ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 遂に穂乃果とAqoursがご対面!
 公式でも正式にμ'sとAqoursのコラボが決まりましたので、この小説でも穂乃果たちと千歌たちの絡みをもっと濃くしていかなければ……


高坂穂乃果 in Aqours

 どうして俺はこうも不幸に苛まれるのか。一度その理由を分析したことがある。

 俺は占いや神頼みというものを信じていないため神様に嫌われているのか、それとも生まれながらに不幸を引き付ける体質なのか。もしかしたらその両方かもしれない。こうして次から次へと災難が降り注ぐのはアニメの主人公っぽく感じるが、俺はもっと平和に毎日を過ごしたいのだ。でも12股、いやもう21股と言っていいほど女の子を引っ掛けている奴が言えたことではないのかも……。

 

 今まさに修羅場が巻き起こりそうな状況なのにこうして賢者モードの如く冷静なのは、もう俺の日常が平穏ではないという悟りが脳から身体、心の奥底にまで染みついているからだろう。かつてヤンデレちゃんたちの殺戮劇を命がけで食い止めた過去があるが、もはや必然と言わんばかりに引き起こる修羅場だけはどう足掻いても食い止めることはできない。そもそも女の子同士の修羅場を形成するこの体質にももう慣れっこだし、今更取り乱すこともない。せいぜい俺の胃に穴が空かないことを祈るだけだ。

 

 

 ――――という訳で、千歌たちに抱き着かれている俺の元へ、穂乃果がやって来たところから今回のお話は始まる。

 

 

 穂乃果は目を丸くしながら、何も言わず俺たちをじっと見つめていた。

 さっきまで驚いていたはずなのだが、何を考えているのか今は冷静に俺たちの様子を観察している。千歌たちも憧れの高坂穂乃果が目の前にいるというのに、こんな状況を誰かに見られた衝撃の方が大きいのか、目を見開きながら硬直して穂乃果を眺めるばかりだ。

 

 その刹那、穂乃果がむっとした表情のままこちらへつかつかと歩を進めてきた。子供のように頬を膨らませ、明らかに怒ってますよアピールをするその様子は怖さを全く感じることはなく、むしろ可愛い。非常に微笑ましくはあるのだが、今は状況が状況なのでどうしてもほっこりとした気分にはなれない。買い物の途中で他の女の子と抱き合っている(一方的に抱き着かれているだけだが)と知られた以上、もうタダで帰れるとは思わない方がいいだろう。

 

 俺は徐々にこちらへ歩み寄ってくる穂乃果を見つめながら、息を呑み覚悟を決めた。もう煮るなり焼くなり、ラブドールにするなり性奴隷にするなり好きにしてくれ。

 

 

 ――――と思ったその時、千歌たちのものではない、新しい温もりが身体に伝わってきた。

 

 

「ちょっ、えっ、お前何を……」

「穂乃果のことを放っておいて、女の子とイチャイチャするなんてズルい!! だから穂乃果も参加する!!」

「はぁ!? お前この状況を見てズルいとしか思わない訳!? ほら、嫉妬で心がモヤモヤするとかさ」

「どうして? みんなで仲良くすれば、それでいいじゃん」

 

 

 どうやら穂乃果は俺が思っていた以上に天使で聖女であり、そして偏屈でおバカちゃんだった。まさか俺が女の子に抱き着かれている光景に怒りや嫉妬を抱かず、むしろ自分も参加するなんて言い出すとは……。まあそのおかげで修羅場を回避できたから天使なんだけど、それ以上に1人の恋する乙女としてその懐の馬鹿デカさはいいのか……? 本人がいいのならそれでもいいけどさぁ。

 

 穂乃果のこの反応にはAqoursのみんなも驚きで、もう憧れの穂乃果が目の前にいること自体も忘れているみたいだ。

 そりゃあ超有名なスクールアイドルのリーダーが、男に抱き着いている女の子に便乗して自分もなんて行動をし出したら誰でも何事かと思うだろう。しかも千歌たちにとって穂乃果はスクールアイドルのお手本のような存在であるが、そんな彼女がいきなりハーレムを肯定するようなセリフを吐くんだからもう思考回路がショート寸前に違いない。なんか俺が思っていた修羅場とはまた別の面倒事が起きているような……。

 

 すると、俺の腕の中でプルプルと震えている女の子が1人。

 みかん少女こと高海千歌は、現在俺と穂乃果でサンドイッチされている状況にある。片や恋に焦れる人、片や夢の先輩。恋や夢にとことん憧れる彼女なら、この状況に陥ったら最後、どうなってしまうのかはもうお察しだろう。あんぐりと開けた口から魂が抜けていき、幸せの絶頂で気絶してしまっていた。

 

 

「千歌ちゃん!? 久しぶりに会ったのにいきなり気絶って、穂乃果何が何だか分かんないよ!?」

「いやお前のせいだろ……」

「先生と穂乃果さんに挟まれるなんて……。千歌、このまま圧死していいかも……♪」

「ちょっとダメだよそんなこと言っちゃ!! 帰って来てぇええええええええええええええええ!!」

「穂乃果さんに触れてもらえるだけでも幸せ……♪」

「μ's好きも、ここまでとなると末期だな……」

 

 

 熱狂的なアイドル好きを悪く言うつもりはないが、今の千歌だったら穂乃果の捨てたゴミでも嬉しそうに拾うだろう。それくらい彼女は穂乃果やμ'sにご執心であり、同じスクールアイドルオタクの花陽やにこにも引けを取らないくらい好きなグループに関して暴走しがちだ。ステージでは自身も立派なスクールアイドルなのに、こんな姿を見ているとどうもスクールアイドルではなくただの女子高校生にしか見えねぇんだよなぁ。だってμ'sの話をしている時のコイツの姿は、まるでカバンにジャラジャラと缶バッジを付けているような俗に言う"ライバー"そのものだからさ……。

 

 このまま千歌をサンドイッチしていると本当に死んでしまいそうなので、とりあえず彼女を近くにあったベンチに寝かせておく。気を失っているようだが、涎を垂らして幸せそうにアホ顔を晒しているので多分心配はいらないだろう。まあ好きな男と憧れの先輩から同時に抱き着かれてこの世に未練はないと思うから、安らかに昇天してもらっても構わんぞ?

 

 そして、これでようやく1つ面倒事が片付いた訳だが……あとはアイツらだな。

 

 

「穂乃果さん!!」

「う、うん穂乃果だよ……。確かダイヤちゃん……だよね?」

「わ、私の名前をご存じだなんて!? 驚きで心臓が破裂してしまいそうですわ!! いやもう思い残すことはありません!!」

「千歌ちゃんもそうだけど、みんなもっと命を大切にしようよ!?」

「落ち着いてダイヤ。高坂さん混乱してるから……」

「果南さん!! あなたスクールアイドルとしての自覚はあるのですか!? スクールアイドル界の巨匠を目の前に、興奮しない方がおかしいのです!! 私なんて、携帯の容量がいっぱいになって壊れてしまうくらい、穂乃果さんの写真を撮りつくしたいのですから!!」

「今後他のμ'sの皆さんに会うかもしれないのに、高坂さんの写真で埋め尽くしちゃってどうするの……」

「あっ……。ま、鞠莉さん! あなたの財力で是非私の携帯の容量を無限に!!」

「ダイヤ、目が怖い……ほら、もっとスマイルスマイル……あはは」

 

 

 果南はともかく鞠莉にまで引かれるとは、ダイヤの奴いつも以上にアホさに磨きが掛かってんな……。ていうか好きなアイドルの写真でPCや携帯の容量を圧迫するなんて、見ようによってはストーカーにしか思えねぇぞ。それもただ遠くから見ているだけの無害なストーカーではなく、我慢を超えて手を出そうとする有害な方。言うなれば呟きアプリで声優に気持ち悪いリプライを送り付ける奴とやってることが同じような気もするが、今のダイヤに関わりたくないので黙っておくことにしよう。

 

 

「穂乃果さん!!」

「えっ、また!? えぇと、ルビィちゃん……だったよね?」

「わぁ~本物だぁ~♪ ただ立っているだけなのにオーラが凄いです!!」

「そ、そう――――って、しゃがみ込んでどこ見てるの!?」

「流石スクールアイドルのレジェンド、脚も綺麗です!!」

「あ、あまり下から覗き込まないで!! 下着見えちゃうから!!」

「ルビィって、こんなにエッチな子だったっけ……?」

「こんなルビィちゃんは初めて見たずら。変人度が善子ちゃんと同じくらいに……」

「ズラ丸、今なんて言ったのかしら……?」

 

 

 善子が変人なのは自明なので今更言及するまでもないにして、ルビィのハチャメチャっぷりは姉のダイヤにも匹敵するほどだ。俺だってルビィがここまで興奮して饒舌になっている姿は初めて見たぞ。普段は何をするにしても臆病で震えがちな声をしているのに、今はただのセクハラオヤジだからな……。本人はスカートを覗いているつもりはないのだろうが、この状況を録画しておけば確実に弁解は不可能だろう。いつもは引っ込み思案だけど情熱を注ぐものにはとことん注ぎ込むその姿勢は、μ'sの花陽に通ずるものがある。彼女の隠れた一面を速攻で引き出せるのも、もしかしたら穂乃果の力(?)なのかもしれない。

 

 

「あはは……ダイヤさんもルビィちゃんも凄いね。もし千歌ちゃんが気絶してなかったら、今日1日ずっと騒ぎっぱなしだったと思うよ。梨子ちゃんも叱ってばかりになって過労死しちゃってたかも」

「千歌ちゃんのμ's好きは知ってたけど、まさかここまでとはね。小さい頃からその趣味に付き合わされてた曜ちゃんに同情しちゃう……」

「穂乃果もこんな元気なファンは初めて会ったよ。だって穂乃果のやることやること1つ1つに感動するんだもん」

「許してやれ。アイツ、μ'sのライブ映像をテレビが擦り減るほど釘付けになって見てんだから」

「それになんたって、千歌ちゃんは高坂さんの大ファンですから」

「そういえば私たちが中学生の時、千歌ちゃん自分の部屋の壁に穂乃果さんのポスターを貼りまくっちゃって、お母さんやお姉さんたちに怒られてたなぁ~」

「あまり知りたくなかったよその話。それにどうして穂乃果の周りのファンは危ない人ばかりなの……?」

 

 

 それはあれだ、類は友を呼ぶって格言通りだと思う。癖が強い(おかしい)奴の周りには同様に癖の強い奴らしか集まらない訳だ。まあそんなこと言ってしまうと、俺の周りも相当変な奴らしか集まっていないんだけど……。しかも家族からして頭のネジがぶっ飛んでいる奴らばかりで、ブラコン妹に悪魔の姉、精神年齢が子供並みの母親に囲まれて、もはや日常に安らかな平穏を感じたことすらない。唯一まともなのは父さんだけだから、早くアメリカから帰ってきて欲しいもんだ。

 

 

「穂乃果。そういやお前、俺を探しに来たんじゃなかったのか?」

「あっ、そうだよ! 零君携帯に連絡しても全然返信がなかったから、わざわざ探しに来てあげたんだよ!?」

「ガキじゃあるまいし、ちゃんと帰れるっつうの」

「千歌ちゃんたちと抱き合ってたのに? 練習時間に遅れてるのに!?」

「うっ……!! あ、あれはお互いに再会を祝福しあっていただけだ。ほら、旧友との再会みたいな感じでさ」

「零君と千歌ちゃんたち、たった一か月ぶりじゃん」

「ぐっ、穂乃果のくせに正論ばかり言いやがって……」

「それじゃあ穂乃果が普段からバカみたいじゃん!!」

「お前よく言えたなそんな反論!!」

 

 

 世界は俺たちの想像もつかないほどに広いと言うけれど、世界各国どこへ行こうがそのツッコミに同意する者は1人もないないだろう。ここまで『お前が言うな』という言葉が使い時になる状況もないが、Aqoursのメンツは穂乃果の素行を知らないため、俺に同意をしてくれる人が誰もいないのが寂しいところだ。穂乃果に憧れを持っているこの子たちの夢を壊さないようにすべきなのか、それとも今後スクフェスでμ'sと絡む時のことを考え、事実を話して穂乃果に親近感を沸かせた方がいいのか……。いや、俺の口から穂乃果たちが淫乱ちゃんだと話す方が恥ずかしいか。

 

 

「零君、ほら帰るよ。みんな待たせちゃってるから」

「俺がいなくたって、練習くらい自分たちでできるだろ?」

「零君に指導されている方が効率いいんだよ。穂乃果たちだけで練習してる時よりも、やる気と団結力が上がってる気がするし!」

「気がするだけだろそれ……」

「分かりますそれ!!」

「わっ!? ち、千歌ちゃんいつの間に復活したの!?」

 

 

 どうしていつもいつもコイツは人に顔を(ちか)付けたがるんだ? 千歌だけに……。いや、さっきのは『近い』と『千歌』を掛けていて…………やめるか、千歌がオヤジギャグ言うから可愛いんだよこれ。

 

 それはそれとして、千歌はさっき起きたとは思えないほど目を輝かせて再び俺と穂乃果の間に割り込んできた。俺の教育実習生時代に浦の星の先生たちから聞いた話だが、爆睡してるコイツを質問を当てるために起こしてやったら、10分間は夢うつつ状態で使いものにならないそうだ。だからいっそのこと、浦の星に穂乃果を置いておけば千歌の学業が捗るかもしれない。いや、逆に穂乃果に夢中になりすぎてそれはそれで授業に集中できなくなるか……。

 

 

「千歌も先生に勉強を教えてもらうと、何故かやる気になっちゃうんですよね。山内先生たちの授業は眠くなるのに、先生の授業だけはずっとドキドキしてるっていうか……」

「穂乃果にも分かるよその気持ち! ダンスの練習中でも、いつもより可愛く見せなきゃって思っちゃうんだよね!」

「ですよね!? どうしてなんでしょう、先生?」

「俺に聞くなよ」

 

 

 その理由は大体察しているのだが、穂乃果と千歌は鈍感過ぎて全く気付いてない。俺に見られているからこそ頑張ろうとしているんだよ、と教えてやるのは簡単だけど、それを言ってしまうと今後の練習で俺のことを過剰に意識してしまいそうなので敢えて黙っておく。まあ俺に見られてるから頑張ろうなんて思うのは、この2人だけだろうけど。

 

 

「穂乃果も千歌も似た者同士っていうか、大袈裟っていうか。梨子もそう思うよな?」

「ふぇっ!?」

「な、なにその反応……」

「いや、あのぉ……別に千歌ちゃんや高坂さんに共感できない訳ではないと言いますか……」

「お前もか!!」

「私もというより、恐らくみんなそうだと思いますけど……」

「えっ……?」

 

 

 他のみんなを見てみると、俺に真意を知られたのが恥ずかしいのか頬を染めながらそっぽを向いていた。熱心に練習をしていたのは夢のためではありつつも、俺に見られているから可愛く見せようという純粋な乙女心もあったらしい。もしかして穂乃果以外のμ'sメンバーもそうだったりするのかな……? だとすると、それだけ自分が求められているってことだからむしろこっちが照れくさい。あぁなるほど、だから千歌たちは俺を自分たちの練習に引き込もうとしてたのか。

 

 

「そうだ! だったらいっそのこと、μ'sとAqoursで合同練習すればいいんだよ!」

「えぇっ!? そんなの恐れ多いですって!!」

「あの穂乃果さんたちと練習!? 普段の自分を発揮できるか心配ですわ……」

「ルビィも嬉しさで腰が抜けて、練習に身が入らなさそうです……」

「みんな謙遜しすぎだって! 穂乃果たちそんな崇められるほど凄くないから」

「そうだな。穂乃果は宿題忘れに寝坊、食いすぎでダイエットなんて日常茶飯事だから」

「もう零君!! 余計なことは言わなくていいの!!」

「崇められるほど凄くないってのを証明してやっただけだ」

 

 

 さっきは千歌たちの夢を壊さないように意識していたのだが、前言撤回。千歌やダイヤ、ルビィがあまりにも創造的な夢を見すぎているため、ここは敢えてその幻想をぶち壊してやろうと思う。まあ大人の世界ってのは夢を語らず現実を思い知らされる世界だから、いくら温厚な俺であっても容赦はせんぞ?

 それに虚構の世界の穂乃果に夢を見るくらいなら、しっかりと現実の穂乃果に目を向けて欲しいという一応まともな理由はあったりする。こうでもしておかないと、これからμ'sと顔を合わせるたびにコイツらの暴走を見なくちゃいけないからな。流石にそれはうるさいし、話の尺も使うしでデメリットしかない。正直μ'sが大人になったと言っても、精神年齢はそこまで高校時代の頃と変わってない奴が多いからそこまで崇めるような存在ではないんだけどね。

 

 

「私は別にμ'sと一緒に練習しても構わないわよ。せっかく東京に来たんだし、いつもの練習方法とは趣向を変えた方がいいと思うけど」

「善子ちゃんがまともなこと言ってる……」

「アンタねぇ、いちいち私を虐げないと気が済まないの!? ていうか私の時だけドSになるのやめなさいよ!!」

「ゴメンゴメン♪ でもマルも善子ちゃんの意見には賛成ずら」

「私も賛成かな。千歌たちがまともに練習できるかは怪しいけど、やっぱりスクールアイドルの先駆者から教わることはたくさんあるだろうしね」

「私たちの周りにはスクールアイドルなんていなかったから、μ'sからTeachingしてもらるのなら乗らない手はないかも♪」

 

 

 千歌、ダイヤ、ルビィのスクールアイドル好き3人は、μ'sを美化し過ぎているためか一緒に練習することにビビっているが、他のメンバーはかなり積極的な様子だ。善子や果南の言う通り、μ'sのメンバーが変人ばかりだと言っても一応ラブライブの優勝実績のある奴らだ。一緒に練習することで何かは学ぶべきことがあるだろう。それに鞠莉も言っていたが、Aqoursは自分たちの周りにスクールアイドルがいない状況で結成されて育ってきたグループだ。つまりこうして他のスクールアイドルと触れ合うこと自体が珍しい。μ'sもA-RISEに触発されたことで成長してきたことから、今回の合同練習はAqoursにとって絶対に意味のある経験になるだろう。

 

 まあその合同練習を柵なく執り行うためには、まず千歌たちの興奮を抑えないとな……。

 

 

「梨子ちゃんも曜ちゃんも本当にいいの!? μ'sのライブを生で見てしまったら最後、千歌たち自分たちの未熟さを思い知らされて、そのまま暗黒面に堕ちちゃうかも!!」

「漫画の見すぎだから……。むしろその経験をバネにして、Aqoursをもっと成長させていけばいいんじゃない?」

「それにスクフェスではスクールアイドル同士の合同ライブが行われるから、当日いきなりμ'sとライブをしろって言われるかもしれないよ? そうなったら千歌ちゃん、μ'sの皆さんに動きを合わせられる自信ある?」

「μ'sの皆さんと合同ライブ!? 同じステージで同じ歌、同じダンスを……うぅ~テンション上がってきた!!」

「練習がダメでライブはいい理由が分からないんだけど……」

「千歌ちゃんの場合は、ぶっつけ本番の方が緊張しないのかもね」

 

 

 練習の時はμ'sのファンとして彼女たちを眺めることになり、ライブの時は一緒に歌って踊る仲間としてμ'sを見ている。恐らくだけどそういった千歌の認識の違いだろう。俺としてはAqoursのソロライブ時に、μ'sが観客となっている状況で千歌たちがまともに動けるのかが心配なのだが、その克服を含めての合同練習なのだ。

 

 だがそれ以前に、現在深刻な問題がAqoursではなくμ'sに重く伸し掛かっていた。

 ここ最近の練習で判明した事実なんだけど、多分今のμ'sはレジェンドの名を返上しなければならない事態に陥っている。それを解決するまでしばらく合同練習はお預けになってしまうのだ。

 

 

「大きく見積もっても一週間後だな、合同練習ができそうなのは」

「えっ、どうしてですか?」

「いやぁ実はね、穂乃果たち長年のブランクで――――――運動不足なの♪ あはは……」

「運動不足!? 穂乃果さんたちがですか!?」

「だってμ'sが解散してからまともに身体を動かしてこなかったし……。日頃から身体に気を使っている海未ちゃんやにこちゃんは別としても、穂乃果たちがねぇ……」

 

 

 そう、これがすぐに合同練習を執り行えない深刻な理由だ。もう合同練習どころか、μ'sとしての存続も危ぶまれるくらいの実態に海未やにこも呆れるしかなかった。先日の練習で判明した驚愕の事実に、まずはあの頃の運動神経を取り戻すためのストレッチやトレーニングから始めるという、ライブの練習をいつするんだと危機感を抱いてしまうくらいには今のμ'sのレベルは落ち込んでいる。もしμ'sとAqoursでスポーツ大会を開いたら、確実にAqoursの圧勝で大会の幕を降ろすことになるだろう。μ'sにとって、4年のブランクはそれくらいにキツかったのだ。

 

 

「そう、だから穂乃果たちはライブの練習よりもまず身体を柔らかくする練習から――――――って、あぁそうだ!? みんなを待たせちゃってるの忘れた!!」

「あぁ、そういえば」

「あ˝っ、穂乃果の携帯にもみんなから連絡が来てる……。絶対に怒られるぅうううううううううううううううう!! ということで、帰るよ零君!!」

「お、おいっ!? 手首握りしめんな痛ぇだろ!?」

「それじゃあみんな、穂乃果たちの運動神経が復活するまで待っててね! ほら零君、モタモタしてないで早く!!」

「うぉああああああああああああああああああああああっ!?」

 

 

 そんなこんなで千歌たちが唖然としている中、俺は穂乃果に連れ去られてμ'sの元へ戻ることとなった。運動不足を感じさせないような全速力で、俺の身体は宙に靡く形で穂乃果に引っ張られていた。

 こんなドタバタと騒いで時間を浪費して、本当に合同練習できるくらいに運動不足が解消できるのだろうか……? 残り一か月半でその課題を解決して、ライブの練習をして、合同練習をしてとなると――――――あれ、時間足りなくね?? Aqoursの登場でμ'sも盛り上がるだろうから、練習の時間があるのか余計心配になってきたぞ……。

 

 

 そして、ポツンと残されたAqoursは――――

 

 

「運動不足であれだけ早く走れるなんて、やっぱりμ'sは凄いよ!!」

「感激してどうするの……」

 

 

 とりあえず、AqoursもAqoursでμ'sの前で緊張しないよう精神を鍛えてもらわないと。

 μ'sもAqoursも課題が山積みだなこりゃ……。

 

 




 これからしばらくはμ'sとAqoursのキャラを混合させた展開が続く予定です!
 前書きでも言ったのですが、公式でも正式にμ'sとAqoursのコラボが決定したそうで。まさかの同じ学年で同じ時系列という設定には驚きましたが、一応時系列に則しているこの小説と設定が被らなくて良かったなぁと地味に安心しています(笑)

 サンシャインの2期ももう少しで放送開始されるので、どちらも期待して待っていましょう!

 次回は今回とは逆で、千歌がμ'sに殴り込み!?



新たに☆10評価をくださった

HANEKAWA-sanさん

ありがとうございました!


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