ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 絵里&果南の回、後半戦。
 その2人だけでなく、前回こっそり出演していたあの子とあの子も本格的に登場します!


反撃のセクシュアル

 

 それからしばらくは、また至って普通のお化け屋敷が続いていた。水が滴り落ちる音や後ろからゾンビが追いかけてくるなど、単純にして王道な仕掛けが盛りだくさんだ。ギミックの多さゆえにやたら出口までが長く感じるのだが、俺は滅多にお化け屋敷に入ることはないのでその感覚は掴みづらい。絵里や果南が仕掛けの1つ1つに対してご丁寧に驚いて足止めを喰らうので、もしかしたらそのせいで長く感じているのかもしれない。

 

 そして絵里と果南にセクハラをしたと思われる変態お化けがいるかもしれない件について、犯人の目星は大体付いていた。エセっぽい関西鈍りの声に、やたら発音のいい英語を会話の端々に組み込む喋り方をする奴なんて、μ'sとAqoursの中で考えれば2人しかいない。しかもその2人を犯人だと仮定するならば、絵里と果南の胸を手際よく揉みしだいていた事実にも納得できる。普段から悪戯で女の子の胸を触るなんてことをする奴らは、俺以外を覗けば()()()()()()くらいしかいねぇからな……。

 

 しかし、どうしてアイツらがお化け屋敷のお化け役なんてやってんだ……? まあ本人たちからすれば絵里と果南を弄れて楽しいだろうし、元々こんな悪戯が大好きな2人だから込み入った理由なんてないのかもしれない。ただ自分たちが楽しめるから悪戯をする、至極真っ当で何とも人騒がせな奴らだ。ギャーギャー騒ぐ反動で手や腕を握り潰されたり、耳元で大声を出され脳震盪を引き起こしそうになる俺のことも考えてくれ。

 

 

「ねぇ零。出口はまだかしら……?」

「お前らがいちいちビビッて足を止めるから長く感じるんだよ。もう何度か同じ仕掛けを見てるし、そろそろ慣れろ」

「慣れたら苦労しませんよ! それに怖いと思った瞬間に腰が抜けちゃうので仕方ないんです……」

「お前らの反応が良すぎて、お化け役の人たちはさぞテンションが上がってるだろうよ」

 

 

 お化け屋敷の仕掛け人たちからすれば、コイツら以上に自分たちのやる気を引き立たせる奴はいないだろう。お化け役の冥利に尽きるというか、逆にこんな簡単に怖がってもらっていいのかと心配になっちゃうくらいだ。まあ2人が暗いところに弱いせいで、花陽やルビィ以上の小心者になるのが原因なんだけど……。

 

 そこで1つ疑問に思ったのだが、果南って浦の星でお化け騒動があった時は割と平常心を保ってなかったか? あの時は俺とAqoursのみんなでお化けが出没すると噂の山に登ったのだが、お化けの存在を確かめるため当然時間帯は夜だった。だがその時の果南は今回のような純粋少女のような様子ではなく、いつもと同じくお姉さんキャラを保っていた。そのギャップがあるからこそ俺は今の果南に驚いている訳だが、あの時は周りにたくさんの人がいたからそこまで怖さを感じなかったのかもしれない。それにいざお化けが登場してみると、それはそれは可愛らしい自分と同年代の女の子だったため、そもそも恐怖心というものが沸き上がってこなかったのだろう。

 

 

「せ、先生? ずっと私の方を見ていますけど、顔に何か付いてますか……?」

「いや、お前も可愛いところあるよなぁって」

「えっ!? い、いきなりなんなんですか、もうっ……」

「零。すぐ女の子を落としに掛かるのはやめなさいって、いつも言ってるでしょ」

「そんなつもりはなかったんだけど……」

 

 

 自分を鈍感野郎だとは思っていないが、もう5年以上も女の子との付き合いがあるため、無意識に女性をそわそわさせる言い回しをしてしまうらしい。そのせいで一度絵里に注意されたのだが、咎められたところで治るのかなこれ……? それに絵里は知らないだろうが、果南は既に落ちているので今更言い回しを改善したところで何の意味もない。

 

 

『先生ってば――――果南に――――Guiltyデス!』

『――――ウチら―――――なんやね……』

 

 

「ちょっ!? れ、零! また例の声が!!」

「それにさっきよりも声色が低くなっているような……!!」

 

 

 またどこからともなく、()()()()のヒソヒソ声が聞こえてきた。犯人の目星が付いていると、これまで上手く聞き取れなかった声色も自然と聞き取れるようになり、もうさっきのヒソヒソ声が()()()()の声で脳内再生されるようになる。声がダダ洩れというほどでもないが、アイツらは自分たちの会話がこっちにまで流れてきていることに気付いてんのかな……? まあ絵里と果南はそのヒソヒソ声にビビりまくっているので、驚かせる側として大成功なのかもしれないが……。

 

 

「さっきからこの声は何なのかしら……? お化け屋敷の最初からずっと聞こえてる気がするわ……」

「そりゃそうだ。アイツらがストーカーしてんだから」

「す、ストーカー!?」

「気にすんな。それよりも、お前たちにやってもらいたいことがあるんだけど」

「私たちに、ですか?」

「あぁ。なぁに、ちょっと懲らしめてやるだけだよ」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 いくら俺たちの進みが遅いとは言っても、もうそろそろ出口に到着するはずだ。

 ここまで()()が仕掛けてきたのは2回。お化け屋敷の序盤と中盤でそれぞれ1回ずつなので、単純計算で終盤でも何か仕掛けてくるはずだ。おっと、相手が攻撃してくる前に自分の考えを語るのは負けフラグになりかねないので、ここは敢えて俺もお化けにビビるフリでもしておくか。

そういや絵里や果南の介抱ばかりしていたためか、俺自身このお化け屋敷を全然堪能していない。まあ元からお化け屋敷や心霊スポットでスリルを味わいたいとは思っていないので、どちらかと言えば2人の可愛い姿を見られてラッキーと感じた程度だ。これで果南を弄るネタもできたし、俺にとってはバイト代よりもこっちの方が収穫かな。

 

 廊下の角を曲がると、その先に朧気ながらも光が見えた。ほぼ真っ暗と言っても差支えないこの状況に長時間いたためか、薄っすらとした光でもとても眩しい。

 そしてその光を見た絵里と果南は自然と浮足立っており、俺を引っ張る形で歩を進めるスピードが早くなった。ようやくこの空間から解放される希望を持ったのだろう、さっきまで堅くなっていた表情はみるみる緩まり、パァーっと明るく輝いている。まるで何日も地下に監禁されていた奴隷が地上へ脱出する瞬間のように、彼女たちの期待と喜びを抱き着かれながらしみじみと感じていた。

 

 

 だが、そう簡単に()()()()が絵里と果南を脱出させる訳がない。

 またしても謎の影が、今度は2つ同時に現れ俺たちの背後に忍び寄る。まさに忍者のような早業とステルス性能で、一般のお客さんならば誰も彼女たちの存在に気付くことはできないだろう。

 

 そう、普通のお客さん――――ならばな。

 

 

 絵里と果南の背後を取った2つの影は、いつも通りの動きで両手を彼女たちの脇の下へ通そうとする。

 しかし、この動きもやはり()()()()()なのだ。

 

 絵里は右手を回して影の左手を掴むと、バレエをやっていた時のしなやかな動きを活かしてその影の主を無抵抗のまま壁へ追い詰める。

果南は両手でもう1つの影の右手を力強く握ると、身体を前を屈めて影の全身を勢いよく前へスイング――――いわば一本背負いを繰り出した。

 

 

「ふぇっ!? えぇえええええええええええっ!?」

「ouch!!」

 

 

 これまで幾多のヒントを出しているから、もう答えを言ってしまってもいいだろう。

 絵里に追い詰められた希、果南に一本背負いされた鞠莉はこんな展開になることなんて予想だにしなかったのか、どちらも素っ頓狂な声を上げて組み伏せられる。さっきまでは自分たちが攻める方だったが故に、まさか反撃を貰うとは想像もしていなかっただろう。

 

 

「希ぃ……なんか覚えのある怪しい気配だと思ったら、やっぱりあなただったのね……」

「え、絵里ち顔怖いよ……? お化け屋敷で働いたらええんと違う……?」

 

「いたた……もうっ、何するの果南!!」

「それはこっちのセリフでしょ!!」

 

 

 未だに状況を完全に掴めていない希と鞠莉だったが、激おこ状態の絵里と果南はそんな暇すらも与えない。ただでさえいつも自分たちが2人の悪戯の対象となっているのにも関わらず、今回は自分たちが苦手なお化け屋敷を利用してセクハラを仕掛けてきたのだ。お化けによる怖さとセクハラによる羞恥。1つの感情がもう1つの感情を助長させていたため、普段よりも無駄な刺激を感じてしまっていた。その原因がいつも自分に悪戯を仕掛けてくる奴と来たもんだから、そりゃ怒らない方がおかしいだろう。

 

 希も鞠莉も『どうしてバレたんだ』と言わんばかりにポカーンとしている。そりゃそうだ、だってお化け屋敷の中で絵里と果南がここまで機敏に動けるとは思っていなかっただろうから。そもそも自分たちの正体がバレるとは微塵も考えていなかったはずなので、こうして反撃されること自体が夢のように違いない。

 

 いつもの構図とは異なり、やる側とやられる側が逆転している今の様子。

 そんな状況を絵里と果南が逃すはずもなく、2人はしたり顔で組み伏せている因縁の相手に迫った。

 

 

「ひゃっ!? え、絵里ち!? そんなところ触ったら……あっ、ん……」

「私はこの時を待っていたのよ希。あなたに仕返しをすることの時を!!」

「あっ、か、果南……や、やめ……ひゃぁっ!! ああっ、んっ……!!」

「いい機会だからね。いつも私が感じてる刺激を、鞠莉にも教えてあげるよ」

「もうどっちがセクハラ魔か分かんねぇな……」

 

 

 絵里は希に、果南は鞠莉にいつもの仕返しと言わんばかりに激しく彼女たちの胸を鷲掴みにし刺激を与える。俺の眼から見ても絵里と果南の胸裁きはそこまで上手いものではなかったが、対する希と鞠莉が胸を触られ慣れていないためかやけに刺激を感じており、ぎこちない手付きでも彼女たちを大いに辱めることができた。暗闇の中でも希と鞠莉の顔が真っ赤に染まっているのを確認でき、突然襲われた羞恥心に全くの無抵抗のままされるがままとなっている。いつも自分たちが弄りの対象としている奴に、こうして逆にセクハラをされたら溜まったものじゃないだろう。もしかしたら恥ずかしさよりも、屈辱的な感情の方が大きいのかもしれない。

 

 

「あぁっ!! え、絵里ちの触り方めちゃくちゃや……はぁ、んっ!!」

「暗闇の中で襲ってきた卑怯者には相応しい罰だわ」

「あぁ、ん……も、もうっ、果南の乱暴さん……あっ、あぁ……」

「乱暴で結構。これまで鞠莉にやられてきた分を、全部ここでお返しするから」

 

 

 絵里も果南もいつもの落ち着いた雰囲気はどこへやら、完全にドSキャラと化して暗闇で女の子を襲う。女の子同士だからまだ百合の花を背景に感じるだけで済むものの、これが男だったらガチのセクハラ現場で即通報ものだ。しかしそうは言っても、絵里は楽しそうに希の胸を弄ってるし、果南もニヤケ顔で鞠莉の胸を執拗に攻め立てているためどちらにせよただのセクハラ魔に変わりはない。

 

 そして一番割を食ってるのは間違いなく俺だ。目の前の胸揉み大会に参加したくて非常にウズウズしているのだが、この状況で飛び込んでいったらそれこそただの変質者認定をされてしまう。かと言って女の子たちのキャッキャウフフ現場を指を咥えて見ているだけなんて、おっぱい好きの俺の心が今にも破裂しそうになる。だからこそ思わず足を一歩踏み出してしまうが、また希が口を開いたことで我に返って踏み止まった。

 

 

「ど、どうしてウチらが犯人だって分かったん……んっ、あ、ん……」

「零が教えてくれたのよ。たまに聞こえてくるヒソヒソ声が特徴的な喋り方で、私たちがよ~く知っている人の喋り方に似てるってね」

「で、でもそれだけで私たちが犯人だって分からないじゃない……って、胸を弄りながら真面目な話しないでよ!」

「これは罰だから我慢する。それと質問の答えだけど、絢瀬さんの服に鞠莉の髪の毛が付いてたよ。しかも絢瀬さんのより髪の長さが少し短かったから、先生ずっと怪しんでたしね」

「Really!?」

「まあこれだけ暗かったら自分の身は隠せても、証拠を残してるなんて気づかねぇわな」

 

 

 暗闇で自分の身がバレづらい+絵里と果南が怖がって犯人捜しどころではないと思い2人は余裕綽々だったのだろうが、俺の目を欺こうなんてそうはいかない。いつも一緒にいる女の子の気配くらい、姿が見えなくとも感じ取ることができる。まあそんな強気な発言をしているが、希と鞠莉がヒソヒソ声の会話を漏らしてくれなかったら多分セクハラ事件は迷宮入りとなっていただろう。これもアイツらの慢心のおかげだな。

 

 

「はぁ……はぁ……まさか絵里ちがこんなにサディストだったなんて、ちょっと目覚めちゃいそうやん……」

「そ、そんな趣味私にはないから! それに、こうなったのも全部あなたたちが悪いんでしょ?」

「それはそうですけど、絢瀬さんの胸の揉み心地の良さと言ったら……くぅ~また触りたくなってきちゃった!」

「えっ、私の胸を触ってきたのって小原さんだったの……?」

「そうそう。最初は鞠莉ちゃんが絵里ちの胸を触って、次はウチが果南ちゃんのおっぱいをガシッと♪」

「なんか鞠莉の手付き以上に凄く手馴れてるなぁと思ったら、東條さんだったんですね……」

 

 

 とりあえずセクハラ事件の犯人は分かったのだが、それ以前の問題がまだ解決していない。

 そう、何故コイツらがこんなことをしているのかだ。悪戯好きな2人のことだから特に理由がないと言われたらそれで納得しちゃうけど、わざわざお化け屋敷のスタッフとして紛れ込んでこんな手の込んだ悪戯をしたってことは、2人のバックに誰かがいてソイツの権力によって今回のセクハラ事件が発生したのだろう。まぁ、黒幕の正体なんて俺の口からわざわざ語る必要もないと思うがな。

 

 

「で? 秋葉になんて吹き込まれてここにいるんだ?」

「Oh! 先生よく分かったね!」

「秋葉が監修してるお化け屋敷だから、何かはあると思ってたんだ。そうしたらお前らがお化け役として出てきたもんだから、これを秋葉の仕業と言わずに何と言う」

「零くん大当たり! ウチと鞠莉ちゃんは秋葉さんに誘われて、今日1日お化け屋敷のスタッフとしてバイトしていたんやけど、絵里ちと果南ちゃん相手には好きなようにしてもいいってお達しが……」

「相変わらず好き勝手しますね、先生のお姉さん……」

「アイツに代わって謝っとくよ。すまん」

「先生がここまで律儀になるなんて……」

 

 

 俺は自分のやってることが全て正しいと信じる残念な人間だから他人に心から謝ることはまずないけど、秋葉の悪ふざけの尻拭いだけは全力で謝罪させてもらう。全く、デキがいいのか悪いのか分かんねぇ姉を持つと弟が苦労するよ。まあそれを含めて秋葉は俺たちのことを弄んでるんだと思うけど、そう考えると希や鞠莉の悪戯が急に可愛く思えてきたな。

 

 

「それで? 反省したの鞠莉?」

「ま、まぁ……ね。今までずっと触る方だったけど、触られる方も悪くないかなぁ……なんて」

「い、いやそれはちょっと……」

「ジョークよジョーク!! 本気で引かないでよ、か~な~ん~!!」

「えぇい暑苦しい!! 抱き着かないで!!」

 

「松浦さんも小原さんも、仲がいいわね」

「それじゃあウチらももっと親睦を深める?」

「そうやってナチュラルに胸を揉もうとするのはやめなさい」

「だから絵里ち、顔が怖いって……」

 

 

 おっぱいを触ることで友情を深め合えるなんて……。俺は今まで男に生まれて後悔したことはなかったが、今この瞬間だけ女の子になりたいとマジで思う。いくらたくさんの女の子の胸を好きなだけ触れられる環境にいると言っても、こうして気兼ねなく触って通報も罵倒も浴びせられないのはやはり女の子同士の特権だろう。性転換にさほど興味はないが、この瞬間だけは微笑ましく乳を弄り合いたいと切に願う。まあないモノねだりをしても意味ないんだけどさ。

 

 

「あれぇ~先生ってば、ヤラシぃ~顔してるよ? そんなに果南のおっぱいを触りたいのならどうぞ。えいっ!」

「うわっ!?」

「ちょっ、先生!? きゃぁ!!」

 

 

 俺は背中を鞠莉に押されると、目の前にいた果南を巻き込んでそのまま床に倒れこむ。ほぼ抱き着く形となったため彼女の身体の凹凸が手に取るように分かるが、その身体を堪能する前に更に第二陣が押し寄せてきた。

 

 

「よしっ、絵里ちもGO!」

「きゃっ! の、希ぃ~あなたもね!!」

「ひゃっ!?」

「お、おいっ!!」

 

 

 希に身体を押された絵里だったが、俺の元へと飛び込んでくる直前に希の腕を引っ張って彼女を道連れにする。その結果、絵里と希が2人同時に俺の身体へとしなだれ掛かってきた。自然と俺の両サイドに寄り添う形となり、頭が果南のおっぱいに埋まっているせいで両手頭に花状態だ。もはや全身から女の子の柔らかい感触が伝わってくるが、一か所に男女が入り乱れすぎて今誰の身体に触れているのかなんて一切分からなかった。

 

 とにかく1つ言えることは、頭と両腕が彼女たち3人のおっぱいに挟まれていて天国に昇りそうだってことだ。

 

 

「あっ……せ、先生あまり顔を動かさないでください!」

「仕方ないだろこんな状況なんだから!」

「喋らないでください。そ、そのぉ、胸がくすぐったいので」

「じゃあどうしろってんだ!?」

「はぁ、んっ! 零、そんなに暴れちゃダメ……擦れちゃう」

「もう、本当に零君ってば、大胆なんやから……こ、こんなところばかり触って……んっ!!」

 

「あらあら。先生たちがこんなにアダルティックに……」

 

 

 自らが呼んだ現状のくせに、鞠莉は口角を上げて憎たらしく微笑む。ホテルでの一件ではあんなに乙女だったから、もしかしたら今回も照れ隠しで果南を身代わりとして俺に突き付けたのかもしれない。さっきまで胸を揉まれまくって少なからず性的な興奮は感じているはずだから、俺に目を付けらて弄られる前に手を打った。そう思える。

 

 だが今回に至っては果南に反撃されたのと同様に、彼女の思惑は悉く外れる。

 鞠莉の背後に、俺たちの誰のでもない新たな影が忍び寄っていた。

 

 

「それじゃああなたも参加しないとね♪ それっ!」

「えっ、誰!? ひゃぁあんっ!!」

「うぉおっ!? って、何が起こった!?」

 

 

 突然鞠莉が俺の身体の上に倒れこみ、薄着が故に自己主張が激しすぎる胸が俺の顔面に直撃する。その柔らかな弾力は鞠莉が勢いよく倒れ込んできたのにも関わらず、痛みもなければ衝撃もほとんどない。まさしく巨乳の柔軟性の凄さを感じた瞬間だった。

 

 

「うっ、い、息が……」

「ひゃぁんっ! せ、先生激しすぎぃ……!!」

「お前が倒れてきたのが悪いんだろ!! つうか、どうしていきなりこんな……」

 

 

 鞠莉の胸に顔を埋めながらも彼女の背後に立っている謎の影の正体を探るため、なんとか胸から顔を脱出させ鞠莉を押し倒した犯人を見定める。

 長身に綺麗な黒髪。現在俺に抱き着いている4人は全員巨乳の部類だが、それすらも遥かに凌駕する爆乳。お化け屋敷内が暗くてそこまでの情報しか分からなかったが、そんな最高のスタイルを持っている女性は俺の中で1人だけなので、すぐに犯人を特定できた。

 

 

「何してんだ、秋葉……」

「零君いいねぇ~その構図。まさに私が求めていた光景にピッタリ! おかげでいいデータが取れたよ」

「は? データ……?」

「うん。それじゃあ私の用は済んだから、あとはごゆっくりぃ~♪」

 

 

 一体何をしに現れたのか、それを語ることなく秋葉はこの場を去っていった。お化け屋敷に希と鞠莉を送り込んだ挙句、絵里と果南には悪戯をしていいと許可を出し、最後には無理矢理俺をハーレム状態にして笑顔で去る。まさにやりたい放題とはこのことだ。それにデータとか何とか言ってたし、この先も何かありそうだと考えるとまた頭が痛くなっちまうよ……。

 

 あっ、そういえばこの状況……どうしよう?

 顔面と後頭部、右腕と左腕に暖かい膨らみの感触がががががが!!

 

 

「せ、先生! そんなに頭を動かされると、胸が潰れちゃいます……!!」

「先生の吐息が私の胸に……」

「れ、零君あまり腕を動かさんといて! こ、擦れてるから……」

「もうっ! 本当にエッチなんだから……」

 

 

 だったらお前らが先に離れてくれよとツッコミを入れたくなるが、もう少しだけこの状況を堪能したいから敢えてこのままで。

 あぁ、なんか久しぶりだなこの感覚。大人になって以来それなりに抑えていた性欲が、また戻っちまいそうだよ……。

 

 




 気付けば巨乳の子ばかり集まっていたので、ハーレム小説としては最後の展開を描かざるを得ませんでした(笑)
 ちなみに秋葉さんの不穏な伏線はいつか絶対に回収するので、こんなことあったなぁ程度に覚えていてくださるとストーリーがより面白く感じられるようになるかと。


 次回は梨子が神崎家に訪問します!
 楓はもちろん、もう1人意外な人物が……

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