ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~   作:薮椿

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 今回は花陽&ダイヤ回です!
 最近のお話はストーリー色が強かったので、こんなふざけたお話は久々な気が……


黄金砲発射準備OK!?

 

「お前もかなり積極的になったよな。高校生のお前だったらこんなところへ俺を誘わないだろうし」

「こ、これでも恥ずかしいんだから! あまりそのことにはツッコまないで!!」

 

 

 俺は花陽と並んでデパート内を歩きながら、今日彼女に誘われた事実を種に弄ってやる。

 ただ買い物に誘われるのならば過去に数え切れないほどあるのだが、今回は合宿用の水着を買いに行きたいから一緒に選んでくれとまさかのお誘い。花陽は自ら進んでそんなことをする性格ではないので、先日連絡を貰った時には誰かに携帯を乗っ取られているんじゃないかと思ってしまった。それくらい花陽にとって男と水着選びなんて行動は大胆なのだ。

 

 しかし大胆とは言っても、さっき水着を選んでいる時の彼女は常に羞恥心の渦に苛まれていた。そんなに恥ずかしがるのなら最初から俺を誘わず凛と来れば良かったのにと思うくらいには、終始顔を真っ赤にして水着を選定していたんだ。しかも試着する時も俺が覗いてくるかもと疑念を抱いていたせいか、試着室から全然出てこない事件も起こる始末。いくら俺であっても周りにたくさん人がいる状況で女性の更衣室なんて覗くかよ……。

 

 

「でも、久しぶりに零君と2人きりで買い物に来られて楽しかったよ。最近はスクフェスの練習で忙しかったから……」

「Aqoursの練習も見てやらないといけないから、こうしてまとまった時間ってあまりないんだよな。そういう意味でも、久々にお前と余暇を過ごせてリフレッシュできたよ」

「そうだね。Aqoursのみんなとも一緒に練習してみたいなぁ」

「そのための合同合宿だろ? まあ水着を選んでる時点でみんな遊ぶ気満々だけどさ」

「あ、あはは……」

 

 

 そう、花陽がいきなり水着選びに誘ってきたのはちゃんと訳があってのことだ。

 なんと近々、μ'sとAqoursの合同合宿が開催予定なのである。お互いのグループがスクフェスへ向けてより意識と技術を向上させるため、海の近くの旅館で2泊3日みっちりと練習する予定だ。まあしっかり練習しようと張り切っているのは海未やダイヤくらいで、他の子たちはどちらかと言えばみんなで遊ぶことを第一の楽しみにしているのだが……まあ、それだけの人数が集まったら仕方ないのかもしれない。現に花陽もAqours全員と正式にご対面するワクワクから、水着選びにもやたら気合を入れていた。これはあれだ、羽目を外し過ぎて海未とダイヤが大激怒する未来しか見えねぇな……。

 

 ちなみにスクフェスのメインプロジェクトの1つとして、スクールアイドル同士のコラボレーションがある。事前にお互いにコラボするスクールアイドルを申請することで、大舞台で一緒にライブをすることができる訳だ。そして今回はμ'sとAqoursが結託し、スクフェスの舞台に立つことが決定した。もちろんスクールアイドル個人として優勝を目指す目的もあるのだが、こうしてお互い協力してライブを作り上げる楽しみもスクフェスの狙いの1つ。だからこそ今度の合宿はそのコラボライブの打ち合わせや練習も兼ねているのだ。

 

 

「他のスクールアイドルとコラボできるなんて、スクフェスを開いてくれた公式さんには感謝しかないです!」

「だな。まあμ'sは最初招待されてなかったけど」

「そういえば。もう参加することが普通になってすっかり忘れてた……」

 

 

 俺もAqoursや虹ヶ咲の子たちとの接し方や秋葉の動向を伺うのに神経を集中してしまい、俺の家にスクフェスの招待状が届いた謎については頭から抜け落ちてしまっていた。確かに言われてみればそんな問題もあったなぁと思い出すが、正直なところその謎は今のところ解明の余地がない。確かにウチにはμ'sのメンバーである楓がいるのだが、今回スクフェスに向けてμ'sが再結成するまではもちろんグループは解散していた訳で、そもそも招待状が届く意味が分からない。仮に届けるにしても、普通はリーダーをやっていた穂乃果の家に送るはずだ。

 

 つまりだな、何も分かんねぇ。なんとなく思い当たる節がない訳ではないのだが、確定的な証拠もないので今のところは保留にしておこう。

 

 

「そういや、このあとはどうするんだ? いい時間だし昼飯にでもするか?」

「そうだね。私の用事はもう終わったし、お昼ご飯のあとは零君に付き合うよ」

「付き合うって言われても、なんか欲しいモノあったかなぁ……」

 

 

 日常生活ではあれが欲しいこれが欲しいと色々思いつくのに、こうしていざ買い物に来て思い出そうとすると全然思い出せないことってよくあるよな。もしかして俺がアルツハイマーなだけ?? この歳で痴呆症とかシャレにならないからやめてくれよ……。

 

 だが今は俺の心配よりも、隣にいる花陽の様子が少しおかしいことの方が気がかりだった。

 デパートの1階にあるレストラン街に行くため、12階にいた俺たちはエレベーターで下ろうとしたのだが……さっきから花陽が妙にそわそわしている。水着選びの時も大概あたふたしていたが、今はその時以上に口数が少なくなっていた。身体が震えてるとまでは行かないが、やたらモジモジしているのでそんなに俺と買い物に来られたことが嬉しかったのだろうか?

 

 

「あ、あの零君――」

「おっ、エレベーター来たぞ」

「えっ、あっ、うん……」

「お昼時のエレベーターは混むから、さっさと1階に降りて――――えっ!?」

 

 

「あら? 先生と……小泉花陽さん!?」

 

 

「ダイヤ!?」

 

 

 エレベーターの扉が開くと、そこには既にダイヤが乗っていた。買出しにでも来たのだろうか、そこそこ大きめの紙袋を両手に持っている。

 とりあえずエレベーターを待たせる訳にはいかないので、俺と花陽はそそくさと乗り込んだ。

 

 

「奇遇だな。買出しか?」

「えぇ。今度の合同合宿に向けて、日用品を大量に」

「あぁなるほど。元々東京に合宿に来たようなもんなのに、そこからまた海へ合宿に行くんだから用意も何もしてないわな。でもお前1人なのか?」

「千歌さんたちに買い物へ行かせたら、余計なモノまで買ってくるに決まっていますから」

「納得……」

 

 

 千歌や善子に下手に金を渡したら、合宿用具が遊び道具になったり中二病グッズになったりと、どんなモノを買ってくるのか容易に想像できる。だからμ'sも穂乃果や凛に買出しに行かせるのではなく、海未と絵里がしっかりと合宿用具の管理をしている。まだ高校生のAqoursはちょっぴりやんちゃでもいいとしても、穂乃果や凛はもう20歳超えの大人なのに買出しすら任せてもらえないなんて……。まあ合宿費用がお菓子やカップラーメンに変貌する恐怖を体感するくらいなら、最初からしっかりした奴が管理した方が無難と言えば無難だが。

 

 

「先生方は何をされているのですか? 同じく合宿の買出し……のようには見えませんけど」

「いや、俺はただ花陽の水着選びに付き合ってただけだよ」

「水着……? 今度の合宿は練習が目的では?」

「やっぱり言われた……」

 

 

 ただでさえ鋭いダイヤの目がより一層ツリ上がり、何故か俺が睨まれる。

 いやね、俺だって合宿の目的がμ'sとAqoursの合同練習だってことくらい分かってるよ? でも穂乃果や千歌を始めとしたほとんどのメンバーは遊ぶ気満々なのだ。実際にこうして水着選びに誘ってきたのは花陽だけだが、最近はどんな水着を着て欲しいかをわざわざ電話で聞いてくる奴もいる始末。つまりネジを緩めるどころか、そもそも羽を伸ばす目的の奴が多い。そしてそんな奴らに合宿の目的を話したところで「分かってる分かってる」と受け流されるのが関の山だ。だったら俺も最初から遊ぶ前提で心構えをしておいた方が遥かに楽なんだよ。

 

 

「まあ最近はお前らも練習漬けで疲れてるだろ? だからたまにはバカンス気分でリラックスしてもいいんじゃねぇか? μ'sもAqoursもお互いにコラボすることができて士気が上がっていることは事実だし、練習もちゃんとするだろ多分。なぁ花陽?」

「ふぇっ!? は、はいそうですね!」

「なにさっきからぼぉ~っとしてんだ? 俺たちの話聞いてたか?」

「聞いてました聞いてました! 合宿の話ですよね?!」

「そうだけどさぁ……」

 

 

 本当に聞いてたのかコイツ……? ダイヤと喋ている時も横目で花陽の様子を確認していたのだが、やっぱり何か挙動がおかしい。頬をじんわりと染めて落ち着きのない様子。水着選びの時はやたら恥ずかしがり、俺が水着を選んでやった時にはテンションを上げ、今は謎の焦燥感に駆られ顔を赤くしている。まるで福笑いかのような百面相だが、下手をしたら情緒不安定な奴にしか見えねぇぞ……。

 

 すると、エレベーターの動きがかなり遅くなっていることに気が付いた。もう1階に着いたのかと思えばそうではなく、階層を表すランプはまだ6階のところに点灯している。元々俺たちと同じく1階に行く予定だったダイヤも不思議に思ったらしく、当てもなく周りをキョロキョロしていた。

 

 そしてエレベーターの速度は徐々に低下し、やがてその動きが――――――ピタリと止まった。

 

 

「まさかとは思ったが、本当に止まっちまうとは……」

「え、えぇ。このエレベーター、乗った時からちょっと動きが怪しかったので、予想していなかった訳ではありませんでしたが……」

「と、止まっちゃったの!? ほ、ほほほ本当に!?」

「落ち着け。非常用ボタンで管理室と通話できるようになってるから」

「むしろ零君たちはどうしてそんなに冷静なんですか!? わ、私なんて……!! うぅ……」

「逆にそこまで慌てることかよ……」

 

 

 もちろんエレベーターが止まるなんて日常茶飯事ではないが、山の中で遭難したり誰にも見つけてもらえない空間に閉じ込められた訳じゃない。エレベーターが来なかったらデパートの人が気付くだろうし、非常用ボタンで外と連絡が取り合える。そもそもエレベーターが止まった時点で管理室の警報がなっているはずだ。だから精々数十分あれば脱出可能だろう。幸いにも俺たち3人以外は誰も乗っていないため人が密集する暑さでダウンすることもないし、この状況で無駄に騒ぎ立てて体力を消耗する方が賢くない。

 

 だが花陽は様子はその賢くない方向に進んでいた。まるでエレベーター内に閉じ込められたことがこの世の終わりかのような、そんな慌てっぷりだ。さっきも言ったが脱出可能か不可能か分からない生死の境目を彷徨っている訳じゃない。だからそこまで慌てなくてもいいのに……。まさか閉所恐怖症とか?? そんな属性は花陽に備わっていないはずだけど……。

 

 とりあえず非常用ボタンで外部と連絡を取り、救助の人がこちらに向かってくれる算段を取り付けた。やはりエレベーターが止まった時点で警報は鳴っていたようで、もうどのエレベーターが止まってどのように俺たちを救助するのかも決まっているのだろう。迅速な対応お疲れさんです!

 

 

「30分もすれば救助できるってよ。とんだ災難だけど、俺たちからできることもないからじっとしてるしかないな」

「さ、30分!?!?」

「それでも短い方じゃねぇの? 正直2時間くらいここに幽閉される覚悟だったから安心したよ」

「30分なんて全然安心できないよ……というか無理……」

「花陽さん!? 顔が赤くなっていますけど大丈夫ですの!? それに……どうして涙目に??」

「まさか怖いのか? どうせこのままエレベーターが落ちたらとか考えてるんだろ」

「そ、そんなことは……ない、けど……」

 

 

 花陽は何をそんなに恥ずかしがっているのか、俺どころかダイヤとも顔を合わせようとしない。それに顔の赤さや慌て具合はエレベーターを乗る前に比べれば格段に激しくなっており、先程からの言動から察するに早急にこのエレベーターから脱出したいのだろう。そんな女の子の弱々しい姿を見ると敢えて脱出を阻止したいという悪戯心が生まれてくるが、どうやら花陽は相当深刻な事態の様子だから邪魔するのは(はばか)れる。GOHANYAのタイムセールでご飯の大盛りが無料とか、そんな理由で慌ててるんじゃないだろうな……? それとも単にどこか具合が悪いとか……?

 

 

「おい花陽、気分が悪くなってんのなら素直に言えよ」

「ひゃあああっ!?」

「な、なんだよ!? 肩を触っただけなのにそんなに驚くことねぇだろ……」

「ご、ゴメン……。でも今はあまり触らないで欲しいかなぁ~なんて……アハハ」

 

 

 やべぇ、花陽に引きつった顔で触らないでとか言われるとマジで心に来るんだけど……。いつも温厚な彼女がここまで身体を触れられることを拒むなんて、と思ったが、よくよく考えてみたら身体を自由に触らせる女の子の方がおかしいよな。ただの痴女だよそんなの。

 

 今の花陽は少し内股で、いつものコイツはそんな立ち方をしない。少し身を屈めないといけないってことは、もしかして腹でも痛いのか……?

 よしっ、ならば腹痛も吹き飛ぶ自己流のマッサージを腹に施してやろう。

 

 

「先生。花陽さん、どこか具合が悪いのでは……?」

「分かってる。だから一時的だけど治療をしてやろうと思ってな」

「治療?」

「花陽、ちょっと我慢しろよ」

「ふぇ……?」

 

 

 俺はこちらに背を向けて内股になっている花陽の前に回り込み、彼女の腹を手のひらで撫で回す。こうして腹を温めることで一時凌ぎ程度でもいいから痛みが収まってくれるといいんだけど――――

 

 

「ひゃうぅ!?」

「ちょっと先生!? いったい何をしたのですか!?」

「いや腹が痛いのならマッサージをしてやろうと……」

「だ、大丈夫! お腹が痛いとかそういうのじゃないから……。で、出そう……」

「えっ、なんだって?」

「な、何でもないの何でも!!」

 

 

 難聴主人公のテンプレの台詞を吐いてしまったが、花陽の声が小さすぎるので聞こえないものは聞こえない。

 俺が腹を撫で回してしまったせいで余計に症状(っぽいもの)が悪化したようだが、彼女が強がっていないのなら腹痛ではないようだ。そもそも腹が痛いんだったら俺たちに自分の症状を隠す必要はなく、何かしらの対応策を施して貰えると信じてSOSを出した方がいい。まあ優しい彼女のことだからエレベーターの停止という事態が発生している最中で、自分の体調が悪いと言い出して俺たちを心配させたくないのだろう。

 

 

「おい花陽。下手に遠慮なんてする必要ないんだぞ? むしろお前に何が起こっているのか分からない方が心配しちまうから」

「そのぉ……言いたいのは山々なんだけど、あ、あっ……!!」

「急に喘ぐなよ痴女か!?」

「ち、違うよ!!」

「花陽さん、無理をせずとも体調が良くないのであれば座ってもよろしいのですよ?」

「いや、この体勢を崩しちゃうと出ちゃうと言うか……あっ、な、なんでもない!!」

 

 

 なるほど、なんとなく花陽の身に何が起こっているのかが分かった気がする。エレベーターに閉じ込めれて気が狂うように焦り、内股となってその体勢を崩せない。そんな状態の女の子が『出す』ものと言えば――――

 

 

「辛いことは仲間と共有して解決すべきです! 厚かましいかもしれませんが、私はAqoursとμ'sは仲間だと思っています。だから花陽さん、悩みがあるのなら打ち明けてください! 先輩に対して口に聞き方がなってないと思われても構いませんわ! 微力ながらも花陽さんの力になりたいんです!!」

「だ、ダイヤちゃん……」

 

 

 すっげぇいいことを言ってるダイヤだが、花陽が今置かれている状況を考えると的外れ感が半端ではない。花陽もダイヤがここまで心配してくれることを嬉しくは思っているだろうが、彼女に襲い掛かっている脅威に対しては何の解決にもならない。なんかもう、ダイヤが優しいことは分かったけどこの状況だけは滑稽に見えるな……。

 

 

「後輩に相談事とか恥ずかしいかもしれませんが、私はそんなこと気にしません! さあ花陽さん! あなたの胸の内、私が受け止めてますわ!!」

「ちょっ、ダイヤちゃんこっちに迫って来ないで!? 本当に出ちゃう……」

「出しちゃってください!! 悩みは全部吐き出すべきです!!」

「そ、そういうことじゃなくて!! ひゃっ、うぅ……い、言うから! 言うから肩揺らさないで!!」

「そ、そうですか……」

 

 

 これもダイヤなりに花陽を心配しての行動だから、咎めるに咎めることができない。でも発想が斜め上に走って暴走してしまうのは如何にもダイヤらしいけどね。まあ今回はそのせいで花陽のダムが決壊しそうになってる訳だが……。

 

 

「じ、実はお手洗いに……」

「へ? 今なんと?」

「お、お手洗いに行きたいの!! 今すぐに!!」

「へ……え゛ぇっ!?!?」

「やっぱりか……」

 

 

 エレベーターに乗る前から落ち着きがなかったのはトイレに行きたかったから。しかもその直後に乗ったエレベーターが止まっちまったんだからそりゃ焦るわ。しかも救助までの残り約25分はここに幽閉される羽目になる。ただでさえエレベーターに乗る前から漏れそうな状態だったのに、そこから30分も待たされるとなるともはや絶望だ。

 

 ここから、花陽と膀胱の長い長い戦いが始まろうとしていた――――――

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 こんなふざけた回なのにも関わらず、前後編に分かれるとはこりゃいかに……()
 最後に花陽が告白するまで、彼女の身に何が起こっているのか分かった人はいらっしゃいますかね?


 次回は後編。
 焦燥の花陽に激動のダイヤ、真面目系クズの零君()



新たに☆10評価をくださった

7shotすぅさん

ありがとうございます!
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