※演劇中の文章がちょっと特殊です。
通常かぎ括弧「」・・・穂乃果たち役者のセリフ
二重かぎ括弧『』・・・零君が読むナレーションのセリフ
通常の文・・・普通に零君が喋っている文章
つまり地の文に当たる文章がないのでご了承ください。
~開演前:舞台裏~
「どうしてまた穂乃果が主役なのぉ~~?もうやりたくないっていったじゃん!!」
「できれば俺が代わってやりたかったんだが、この演劇の主演はμ'sなんだ。だから……頑張れ☆」
「顔、ニヤけてるよ……」
一年前、アイドルとしての魅力向上を図るため、『桃太郎』を題材にμ'sで演劇を行った。あの時アイツらが脚本無視でやりたい放題してくれたおかげで、主役の桃太郎役を演じていた穂乃果の心に、深い傷(笑)を残す結果となったのだ。
そして一年後の今、より結束が強くなったμ'sが再び『桃太郎』を演じるとどうなるのか?その疑問を解決するために俺が企画を立ち上げた。ちなみに雪穂たち1年生組は、たった3人観客として講堂の席に座らせている。
「前回のシナリオは酷かったけど、またあの時の二の舞にはなってないんだよね!?」
「大丈夫だ。今回のシナリオはすべて俺と楓で考えたから」
「一番心配な組み合わせだよそれ!!」
「楓がいるからな」
「零君もだよ!!」
穂乃果の奴、いつもと違って心配性だな。普段は細かいことを気にせず突っ走るタイプなのに……なるほど、主役を演じるから下手なシナリオだと自分が際立たなくてイヤなわけか。いやぁ~~そこまで穂乃果が主役を演じたいのなら仕方ない、ナレーション役の俺が頑張って盛り上げてやろう!!
「よし!!もう始まるぞ、行ってこい!!」
「不本意だよぉ~~」
「心配すんな。お前は台本通りにやってくれればそれでいい。あとは勝手に周りが盛り上げてくれるさ」
「そんなニヤケ顔で『心配すんな』って言われても説得力ないよ……」
「ほら、文句垂れてないで行ってこい。みんな待ってるぞ」
「は~い……」
穂乃果はブツブツと文句を言いながらも舞台袖へと向かった。
さぁ!!これからμ'sショータイムの開幕だ!!ただのお遊びだからお客さんは少ないけど、どんな役柄でも最後まで貫き通して演技をする。その信念の強さがスクールアイドルにも必要だ。そういうことだから見せてくれよ!!お前らの最高で爆笑の演技を!!
「今爆笑って言った!?」
「あれるぇ~~聞こえてた?」
「バッチリねっ!!」
中々の地獄耳を持った奴だ。流石野生動物のように感覚で生きているだけのことはあるな。
~※~
~開演~
『昔々あるところに、日本昔話なのに何故かロシアとのクォーターである絵里お爺さんと、エセ関西弁を話す希お婆さんがいました。とてもアダルティなお爺さんとお婆さんに、私ナレーションもテンションが上がるというものです』
「なんでナレーションの個人的感情が入ってるのよ……」
「前回より変態要素増してへん……?」
言っただろ?今回の演劇は前回の演劇よりパワーアップしてるってな。それにナレーションっていうのは、演劇を盛り上げる要素の1つでもあるんだ。物語を上手く進行できるかどうかはナレーションの力量に掛かってくるから、まぁ任せとけ!!お前らは俺の指示した通りに行動すればいいんだよ。
「あなたの指示が一番心配なんだけど……」
「もう既に物語から脱線してるけどね……」
おおっ、危ない危ない!!
『お爺さんは山に芝刈りに、お婆さんは川に洗濯へ行きました』
「あれ?」
「どうしたの希?」
「この洗濯物……どっかで見たことがあるんやけど?」
「こ、これって……水着!?しかもこの水色の水着って、この前私が着ていたモノじゃない!?」
気づいたか……そう!!その洗濯物は、以前PV撮影の時にみんなが着ていた水着だ。俺が洗濯しておいてやるって言って、この時まで俺の部屋に保管しておいたのだ!!もちろん演劇で使うことが目的だから、家ではなにもしてないぞ☆
「ちょっと零!!あなた私たちの水着を何に使ったのよ!?」
なにって……言えるわけねぇだろそんなこと。いいから先へ進めるぞ!!全く、絵里がいちいちツッコむせいで話が進まねぇじゃん。自重しろ!!
「誰のせいだと思ってるのよ……」
『お婆さんが川で洗濯をしていると、大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました』
「大きな桃やなぁ。あとでお爺さんと一緒に食べようかな?」
『お婆さんは桃を家へ持ち帰りました。お爺さんは桃を食べるために、包丁で桃を半分に切りました。すると、中から裸の……裸の!!!!』――――ってあれ?
おい……ちょっと待て!!俺のシナリオでは、裸の穂乃果が桃に入っていることになってただろ!?どうして服着てるんだよ!!またシナリオを崩壊させる気か!?
「そんなことしたら放送事故だよ!!しかもこの台本に、『全部脱げ、お前に拒否権はない』って書かれてるけど拒否するに決まってるじゃん!!」
「もう初めから頭が痛くなってきたわ……」
「これも盛り上げるための演出なん?」
当たり前だろ。女の子のサービスシーンっていうのは視聴率が上がるんだ。しかもそれがμ'sのリーダーともなればなおさらな。だから脱ぐんだ!!
「脱がないから!!いいから話を進めてよ!!」
文句が多い奴らだ。そんな我が儘ばっかり言ってたら、いい大人になれないぞ?あっ、でも穂乃果はずっと子供っぽいイメージがあるな。
「鬼なんかより零君を退治したくなってきたよ……」
『お爺さんとお婆さんは桃から生まれた子に穂乃果と名づけました。そして穂乃果はぐんぐんと立派に成長しました』
~※~
『お爺さんとお婆さんは、最近村を荒らして回っている鬼たちに手を焼いていました。私も演劇をまともに進めてくれない役者たちに手を焼いていますがね』
「もういちいちツッコまないわよ……」
「この演劇、ただ零君が楽しみたいだけなんじゃ……」
『お爺さんとお婆さんは、最近村を荒らして回っている鬼たちに手を焼いていました』
「同じこと言わなくてもいいわよ!!進めればいんでしょ!!はぁ……最近、鬼たちが悪さをして困るわね」
「向こうの村でも被害が出てるし、どうしようかなぁ?」
「みんなに悪さをするなんて許せない!!穂乃果が退治してくるよ!!」
「穂乃果がやってくれるの!?頼もしく育ったわね、お爺さん嬉しいわ」
「だったら、お婆さんお手製のきびだんごを持って行って♪」
「わぁ!!ありがとうお婆さん!!」
『こうして桃太郎、高坂穂乃果の鬼退治珍道中が始まるのでした』
「全然緊張感がなさそうな旅になりそうだよ!?馬鹿にしてるよね!?」
安心しろ、お前の旅のサポートはナレーションの俺がきっちりしてやる。まぁハッピーエンドで終わらせてやるから大船に乗った気持ちでいるといい!!
「零君が言うハッピーエンドほど怖いものはないよ……しかも多分大船じゃなくて泥船だし……はぁ~……」
~※~
『旅に出た桃太郎は、その途中で花陽犬に会いました』
「あっ!花陽ちゃんのその格好、この前の子犬さんコスプレだね♪」
「うぅ……また着るとは思わなかったよ。しかも零君の計らいでちょっと脱がされちゃったし……」
「花陽ちゃんも零君の毒牙に掛かっちゃったんだね……」
えぇ~~!!でも犬が服着ているのはおかしくない?そういうことで、花陽には見えそうで見えない際どいところまで脱いでもらいました☆こんなセクシーでかつお人形さんみたいな子犬、仲間にしたいでしょ?とりあえず花陽、セリフセリフ!!
「桃太郎さん、どこへ行かれるのですか?」
「鬼ヶ島へ鬼退治に行くんだよ!!」
「それでは黄金米を使用した特大おむすびをくださいな。お供しますよ」
「え゛っ!?ちょっと零君これ去年と同じシナリオだよね!?どうしてきびだんごに修正しなかったの!?」
まさかお前、おむすびを用意していないのか……?呆れた、俺の性格が分かっていれば『零君のことだから、今回もほとんど同じシナリオでくるはず!!だからあらかじめ、去年のシナリオ通り黄金米特大おむすびを用意しておこう!!』って発想に至るはずだろ?
「至らないよ!!そこまで穂乃果が頭回ると思う!?」
残念ながら思わない。だって馬鹿だからなぁ~お前。
「もう本格的に、零君退治に切り替えた方がいいような気がしてきた」
「なんか大変そうだから、お供するね……」
「あ、ありがとう花陽ちゃん!!心の友よ!!」
『なんやかんやで花陽犬が仲間になった!』
~※~
『さらに旅を続けていた穂乃果は、その途中で凛猿に会いました』
「また凛が猿なのぉ~~?」
「配役は前回から変わってないんだね」
でもμ'sの中で誰が猿役に相応しいのか考えてみれば、やっぱり体系的にも体力的にも素早く動ける凛が適任だったんだ。シナリオを使い回せて楽だしな。
「それ絶対最後のが本音でしょ!?納得いかないにゃ!!」
「今の零君に文句を言っても無駄だよ凛ちゃん。とりあえず劇を進めよ」
「う~~……桃太郎さん、どこへ行くのかにゃ?」
「鬼ヶ島へ鬼退治に行くんだよ!」
「それではラーメンをくださいな。お供しますよ」
「そうだ、そうだった……うぅ~~どうしよう」
『これは困った!!桃太郎穂乃果、ラーメンを持ち合わせていない!!まさか、仲間を最小限に抑えて鬼ヶ島に乗り込むという縛りプレイなのか!?』
「ナレーション遊びすぎでしょ!?もう……前回みたいにラーメン奢るってことで手を打たない?不本意だけど……」
「それならよろこんでお供するにゃ!!この身は桃太郎さんと共に戦う覚悟を決めました!!」
「なんだか上手く流されいるような気がする……」
『桃太郎は自らの財布ポイントを削って、凛猿を仲間にした!』
~※~
『さらにさらに旅を続けていた穂乃果は、その途中で真姫キジに会いました』
「あなた、そんなに急いでどこへ行くの?まぁ私には関係ないことだけど」
「相変わらず素っ気ないね……鬼ヶ島へ鬼退治に行くんだよ」
「それじゃあそのきびだんごをくれる?お供するわよ」
「えっ!?きびだんごでいいの!?あっ、ご、ゴメン真姫ちゃん。な、涙出てきちゃった……」
「ちょ、ちょっとなに泣いてるのよ!!」
「ちゃんと桃太郎のシナリオ通りに進んだのが始めてだから嬉しくって……」
『あぁっとどうしたことだ!!桃太郎が泣き始めてしまったぞ!!俺の穂乃果を泣かした奴は誰だ!?とっとと出てこい!!』
「いや、確実にあなたでしょ……」
「童話通りに進むのが、これほど安心できるものだとは思わなかったよ」
「零くんはすぐ笑いに走ろうとするから脚本家には向いてないにゃ~……」
流石に笑いを取ることばかり優先して、シナリオを前回の使い回しにしたのはマズかったか……?でも普通だと面白くないし、俺はお前らのスター性を発掘するためにこの企画を再び立ち上げたんだ。是非世界に羽ばたくエンターテイナーになってくれ!!
「あれ!?スクールアイドルとして、緊張せずに舞台に立つ練習じゃなかったっけ!?」
「もう完全に趣旨が変わってるわね……」
『知らない間に真姫キジが仲間になった!!』
~※~
『穂乃果は花陽犬、凛猿、真姫キジを連れ、ついに鬼ヶ島へたどり着きました。目の前にそびえる鬼ヶ島。ここまで来ると、穂乃果たちが今まで乗り越えてきた苦難が思い出されます』
「ここが鬼ヶ島……」
「ここまで来るのに苦労したにゃ~。特にあのボスに何度やられたことか……」
「いや戦ってないでしょ……」
「もういきなり鬼ヶ島だもんね……」
RPGで言えば、いきなり魔王城みたいなものだからな。そう考えれば童話の桃太郎たちってレベルいくつなんだよ……むしろその桃太郎を育て上げたお爺さんとお婆さんが最強なのではなかろうか?もうお前らが世界救えよ。
『鬼ヶ島では、鬼たちが近くの村から盗んできた宝物やごちそうを並べて酒盛りの真っ最中で――って、あれ?鬼がいないぞ?にこたちはどこいった?』
「「「「???」」」」
「ぎゃぁあああああああああああああああああああ!!」
「「「「!!!」」」」
『どうしたことだ!!突然舞台袖からにこ鬼の悲鳴が響き渡ったァあああああああ!!これはもしや、裏ボス的な存在がいるのだろうか!?』
「ようやく見つけましたよ……穂乃果ぁ」
「やっと会えたねぇ……穂乃果ちゃん♪」
「海未ちゃん!?ことりちゃん!?」
『ここで舞台袖から出てきたのは海未鬼とことり鬼だぁああああああ!!ことり鬼の右手には、気絶しているにこ鬼の死骸の首根っこが掴まれている!!しかもなぜかこの2人、目が据わっていてヤンデレな雰囲気を醸し出しているぞ!!一体2人になにがあったのか!?』
「零!!これもシナリオ通りなの!?」
より演出を面白くするため秋葉に、『海未とことりが穂乃果を好きになる薬を作ってくれよ』って言ったら快く承諾してくれてさぁ~、そしてそれを2人に飲ませたらこんな風になっちゃった☆
「『なっちゃった☆』じゃないよ!!海未ちゃんもことりちゃんも、すごく怖いんだけど!?」
そりゃそうだ、だって愛しのお前が来るのを今か今かと待ってたんだから。さぁ、どうする穂乃果?愛を取るのか村の平和を取るのか、今こそ決断の時だ!!
「そんなの村の平和に決まってるじゃん――――ヒィッ!!」
『おっと!!ここで海未鬼とことり鬼の睨みつけ攻撃に、桃太郎穂乃果が怯んでしまったぁあああああ!!これは万事休すか!?』
「じゃあ前回もやったあの作戦しかないわね」
「え゛!?またやるの!?」
「このままだとあなた、一生海未とことりに飼われることになるわよ?イヤだったら羞恥心なんて捨てなさい」
「もう……人ごとだと思って……」
「人ごとだもの」
「ヒドイよ真姫ちゃん!!」
『さぁ桃太郎穂乃果、ここから起死回生なるか!?村の平和と自分の貞操を守るため、頑張れ穂乃果!!』
「穂乃果ちゃん早く!!」
「誠意を見せるにゃ!!」
「花陽ちゃんに凛ちゃんまで……はぁ~……」
『遂に穂乃果が鬼の前に立った!!そして息を大きく吸い込んだぞ!!どうする!?どうなる!?』
「村のお宝を返してくれたら、結婚してあげる♡」
「ぐぅううううううう!!」
「ぴぃいいいいい!!」
『ここで海未鬼とことり鬼、萌え過ぎて倒れてしまったぁああああああ!!これが萌え死にというやつでしょうか!?とても満足した表情で気絶しています!!見事、桃太郎陣営が勝利を収めました!!』
「やったーーーー!!これでラーメンを食べに行けるにゃーーーー!!」
「とりあえずこの2人は病院送りね」
「やっと終わったよぉ~……」
「また色んなモノを失った気がする……」
『鬼を退治したというのに何故か穂乃果は落ち込んでいました。なんででしょうねぇ~~。そして穂乃果たちは村の宝物を持ち、元気よく家へ帰りました。そして、絵里お爺さんと希お婆さんと一緒に幸せに暮らしましたとさ』
キャスト
桃太郎 : 高坂 穂乃果
犬 : 小泉 花陽
猿 : 星空 凛
キジ : 西木野 真姫
お爺さん : 絢瀬 絵里
お婆さん : 東條 希
ボス鬼 : 矢澤 にこ
子分鬼 : 南 ことり
子分鬼 : 園田 海未
神の声(ナレーション) : 神崎 零
~※~
~閉幕後・観客席~
「すごく面白かったね!!楓、雪穂!!」
「そりゃあ私も一緒になって考えたシナリオだし、面白くて盛り上がるのは当然でしょ!!」
「…………ノーコメント」
今回の話と前作の話を比較してみると、自分でもかなり文章が書けるようになったなぁと思います。あの頃に書いた話は文章がお粗末なので、個人的には黒歴史として封印したいんですけどね(笑)
次回予告というほどではありませんが、そろそろ楓を主役にした回を書こうと思っています。中身は零君とμ'sの仲が良すぎるため、1人で探りを入れるという内容。結構マジメな回になると思われます。
とりあえず毎日投稿は一旦終わり。次回からは平常運転です。そうはいっても他の作者様と比べるとペースが早いのは否めませんが(笑)
どうでもいい話ですが最近のラブライブ小説で、変態主人公もしくはそれに準じた行動をしている主人公が増えてきたような気がします。もちろんそういう主人公は好きなので、どんどん増えて欲しいです!
高評価を入れてくださった方、ありがとうございます!これでまたR-18への道が開拓されました!!
Twitter始めてみた
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