ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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今回はことり&善子の回となります!
どちらの闇がより深いのかを明らかにしましょう……


淫魔と堕天使の邂逅

 堕天使とは、主なる神の被造物でありながら、高慢や嫉妬がために神に反逆し、罰せられて天界を追放された天使、自由意志をもって堕落し、神から離反した天使である。

 自分は神をも凌ぐ力を持っているのではないかという驕りや、神が人間に天使以上の愛情を注いだ故の嫉妬、神はもともと天使を自分自身を尊重させるために創造したとされるが、彼らの中にその指針に反する自由な意志を持つものもいたという。

 

 そんな天界の外れ者が堕天使であり、現実世界の言葉を借りるならただの社会不適合者だ。

 ちなみに思春期時代をドブに捨てた社会不適合者のことを中二病と呼ぶが、ソイツらは自ら人間でいることをやめているので、神から天界を追放された堕天使とは少しニュアンスが違うのかもしれない。まあ堕天使が堕落した理由なんてキリスト教観点だけでも諸説あるから、こんなところで聖書の内容を語るだけ野暮なのかもしれない。

 

 では何故いきなりこんなことを語り始めたのかと言えば、原因は俺の隣を歩くコイツにあった。

 

 

「フフッ、久しぶりね下界のリトルデーモンたち。主たるヨハネの降臨に従い、モーゼの十戒のごとく道を開けなさい!」

「中二病患者ってさ、人前で堂々とそんなこと言えるんだから相当精神が完成されてるよな。そこのところだけは羨ましいよ」

「ちょっ!? 初っ端から気にしてることを突き付けるんじゃないわよ!!」

「気にしてたのか……」

 

 

 津島善子は嘗て堕天使を辞めようとしていたことがあったが、結局はその中二心を捨てられず現在に至る。そう考えれば一度は真っ当な人間になろうとしたコイツが、中二病セリフを吐くたびに人目を気にしないことはないのか。まあさっきのセリフもそうだけど、人目を感じているとは微塵にも感じないくらい言動に迷いがなかったけどな。

 

 俺と善子は秋葉原を練り歩きながら、主にコスプレ衣装を売っている店を回っている。目的はもちろん堕天使衣装の捜索なのだが、そもそもこの旅に俺が同行する理由があるのか甚だ疑問だ。彼女曰く、自分の趣味に付き合ってくれる子がAqours内にはいないという悲しい現実があるらしい。でも自分は東京に詳しくないから1人では回りたくない。だから俺を引っ張り出し、あわよくばお金を出させようという魂胆だろう。汚い、流石ヨハネ汚い。

 

 

「アンタ、今変なこと考えてなかった……?」

「そりゃいきなり寝ているところを起こされて、『新たな堕天使の降臨を見届けるわよ』って言われたら混乱もするだろ。素直に買い物に行きたいって言えば普通に行ってやるのに」

「そ、それだとデートに誘っているように見えるじゃない……」

「違うのか?」

「違うわよ!! アンタが主に仕えるリトルデーモンとしての役目を全うしてるだけ!!」

「はいはい、そういうことにしておくから」

「ちょっと!? 聞きなさいよもーーーーうっ!!」

 

 

 堕天使キャラはどこへやら、今の善子は完全に年頃の恋する乙女だ。中二病セリフを吐く際には羞恥心がほとんどないのに、男1人をデートに誘うのはハードルが物凄く高いらしい。恥辱に対するレベルが曖昧なのは俺の周りの女の子ならもはや当然のことだが、彼女はその中でもダントツである。ちょっと甘い言葉で誘ってやるとすぐに顔を赤くするけど、中二病セリフを吐く時は周りに見知らぬ他人がいたとしても気にしない。やっぱり女の子の心はいつまで経っても読める気がしないよ……。

 

 

「俺はお前とデートしたいと思ってるし、叩き起こされたとは言え今も楽しみにしてるけどな」

「そ、そう……。ふ~ん、楽しみにしてるんだ……フフッ」

 

 

 頬を染めて右手で髪を弄りながら俯く善子。

 普段は中二病セリフばかり漏らしてるから一見すると近寄りがたいと思われちゃうんだけど、こうして普通の女の子っぽい仕草を見るとその考えも改めさせられる。特にいつもとキャラが真逆になっちゃう女の子は、古い言葉だけどギャップ萌えが備わっていて実に男心をくすぐってくる。だからこうして羞恥心を突っついてやりたくなるんだ。ほら、好きな女の子をイジメたくなる小学生の男の子と同じ理論だよ。

 

 

「なにさっきからニヤニヤしてんのよ……。まさか私の恥ずかしがってる姿を見て、微笑ましいとか思ってるんじゃないでしょうね……?」

「おっ、察しのいい女の子は好きだぞ。俺の言ってることや思っていることをしっかり理解してくる子は、単純に話をしていて楽だしな」

「その上から目線の見透かしたような言い方は相変わらずね。ま、そんなアンタを私は……」

「私は?」

「~~~~っ!?!? さ、さっきのなし!! ほ、ほらとっとと行くわよ!!」

「へいへい……」

 

 

 墓穴を掘るとはまさにこのことと言わんばかりの自爆っぷりは、広辞苑の"墓穴"という言葉の類義語に"善子"と書かれていても何の違和感もない。下手に恥ずかしがるなら最初から言わなかったらいいのにと思うけど、もしかしたら自然に漏れちゃった言葉なのかもしれない。そう考えると、自然と漏れ出すくらい俺のことを想ってくれているってことだから嬉しくはあるんだけどな。

 

 そして俺は善子に手を引かれて、強引に近くのコスプレショップに入店した。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 店内は紫色の明かりで灯されており、いかにも闇の力により生成された空間のようになっていた。

 禍々しい水晶や漆黒のマント、結界を模した絨毯など黒魔術の入門には最適なグッズを始め、女子高校生の背丈よりも遥かに大きい堕天使の翼など、上級者向けのグッズやコスプレが数多く揃っている。もう店内を見ているだけでも外とは別次元のように感じるので、善子のように中二病オタクにとっては天国のようなスポットだろう。いや、堕天使に天国とか言っちゃいけないのか……。

 

 ともかく、案の定善子は目を輝かせて店内を回っている。いつにも増してキラキラ輝いているように見えるが、一応堕天使キャラを通しているんならその子供のようにはしゃぐ雰囲気を抑えて欲しいものだ。これだからいつまで経っても堕天使キャラになりきれないんだよなぁ……。

 

 

「これよこれ! これが欲しくてわざわざ東京にまで来たんだから!」

「なんだよその法衣……。ていうか、東京に来たのはスクフェスのためだろ?」

「それはそれ、これはこれよ。まあ私からしてみればこっちの方がメインだけど……」

「Aqoursの絆はそんなコスプレごときに負けるのか……」

 

 

 ともあれ今の彼女に何を語っても、目の前に陳列する欲望たちに魅せられて聞く耳を持たないだろう。善子は黒と紫を基調としたフード付きの法衣を手にすると、どう見てもアクセサリーには思えないほどの大きさを誇る堕天使の翼と共に買い物かごに入れる。男の俺からしてもカッコいいと思わなくはないのだが、このような衣装を躊躇いなく堂々と購入できるあたり中二病はそんじゃそこらの人間と度胸が違う。やはり華の思春期から外れた無法者は肝の据わりも常人ではないということだろう。

 

 そんな善子を呆れながら見つめていると、俺たち以外にも客がいることに気が付いた。正直に言ってしまうと赤の他人であろうがこんな店の中で誰かとエンカウントすること自体が非常に気まずいのだが、それは一般人である俺だけなのか……? 最近は中二病同士のオフ会とかも積極的に行われているみたいだし、同志というのはこのようなところで見つけるのかもしれない。俺からしてみれば、目の色を変えて黒魔術グッズや堕天使コスプレを探す人の妖気が半端なく怖い訳だが……。

 

 ちなみにもう1人の客はこれまた珍しい女の子。しかも見た目も善子とは違ってゴスロリ風味な服ではなく、完璧にイマドキ女子を表現している明るく可愛い服だ。髪型は特異で鳥のトサカのようになっており、出ているところは出ていて引き締まっているところは引き締まっている女子憧れのスタイル。そしてなにより近くにいるだけで甘いスイーツの香りが漂ってくる――――――あれ?

 

 この特徴の女の子って、俺の知る中で1人いたような……?

 いや、目の前いるコイツがまさしく――――!!

 

 

「こ、ことり!?」

「えっ? あっ、零くん?」

 

 

 南ことり。μ'sのファッション担当であり、世間では天使と呼ばれ崇められているオタク界のアイドル的存在だ。

 まず彼女がこんな黒々とした店にいることに驚いた。彼女は流行のファッションを常に追い求めており、大学卒業後は海外でファッションデザイナーを務めることになるほど洋服が大好きなのだ。そんなことりがやれ黒魔術だの、やれ堕天使だの社会の外れ者たちが好むような衣装を手に取っていることが信じられない。別に中二病の趣向をバカにする気はないが、彼女の趣味からは遠く離れていると思ったんだ。現に今ことりの着ている洋服も白とベージュを基調としたブラウスとミニスカートで、この店の漆黒に満ちた空気とはどう足掻いてもマッチしない。それにしてもどうしてコイツがここにいるんだ……?

 

 

「お前がこんなところにいるなんてな……」

「それはこっちのセリフだよ。零くんって意外とこういうのに興味あったんだね」

「大学生にもなって興味があったらマズいだろ……。俺はアイツの付き添いだよ」

「アイツ……? あっ、あの子は!」

 

 

 ことりは俺の肩越しに小物売り場を見ると、そこにいたいかにも堕天使っぽい洋服を着ている少女と目が合った。

 同時に善子もことりの視線に気付いたのか、しばらくことりを見つめた後に頬を染めて顔をプイっと逸らした。善子からしてみればことりとは今回が初対面なのだが、既に他のμ'sメンバーと出会っている以上初めてという気はしないのだろう。それはことりも同様だが、彼女は恥ずかしがる善子とは違って目を輝かせていた。

 

 

「もしかして、津島善子ちゃん……じゃなくてヨハネちゃん?」

「善子! あ、あれ??」

「わぁ~! PVで見た時から思ってたけど本当に黒いんだぁ~」

「そ、そんなジロジロ見ないで!! …………ください」

「えぇ~でもヨハネちゃんの堕天使コス可愛いじゃん!」

「えっ、ほ、ホント? 本当に可愛いと思ってる……?」

「もちろん! 逆にそんなことで嘘を付いてどうするの」

「まさか……認めてもらえるなんて!!」

 

 

 善子はグイグイ来る系の人種に対して苦手意識を持つ子なのだが、ことりに堕天使を認めてもらった瞬間に目を輝かせた。まあこれまでその中二病な性格を咎められるどころかスルーされてばかりだったので、自分の趣味を真っ向から向き合ってくれる人が珍しいのだろう。しかも堕天使キャラを肯定してくれるとなれば、それはもう犬のように尻尾を振って彼女に懐くのも納得できる。

 

 それにしても、まさかこんなところで善子の趣味を理解できる奴がいたとは。もちろん千歌たちが理解していない訳ではないが、さっきも言った通り彼女たちは善子に慣れ過ぎてもはや中二語録をスルーするのが定石となっているのだ。例を上げるなら千歌たちから『善子ちゃん』と呼ばれると『ヨハネ』と返すのが一連の流れとなっており、それがもう日常に定着している。だからこそ自分のことを素でヨハネと呼び慕ってくれることりが初対面ながらも貴重な存在なんだ。

 

 そして初対面なのにも関わらず善子の心を一気に鷲掴みにしたことり。元々メイド喫茶のバイトでお客さんの機嫌を取ることには長けているから、その能力のおかげだろう。よく言えばコミュ力MAX。悪く言えば魔性の女って感じか。

 

 

「そういやお前、どうしてこんなところにいるんだ? お前こそ黒魔術とか堕天使に興味あんのか?」

「実は10月のハロウィンパーティのために衣装を作りたかったんだけど、こっち方面の知識がないから勉強しに来たの」

「今まだ7月だぞ? いくら何でも早すぎねぇか?」

「それがね、今回作った衣装を海外のファッションデザイナーの方に見てもらえることになったの。だから製作期間を十分に設けて、自分の納得のいく衣装を作らないとね!」

 

 

 普段は持ち前のピンク脳で俺のペースを乱してくる困ったちゃんのことりだが、こうして純粋に夢を追いかけている姿は眩しく見える。しかももう既に手を伸ばして夢を掴む直前まで漕ぎ着けているのだから、ただ平凡に生きている俺なんかよりもよっぽど真っ当な人生を送っている。あぁダメだダメだ! 人の人生と自分の人生を比べると余計惨めになるからやめようやめよう! ことりは海外でファッションデザイナーになり、俺はハーレムのヒモになる。うん、お互いに素晴らしい人生だ!

 

 

「み、南さん!」

「ことりでいいよ。それに敬語も外していいから♪」

「ではことりさん! 私に似合うとっておきの堕天使衣装を見繕ってもらっていい!?」

「フフッ……」

「ど、どうして笑ってるのよ……」

「いやぁ何でもないよ何でも!」

「なんか笑顔が怖いんだけど……」

 

 

 ことりは善子が懇願してきた瞬間に雰囲気が変わった。さっきまで純粋に夢を追いかけていたキラキラとした姿を白とすれば、今の彼女は髪の毛の先から足のつま先まで黒。まるで最初からこの展開を願っていたのかのような風貌は、いかにも計算高い彼女の打算を感じる。

 

 

「よしっ、ことりがヨハネちゃんの洋服を選んであげるよ!」

「そ、そう……ありがとう」

「全然いいよ! むしろ着せ替え人形……じゃなくてモデルになってくれる人がいてこっちが助かったから♪」

「おい、今なんつった!?」

「もう零くん顔が怖いよ? ほらスマイルスマイル!」

「うっ……」

 

 

 ことりは笑いながら俺の頬に人差し指を押し付け、無理矢理表情を変えてきやがる。

 女の子の笑顔には3種類あり、1つ目は穢れのない明るく楽しそうな笑顔。2つ目は優しい微笑みの笑顔。そして最後は、今のことりのように怖さが滲み出ている黒い笑顔だ。こんな笑顔を見せる奴は大抵裏で碌でもない計画を立てているのは明らかであり、その計画の対象が誰であろうとも最終的には俺に災厄が降りかかるのはいつものことだ。

 

 だからこそ全力で計画を阻止しようと思ったのだが、善子がことりの言動を気にしながらもやる気になっているので多数決の観点ではこの時点でもう白旗だ。

 だったら俺の取りえる手はただ1つ――――――

 

 

「あっ、用事を思い出したから俺帰るわ」

「えっ? そんなこと一言も言ってなかったじゃない」

「風に呼ばれたんだ、気にしないでくれ」

「なにその冗談寒すぎるんだけど……」

「お前! せっかく中二語録使ってやったのにその言い草はないだろ!」

 

 

 自分は自信満々に堕天使キャラを演じておきながら、他人のクサいセリフには冷たい反応をするコイツをどう懲らしめてやろうか……。でも中二語録を使用してマジレスされた時の空気を初めて味わったから、Aqours内でこんな空気になってもアイデンティティを崩さなかった善子は純粋にメンタルが強いのかもしれない。現に超恥ずかしいから、俺。

 

 

「零くん? 逃げようたってそうはいかないよ♪」

「いや笑顔が怖いよ! 既に人を2、3人平気で殺してるような黒さだぞお前……」

「そんなこと言っちゃっていいのかなぁ? この前の夏祭りに零くんがことりたちにした所業、忘れた訳じゃないよね?」

「そ、それを言われると……」

 

 

 先日、とある夜に上原歩夢(うえはらあゆむ)と2人きりで夏祭りを回ったことは記憶に新しい。しかも抱き着かれた挙句に告白までされるという大波乱っぷりで、しかもその現場をμ'sやAqoursに目撃されたからさあ大変。あの時は久々に胃が破裂しそうなくらいの修羅場を体感したのだが、それだけで済むならまだ温い。結局長時間の弁明と平謝り、そしてみんなの言うことを1人1つずつ何でも聞くという奴隷のような待遇に堕ちることで一応許された。もはやハーレム内カースト最下位にまで落ちた俺は、夏祭りの件で揺さぶりを掛けられるだけで抵抗もできなくなってしまったんだ。それこそまさに奴隷。女の子の奴隷になるってどこのドMだよ……。

 

 そして、ことりは人差し指で俺の胸を服の上からくるくると掻きまわしながら擦り寄ってきた。

 

 

「零くんはぁ~ことりたちの言うことを何でも聞かなくちゃいけないんだよぉ~?」

「それはまあ俺のせいだから仕方ないけど、1人1個のお願いをここで使っちまうことになるぞ?」

「まぁそれでもいいかもね♪」

 

 

 ダメだ、もうことりは止まらない。ということは、これから行おうとしている計画には確実に俺が割を食うプランが仕込まれているはずだ。つまり善子を着せ替え人形にするプランは表向きの理由であり完全に囮。裏では着々と彼女の真の計画が進行しているのだろう。

 

 さっきコイツを夢を追いかける純粋な奴と褒め称えたが前言撤回。やはりコイツは打算的で身体の芯まで真っ黒な悪魔、いや淫魔だ。

 今この現場にて淫魔と堕天使が邂逅……とんだ迷惑な話だなオイ。

 

 

「善子はいいのか? コイツにホイホイ釣られても」

「さっきの話を聞く限り、ファッションデザイナーとしての腕は一流なんでしょ? だったら私は賛成。いつもは趣味で堕天使や悪魔っぽい衣装を選んでたけど、一度は本気でファッションを考えた服を着てみたかったのよ。もちろん堕天使要素込みでね」

「もちろんヨハネちゃんの要望にはお応えするよ! むしろ要望以上に可愛くしちゃうからね……フフッ♪」

「おいどんなことさせる気だ……」

 

 

 これじゃあどちらが堕天使で悪魔的なのか分かったものじゃねぇな……。こうして見ると善子の空回りしながら発揮する中二病が途端に可愛く思えてくる。本物の悪魔っていうのは目の前にいるこの淫魔のような奴のことを言うんだよ。よぉ~く覚えておけ。

 

 

「よ~し! それじゃあ今からことりの家に行きましょう!」

「えっ、ことりさんの家……?」

「うん! 実は既に何着かハロウィン用の衣装を作ってるんだよね。だからそれをヨハネちゃんに着てもらおうと思って」

「一応確認するけど、それは人前に出ても恥ずかしくないようなコスプレなんだろうな……?」

「う~ん? 人前に出て恥ずかしいコスプレってどんなの? ことり分かんなーーい!」

「コイツ……」

 

 

 ここまで白々しさをウザく表現できる奴は初めて見た。ことりは頬に人差し指を当てながら、本当に疑問に思っているかの如く首を傾げる。俺の中二語録を華麗に跳ね除けた善子もそうだけど、いつかコイツにもじっくりとお灸を据えてやる必要があるみたいだな……。

 

 ちなみに着せ替え人形にされるとは知らない善子は、ことりの言葉をすっかり真に受けて家に行く気満々だ。何やらウットリしているため、どうやらこれまで以上にカッコいいコスプレを着ている自分を妄想して酔っているのだろう。オタク界隈に詳しい彼女なら人前に出て恥ずかしいコスプレと聞いて恥ずかしがらない訳ないのだが、今の彼女の耳には一切入らない。もうどうなっても知らねぇからな。

 

 

「ほら、先生も行くわよ!」

「えぇ……俺も?」

「夏祭り」

「ぐっ……分かったよ行けばいいんだろ行けば」

「やった! 零くん大好き♪」

「なんとまあ安っぽい告白ですこと……」

 

 

 そんなこんなで俺もことりの家に連行されるはめになった。俺にとって南家でいい思い出がなく、親鳥も親鳥で頭がお花畑でクセが強く扱いが難しいので難敵しかいない。だから魔王城に乗り込むような気概を持たなければ、気軽に足を踏み入れてはいけないのが南家なのだ。

 

 さてはて、俺も善子も今度はどんな面倒事に巻き込まれるのやら……。

 

 

 

 

To Be Continued……

 

 

 

 

 




完全に個人的な妄想ですが、ことりと善子ってウマが合うと思います。共通点なんてほとんどないのですが雰囲気的に……同じこと感じてる人いますかね??

次回はことり&善子回の後半。
ことりの本気はこれより始まる!?

新たに☆10評価をくださった

ほたるいるかさん

ありがとうございます!

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