ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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 本日、私が小説を執筆し始めて3年が経ちました!
 まだ同じ小説を書き続けているとは始めた当初は思ってもいなかったのですが、今となっては思い出の作品なのでそう簡単に終わらせたくはないですね(笑)


 特に3周年記念はやらないのですが、今回は現在ラブライブ公式で活動中のPDPより新キャラも登場しますので何気に重要な回です。
 また新たなハーレムが形成される予感がプンプンと……


迷子の迷子のスクールアイドル

 

「なぁ、お前ちょっと食い過ぎじゃないか?」

「ふぇ……?」

 

 

 穂乃果は焼きそばを口に含みながら、キョトンとした表情でこちらを振り向く。もうその様子だけでも食い意地を張った意地汚い女にしか見えねぇぞ……。

 

 俺たちはスクフェスへの練習の安息として、街で開かれている夏祭りに来ていた。夏祭りと言えば主催が違うだけで年に何度か開かれるけど、今回開催している祭りが1年の夏祭りの中で最も規模が大きい。俺とμ'sは毎年この夏祭りに参加しているのだが、毎回歳を重ねるたびに規模が拡大しているのは気のせいだろうか?

 その気を感じさせるのが屋台の数で、今年は店舗数が過去最大級を謳っている。例えば同じ焼きそば店だけでも何十件もあることから、この祭りの規模がドでかいことは察してもらえるだろう。

 

 まあだからこうやって、簡単にみんなとはぐれちゃうんだけどな……。

 

 

「あのさ穂乃果。俺たち迷子になってるって自覚ある……?」

「ふぁからふぉうやってふぁいりょくをふぁくあえてふんだよ!!」

「食いながら喋るな!」

 

 

 右手に焼きそば、左手にタコ焼きを持ちながら、それらを器用に口に運ぶ穂乃果。迷子だっていうのに危機感がないのか、それとも迷子という自覚すらないのか……。

 

 さっきも言った通り、この祭りの会場はとんでもなく大きい。しかもそれだけ人が集まり周りが屋台だらけなので景色もあまり変わらない。そうなると必然的に大人数で来ている俺たちは人混みによりグループが分断されやすく、案の定俺と穂乃果はいつの間にかμ'sの集団から切り離されていた。携帯で連絡は取っているものの、人も多く屋台だけの景色の中だとお互いに認知しやすい集合場所を設定すること自体が難しい。だから少しでも人が少なく目印として分かりやすい場所を探すため俺と穂乃果は祭り会場を練り歩いている訳だが、コイツが屋台の飯に釣られて逐一足を止めるため一向にミッションを完遂できなかった。

 

 

「いやぁ焼きそばもタコ焼きもそうだけど、屋台で食べるモノって普段よりも一回り美味しく感じるよね?」

「食うの早いな……。ま、それは周りの雰囲気もあるからじゃね? 賑やかな場で食う飯は美味いって言うから」

「あっ、零君わたあめ食べようよわたあめ!!」

「聞けよ!」

 

 

 自分にビビッと来た屋台を見つけては人混みを掻き分けてでも突撃し、食べながら歩きまた次の店を見つける無限ループに陥っている。最近はスクフェスに向けて減量するために食事をかなり制限していたらしいから、その鬱憤を今ここで晴らしているのだろう。もしかしてコイツ、海未の監視の目を逃れるためにわざとグループから抜け出したんじゃねぇんだろうな……?

 

 そうは言っても浴衣姿の女の子が屋台の食べ物を美味しそうに頬張っている様子を見ると、本気で咎められないのがもどかしい。ハイビスカス柄の白い浴衣にいつもとは違って髪型をポニーテールにしている穂乃果は、普段の子供っぽい容姿とは打って変わって一回り大人に見える。だけど食べ物を頬張っている時の彼女からは少し幼さを感じさせるので、そのギャップが逆に愛おしい。結果、穂乃果の屋台珍道中を止めることが出来ずただ見守るだけになっちゃうんだ。相変わらず女の子に対して甘いよな俺って。

 

 

 自分の弱点を改めて実感したその時だった。

 突然口の中にふかふかした甘いモノが挿入される。そのふかふかは俺の舌に触れると瞬く間に溶け去り、濃厚な砂糖水を啜っている感触になる。

 目の前を見てみれば、穂乃果が笑顔で俺に口にわたあめを突っ込んでいた。

 

 

「なにをする……」

「えへへ、あまりにも美味しいから分けてあげようと思って」

「たかが10円の原価で作れるモノを300円もの大金で売っている綿菓子ごときで、俺を満足させられるとでも?」

「あぁ~出たよ原価厨。その300円の中にはお祭りの雰囲気代も含まれてるの。さっき零君も言ってたじゃん。賑やかな雰囲気の中の食事は美味しいって」

「でも綿菓子とかき氷だけは許せん」

「過去にどんなトラウマを植え付けられたの……」

 

 

 言っておくけど、俺は原価に引き摺られるほど低俗な人間じゃない。だけど綿菓子やかき氷の原価を知ってしまったら、それらを買う時に頭を過ってしまうものだ。この世には知っても自分の人生になんら影響のない情報なんて山ほどあるが、知ってしまった以上無駄に意識せざるを得ない情報も多いため、あまり興味本位で情報を得ようとするのはやめような。

 

 

「食うのはいいけど、屋台ばかり探してないでアイツらも探せよな。それか待ち合わせ場所の目印になりそうなところをさ」

「探してる探してる。でも屋台から流れてくる美味しそうな匂いには抗えないんだよ――――あっ、あそこの焼き鳥買って来るね!」

「まだ食うのかよ……」

 

 

 穂乃果は人混みの間をすり抜けながら駆け足で屋台に向かっていった。もう下手に歩き回るよりもどこかで飯を食いながら立ち止まり、μ'sの連中に俺たちを見つけてもらった方が合流しやすい気がする。気になる屋台を見つけては人混みを掻き分けて道をふらふらと横断していたら、それこそアイツらと同じ道を通ったとしてもすれ違いになりやすい。だったら焼き鳥屋の近くにいると連絡を入れて、アイツらに数ある焼き鳥屋を隈なく探させた方がよっぽど効率がいい。決して穂乃果に振り回されるのが疲れたとか、そんな理由じゃないから!

 

 そんな感じで俺も穂乃果の後を追って焼き鳥屋に辿り着くと、販売の列に並んでいる穂乃果から見える位置の柱に寄り掛かって休憩する。

 すると、横から誰かに声を掛けられた。

 

 

「先生……? やっぱり先生だ!」

「ん? なんだ千歌か」

「なんだとはご挨拶ですね! 1人ぼっちで寂しそうにしてるから声を掛けてあげたのに!」

「そりゃどうも……って、梨子と曜も一緒か」

「こんばんは。まさかこんなところで会えるなんて奇跡ですね!」

「そうだな。これだけ人が多いと、知り合いがいたとしても分からねぇから」

「…………」

「梨子……? どうした俺の顔をジッと見て」

「い、いえ何も! 私も奇跡だなぁっと……」

 

 

 なんだ? 梨子の奴、さっきから俺と目線を合わせようとしてこないばかりか、複雑そうな顔であまり楽しそうじゃない。千歌と曜は祭りの雰囲気に乗じているのか頬を染めるほどテンションが上がっているのにも関わらず、梨子だけはどこかぎこちない感じだ。もしかしてあれか、男に浴衣姿を見られるのが初めてだから緊張してるとか? そういや、千歌たちの浴衣姿を見るのってこれが初めてだったな。オレンジ、水色、ピンクと目がチカチカしそうな明るい色の浴衣たちが俺の目の前に広がっていた。

 

 

「先生、本当に1人で来たんですか?」

「んな訳ねぇだろ。ぼっちでこんなリア充感満載の祭りに行くって、肝っ玉強すぎるから。μ'sのみんなと来たんだよ」

「ということは、皆さんここにいるんですね!? どこですか!?」

「期待しているところ悪いが、残念ながら迷子だ。俺たちがな」

「は? 迷子……?」

 

 

 やめろやめろ。いい大人が女の子たちとはぐれてぼっちになってる可哀想とかいう目線を送ってくるのはやめてくれ。俺だってこの歳にもなって集団から逸れるとは思ってなかったんだよ。でもこれだけ人がいて道も広いと、人混みを避けて歩いているだけで離れ離れになっちゃうのは仕方のないことだ。従って、俺は悪くない。以上!

 

 と、そう心の中で言い訳を繰り返していると、千歌たちも何やら含みのある表情をしていた。

 ま、まさかコイツらも……?

 

 

「なるほど、お前らも迷子って訳か」

「迷子じゃないです! 迷子になっているのは果南ちゃんたちの方ですから!!」

「いやいや、千歌ちゃんが焼きそばだーータコ焼きだーーーって叫びながら屋台を駆けずり回ってたせいだよね……?」

「しかもスクフェスに向けて体重を維持しなきゃいけないのに、みんなの眼から逃れた瞬間それ以上に食べ回ってるし……」

「いいじゃん! お祭りなんだから少しくらい!」

 

 

 なんだろう、同じようなツッコミをされて同じようなセリフで返している奴を俺は知ってるぞ。やっぱり迷子になる人っていうのは一定の法則があって、いくらこうして人が多くても迷子にならない人はならないし、なる人は人数関係なく迷子になってしまう。穂乃果や千歌のように平気で単独行動をする奴に限ってグループから離れ離れになるし、そんな奴に限って自分が迷子になっているのではなく一緒にいた他の連中が迷子になっていると言い張る。そんな無駄な自信はどこから湧いて出ているのやら……。

 

 

「あっ、千歌ちゃんに曜ちゃん! 梨子ちゃんも!」

「ほ、穂乃果さんだ!? 先生だけじゃなく穂乃果さんとも出会えるなんて、運命って本当にあったんだね……」

「そんな大袈裟な。穂むらに来ればいつでも会えるのに」

「いいのか? いい歳して店番を妹に押し付けてゴロゴロしてる醜態を晒すハメになるぞ?」

「もう言っちゃってるじゃん!! ほ、ほらぁ千歌ちゃんたちがポカーンとしてるし!!」

 

 

 千歌たちにとっては穂乃果は雲の上の存在であり、そんじゃそこらの無関係な女優やアイドルなんかよりも自分たちの中ではよっぽど有名人だ。そんな彼女が日頃から店番をサボったりぐぅたらしている光景なんて想像できないのだろう。しかし逆に言ってしまえば、穂乃果が規則正しく生活をして、まるでお嬢様のような優雅なティータイムを嗜んでいるところを想像するとそれはそれで虫唾が走る。現にほら見てみろ、口の周りに焼き鳥のタレを付けながら焼き鳥を頬張っているこの姿。もう子供と変わんねぇだろ? まあ俺と千歌たちが抱いている穂乃果の価値観が違い過ぎるってだけなんだろうけど。

 

 

「そういえば、今日は3人だけしかいないの? みんなは?」

「それが……逸れちゃったんです。千歌ちゃんが暴走するせいで……」

「一応みんなと連絡は取っているんですけど、この人混みの多さで動きづらくって」

「なるほどなるほど。千歌ちゃんはおっちょこちょいさんだね!」

「いやぁ面目ない♪」

「喜んでどうするのよ……」

「ていうか、ブーメランぶっ刺さってるんだが……」

 

 

 自分のことを棚に上げ、他人を蔑むその言動。やっぱり高校時代から何も成長してねぇなコイツ……。まあかく言う俺も人のことは言えないので強く非難はできないけど。

 

 そしてここに集まっているのは、いい歳をして見事に迷子となったスクールアイドルたちだ。しかも迷子の元凶となっているのがどちらもグループのリーダーなので、この先スクフェスへ向けてやっていけるのか非常に心配になってくる。迷子同士が巡り合ったとしても何の解決にもならない上に、下手に集団が大きくなるとその中からまた迷子が出ないとも限らない。迷子の中で更に迷子になるって、もうそんな面倒事に付き合いきれないからさっさとみんなと合流しよう。

 

 ――――と、考え事が終わってアイツらに再び目を向けたのだが……。

 

 

「なぁ、とりあえず行こうぜ。このあたり人増えてきたし、移動しないとまた迷子に……って、あれ??」

 

 

 さっきまで穂乃果たちが立っていたところを見てみると、いつの間にか4人の姿が消えていた。その場所には既に家族連れが焼き鳥を仲睦まじく分け合っており、数十秒前まで焼き鳥を子供のようにむしゃむしゃ食っていたアイツの姿はもうない。人が多くなってきたから早急にここを去ろうと思っていたのに、まさかたった一瞬目を離しただけでも手遅れになるとは。これはアイツらに迷子スキルがあるのか、それとも俺が現在絶賛迷子スキルを発動させているとか……? もしかしてさっき穂乃果と迷子になったのは穂乃果のせいじゃなくて、俺の迷子スキルのせい!? ま、まさかねぇ……。

 

 まだアイツらが消えたと発覚してからそれほど時間は経ってないので辺りを見回して探してみると、案の定と言うべきか4人は見つからなかった。恐らく人が増えた影響で、4人と少し離れていた俺が人混みの列によってパーティから分断されたのだろう。ちょっと目を離した隙に仲間の姿が見えなくなるまで離れ離れにさせられるなんて、やっぱ大規模夏祭りと謳っているだけのことはあるな。

 

 そう関心している場合ではなく、これでみんなと合流することが更に困難となった。ただでさえ逸れると合流が難しいのに、迷子になっている奴らが更に迷子になったら探す手間が膨大になるどころの話じゃない。ここは祭り会場で合流しようとせず、どこか適当な入口で待ち合わせをした方が早そうだ。ていうか、最初からそうした方が良かったんじゃないか……?

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「それにしても、入口が遠いんだよなぁここからだと」

 

 

 とりあえず穂乃果と海未に連絡して、この祭り会場で一番大きい入口で待ち合わせることにした。そこならば屋台ばかりで目印がない会場内よりかはよっぽど待ち合わせとしては最適なのだが、如何せん俺のいる場所とは全くの真逆で遠い。しかもこの人込みだ、真っすぐ歩けるはずもないので到着まで更に時間が掛かる。だったら別の入口にすればいいじゃんと反論があるかもしれないが、生憎海未たちがいる場所から一番近い入口がそこだったのだ。幸運なことに穂乃果を除く海未たち11人は未だ迷子者がおらずパーティを保っているので、下手にアイツらを動かさない方がいい。だったら単身の俺が動くべきだという結論になり、今に至る訳だ。

 ちなみに穂乃果と千歌たちAqoursもそこに集結するらしいので、それだけの大人数だったら入口に行けばすれ違いなくすぐに見つけられるだろう。

 

 それにしても、辺りを見回しても人、人、人で、気を付けていないといつの間にか進むべき道から逸れてしまいそうだ。ただ俺自身あまり人混みが得意ではないので、あまり神経質になっていると体力的にも精神的にも疲労が溜まる。特に道を横切る場合は人の波に逆らいながら歩かなくてはいけないので、これだけの人混みを避けるとなると人酔いする俺にとっては中々キツい。一応海未にはこの人混みだから入口に到着するのは遅れそうとは言ってあるので、どこか人の波が緩いところで休憩しよう。祭りでテンションが上がっている人が多いせいか、会場の熱気が半端ではないのも相まってもう疲れたから。

 

 息苦しい人の波から脱出し、また屋台と屋台の間を陣取って木にもたれ掛かる。あまりの人の多さに空気が淀んでいた道の真ん中とは違い、僅かながらの空洞スペースであっても空気が美味しく感じた。まあ屋台からカステラの少し焦げ臭くもいい匂いがしてくること以外は、こっちの方が全然快適だな。ていうか、またあの人混みを通らないといけないと思うと億劫になってくるよ。女の子12人とハーレム夏祭りデートだったはずなのに、こんなところで1人グロッキー状態になってるなんて一体何をしてんだろ俺……。

 

 

 そうやってぼぉ~っとしながら夜空を眺めている、その時だった。

 突然俺の身体が暖かい人肌のようなモノに包まれる。更に俺の胸の下辺りに、2つの柔らかい肉球らしきモノが押し付けられていた。

 こんな展開を何度も経験したことのある俺だから分かる。これは――――――女の子に抱きしめられている!!

 

 人が大勢いる中でいきなり抱き着いてくるとはいい度胸をしてるなコイツ。俺の知り合いの中でこんな大胆なことをする奴は……μ'sは全員会場の入り口にいるから違うとして、残るはAqoursのメンツかそれ以外。鞠莉かこころかここあか、大穴でA-RISEのツバサだったりするか。とにかく、人の目が痛くなる前に離れてもらわないと。女の子に抱きしめられるのは大好きなんだけど、流石に見世物にされたら鋼のメンタルを持つ俺でも恥ずかしいから。

 

 そう思って目線を落とした時、俺は目を疑った。

 俺に抱き着いている子は身体をベッタリと張り付けているため、身長差的に俺の目からはその子の頭しか映らない。しかしその頭だけでも俺の知り合いの女の子ではないとすぐに察せた。髪の色は赤み掛かった色をしており、真姫がはっきりとした赤だとしたらこの子の髪色は朱色寄りの鮮やかな赤だ。そしてその髪色を持つ女の子は俺の知り合い中では1人もいない。

 

 そうだとしたら、この子は一体誰なんだ……? どうして見知らぬ男に抱き着いてくる? も、もしかして援交目的の輩か何か!?

 あらゆる妄想が頭を駆け巡って、女の子に抱き着かれ慣れている俺が珍しく動揺してしまった。そしてもう周りの目を気にするとか、そんなことを考えている余裕すらもなかった。

 

 

「やっと、会えましたね……」

「えっ……?」

 

 

 聞こえなかった訳じゃない。むしろ聞こえすぎるくらいに聞こえてきたので聞き返してしまったのだ。

 彼女の口ぶりから察するに、彼女は俺のことを知っている……のか? それともあれか、よくあるオカルト話に巻き込まれているのか。彼女のセリフを聞くだけではホラー番組によくありがちな言葉に聞こえなくもないし。

 

 でもこの体温は間違いなく女の子の温もりだ。何度も言うが、これまで幾度となく女の子に抱き着かれている俺が言うんだから間違いない。今自分の身体に伝わってきている暖かさは現実の人肌だ。

 

 だったとしたら、尚更この子は誰なんだ……??

 向こうが知っているってことは俺も知っている子の確率もある訳で、それで俺だけ忘れていたとなるとこの子に申し訳ない。だけど記憶の倉庫を探っても知らないものは知らないんだよなぁ……。彼女は未だに俺の胸に顔を埋めたままなので、顔さえ見せてくれれば記憶が刺激されて思い出すかもしれない。

 

 するとそんな俺の願いが通じたのか、その女の子は俺から素早く一歩下がって俺と対面した。

 

 

「ご、ゴメンなさい! 急に抱き着いたりして、迷惑でしたよね……?」

「い、いや。女の子に抱き着かれるのは嬉しいと言うか、むしろもっとやってくれと言うか……って、今のなし!!」

「フフッ、いつまで経っても欲望に忠実になんですね」

「そ、そうなんだよ、アハハ……」

 

 

 ヤベぇヤベぇ、妄想をつい口に出しちゃう性格が見知らぬ女の子にまで発動してしまった。内浦で初対面の千歌に痴漢して以降、見知らぬ子に手を出すのは控えようという教訓を立てている。そもそも道徳的に考えてそんな教訓なんてなくとも行動を控えろと言われたら、それはそれでぐぅの音も出ない訳だが……。

 

 それよりも自分の欲望を抑えるのに必死でスルーしてしまっていたが、ようやく俺の身体から離れたため彼女の全貌が明らかとなった。

 髪色はさっきも言った通り鮮やかな赤。髪の長さは肩に掛かる程度の短髪気味で、右側の髪を丸めてまとめているため一種のデコレーションのようになっている。見た目的には千歌たちと同じ高校生であり、胸の大きさも千歌や曜と同じくらいだ。雰囲気は清楚でお花畑が似合いそうな美少女で、パッと見で目立った特徴はないものの、それをカバーできるほどの容姿と清純さを持ち合わせていた。その清純さは、テンションが高くも人の多さで淀んだお祭りの空気を一気に浄化してしまいそうなほどだ。今は夜なのにも関わらず、彼女を見ているとまるで青空を見ているようだった。周りに浴衣姿の人が多いのに、彼女は普通に白のブラウスに青色のスカートだから余計にそう思えてしまったのだろう。

 

 

 だからこそ一度会ったらこんな印象強い子を忘れるはずがないと思うのだが、俺の記憶には未だこの子が現れない。

 だったら、投げかける質問は1つ。

 

 

「お前、名前は……?」

「やっと会えたんですから、ここは第一印象をしっかりと伝えなきゃですね」

「えっ……あ、あぁ」

 

 

 彼女は俺から更に一歩引くと、両手を身体の前へ組み、俺の瞳を真っ直ぐ見つめた。

 

 

上原歩夢(うえはらあゆむ)です」

 

 

 この時、俺はまだ気付いていなかった。

 自分の人生が、三度目にして大きく動き出すことになると。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 いつも女の子とはセクハラを皮切りに出会っていた気がするので、今回は趣向を変えてミステリアスな雰囲気で初対面(?)させてみました。しかも最初からデレているのも今回が初めてかも?

 もし今回登場したキャラを知らないよって方がいましたら、ラブライブの公式で発表されていますので是非調べてみてください! それを機に他のキャラの容姿も覚えておくといいかも。


 次回は夏祭りの後編です。
 μ'sと待ち合わせをしているのに、見知らぬ女の子と夏祭りを回ることになった零君の運命は……?

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