ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~   作:薮椿

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 合同合宿編、17話目
 遂に今回、零君と虹ヶ咲メンバーの関係が明らかとなります。実はスクフェス編が開始されてから1年、話数にして70話以上なのですが、これまで盛大なフラグ回収が嘗てあっただろうか……?


※虹ヶ咲スクールアイドルの設定はこの小説独自の設定であり、もちろん公式とは異なるのでご注意ください。


甦る、失われたあの日

 

 旅館の大部屋に、俺、秋葉、そして虹ヶ咲スクールアイドルのメンバーたちと、一見接点のない人間同士が一堂に会していた。

 しかし思えば、このメンバーで集まる状況を一番望んでいたのは俺かもしれない。最近ずっと裏でコソコソしていた秋葉と、俺の記憶にない過去を秘密として抱えている虹ヶ咲の子たち。何とか事情を探ろうと思ったけど、秋葉も虹ヶ咲の子たちもガードが固く秘密を暴くまでには至らなかった。だからこそこのメンバーで集まれたことは、俺にとっても大きなチャンスだと思ったんだ。ま、これは偶然じゃなくて秋葉がセッティングしたと見て間違いないから、俺から探りを入れなくても向こうから秘密を明かしてくれるだろうけど。

 

 

「どうしてお前がここにいるとか御託はいいから、とっとと本題に入れ」

「あれ? 意外と冷静だね。この状況にもっと驚くと思ってたよ」

「お前らが裏で繋がっていることも大体察してたし、それに歩夢たちにこの宿泊先を勧めたのもお前だろ? 俺たちの合宿先と虹ヶ咲の合宿先が被るのならまだしも、お前が登場した時点でこの合宿自体が仕組まれたものだってすぐ想像できるよ。俺たちにこの旅館を勧めてきたのもお前だしな」

「おっ、正解正解! 話がよく分かる子は大好きだよぉ~」

「はいはい。いいから本題に入れ」

 

 

 何故かこの歳にもなって頭を撫でられたが、年下の子たちが見てる中で恥ずかしくなったのですぐに振り払う。さっきも言ったけど余計な御託は必要ない。俺を利用して何を企んでいるのか、知りたいのはそれだけだ。

 

 

「本題に入るにあたって、1つ質問するね」

「なんだよ」

「零君って、どうして女の子を大切にするの?」

「はぁ?」

 

 

 質問の意味が分からなかった。というより、その答えくらい秋葉は既に知っているからだ。

 女の子と言っても、世界中の誰構わず大切するなんて無謀なことは考えていない。あくまで自分の手が届く範囲の子に限定される。それはμ'sだったりAqoursだったり、今だったら虹ヶ咲の子たちだってそうだ。つまり、自分が腕を広げて届く範囲の女の子はみんな大切にするってこと。それが俺の行動理念でもある。

 

 だがそんなことは秋葉も分かっていると思うので、質問の趣旨は別のところにあるのだろう。

 女の子を大切にする理由ではなく、女の子を大切にするようになった理由と考えればどうだ? それは元μ'sメンバー9人との間で起こった()()()()()から、自分の周りにいる女の子を誰1人として悲しませたくないという想いからだ。シスターズとの一件やAqoursとの出会ってからも心の成長はあったが、今の行動理念が芽生えたのはμ'sのあの一件が原点なのは間違いない。

 

 

「零君が何を考えているのか当ててみようか? μ'sとの出会いが今の自分を作った。そうじゃない?」

「当てるも何も、お前だったら何年も前から俺のことくらい知ってるだろ……」

「知ってるけど、零君の行動理念の経緯が合ってるとは言ってないよ?」

「は? どういうことだよ」

「本当にμ'sと出会ったから女の子を大切にするようになったの? 穂乃果ちゃんたちが病む以前から、あなたはみんなのことを大切にしてたでしょ? 誰1人として蔑ろにせず、あの子たち全員に恋心を実らせるくらいにはね」

 

 

 秋葉の言っていることは分からなくはない。確かに程度の違いはあれど、穂乃果たちと出会った頃からみんなをかけがえのない存在だと認めていた。彼女たちが病み期に入ったあの一件に関わらず、それ以前からみんなの笑顔を守りたいと願っていたことは確かだ。

 

 そう考えると、俺はどうしてそこまで女の子を大切にしたんだろうか……という最初の質問に戻る。

 可愛いから? スクールアイドルの活動を手伝ってるから? 仲間だから? 自分のお気に入りだから? どれも当てはまっているような気がするけど、どうもしっくり来る答えではない。ということは、俺はμ'sと出会う以前から複数の女の子たちと濃密な関係にあったってことか?

 

 でも、小学生の時も中学生の時も、女の子とそこまで関係が発展したことはない。一緒に喋ったり遊んだりしたことはあるけど、あくまで親友に毛が生えた程度の域に止まっていた。もしかして俺が忘れているだけなのかも……?

 

 あれ? 忘れていると言えば、歩夢たちも俺にとっては忘れている存在だった。彼女たちは俺のことを知っているようだが、俺は彼女たちのことを覚えていないのが現状だ。

 つまり、俺が女の子を大切にしたいと思っているこの気持ちと、歩夢たちとの出会った過去を覚えてないことは話が繋がってる……のか?

 もしそう推測するならば、そこから導き出される答えはやっぱり――――――

 

 

「俺と虹ヶ咲のみんなは、過去に会ったことがあるってことか。しかも俺の行動理念を変えるような、大きな出会い……」

「そうそう。ちょっと助言はあったけど、ほぼ1人でその考えまで到達できたんだから大したもんだよ」

「本番はこれからだろ。俺の過去に一体何があったんだ? どうして俺は何も覚えていない?」

「落ち着いて。これから先はここにいるみんなに話してもらうから」

 

 

 歩夢たちの様子を見てみると、ようやくこの時が来たと言わんばかりの勢いを感じる雰囲気だった。今にも自分たちの過去を話したそうにしており、彼女たちにとっては今まで秘密にしてきたことを暴露しようとしているんだから、そりゃ高揚感は半端ないだろう。秘密をしていたのにも関わらず所々で『久しぶり』とか『再会』とかうっかり漏らしていたから、本人たちもこの時を待っていたに違いない。

 

 

「零さんとの出会いを話すためには、まず私たちの境遇から話さないといけません。なので簡潔に説明します。その間に思い出してくださるかもしれませんし……」

 

 

 まずは歩夢が先陣を切って口を開いた。境遇のワードが出た瞬間に場の空気が重くなったので、どうやら彼女たちにもそれ相応の過去があるらしい。俺の過去は彼女たちの苦い(暫定)過去と何かしら関連がありそうだ。今まで自分の過去なんて振り返ったことがあまりないというか、振り返るような過去がないと思ってたから、どんな話が飛び出してくるのか思わず身構えちゃうよ。

 

 

「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、つまり、私たちはみんな施設育ちなんです。幼い頃にそれぞれ込み入った事情がありまして、物心付いた頃からずっと施設で生活していました」

「そんなことがあったのか……。それじゃあ、みんなは小さい頃からずっと友達だったってこと?」

「そういうことです」

 

 

 想像以上に重たい話でビビったが、それだけ追い込まれていた境遇だってことは彼女の暗い雰囲気から身に染みて感じた。どんな事情で施設暮らしをしていたのかは知らないけど、物心がついた時からってのがなおさら悲壮感を感じる。言ってしまえばこれまでの人生で、親の温もりを一度も味わってこなかったってことだもんな……。

 

 次にしずくが喋り始める。

 

 

「物心ついた時から施設暮らしというのは一見辛そうに見えますが、家族がいない生活が普通でしたから特段辛い訳ではないんですよ。でも、歳を重ねていくうちに自分の境遇を徐々に実感していくんです。同じ施設仲間の歩夢さんたちはいますけど、それでも拭え切れない寂しさはずっと残り続けました」

「なるほど。家族がいない然り、甘えられる人がいないこと然り、色々苦い思いが積み重なっていたのか」

「はい。でも、止まっていた私たちの時間が動き出したんです。そう、零さんと秋葉さんとの出会いによって……」

 

 

 ここで俺たちの登場かと思ったが、俺だけじゃなくて秋葉もなのか? 言われてみれば虹ヶ咲の子たちは秋葉に対しても信頼を寄せているみたいなので、コイツとの接点も俺と同じ時期にできたのだろう。

 

 次は果林が語り役となった。

 

 

「秋葉さんは仕事で施設に来ていたのよね。そして零さんはその付き添いで、というより私たちに合わせるために連れて来られたと言った方が正しいかな。そうでしたよね、秋葉さん?」

「そう、施設の職員さんから頼まれたのよ。施設の子たちにイマイチ元気がないから、何かいい方法はないかってね」

「それで俺が連れて来られたってことか?」

「そうですよ。決して歳は近くないけど、零さんの社交性と明るさがあれば私たちを笑顔にできる。そう秋葉さんから聞きました」

「それって俺がいつの頃の話だ?」

「私たちがまだ小学校に行ってない頃ですから、零さんは小学校高学年くらいですね」

 

 

 小学校の高学年にもなれば、歳を食っても印象に残っていることは鮮明に記憶していることが多い。特に施設の女の子たちと出会うなんてイベントを綺麗さっぱり忘れていることの方が異常だろう。つまり、事件はこの後に起こるってことか。

 

 次はかすみが語り手となる。

 

 

「秋葉さんの狙い通りと言いますか、かすみたちは零さんに惹かれていきました。ただ普通に、一緒に遊んでくれただけですが、零さんとの時間はとても楽しくて、かすみたちは自然と笑顔が溢れるようになったんです。零さんは毎日施設に立ち寄ってくれて、学校でどんなことがあったとか、施設暮らしの私たちにとっては刺激的なお話もたくさんしてくれました」

「そっか、ずっと施設にいたから外の世界のことをあまり知らなかったんだな」

「ですです。だからかすみたちは、毎日毎日零さんが来てくれることを何よりの楽しみにしていたんです。その時のかすみたちはまだ幼かったのですが、零さんと遊んでいる時がこれまでの人生の中で一番楽しかった自信があります。どんよりとしていたかすみたちの未来を明るく照らしてくれた、まさに救世主なんですよ」

 

 

 俺、意外とすげぇことしてたんだな……。小学生の頃からたくさんの女の子と交流があったこともそうだけど、かすみたちからここまで尊敬されるようなことをしていたとは。でもその頃はまだ小学生だったし、女の子の心を救ってあげるとか、そこまでの算段はなかったと思う。ただ笑顔を失った子たちを笑顔にしてあげたいという、純粋な想いだけだったんじゃないかな?

 

 次の語り部は彼方だ。

 

 

「でも、楽しい時間はそう長くは続かなかった。施設のキッチンがガス漏れによって出火。施設はあっという間に火の海になったんだ」

「そ、そんな……。だけど、みんなはここにいる。助かったってことか?」

「そう、零さんが助けてくれたおかげでね」

「俺が?」

「うん。襲い掛かってくる火、崩壊する施設、泣き叫ぶ声。その全てが私たちを震え上がらせた。恐怖で動けなくなっていたところを助けてくれたのが、零さん」

 

 

 まるでドラマのようなストーリーを聞かされているようだが、彼方たちの様子を見れば当時の情景が容易に想像できる。元々話し方に緩急のない彼方だが、今日は今まで以上に口振りも重い。生まれて物心がつく頃から親はおらず、しかも唯一の心のよりどころである施設が崩壊する様を見たら、そりゃトラウマにもなるだろう。彼女たちにとって当時の状況が如何に悲痛かが、さっきの話だけで伝わってきた。

 

 そして語りは愛に引き継がれる。

 

 

「零さんが丁度学校帰りで施設に寄ってくれなかったら、私たちみんな焼け死んでたよ。それくらい火が広がっていて絶望的な状況だった。秋葉さんも、零くんが火の海になってる施設に飛び込むのを全力で止めてくれたんだって」

「秋葉? お前が?」

「そりゃね、お姉ちゃんだもん。弟が命を投げ出そうとしている姿を見て見ぬふりなんてできないよ。ま、零君は私の制止を振り切ってみんなを助けに行っちゃったけどね。それで本当に助けちゃうんだから大したものだけど、あの時以上にあなたを心配したことはないよ」

「私の前に現れた時は既にボロボロだったし、小学生なのに無茶しちゃってと今になって思うよ」

 

 

 小学生の俺がそんな無鉄砲なことをねぇ。にわかに信じられないが、あの秋葉がここまでシリアスになっていることから十中八九真実と見て間違いないかな? 当の本人である俺は全く覚えていないのが謎だが……。

 

 次はせつ菜が会話を引き受ける。

 

 

「もう死を待つしかない私たちにとって、零さんはまさに救世主だったのです。崩れかけている施設を駆け回り、ボロボロになってまで私たちを助け出してくれました。私もみんなも、火の海の中で零さんの顔を見た時、心が一気に希望で満たされたんですよ? 施設暮らしで茫漠な日々を送っていた私たちにとって、零さんだけが心の支えでしたから。覚えていないと思いますが、私たちを見つけた時、零さんはどんな顔をしたと思います?」

「……?」

「"笑顔"ですよ。こんな状況でとは思いましたが、その明るい笑顔で私たちは恐怖から解放された。私が"笑顔"に拘る理由も、その過去があったからなんですよ」

 

 

 なるほど、だから俺はみんなの救世主ってことなのか。もうすぐ死ぬかもしれない状況で助け舟とか、それマジモノのヒーローじゃん。俺自身そこまで善人ではないのだが、やはり悲しみに堕ちている女の子は放っておけない性格なのだろう。これまで施設で歩夢たちと一緒に遊んできて楽しい思い出があったからこそ、みんなを助けるため小学生なのにも関わらず死地に飛び込んでいったのかもしれない。

 

 そしてエマに会話が移る……前に、俺はこれまでの話から湧いて出た疑問をぶつけた。

 

 

「俺とお前たちの馴れ初めや過去は分かった。でもどうしてその時の記憶が俺にないんだ? そんな衝撃的な出来事、いくら歳を取っても忘れるもんじゃないだろ?」

「それは、零さんが私たちを助け出した後に気絶しちゃったんですよ。火事である施設の中を駆け回って私たちみんなを連れ出したんですから、小学生の体力でもつはずがありません……」

「つまり、気絶した時に記憶が飛んじまったってことか……」

「そうです、私たちと出会った頃の記憶が丸々と。秋葉さんの腕の中で倒れる零さんを見た時、思わず泣いちゃいました……」

「秋葉の腕の中で? 今では考えられないくらい優しいな」

「だから心配したって言ってるでしょ。それにあんな悲痛な叫びを上げて倒れられたら、いくら私でも抱きしめたくなっちゃうって」

「叫び声?」

「うん。気絶する寸前に『もう女の子たちの悲しい顔、泣き叫ぶ声、どれも見たくないし聞きたくない!! 守る。俺が絶対にみんなを守ってやるから! お前たちが笑顔になれるその時まで、ずっと……』ってね。小学生に思わず心を響かされちゃったよ」

「そっか、そんなことが……。あっ、それが俺の行動理念の種ってことか」

 

 

 俺が女の子に固執するようになった理由は、この過去があったからだろう。恐らく記憶が消えたとしても行動理念の種は既に俺の中で芽生えており、それだけはずっと成長し続けていたんだ。だから無意識の間にμ'sやAqoursなど、周りにいる女の子を大切にするようになった。μ'sが病んだ一件ではその芽を成長させただけで、根本は虹ヶ咲との一件からだったんだ。

 

 しかしまだ分からないことがあったので、まだ喋っていない璃奈に質問をする。

 

 

「でもさ、気絶から目覚めた時にどうしてそのことを話さなかったんだ? 記憶が失われてるんだったら、お前たちはなおさら自分たちのことを思い出させたいはずだろ?」

「できなかった。零さんが気絶する瞬間の叫びが悲痛すぎて、誰も真実を話す気に慣れなかったんです。私たちと一緒に喋ったり遊んだり、楽しかった思い出だけを思い出させることができれば良かったけど、誘発して火事のことも同時に思い出してしまうかもしれない。そう考えると、みんな話せなかった。結局零さんにはちょっとした事故で気を失ったとしか、その時は伝えてない」

 

 

 確かに小学生の頃に一度だけ階段から落ちて頭を打った、という記憶がある。それは小学校高学年の時だったと覚えているから、恐らくそれが火事の現場で歩夢たちを助け出した時に負った傷なのだろう。なるほど、階段から落ちたってのも俺に苦い過去を思い出させないようにするための嘘だったってことね。

 

 ここまでの話で、俺の失われていたある日を思い出した。虹ヶ咲の子たちと出会った頃の記憶が丸々飛んでいるんだったら、そりゃみんなのことを覚えていないのも無理はない。せめて出会いさえ覚えていれば、今この時期になって再会したとしても彼女たちの正体を知る切り口はいくらでもあったのにな……。

 

 

「そうだよ、どうしてこの時期になって秘密を明かしたんだ? ずっと秘密のままにしておくつもりだったんだろ?」

「そのつもりだったんだけど、この子たちの心にはずっとあなたが居続けたの。別の施設に移り、学校にも行き始め、普通の子供たちと何ら変わりない生活を送っているのにも関わらずこの子たちの心は完全に晴れなかった。会いたいのに会えないの、大好きなあなたに。会ってしまったら思い出してしまう可能性があるから、そう、あの日の記憶をね。だけどこの子たちは成長してもあなたのことをずっと一途に想い続けていた。だから私はこう提案したんだよ、零君の心がもっと強くなってあの日の記憶を思い出しても大丈夫なくらいタフになったら、もう一度会わせてあげるって。もちろんすぐに正体は明かさないことを条件にね。歩夢ちゃんたちの存在に徐々に慣れさせていき、然るべきタイミングで秘密を明かす。さっきの話の情報量、凄かったでしょ? みんなと出会った当初にそんな膨大な情報を流されて、下手にあなたの記憶が暴発したら大変だから」

 

 

 秋葉を含め、みんな俺のことをそこまで気遣ってくれていたんだな。でも正直このタイミングで話してくれて本当に助かったよ。確かに一番最初に出会った歩夢からさっきの話を聞かされたら、まず話の半分も理解できなかっただろうから。言ってしまうと今も情報の整理だけでいっぱいいっぱいなのだが、自分の裏で何が起こっていたのかは大方把握することはできた。もちろん、彼女たちがやたら俺のことを敬っていたこともだ。知らない子から有り得ないくらい好かれていると思っていたが、さっきの話を聞いたらそりゃ惚れちまっても仕方ないよな。自分で言うのもアレだけどさ……。

 

 

「スクールアイドルになったのは、やっぱり俺の気を引くためか?」

「そうですね。普通の女の子がいきなり目の前に現れても警戒するだけなので、私たちは9人でスクールアイドルを結成しました。それにスクールアイドルになるのなら零さんに一番の輝きを見せてあげたいということで、日々努力してきたんです」

「スクールアイドルになったっつっても、歩夢が現れた時は警戒心MAXだったけどな」

「あはは、やっぱりあまり変わりませんでしたか……」

 

 

 歩夢と出会った時、いきなり抱きしめられたりキスをされたりと、普通の女の子からしてみれば常軌を逸した行動をされ警戒せざるを得なかった。悪い女に騙されそうになったとちょっと思ってしまったことは内緒だ。

 

 そして俺に自分たちの存在をアピールする。ただそれだけを目標として、これまでスクールアイドル活動を行ってきた歩夢たち。俺だけのためにスクールアイドルをやってるって、どれだけ重い愛なんだと最初は僅かだが狂気を感じた。だが彼女たちの過去を知った今、ここまで忠実なる愛を示されることに何ら違和感がなくなっている。それどころか以前よりも受け止めたいという感情が強くなった。言わば、彼女たちの出会いがあったからこそμ'sとAqoursに献身的な愛を注ぐことができるんだから。

 

 

「スクールアイドルになったのは、過去の同情で零さんを惹きつけたくなかったからです。私たちは自分の力で零さんに振り向いてもらう。9人でそう決めてスクールアイドルになった経緯があります。スクールアイドルで零さんへ"大好き"を伝えたいんです!」

 

 

 歩夢を始めとして、みんなの想いが一気に押し寄せてくる。

 コイツらは本気だ。自分たちの信じるたった1つの想いを胸にスクールアイドルをしている。ここで場の空気が一体になるのを感じた。

 

 

「私たちは負けません。μ'sさんにもAqoursさんにも。零さんへの愛の強さで、絶対にスクフェスを制してみせます! スクフェスで優勝したその時こそ、あなたに……」

 

 

 言葉はそこで切れてしまったが、意志の強さは圧倒されるくらいに伝わってきた。それは歩夢だけからではなく、他のみんなからも同じ気迫を感じる。虹ヶ咲の9人は同じ場所、同じ境遇、同じ過去、同じ恩人を共有する仲間だから、まだスクールアイドル駆け出しと言っても絆や結束は他のグループ以上に堅い。もしかしたらμ'sやAqoursを凌駕しているかもしれないくらいに……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 歩夢たちの決意表明を聞いたところで、話は終わった。

 今日聞いた話をまだ完璧に整理はできていないけど、想像以上にとんでもない展開になってきたもんだ。Aqoursの想いにも応えてやらないといけないが、虹ヶ咲の想いも蔑ろにできない。早めに気持ちを切り替えないと、そのうち溜まりに溜まった想いでパンクしそうだな……。

 

 そんなことを考えながら廊下を歩く。

 時間を確認したくてふとポケットから携帯を取り出してみると、スマホの画面が通話中になっていることに今気が付いた。

 

 

「どうして通話中に……? まさか誰かにハッキングされてるとか……ないよな?」

 

 

 俺は通話を切り、携帯を浴衣のポケットに入れる。

 もしさっきからずっと通話中だったとしたら、秋葉や歩夢たちとの会話が全部携帯越しに漏洩していることになる。

 

 

「ま、さすがにそれはないか」

 

 

 とりあえず、μ'sやAqoursにはまだ黙っておこう。

 スクフェスに向けてみんな頑張ってるんだ、余計な感情を植え付けて邪魔をする必要なんてないもんな。

 

 

 

 

 ちなみに現実は非情と思い知らされるのは、そう遠くない未来の話である。

 

 




 本当にラブコメ小説かってくらい重い過去話になりましたが、普通の恋愛はμ'sやAqoursで散々やり尽くした感があるので、虹ヶ咲に対してはテイストを変えてみました。実はスクフェス編の当初からずっと考えていたネタであり、1年後にしてようやくお蔵出しできたことに満足感しかありません(笑) そのおかげで伏線を初期から張ることができたので、μ's編やAqours編とは違った楽しみがあると思います!

 ちなみに前書きでも言いましたが、虹ヶ咲の設定に関しては完全にオリジナルです。こんな重い過去を背負ってスクールアイドルになった、というのが公式設定のラブライブも見てみたいですけどね(笑)

 今回である程度の秘密は暴露したのですが、まだ全部ではありません。衝撃のラスト(?)を見逃すな!


 スクフェス編がもうすぐで1周年、そして小説のお気に入り数が2000件を達成したので、次回は番外編として特別編を投稿しようと思います。


新たに☆10評価をくださった

四郎とさん

ありがとうございます!

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小説執筆のやる気と糧になります!

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