えデマでも簡単に鵜呑みにし、特に俺の言葉は何でもホイホイと受け入れて従う。この天然さに絵里も頭を悩ませることがあり、『将来、ご利益のあると銘打った壷とか買わされないかしら……』と本気で心配されるほどだ。

 だがいくら天然とは言っても、所詮はちびっこメインの企画。大学生になった亜里沙に買い物へ行かせても、無難に終わって企画倒れもいいとこだと思うんだが……。

 

 

 ――――と、思ったのは本当に束の間だった。

 

 

「あれ? 亜里沙の奴、道に迷ってんのか? 秋葉原の街中なんて見飽きるほど来てるはずなのに」

「ふっふ~ん♪ それはね、亜里沙ちゃんの買い物が普通の買い物じゃないからだよ!」

「どうしてお前が得意気なんだよ……。で? その心は?」

「はいこれ、亜里沙ちゃんに送ったメッセージの内容。ここに今回の企画で買うべきモノが書いてあるから」

「どれどれ……」

 

 

 俺は穂乃果から携帯を受け取るまでは、てっきり亜里沙の弱点を突いて日本風情を感じられるモノを買いに行かせたのかと思っていた。彼女は絵里よりもロシアでの生活が長く、大学生になった今でも日本のことに少々疎いからだ。

 

 一体亜里沙にどんな買い物を頼んだのか、穂乃果の携帯を見て確かめる。

 

 

 亜里沙ちゃん今から暇? 実は穂乃果も暇だったんだけど、突然用事が入ったせいで買い物に行けなくなっちゃったんだ。

 だからお願い! 穂乃果の代わりに買い物に行ってくれないかな? 今すぐ必要なモノばかりだから、時間が空いてるなら頼みたいんだけど……どう?

 

 買って欲しいモノは2つ。普通に買い物をしても面白くないから、ヒントだけで穂乃果の欲しいモノを当ててね?

 

・長くて太くて、皮を剥いて食べるモノだよ!

・飲んだら身体がポカポカしてきちゃう、真っ白い飲み物だよ!

 

 買い物が終わったら、穂乃果の家の近くの公園で集合ね!

 それじゃあよろしく♪

 

 

「おい、本当に放送できるような買い物なんだろうな……? 買い物の内容を見るに、深夜番組にするしかねぇんじゃ……」

「えっ? バナナとミルクを買いに行くだけなのに――――って、あっ!」

「いや気付くのおせぇよ! この書き方だと明らかに意味深にしか聞こえねぇだろ……」

「それは零君がスケベでエッチで変態なだけだよ」

「そこまで言うか……」

 

 

 長くて太くて皮を剥いて食べるって、健全な男子ならばあっちの意味を思い浮かべてしまうのは当然だろ? そしてそれを食べている最中に吐き出された真っ白い飲み物(?)と言えば、まさにアレのことだ。穂乃果は至って真面目にこの文章を書いたのだろうが、本人が元々淫乱思考のせいで普段の言い回しまで完全に淫らに染まっている。1年後にこんな奴が社会に出るとなると心配でならねぇよ……。

 

 

「あっ、亜里沙ちゃんが動き出したよ! 穂乃果たちも追いかけなきゃ!」

「追いかけるのはいいけど、向こうの声が聞こえないから反応を楽しめないよなぁ……」

「大丈夫、ここに盗聴器があるから。亜里沙ちゃんに仕込むのも大変だったんだよ?」

「むしろどうやってどこに仕掛けたんだ……」

 

 

 いくらツッコミを入れてもこの流れは止まらないので、折角だしこの状況を楽しむことにするか。

 亜里沙は街に繰り出すと、携帯で穂乃果のメモを見ながらキョロキョロとしている。普通に考えればバナナとミルクが答えだと分かりそうな気もするが、どこで悩んでんだろ?

 

 ここで盗聴器から亜里沙の声が聞こえてきた。

 

 

「太くて長い食べ物で、皮を剥くと言えば……バナナ、だよね?」

 

 

 あれ? 案外あっさりと正解に辿り着いてるじゃん。やっぱり清純という言葉をそのまま体現した亜里沙なら、俺のように思考が卑猥になったりせずあっという間に答えを導き出して当然だな。これは深夜番組になりそうな危機とは別の意味で企画倒れになっちまいそうだ。だってこのままだと数分で買い物が終わり、何の苦難も感動もない、それこそただの買い物になってしまう。

 

 だが、亜里沙の様子を見ているとそう簡単にこの番組は終わらないようだ。答えに辿り着いてはいるものの、どこか悩んでいる様子なのは先程と変わらない。一体バナナ以外で何を想像してるんだろうか……。まさか俺と同じく男の剛直を――――って、彼女に限って流石にそれはないか。

 

 

「でもバナナって太いのかなぁ? えぇと、長いモノの皮こうやって剥いて、そのままパクッと」

 

 

 やべっ、亜里沙のバナナを食べるモノマネに、不覚にも勃っちまいそうになった。本人はバナナを想定してのモノマネだったんだろうが、傍から見たらフェラの練習にしか見えねぇぞ……。

 

 

「あっ、ことりちゃん!」

「亜里沙ちゃんだぁ♪ こんにちは!」

「こんにちはです! 奇遇ですね!」

 

 

 俺が卑猥な妄想をしている間に、亜里沙がことりとエンカウントしていた。今日アイツを見かけるのは3度目なんだけどというツッコミはさて置き、μ's内で最も淫乱な奴と最も天然な奴が出会ってしまったことに戦慄しか感じない。そういやことりと亜里沙が2人きりになる現場って見たことがないけど、いつもどんな会話してるんだろ……? ちょっと怖いけど、盗聴器の音量を上げてみるか。

 

 

「穂乃果ちゃんからお買い物を頼まれたんですけど、このヒントを見ても買うモノが分からなくて……」

「どれどれ――――――!? こ、これは……!!」

「えっ? そんなに珍しいモノなんですか?」

「うぅん、むしろことりたちが慣れ親しんでるモノだよ。いや、ことりたちが()()に慣らされたって言った方がいいのかな……? 零くんの()()に……ね♪」

 

 

 笑顔で頬を赤くして何言ってんだアイツは……。

 想像通りと言うべきか案の定と言うべきか、ことりは()()()()()の会話を展開する。だが亜里沙は包み隠された隠語の意味が全く理解できていないので、頭に"?"マークを浮かべるだけだ。ツッコミ役である俺や海未がいないから、会話のリズムがことりの独壇場になっているのは言うまでもない。ていうか、ツッコミ役がいなくてもアイツは隠語ならぬ淫語混じりの会話を続けるのだろうか……? 虚しくなんねぇのかな、目の前に天然しかいないのに。

 

 

「亜里沙ちゃんが買おうとしているのは、全部零くんに頼めば貰えると思うよ」

「零君にですか? それは話が早いですけど、どうやって頼めば……」

「そんなの簡単だよ! 零くんってすぐ発情する犬だから、おっぱい見せておけば後はなるようになるよ♪」

「お、おっぱいって……!!」

 

 

「あの野郎、シメてやる!!」

「れ、零君!! ここで飛び出したら企画倒れになっちゃうから抑えて!!」

「離せ穂乃果! おっぱい見せれば何とかなるだと? 俺は春夏秋冬性欲真っ盛りのウサギか何かか!?」

「落ち着いて!! どうどう!!」

「だから動物じゃねぇって!!」

 

 

 ことりは俺をおっぱいだけでテンションが上がって盛る低俗な野郎だと思ってんのか……。でも冷静に考えてみれば、残念ながらそうだから困る。俺は恋人こそたくさんいるが、性欲で言えばそこらの思春期男子と何ら変わらないのだ。だから大学生になって育ちに育った亜里沙のたわわな胸(ロリ巨乳とも言う)を見せつけられたら、いつどこ構わず発情してしまう自信がある。

 だが、それを他人の口から宣言されるのは非常に恥ずかしくもあり腹立たしくもある。特に淫乱っ子に性の弱点を握られていると知られたから、余計にストレスがマッハなんだが……。

 

 

「それで結局、長くて太くて、皮を剥いて食べるモノって一体何なんですか?」

「だからそれは零くんの……と思ったけど、よく思い出したら零くんのモノは皮なしで、形もグロデスクだから違うね。うっかりしてたよ♪」

 

 

「あぁ~確かに。穂乃果の口に入るかどうかも怪しいもん」

「本人がいる前で人のモノの大きさを公言するのやめてくんない!?」

 

 

 どうして亜里沙の買い物を観察する回なのに、俺の痴態が晒し上げられなければならんのだ。それにこの企画をこの先続けていくと、風評被害がもっとヒドイことになりそうな気がする……。

 

 

「あっ、分かったよ亜里沙ちゃん! 確かここに……」

「カバンの中に何かあるんですか?」

「あった! これだよ穂乃果ちゃんが求めてるモノ!」

「こ、これは……!!」

 

 

 ことりがカバンから取り出したのは、長さが30cm、直径5cmの棒のようなモノだった。棒と言っても手触りはゴツゴツしてそうであり、何故か先端がぷっくりと膨らんで――――って、あ、あれは!?!?

 

 

「おぉっ! あれはまさしく零君の――」

「もうこれ以上言わせねぇよ!? ていうかどうしてあんなモノをカバンに忍ばせてんだアイツ!?」

 

 

「こ、これは……なんですか?」

「女の子の欲望を満たしてくれるものだよ♪ しかもほら、オマケにこんな機能も」

「凄い! 皮のようなモノが伸び縮みするんですね!」

「うん! 皮を剥いてこの先端をおクチではむはむしていると、身体がとぉ~っても熱くなるんだ♪」

「食べ物じゃないのに、身体が熱くなるなんて不思議ですね」

 

 

「微妙に会話が噛み合ってない気がする……」

「確かに。零君が包茎だったかどうか微妙だしね」

「そこじゃねぇよ……」

「でも先端の亀さんはあんな形かも」

「もうその話やめよ!? なっ!?」

 

 

 亜里沙は己の天然さが極限を突破し過ぎて、ことりの会話のほとんどを理解できていないようだ。だがディルドには興味津々みたいで、ことりが皮を剥いたり手で摩ったりするたびに物珍しそうな目で見つめている。いくら亜里沙に淫乱攻撃が効かないと言っても、何事にも興味を示す彼女は余計な知識まで吸収してしまう。いずれ天然でかつ淫乱という、相反する2つの性格を兼ね備えた嘗てない女の子が誕生してしまいそうだ……。

 

 

「そうだ! これ亜里沙ちゃんにあげるよ♪」

「いいんですか? それではお金を――」

「お金なんていらないよ~。それに家に帰れば同じモノ何本もあるしね♪」

 

 

「どうして複数持ってる……」

「でも穂乃果も持ってるから、2本目を貰ってもなぁ~」

「そういやお前の手に渡るんだったな……って、お前も持ってんのかよ!!」

 

 

 ことりから俺のモノを模したディルドが亜里沙に受け渡される。

 正直清純な亜里沙を守るために飛び出したかったのだが、穂乃果に羽交い締めにされて未遂に終わった。天然な子が訳も分からず性具を手にしている光景はそれはそれで唆られるが、穂乃果の企画に強制参加させられたり、ことりからディルドを押し付けられたりと不憫に感じてしまう方が気持ち的に大きい。でもこの先亜里沙がどう動くのか、期待しちゃってる俺もいるんだよな……。

 

 

 そして亜里沙とことりは、お互いに満足そうな表情で別れた。

 亜里沙は目的のモノ(本当は違うけど)が手に入って嬉しいのは分かるが、どうしてことりが嬉しそうなんだ……?

 それに、性具の交換で嬉しそうな表情をするスクールアイドルがこの世にいていいのだろうか……?

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「あっ、秋葉さん!」

「亜里沙ちゃんじゃん! 久しぶりだね♪」

 

 

「秋葉さんが外にいるなんて珍しいね」

「研究室に籠る前兆だよ。ほら、あのパンパンに詰まった手提げ袋に数日分の食料が入ってんだよ」

「なるほどぉ~」

 

 

 次に亜里沙が出会ったのは、珍しく外を出歩いている秋葉だった。俺以上に外が嫌いな秋葉だが、前述通り数日分の食料を大量に買ってしばらく研究室に立て籠るつもりだろう。

 

 しかしそんな事情よりも、亜里沙が秋葉に出会ってしまったことが問題だ。ことりとはまた別の意味で危ない奴が相手だから、今度こそ亜里沙の天然が通用するか分からない。天然のスルースキルが勝つのか、それとも秋葉が亜里沙にオンナを教えてしまうのか……。

 

 

「今日は1人でお買い物?」

「はい。実はかくかくしかじかで」

「なるほど。つまり穂乃果ちゃんの遊びに知らず知らず付き合わされている訳ね」

「遊び……?」

「あっ、分かってないのならいいや……」

 

 

 本物のド天然が今ここに!!

 つうか本当に穂乃果に振り回されている事実を知らないんだなアイツ。俺の隣では穂乃果がクスクス笑ってるし、お前いつか絶対バチ当たるぞ……。

 

 

「それはそうとして、『飲んだら身体がポカポカしてきちゃう、真っ白い飲み物』は心当たりあるよ」

「そうなんですか!? どこで売っているのか教えてください!!」

「う~ん、表世界を生きる亜里沙ちゃんにはちょっと手に入りにくいかなぁ~」

「表世界……?」

 

 

 あぁ、もうこの時点で嫌な予感しかしない。言ってしまえば亜里沙と秋葉が出会ってしまった時点でその予感はプンプンしていたのだが、既に出会ってしまった以上優しく見守るしかないな。

 

 

「はいこれ! 飲んだら身体がポカポカしちゃう、真っ白い飲み物だよ♪」

「ありがとうございます! あれ、少しドロっとしてますね」

「そういうものなんだよ」

 

 

「おい、あれって……」

「あのビンに入ってる白い液体は穂乃果も見たことあるよ。飲んだらポカポカどころか身体が焼けるように熱くなって、そして何にでも欲情しちゃうっていう……」

 

 

 秋葉が嬉しそうに亜里沙に手渡したのは、明らかに媚薬と分かるビン詰めだった。確か5年前、ことりが講座を開いた際に穂乃果とにこが飲んでいたのがあの媚薬だった気がする。

 確かにあれを飲めば身体は温まるが、それは自身の性欲が最高潮にまで高められるという意味での温まるだ。決して体温を保温するために飲むべきモノではない。あれを飲んだら最後、人間としての理性を失いただの淫獣として覚醒してしまう。秋葉の媚薬はそれくらい強力なんだってことは、何度も飲まされている俺が保証してやる。

 

 

「本当はそれを作るのには相当なお金と時間が掛かるんだけど、今日は特別に亜里沙ちゃんにあげるよ」

「そんな貴重なモノ、貰っちゃっていいんですか?」

「平気平気。むしろμ'sのみんなにはどんどん布教したいくらいだもん!」

 

 

 実際にどれだけの金と時間を費やしているのかは知らないが、そんな高級なモノを遊びで俺たちに試すなよな……。それに布教したいってことは、まだ俺たちで遊び足りないってことじゃねぇか。自分はエロいことが苦手なくせに、人が発情しているところを見るのは好きなんだよなぁコイツ。

 

 

「でも、これは味が濃そうで普通に飲めなさそうですね」

「心配しなくても大丈夫。一滴飲むだけですぐ身体が熱くなって、効果テキメンだから♪」

「なるほど、それなら安心ですね!」

 

 

「いやむしろ危ねぇだろ……」

「あれを受け取る穂乃果はどうしたらいいのかな……」

「それはあんなヒントを送ったお前の自業自得だ」

 

 

 一滴飲んだから即発情してしまう媚薬って、もはや禁止薬物とそう変わらないんじゃないか……? 女の子にアレを大量に投与したらどうなるのかは見てみたいが、自分でも抑えられないくらい性欲が暴発し、そこらの汚い男に性欲処理を土下座して懇願する光景が容易に想像できる。そんな薬物が平然と世に出回る日常に溶け込んでいる俺たちって一体……。

 

 そして危険な薬物を受け取ったとも知らず、亜里沙の買い物はこれにて完了した。厳密には買い物というよりタダで貰ったモノばかりで企画倒れなのだが、まあ出会った人間の運が悪かったと思って大目に見ておこう。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「あっ、亜里沙ちゃん来たよ! 『初めてのお使い』のように、感動的に迎えてあげなきゃ!」

「さっきまでのどこに感動的要素があるんだよ……」

 

 

 俺たちは買い物を終えた亜里沙を迎えるため、一足先に穂乃果の家の近くの公園までやって来た。そして俺たちの到着と同時に亜里沙がこちらへ来る姿が見えたのだが、俺はどんな顔をして彼女を迎え入れていいのか分かんねぇ。見た目は清楚な白のワンピースと麦わら帽子、そしてベージュのカバンを持っている清純少女なのに、あのカバンの中にはディルドと媚薬が入ってるんだよな……。もし何かの手違いで誰かにカバンを覗かれたら、確実に清楚系ビッチだと勘違いされそうだ。

 

 

「穂乃果ちゃん! それに……零くん?」

「よぉ、奇遇だな。ずっと見てたけど……」

「……? ともかく、穂乃果ちゃんに頼まれていたモノ全部買ってきました! まあ貰ったモノばかりなんですけど」

「あ、ありがとね……アハハ」

 

 

 穂乃果の手には、亜里沙から渡されたディルドと媚薬が乗せられてた。普通にバナナとミルクを頼んだのに、大人の玩具を渡されるなんて思ってもいなかったに違いない。公園に来る前になるべくポーカーフェイスを保つように意気込んでいた穂乃果だが、亜里沙からディルドを媚薬を渡された瞬間にもう顔が引き攣っていたからな……。

 

 

「ま、まあこれは後で使わせてもらうとして……」

「使うのかよ!!」

「亜里沙ちゃんには買い物を手伝ってくれたお礼をしないとね! はいこれ!」

「えぇと、『スクールアイドルフェスティバル』の招待状……ですか?」

「穂乃果、お前まさか……」

「うんっ! 亜里沙ちゃんを、μ'sとしてご招待!!」

「やっぱりそれが目的か……」

 

 

 今回は勧誘要素がゼロだろうと勝手に思っていたのだが、まさかこんな風に話が繋がるなんて一周回って感心しちまったじゃねぇか。まあ勧誘要素がなかったら、それこそ本当の企画倒れだからこれで良かったんだろうな。あれ? 何だか穂乃果の勧誘方法に洗脳されてきてないか俺??

 

 

「でも、どうしてまたμ'sを結成するんですか?」

「それはかくかくしこしこで――」

「しかじかな」

「なるほど、お姉ちゃんも楓も参加要請していると……」

「そう! 再びみんなでステージに上がって、新しい思い出を作ろうよ!!」

「はいっ! 私も皆さんと一緒にもう一度歌って踊ってみたいです!!」

「ホントに!? ありがとう亜里沙ちゃん♪」

 

 

 大体予想はできていたが、やっぱり亜里沙の勧誘はものの数秒で終わったか。恐らく誰よりも簡単に誘うことができて、更にことりや楓のように余計な手間も掛からない、アクションゲームで言えばボーナスステージのようなものだ。だから亜里沙の勧誘の時でないと、こんな企画を立てて遊ぶことなんてできないだろう。

 

 そうやって軽く亜里沙のことをチョロく見ていたのは事実だが、スクールアイドルを一番楽しく無邪気にやっていたのはメンバーの中でも随一だ。そんな彼女だからこそ、一時的であってもμ's再結成の話は朗報に違いない。勧誘のされ方は姉妹間で歴然の差だけど……。

 

 

「よ~しっ! この調子で他のみんなもどんどん勧誘していこう――――って、あっ!!」

「どうした?」

「勢い余ってことりちゃんのコレを強く握ったら、中から白い液体が……!! リアリティすごっ!!」

「アイツなんてモノ仕込んでんだ……」

「まさか、このビンに入ってる白い液体って、その中に入れるんですか?」

「お前が天然で良かったとつくづく思うよ。これからもずっと今のままのお前でいてくれ」

「……??」

 

 

 あの中に媚薬を仕込んだら、おしゃぶりプレイをしている女の子が間違えて飲んじゃって、媚薬効果で更なる発情に煽られて…………こ、この話はやめよう色々消される前に!!

 

 

 とにかく、残りのメンバーはあと5人だ!

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 先日、生徒会役員共の映画を見に行った影響で、今回はいつもより下ネタが露骨になっているような気がする……。えっ、いつもと変わらない? またまたご冗談を(笑)


 次回の勧誘対象は……まだ考えてないので、次までのお楽しみに!


【告知】
 私と同じくハーメルンで『ラブライブ!』を執筆されている"たーぼ"さんの小説『ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~』との2回目のコラボが決定しました!
 投稿日は9月8日(金)を予定していますので、何卒よろしくお願いします!

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