ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 夏祭り回の後編、PDPメンバーの上原歩夢ちゃんの回です!
 いきなり零君への好感度がMAXな彼女ですが、その裏にはいくつもの謎が……


ハーレムは広がるよ、どこまでも

 

 一体俺は何をしているんだ……?

 認めたくはないが迷子になってしまったので、祭り会場の入り口でμ'sの奴らと合流する予定だったはずだ。

 だけど俺は突然出会った美少女・上原歩夢(うえはらあゆむ)と共に夏祭りの会場を回っている。初対面のはずなのに彼女は既に俺に心を許しているようで、さっきからやたらと近い。歩いている時も屋台の列に並んでいる時も、もちろん飯を食っている時もだ。しかも何故だか知らないけど頻繁にこちらの顔を嬉しそうに見つめてくるため中々落ち着ける機会もない。見た目は清楚で初心そうな感じなのにここまで積極的とは、今まで出会ってきた女の子の中でも初めての部類だ。だからこそ女の子と2人きりだという絶好のシチュエーションなのにテンションが上がらないというか、初対面で積極的なのが少し不気味で警戒してしまっている。

 

 彼女の名は上原歩夢(うえはらあゆむ)。彼女は自分の名前だけ語ると、そのまま俺の手を取って祭り会場に流れる人混みの波へと俺を引き摺り込んだ。だから俺が得ている彼女の情報はその清純な容姿と名前だけ。そもそもその名前自体も本名なのか偽名なのか判別はできないが、俺の直感だと彼女は嘘をつくような子じゃない。まだ出会って数分だけど、見た目の清らかさと共に心まで透き通って見えるのが話をしていて分かるんだよ。この直感もこれまで幾多の女の子と恋愛をしてきた賜物だ。

 

 まあ、未だに謎が多いので完全に信じ切ってはいないがな。

 その証拠の1つとして、ほら。

 

 

「零さん、りんご飴買ってきました! 私これ好きなんですけど、最近はお祭りに行ってもあまり見かけなくなっちゃったので珍しいですよね。流石、大規模のお祭りは違います」

 

 

 この通り、俺のことを名前で呼ぶ。

 呼ぶだけならいい。初対面だけど名前呼びってのはそれもそれで肝が据わっているが、この子はそれ以上だ。

 

 だって俺は――――――まだ自己紹介をしていない。

 それなのにも関わらず、この子は俺の名を知っていた。実は以前にも同じようなことがあり、嘗て俺が短期間だけスクールアイドルをやっていたことを知っていた千歌がそうだ。もしかしたら今回も同様の手口で俺のことを知ったのだろうか……?

 だとしたらこの積極性やなつき具合はなんだ? 千歌が出会った当初から俺を知っていたことを告白する際、俺が初恋の相手だったからか天真爛漫な彼女ですら羞恥心を破裂させそうになっていた。でも上原歩夢は違う。そんな動揺なんて一切見せず、ただ純粋に俺の側にいたいから歩く時も屋台の列に並ぶ時も、そして飯を食う時も身体と身体が密着しそうなくらい接近してくる。ここまで押せ押せな雰囲気だと逆に俺が男として認識されていないような気がするが……どうなんだろう?

 

 今は流れのままにこの子と夏祭りを楽しんでいるけど、その流れのまま解散してしまったらそれこそ俺にモヤモヤが残る。自分の名前以外のことを一向に話さないのは気になるけど、ここは少しずつでも探りを入れていくか。ここまで秘密にしているってことはダイレクトに聞いても答えてくれなさそうだから、それとない質問から順々にな。

 

 

「なぁ上原」

「歩夢でいいですよ!」

「なぁ上原。今日は1人で来たのか?」

「むぅ……。友達と来ていたんですけど、私だけ逸れちゃいまして。まあ俗に言う迷子ってやつです!」

 

 

 お前もかよ……。

 そして迷子のくせに嬉しそうな表情をしているのは、もしかして俺に会えたからなのか? 名前で呼ばれないと分かってむくれたり、迷子になったことを嬉々として報告したり、穂乃果や千歌並みに表情変化が豊かな奴だ。

 しかも一緒に来ていた友達を探しもせず、こうして初対面の男と夏祭りを回るとは本当に何を考えてんのか分かんねぇ。この大胆でぶっ飛んだ思考も穂乃果や千歌に似ている。まさかコイツもどこかでスクールアイドルのリーダーをやっていたりは……流石にそんなミラクルはないか。

 

 

「そういや、お前は浴衣じゃないんだな。若い女の子はほとんど浴衣を着てるから、ちょっと浮いて見えるっつうか」

「あぁ~……本当は着たかったんですけど、練習をしていたら時間がなくて。でも零さんに会えると分かっているなら、無理矢理にでも浴衣を着て来たら良かったです」

「練習?」

「はい。最近そこそこ忙しくて」

 

 

 上原はそれ以上その話題について語ることはなかった。自分から自分の情報を漏らさないから変だと思ってたけど、やっぱり意図的に隠蔽していたのか。まあ俺が他人の事情に対してそこまで踏み込む権利も義理もない。それに無理にこの話題を押し付けて俺の印象を悪くするよりも、彼女の雰囲気的にも温和に質問できるこの空気を保った方がいいだろう。

 

 まあ俺の印象が悪くなると言ったが、さっきからずっと俺の身体に寄り添う形で歩いているのでもう好感度なんてMAX状態だ。見知らぬ女の子を初対面からここまで好感度を上げるなんて、やっぱ俺の才能?? これまで幾多の女の子を手籠めにしてきた過去は伊達じゃないってことだ。俺クラスにもなれば、そんじゃそらこのギャルゲーやエロゲーの主人公よりも先に女の子とエンディングを迎えちゃうから。でもあれ? そんな簡単に女の子が堕ちるゲームなんてクソゲーの特徴だった気が……。

 

 

「りんご飴の次は……あっ、あそこのフランクフルト買ってきますね!」

「もう食ったのか!? つうか、食い終わったら即次の屋台ってどこかで見たような気が……」

「お祭りって雰囲気的にお腹空いちゃいません? 私普段はそこまで食べないんですけど、こうした賑やかな雰囲気の中だと自然と食も進んじゃいます」

 

 

 どこかで聞いたような話だと思ったら、さっき穂乃果がほぼ同じようなことを言っていた気がする。千歌もそうだけど、やっぱりどこか似ているよなコイツ。まあ穂乃果と千歌とは違って清楚さがあるので、普段からガツガツ食ってる彼女たちと比べると食いしん坊になるって聞いたとしても微笑ましい。そもそもりんご飴を優しく舐めたりちゃんと口を拭いながら食ったりと食べ方にもしっかり気を使っているので、穂乃果や千歌のガサツな食い方と比べるのもおこがましいかもしれない。

 

 そして、しばらく一緒にいたが未だに彼女のことを思い出せない。元々出会ったことすらないのかもしれないが、彼女の言動がその事実を故意に包み隠しているので真偽は不明だ。もし出会っていた場合はこんな可愛くて清純な女の子をこの俺が忘れるはずがないと思うんだけど……。自分の正体を隠しながらもそんなことお構いなしに男と夏祭りを楽しむなんて、とんだミステリアスガールだ。

 

 

「零さん、フランクフルト買ってきました! どうぞ!」

「えっ、俺のもか? ちょっと待て、金出すから」

「そんなものいらないですよ! こうして零さんに会えたことが何よりのご褒美ですから♪」

「お、おう……」

 

 

 笑顔の眩しさはまさに穂乃果や千歌と負けず劣らずだ。彼女たちが誰かに元気を与える笑顔ならば、上原のは暖かい優しさを感じさせ相手を落ち着ける笑顔だ。もはやこの子の正体とか、得体の知れない女の子と2人きりで夏祭りを回っているという事実すらどうでもよくなってくる。この笑顔を見るためだけに一緒にいたい、そう思えるくらいには。

 

 俺は今まで様々な女の子の笑顔に魅せられて来たが、一瞬でここまで心を掴まれるのはこれが初めてだ。もちろん初めて見る笑顔だから新鮮に感じるのは当たり前なのだが、心の片隅で何故か妙な懐かしさも同時に感じていた。それにこの子が嬉しそうな表情をしていることに、俺はまた心のどこかで安心している。どうしてこんな感情を抱くのかは分からないが、1つ言えるのは彼女がただの他人の様には思えないってことだ。

 

 何度も言うが彼女とは初対面。初対面なはずなのに……。

 

 

 ――――――っ!?!?

 

 

「どうしたんですか? 急に目を丸くして……」

「い、いや……。どうぞ是非堪能して食ってくれ」

「言われなくとも……れろっ」

 

 

 おいおいおいおいおいおい!! どうしてフランクフルトを舐めてんだよコイツ!?

 さっきまで超マジメムードで推理小説並みの考察展開が繰り広げられていたはずなのに、上原がフランクフルトを舐め上げたりしゃぶったりしながら食ってる光景を見て展開が一気にAVへと急転換した。突然お色気シーンなんかに突入したら、お茶の間の雰囲気凍っちゃうよ!? そして子供は訳も分からず首を傾げ、お父さんとお母さんは恥ずかしそうにお互いの顔をチラチラ見て『そういや最近主人(妻)とヤッてないなぁ』とお互いに意識しちゃうよ!? そして子供が寝た後にベッドでハッスルしちゃう展開になるよ!? そんなのでいいのか今回の話!!

 

 上原は舌を巧みに操り、フランクフルトに付着しているケチャップを舐め取る。そして今度はフランクフルトの先端を綺麗な唇で包み込むように咥え、その肉棒をゆっくりと出し入れしながら頬張っている。卑しく響く唾液の音がよりリアル感を醸し出しており、さっきまで清楚さをウリにしていた彼女が一転、見るも艶やかな大人の女性へと変貌していた。咥えているのは本物の肉棒ではないものの、絵面だけを見ればその手の行為の現場と何ら変わりはない。そもそもどうしてこんな食い方してんだよコイツ……。野外なのにムラっと来ちゃうでしょうが!!

 

 

「フフッ、気になりますか?」

「え゛っ……!?」

「冗談ですよ♪」

「年上の男をからかったらどうなるのか分かってんのかお前……。俺だから良かったものの」

 

 

 上原の奴、もしかしなくても狙ってやってたのか……?

 さっきの他人の心を揺れ動かす笑顔は穂乃果や千歌を彷彿とさせたのに、気になるかと聞いてきた時の彼女の表情はことりと似た面影を感じた。妖艶で悪戯な表情は俺の心ごと誘ってくる。しかもからかったらどうなるかと脅しを掛けても彼女は逆に卑しく微笑むばかりで、一切の動揺も見せない。まるで彼女が俺とそんなことをする展開を望んでいるかのように……。

 

 

「お好きなんですよね? こういうこと」

「な゛っ……!? まあ好きか嫌いかで言ったら……好きだよ」

「あっ、さっきの告白みたいでちょっとドキッとしました! 舐め方勉強しておいてよかったぁ」

「俺もそうだけど、お前も相当変態だよな……」

「零さんに褒められると照れちゃいます!」

「褒めてねぇよ!!」

 

 

 な、なんなんだコイツは!? 初対面の男の前で堂々と培ってきたしゃぶり方を披露した挙句、変態と罵られて喜ぶその精神。自分の名前以外の素性は全く明かさないクセに、一般人なら他人に見せることさえ渋られる性格を躊躇なく曝け出すなんてマジモノの変態としか思えねぇぞ。もちろん淫乱な女の子は嫌いではなくむしろ大好物だけど、清楚さをウリにしている彼女だからこそそのギャップに驚いてしまう。しかも人がゴミのようにいる祭り会場で公言する肝の強さは俺にはなく、羨ましいとは微塵も思わないが純粋に目を見張る。

 

 ことりや楓、秋葉など、俺と近しい年齢の奴で頭がおかしい困ったちゃんは何人も見てきたけど、コイツはそれとはまた別次元の淫乱ちゃんだ。清楚系淫乱女子って、アニメのキャラとして出演したら即アニメ界隈のトレンドになりそうな性格だな……。

 

 

「あれ……?」

「ど、どうした?」

「色気を出して誘えば、零さんは理性を崩壊させてケダモノになって襲ってくるって話だったのに、まだ理性を保ってる……。もしかして、女性に興味ない人ですか? ちゃんと付いてます、これ?」

「ちょっ、フランクフルトを俺の下半身に当てるなセクハラだぞ!!」

 

 

 上原は食べかけのフランクフルトを俺の下半身に当てようとしてきた。しかもそのフランクフルトの先から垂れる彼女の唾液がまさに男のアレから発射される白い液体を想像させるため、俺が祭り会場の真ん中で絶頂した感じになっている。すげぇ迷惑なんですけど!?

 

 そしてどこから流れたデマなのかは知らないが、淫語攻めごときで俺がレイプ魔になるなど昔の話だ。今はμ'sやAqoursとの経験を経て、女性に対する免疫力が半端なく付いてきている。だからそんな安っぽい淫語を無造作に羅列したところで、俺の性的欲求はビクともしない。まぁこんな可愛い子に本気で淫語攻めされてしゃぶられでもしたら……それはそれでアリかもしれない。でもただ淫語をつらつらと並べたところで、俺が興奮すると思わないことだ。

 

 

「このまま勘違いされたまま解散するのは嫌だから、1つ言っておくことがある」

「はい?」

「俺はな、普通に女の子が好きなんだよ! 女の子と言っても普通の女の子じゃないぞ。俺に見合った俺が認めた可愛い女の子じゃないとダメなんだよ! 

顔、胸、尻、脚、雰囲気、それに何より愛。その全てをパーフェクトに兼ね備えた女の子こそ俺が好きになる。そして俺の周りにはその全てを極めた女の子たちが集結してるんだ。どうだ? これでもまだ俺を同性愛者のホモ野郎と罵るか?」

「い、いやそれは零さんのご自由なので私がとやかく言う必要はないんですけど……」

「けど?」

「そんな大声で自分の性癖を語っちゃって大丈夫ですか? ほら、ここお祭りの会場ですし……」

「あっ……」

 

 

 気付けば周りの人たちがこぞって俺たちのことを見つめていた。一応会場内は騒がしいので俺が何と言ったのかまでは伝わっていないと思うが、それでも大声を上げていたのは事実。そのせいで大人の男が女子高校生に対して怒鳴っていたように勘違いされているようで、周りの人の目線がどんどん冷たいモノに変わっていった。

 

 

「うぐっ……ほら行くぞ!」

「は、はいっ!」

 

 

 俺はこの場の空気に耐えきれなくなり、上原の手を握って未だ冷たい視線が飛び交う現場から立ち去った。

 だがその時、上原の顔が爆発しそうなくらい真っ赤になっていることに、逃げることに夢中で気付かなかった。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「ふぅ……」

「賢者さんですか?」

「違うわ!!」

 

 

 なんとか張り詰めた空気から脱出した俺たちは、お祭りの会場を抜け出して近くの川の桟橋に来た。

 祭りの会場の近くなので人が少ないことはないのだが、人でごった返していたあの場所より断然マシだ。人混みの熱気もないため涼しく、彼女と出会ってからあの場を去るまで色んなことがあって疲れたから休憩するには丁度いい場所だな。

 

 

「あのぉ……ゴメンなさい」

「えっ?」

「怒って……ますよね?」

 

 

 祭り会場にいた時は清楚系ビッチキャラを貫いていた上原だが、突然しおらしくなりやがった。出会ってからここへ来るまで彼女はずっと笑顔だったため、こうして申し訳なさそうな表情を見ていると逆にこっちが心配になる。胸の前で両手を弄り、頬を染めて俺から目を背ける。この初々しさが残る雰囲気は、俺と出会って自己紹介をするまでのコイツの雰囲気と全く一緒だ。

 

 上原歩夢。清楚な彼女と淫乱な彼女。どちらが彼女の顔なのだろうか……。

 

 まあどちらにせよ俺は――――――

 

 

「怒ってないよ。あんなことで怒るほど、俺の器は小さくねぇから」

「でも……」

「だからそんな顔をするな。女の子は笑顔が一番! それに、なんだかんだ言って楽しかったしな」

「零さん……」

 

 

 自責の念で少々涙目になっていた上原だったが、俺の言葉を聞いた途端に目を丸くした。まさかこんなにあっさりと許してもらえるとは思っていなかったのだろう、上原は未だ涙の残る瞳で俺を見つめている。夜の小川の橋の上で涙を見せる少女は、夜空の星に負けないくらい綺麗だった。

 

 

「優しいんですね。変わらない、あなたはずっと……」

「そう、なのか?」

「えぇ。そんなあなただからこそ、私はあなたに恋をしているんです」

「え……?」

 

 

 ここへ来て衝撃の告白に、今度は俺が目を丸くして彼女を見つめる。

 今さっきなんて言った? 恋をしてる? この子が俺に……? 今までたくさんの女の子から告白をされてきたが、ここまで自然でド直球な告白は初めてだ。しかもお互いに出会ったばかりだというのに、もう既に恋を抱いてるって……もう訳が分からない。もちろんこんな絶世の美少女から好意を寄せられるのは悪い気分ではないが、状況が状況なので告白を素直に受け取っていいのかも分からなかった。

 

 上原の瞳には既に涙はなく、まさに恋する乙女という感じで頬を赤くし再び俺に正面から抱き着いた。

 こうして男に抱き着くことや告白をすること、言ってしまえば淫語を隠語として連発することだって躊躇いがない。コイツは俺が出会ってきた女の子とは覚悟が違う。何事にも迷わない決心を抱いている。ただ俺に好意を示し伝えることだけに全力を注いでいるようだった。しかも上原はさっき『俺がずっと変わらない』と言っていた。もしかしたら、この献身的な愛はその言葉に関係しているのだろうか……? やっぱり会ったことがあるのかな、俺たち。

 

 そしてしばらく彼女の抱擁を味わったあと、上原は俺の身体から腕を放し一歩後ろに下がる。

 その表情はとても満足気で、俺の大好きな笑顔に戻っていた。

 

 

「今日は零さんに会えただけでも人生のご褒美なのに、まさか告白までできるなんて……嬉しさで死んじゃいそうです」

「自分で言うのもアレだけど、どれだけ俺に入れ込んでるんだよ……」

「入れ込みますよ。私、いや私たちは、あなたに尽くすためにこれまで――――あっ、そろそろ時間なので帰らないと」

「あ、あぁ……」

 

 

 めちゃくちゃ気になることを言ってたのに、ここで打ち切りってマジかよ……。せめてあと10秒あればその先を詳しく聞けたものの、恐らく彼女自身そこまで話すつもりはなかったのだろう。告白で気分が高まって、自分が喋り過ぎたことに気付いたって様子だった。元々自分の名前と俺に好意を抱いていることくらいしか情報を明かさなかった子だ。こんなタイミングよく帰宅するのも多分嘘に違いない。まあ、俺には止める権利がないからこのまま彼女を見送ることしかできないんだけど……。

 

 

「それでは零さん、またお会いしましょう!」

「会うと言っても、連絡先も何も交換してねぇけど?」

「大丈夫ですよ。その内、また絶対に私に会えますから。そう、絶対に……」

「そうか……」

「はい。それでは失礼します」

 

 

 上原は丁寧にお辞儀をし、曲がり角で俺が見えなくなる位置でもう一度お辞儀をしてその場を立ち去った。

 やっぱりアイツの笑顔は綺麗だな。穂乃果と千歌が太陽なら、上原は花だ。心を落ち着かせてくれる、綺麗な花。この先、俺はその笑顔を一生忘れることはないだろう。例え彼女が、どれだけの嘘つきだったとしても。

 

 そう嘘つき。出会った時は友達と逸れたから1人だと言っていたのに、別れる前は友達のことなんて全く気にせず帰っていった。つまり彼女は嘘つきなんだ。出会った当初はこの子は嘘は付かない子だと信じていたけど、やはり女の子ってのは魔性だよ。

 

 

「ホントに、いきなり抱き着いてくるわ淫乱魔人と化すわ、告白もしてくるわ嘘もつくわで訳分かんねぇなアイツ」

 

 

 そう思いながらも、また彼女と会える日を楽しみにしている俺であった。

 

 

 そして、この一部始終を見ていたμ'sの連中にこってりと絞られ、Aqoursのみんなに慰められる俺であった……。

 

 




 この小説で告白と言えば話の節目節目で行われる超重要イベントだったのですが、今回は出会っていきなり告白というこれまでとは違った展開にしてみました。初対面から好感度が最高だったりエロかったりと、まだPDPキャラに明確なキャラ付けがされていないのが逆に執筆者として想像を掻き立てさせてくれるのかなぁと思います。
これで公式とキャラが違ったら笑いものですが、そもそも淫乱キャラにしている時点で諦めていますし、そもそも穂乃果やことりだって全然キャラが違うのでもうどうにでもなれです(笑)

 PDPの他のキャラは定期的に登場させる予定なので、またしばらくはμ's&Aqoursとの日常をお楽しみください!


 次回はことりと善子がメインの、堕天使と堕天使回です()


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