腹黒系スクールアイドルとして、お得意の悪戯で零君を引っ掻き回せるのか……?
μ'sを揺るがせた事前投票の結果発表から一晩が経った。思わぬ大番狂わせに結果発表直後は現実を直視できなかったμ'sだが、一晩も経てば現実を受け入れられたようで、今日から新たな意気込みを胸に練習をしている。彼女たちの立ち直りの速さは目を見張るものがあり、自分たちより圧倒的に実力が下のスクールアイドルに投票で負けたとあっても逆にその事実を糧としてやる気に変えていた。王座を奪われたのならまた奪い返せばいいという決心の元、12人が同じ気持ちで結束して再びμ'sとしての絆が深まる結果となったのだ。
しかし実力の差があるとは言っても、虹ヶ咲スクールアイドル同好会のPVを観ている限りでは客を惹きつける魅力はあちらに軍配が上がる。どれだけ自分たちの技能を磨こうとも、それが客の心に響かなければ何の意味もない。そういった
そんな訳でμ'sはμ'sで頑張ってもらうとして、俺は俺で確認したいことがあるためとある場所へと向かっていた。とある場所と言っても隠す必要もないので言ってしまうが、俺が向かっているのは秋葉の研究室だ。
夏祭りやテレビで上原の言葉を聞いていると、どうも俺のこと知っているような素振りを醸し出している。でも俺は彼女たちのことを知らないため、もしかしたら幼少期の頃に出会って俺が忘れているだけかもしれないと思い、そのことを秋葉に確認を取りたいのだ。だからアイツに上原のことを聞きに行きたいと思っているのだが、逆に知っていたら知っていたで包み隠さず話してくれるのだろうか……? まあこのまま謎で終わらせるのはむず痒いため、聞くだけタダなら聞いておいて損はない。もちろん秋葉も知らなかったらそれこそ謎が謎を呼ぶ不可解な展開になる訳だが……その時はその時だな。
アイツのことを擁護するつもりはないが、あれでも世界を羽ばたく研究者なので毎日そこそこ忙しい。俺たちを妙な発明品の実験台にしているくせに何を言ってんだと思われるかもしれないが、まだ学生の俺たちと比べたら世界への貢献度は雲泥の差だ。
だからこそアポなしで訪れるのは迷惑かと思い事前に連絡を入れようとしているのだが、アイツの携帯に全然繋がらない。研究に没頭して携帯に気が付かないのは日常茶飯事なので今更咎めはしないが、このままアイツの研究室へ行って門前払いされるとそれほど無駄な時間はない。だからさっきから何度か連絡してるんだけど全く出る気配がないんだよなぁこれが。もう腹を括って時間浪費覚悟で行ってみるか。
そうやって携帯に注力を注いでいたばかりに、目の前から近づいてくる人影に全然気が付かなかった。
「あれだけたくさんの女の子を侍らせてるのに、1人寂しくお出かけとか悲しいですねぇ~」
「え……?」
携帯から顔を上げてみると、女の子が電柱にもたれ掛かってこちらを悪戯な笑顔を向けていた。
蒸栗色、いわば緑みがかった淡い黄色の髪をした小柄な少女だ。髪の長さは肩に掛かる程度の短髪で、服装はパステルイエローのブラウスに青緑のスカート。胸は大きいとは言い難いが、小柄ながらに引き締まった体型をしているためパッと見だけどスタイルはそこそこ良さそうだ。
それになによりこの憎たらしい笑顔は、にこや楓を彷彿とさせる小悪魔的な何かを感じる。身近に同じような笑顔をする奴がいるからこそ分かるこの雰囲気。正直に言ってあまり関わり合いになりたくないのだが、この子は確実に俺を逃がしはしないだろう。また面倒なことに巻き込まれんのかオレ……。
それにしてもこの子、どこかで見たことあるような……?
「どうしたんですかぁ? まさか、かすみんに一目惚れしちゃったのかなぁ?」
「か、かすみん……?」
「『
「名前は分かったけど、一体何の話をしてるんだ……?」
「やっぱり歩夢先輩の言ってた通りなんですね……」
「歩夢って、もしかして上原歩夢のことか?」
「さぁ? どうでしょう?」
い、いきなり訳が分からなさ過ぎるんだけど!?
突然目の前に現れたってのもそうだけど、初対面なのに俺のことを知っているというのが上原との出会いに似ている。しかも彼女の言葉から上原と知り合いらしいし、『覚えてなくても仕方ない』と俺の知らない過去を熟知しているようだ。この謎が謎を呼ぶモヤモヤ感はまさに上原と出会った時と同じで、コイツも意図的に自分の情報を隠し白を切っている。俺のことは隅々まで知っているような言動だが、自分のことは悟られぬよう一歩引いたところから俺に接触しているそのずる賢さ。また謎の女の子に振り回されるのか俺は……。
ここで、昨日のとある記憶がフラッシュバックした。
どこかで見たことのある顔だと思ったらコイツ、昨日テレビに出てたじゃん!!
しかも事前投票で1位を獲得した虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のメンバーとして、インタビューを受けていた上原の左隣にいた子だ。これは偶然なのか……? いや、恐らく中須かすみは俺を待ち受けていたっぽいから確信犯だろう。またしても虹ヶ咲のメンバーの襲来に、本来なら喜ぶべき可愛い女の子との出会いであっても思わず身構えてしまう。この出会いが偶然でないことは、もはやコイツの悪戯な表情から丸分かりだ。
「あれあれぇ~どうして黙ってるんですかぁ~? はっ、まさかかすみんの魅力に見惚れてメロメロになっちゃったぁ~とか??」
「はいはい可愛い可愛い」
「むっ、なんだか扱いに手馴れてるみたいで腹が立ちますね……」
「手馴れてるんじゃない。面倒だから聞き流してるだけだ」
「相変わらず女の子の相手はお手の物ですか、さすが零さんですね!」
「あ、あぁそうだろ……?」
さっきの言葉で確信した。やっぱりコイツも俺のことを知っているのだと。上原を含めて二度目なのであの時ほど驚きはしないが、今度は逆にどうして虹ヶ咲のメンバーが俺のことを知っているのかが気になる。千歌と同じくスクールアイドルの時代の俺を見たことがあるという考察もできるが、何だろう、コイツらはもっと奥の奥まで知っていそうな気がする。知っていてもなお踏み込もうとはせず、こちらの様子を窺うように慎重に会話をしているのは話しているだけでも察せる。
「そういえば昨日のかすみたちの晴れ舞台、見てくれました? 見てくれましたよね??」
「見てたけど、お前らってまだスクールアイドルになりたてなんだろ? なのに事前投票で1位になるなんてすげぇよな」
「ふっふ~ん♪ そりゃあ大好きな人に振り向いてもらうためですから。愛の力は何物にも負けないんですよ!」
「そ、そうか……。上原も同じこと言ってたよな? その大好きな人って一体誰なんだ……?」
「…………クソ鈍感野郎」
「えっ!?」
「いやぁそんなこと言える訳ないじゃないですかぁ! 乙女の恋心に踏み込むものじゃないですよぉ?」
今一瞬だけど、俺を睨みつけながら暴言を吐かなかったか……? すぐに笑顔に戻ったけど、さっきのはサブリミナルではない。なるほど、いい顔をしているのは表だけで裏では腹黒いのがコイツの素なんだな……。なんとなくコイツの性格と扱い方が分かってきた気がする。
それにしても、確証を得るために敢えて大好きな人が誰なのかを聞いたのだが、これはもう答えを聞くまでもなく恋の相手が誰なのかは明らかだ。虹ヶ咲のメンバーが大好きな人のためにスクールアイドルをやっているのは昨日の番組で上原が言っていたことだが、その中のメンバーとこうして対面すると実感する言葉の重み。まだ出会ってから数分しか経っていないのにも関わらず、中須が想い人にどれだけ惚れ込んでいるのかが勢いだけでも伝わってきた。そりゃそうだ、だって初対面なのにも関わらずいきなり恋愛話から切り込んでくるくらいなんだから。しかも彼女も好きな人のことを敢えて回りくどく、遠回しに表現しているため恐らく俺が気付くのを待っているのだろうが、もう既に気付いてるんだよなぁ……。
「振り向いてもらえるといいな、その人に」
「はいっ! そのためにもまずは他のスクールアイドルをどう仕留め――――いや勝つかが重要ですね♪」
「可愛く言い直さなくても、本性バレバレだからな……」
「えぇ~なんのことですかぁ? かすみん、天然さんだからよく分からな~い」
「天然な奴は自分が天然だってことすら気付いてねぇから」
あくまでもぶりっ子キャラを貫き通す精神は、アイドルとしていい心がけと言えよう。にこや楓以上にキャラ作りが本格的なので、ある意味では事前投票で1位になった器ゆえのキャラだと納得させられてしまう。しかしメディアの前ではそのキャラでもいいのだが、普段の会話にまでそのキャラを持ち出されたらコミュニケーションが取りづらいことこの上ない。どうして俺が出会う女の子はこうもキャラが濃くて変人なんだろうか……。
「それはそれとして、他のスクールアイドルを押しのけてトップになりたいっていう願望はありますけどね」
「まあスクールアイドルの楽しみ方は人それぞれだからな。スクールアイドル界の頂点に立つのも1つの楽しみ方だろ」
「それこそがかすみたちの愛の強さを伝える、一番分かりやすい方法ですからね」
「そ、そっか……。でも事前投票で1位になるくらいだから、それくらいの実力はあるんだよなお前らって」
「もち! かすみたちは実力主義ですから、他のスクールアイドルを今後立ち上がれなくなるくらいに再起不能にしちゃいますよ♪」
「お前は何と戦っているんだ……」
「まずはとりあえず怪文書を送り付けて精神攻撃を――――って、わわっ、これは内緒でしたっ!」
いやいいキャラをしてるよコイツは。ただやろうとしていることがあまりにも小物過ぎて、事前投票で1位を取ったグループのメンバーとは到底考えられないのが可愛いところだ。まさかとは思うが、虹ヶ咲がスクールアイドル界隈に台頭してきた裏でそんなことをやっていたんじゃないだろうな……? さすがにそんなことでビビッて精神が病んでしまうほど、イマドキのスクールアイドルの心は軟じゃないと思うけど。
そういや昨日の番組内で、上原はこう言っていた。スクフェスの舞台で戦いたいのはμ'sとAqoursだと。
μ'sの名が出てくるのはまだ分かる。レジェンドスクールアイドルとして名を馳せているから、彼女たちと同じ舞台に立ちたいと思うのはむしろスクールアイドルの性だろう。
だがAqoursの名が挙がったことは昨日の中でもトップクラスに疑問だった。もちろんだがAqoursはμ'sに比べれば圧倒的に世間の認知度は低く、実力や人気は着実に上がっているもののテレビ番組内で宣戦布告されるほど有名ではない。それこそ事前投票で1位となった上原たちの方が今話題のスクールアイドルとして有名なのに、わざわざ自分たちよりも無名に近いAqoursの名を挙げるのが不自然でならないのだ。
しかし、その不自然はある一言を投げればすぐに解消される。
それは――――俺とただならぬ関係を持っているスクールアイドルだから。
こう言ってしまえばどうしてAqoursが宣戦布告をされたのか、その意味を大方推察できる。
どうしてコイツらが俺とAqoursの関係を知っているのかは分からないけど、μ'sとAqoursの2組を名指ししてきたのはこれも偶然じゃないと思う。予想していなかった訳じゃないのだが、こうして確信に迫ると一気に話が重々しく感じるな。全く、虹ヶ咲の奴らは何を考えているのやら……。ていうか、残りの7人もみんな同じ野望を抱いているのだろうか……? 一体何があったら9人全員が同じ男性を好きになって、そして同じグループを組むことになるんだって話だ。まあそれを言っちゃμ'sやAqoursだって同じだけど、アイツらと俺の仲が急接近したのはグループ結成後だから中須たちとは少し違う。コイツらは恋する人のためにグループを組んだと、昨日の番組で上原が言っていたから。
「またまた堅い顔しちゃって! いつも通りエッチなことばかり考えていればいいんですよ♪」
「ぶっ!! そんなことしてねぇよ!! むしろ周りの子たちがどんどん淫乱になってるから、火傷しそうなくらい手を焼いてるっつうの……」
「なるほどなるほど、調教がご趣味でしたか」
「いちいち誤解を生むような表現やめろ。アイツらが勝手に染まってるだけだ」
「いやぁかすみも零さんに染められちゃう……。こんな道端で襲い掛かられて、道行く人に性奴隷だってことを世間に証明させられちゃうんだ……うぅ、可哀想なかすみ」
「嘘を吐くな。そして嘘泣きもすんな」
「まぁかすみからしてみれば、調教されるよりもする方が好きですけどね。ウフフフ……って、あっ! か、かすみ、純粋だからよく分からなぁ~い」
「全部言い切ってからあざとくなっても意味ねぇだろうが……」
調教趣味然り、さっきの怪文書を送り付ける行動然り、中々アグレッシブな腹黒ちゃんのようだ。自分が楽しいから相手を弄ろうとするのはまさに秋葉のような性格で、そう思うとコイツが一気に胡散臭く見えてきたな……。まあ最初から口角を上げた顔で近づいてきたあたり、ある程度の警戒心は未だに抱いたままだけど。
そして、中須も上原と同じく度し難い淫乱属性が付与されているらしい。いくら恋する相手が変態だと言えども、自ら淫乱属性を身に着けて初対面を迎えるなんてそっちの方がよっぽど変態だろう。μ'sを見ているせいかさっきの会話も日常会話に聞こえるレベルだが、よくよく考えてみると女の子の口から『性奴隷』なんて言葉が発せられている時点で異常だ。それが日常となっているあたり、俺の中で尋常の定義が揺れに揺れてしまっている。
「そうだ! 突然ですけど、一緒にデートしましょう!」
「ホントに突然だな……。つうか用事あるんだけど」
「こんな可愛い女の子を差し置いて私情を挟むとか、それでもハーレム王ですか!!」
「だれがハーレム王だ!? 俺は俺の生きたいように生きる、ただそれだけだ。それに俺のことも考えず、私情を挟みまくってるお前に言われたくねぇよ」
「まあ抵抗しても無駄ですけどね。零さんは既にかすみの術中にいるのですよ」
「はぁ?」
「実はこのUSBメモリの中に、零さんのあ~んな写真やこ~んな写真が――――」
中須かすみはポケットから黒いUSBを取り出すと、自慢気な表情で俺に見せつける。
俺の写真と言われてまともな姿が写り込んでいるとは到底思えないので、俺は反射的に手を伸ばしてUSBを中須の手の上から握り潰した。危険物は速攻で破棄しておかないと、またどのルートで流出するか分かったものじゃないからな。
「ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああ!! 何をするんですか!?」
「他人に流通する俺の写真と言えば、99%が隠し撮りだって知ってるからさ」
「そりゃそうですけど――――あっ、そ、そんなことある訳ないじゃないですかぁ……あはは」
「もう裏の性格が全部表に出てきてるよなお前って……」
「えぇそうですよ! 恥ずかしい写真で零さんを従えて、あわよくば屈服させて背中に座ってやろうと思ってましたよ!!」
「開き直んな! そんな告白を聞いて喜ぶほどドMじゃねぇから!!」
これまで中須が考えていたことは腹黒いと言えば腹黒いが、どこか子供のような可愛い悪戯な一面もあった。だがさっきの言葉を聞いて確信したよ。コイツも上原と同じくどこか偏った性癖を持ってるってことがな。人間は誰しもがスケベだと言われるが、俺の周りは特にスケベ心を極めた奴が多すぎる。まあ類は友を呼ぶってやつなのかも……。
「でも、デートに行きたいのは本当ですよ」
「どうしたいきなり畏まって……」
「歩夢先輩が言ってたでしょ? かすみたちがスクールアイドルとして頑張っているのは、ずっと心に溜め込んでいた愛を伝えたいからだって。今のかすみたちはそれ以外の生き方を知りませんから」
「そんな大袈裟な」
「そう思います? だったら見せてあげてもいいですよ、かすみの本気を」
「え……?」
口角を上げた生意気な笑顔は先程と変わらないが、彼女から伝わってくる雰囲気だけは至極真面目なモノだった。中須は俺と身体を密着する一歩手前まで歩み寄ってくると、上目遣いで俺の目をまじまじと眺める。初対面(?)の男性を相手にここまで接近して戸惑うこともなく、逆に堂々として嬉しそうにしていることからコイツも上原同様に俺と何かしら縁のある女の子であり、そしてさっき言っていたことは本気なのだと実感させられた。腹黒キャラが露呈して可愛気な一面もあったのだが、根底にある想いは根強くブレていない。
彼女の静かな勢いに怯んでいると、その隙を狙っていたのか、小さな身体を目一杯使って正面から抱き着かれた。
背丈の差があるため中須はジャンプしながら俺に抱き着き、その慎ましやかな胸と俺の胸が溶接されたかのように密着する。
「お、お前……!!」
「ようやく、夢が1つ叶いました……」
さっきまでは勢いに任せた腹黒っぷりで俺を引っ掻き回していたくせに、今の彼女は落ち着いた雰囲気で感傷に浸っていた。口調もあざとさ全開から一気に穏やかとなり、まるで清純系の妹のような優しさを感じる。長年別の場所で暮らしていた兄との久々の再会で、思わず泣きそうになっている妹の構図そっくりだ。上原も抱き着いてきた時に『やっと、会えましたね……』と言っていたことから、やはり中須も同じく俺と出会うことに並々ならぬ願望を抱いていたに違いない。さっきまで故意にあざとさを振り撒いていた奴が急にしおらしくなったので、どれだけこの出会いに強い想いを抱いていたのかが分かる。
もしかしたらさっきまでのウザキャラは完全に見せかけで、本来の中須かすみはこっちなのかもしれない。キャラ設定を色濃く作り込む奴ほど実は寂しがり屋だったり、一途な想いを抱く優しい子だったりするんだよな。そう考えると、さっきのUSBメモリの中身って本当は隠し撮りなんかじゃなくごく普通の写真だったのでは……? 楓やことりたちの過去から反射的に手が伸びちゃったけど、なんか悪いことしちゃったかもな……。
すると俺に抱き着きながら胸に顔を埋めている中須から、小さく声が聞こえてきた。
「ふっふっふ……男性にはとりあえず胸を押し付けておけば好感度アップ。そして優しさを見せつけ同情を誘ったところに、失われた写真以上の痴態を映した写真を撮らせてもらう……フフフ、我ながらいい算段♪」
「…………」
「あはっ、かすみの抱き着き攻撃も効いてる効いてる」
「…………」
返せ。お前を許そうとした俺の想いと時間を返せ。
コイツの腹黒さはちょっとやそっとのことでは崩れ去らないようだ。つまり、こっちから仕掛けても問題はないってことだよな……? 俺を少しでもコケにした奴は一切の容赦をしないから。
「胸の感触が薄いな……」
「な゛ぁ!? それはかすみの胸が絶壁どころか凹んでると言いたいんですか!? ていうか、いきなり人の胸を蔑むなんてセクハラですよセクハラ!!」
「平気で性奴隷なんて口走る奴に言われたくないね。悔しかったら上原くらいになってみろ。アイツの胸は普通に女の子だったぞ」
「くぅぅぅぅううううううううううううううううバカにしてぇえええええええええええええええええええ!! 見ていてくださいよ! スクフェスまでにはこの世の全スクールアイドルよりもビッグでボインになって見せますから!!」
「はいはい頑張れ頑張れ」
「ちゃんと聞けぇええええええええええええええええええええええ!!」
咄嗟に言葉遣いが汚くなるあたり、やはりコイツの素はこっちみたいだな。腹黒キャラの計略なんてものは大抵事が上手く転がらないことが多く、こうして本性が露呈して逆に恥をかくのがオチだ。今回もその展開に則って、中須のコンプレックスと思われるところを攻めたら見事に的中。さっきまで弄り弄られの立場が逆転し一気に俺が優位に立った。
でもまぁ、感触がないと言ったのは中須の本性を暴くための虚言であって、実際に彼女の胸は柔らかくて普通に気持ちよかったけどね。
しかしコンプレックスを突かれたのがあまりにも癪だったのか、その後は無理矢理デートをさせられるはめとなった。しかもそこそこ遅い時間まで引っ張られたために、秋葉のところへ行くことすらも叶わなくなってしまった。そういえば出会った時も俺の進路を塞ぐように立ちはだかってきたから、デートを含めもしかして秋葉のところへ行くのを阻止していた……なんてことはないよな?
謎ばかりが残ってモヤモヤするけど、中須かすみが来たってことは他のメンバーも襲来する可能性はあるだろう。今回分かった事実もいくつかあるし、いつかお前らのことを徹底的に調べ上げて痴態を晒してやるからな、そう思え。
でも今はとりあえず――――――
「このカレーパンを本番前のμ'sの靴に仕込んでおけば……ふっふっふ」
「だから、考えてること口から漏れてるぞ……」
コイツを何とかしないとなぁ……。
今回登場した中須かすみは、PDPキャラの中では私イチオシのキャラだったりします。やっぱりこの小説のことり、にこ、楓のような小悪魔系が好きなんですよね(笑)
皆さんはPDPキャラの中で誰がイチオシなのでしょうか? まだプロフィールくらいしか公開されていませんが、Youtubeなどではボイス付きでの自己紹介もあるので、まだ彼女たちのキャラを掴みかねている方は一度視聴してみては?
次回はダイヤと真姫のツリ目(?)コンビのお話です!
そして次回が年内最後の小説更新となります。
新たに☆10評価をくださった
ぴんころさん
ありがとうございました!
まだ評価をくださってない人は、是非☆10評価をお願いします!