ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~   作:薮椿

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 迷子になった穂乃果や千歌たちを探す零君は、その途中で意外な2人と遭遇し……


魂の交感

 どうしてお騒がせちゃんたちは、スクフェス当日という特別な日にまで騒ぎを起こすのだろうか? いや、特別な日でもいつも通りだからこそお騒がせちゃんなのか。もちろんそれで納得しろと言われても頷けねぇけどさ。

 

 現状を整理すると、μ'sからは穂乃果と凛が、Aqoursからは千歌と鞠莉がそれぞれ迷子になっている。予選の準備が前倒しで終わったせいで時間が空き、その間に会場を遊び回っているようだ。厄介なのが、当の本人たちは自分たちが迷子という自覚はなく、携帯の連絡に気付いてない時点で遊びに夢中となっているのは間違いない。

 更にソイツらをまともに探せる要員は、現時点では俺だけだ。残されたμ'sとAqoursのメンバーは予選直前の打ち合わせがあり、控室から離れられない。さっきまで一緒にいたこころとここあは母親と合流して会場を回るため、迷子ちゃんたちを偶然見かけた時だけ連絡するよう約束した。そもそも、部外者を巻き込んでこちらの事情に付き合わせたくないしな。

 

 加えて、この状況を更に深刻している要素が1つある。それはタイムリミットで、当然ながらμ'sもAqoursも予選の時間がスケジュールにより決まっている。多くのスクールアイドルが参加する関係上、遅刻するなんて迷惑はかけられない。つまり、彼女たちが無事にステージに立てるかどうかは俺の探索力にかかっているということだ。

 Aqoursのライブまでがあと1時間。μ'sが1時間半。余裕か余裕じゃないのか微妙だが、グズグズしている時間は一切ないことだけは分かる。迅速に行動しないともし探し出せたとしても、予選に間に合わない可能性が高い。

 

 全く、今日から3日はみんなのライブを眺めていればいいと思ってた矢先にこれだよ。俺にもたまには休息をくれ休息を。

 

 

「さて、こっからどうすっかなぁ……」

 

 

 こんなだだっ広い会場を闇雲に探していても、無駄に時間を浪費するだけだ。最も効率的なのは、アイツらが行きそうな場所を狙い撃ちすることか。幸いにも、千歌と鞠莉が行きそうなところは大体分かる。ライブ前に腹をいっぱいにするほどバカではないと思うので、屋台エリアにいる可能性はほぼないだろう。そして、アイツらがスクールアイドル好きなのを考慮すれば行き先は1つ。そう、μ'sとA-RISEのグッズが再販されているスクフェスショップだ。そこしかない。

 

 

 と、思ったのだが――――――

 

 

「いねぇし……。ここじゃねぇのかよ……」

 

 

 販売列を先頭からざっと流し見してみたのだが、千歌と鞠莉の姿はなかった。簡単な推理だけど自信はあったので絶対にここだと思っていたのが、どうやら当てが外れたようだ。

 それによく考えてみれば、千歌も鞠莉もかなり前からμ'sやA-RISEのファンなので、今回再販されるグッズは既に持っている可能性が高い。スクフェス会場限定のグッズもあるのだが、スクフェスに参加をするスクールアイドルには買う時間がないだろうと公式が配慮し、参加者限定で後にネットでのグッズ購入が可能なのだ。それを考慮すると、スクフェスの参加者がわざわざ物販の列に並ぶ必要はない。

 

 こんなこと、ちょっと考えれば分かったのに、夏休み特有のゆったりとした日常のせいで脳の回転が鈍ってんな。

 そうなると、アイツらの行きそうなところをまた考え直さなければならない。しかも今度は思い当たる節がない状態での推理タイムだ。そもそも当てずっぽうになるんだったら推理じゃなくね……? うん、こういう状態を何て言うのかしってるぞ。

 

 

 詰み……だな。

 

 

「あれ? 神崎君?」

「えっ、山内先生? それに笹原先生まで!? どうしてこんなところにいるんですか……?」

「自分の教え子たちの雄姿を見届けるのも、担任の役目ですから」

「私は奈々子に誘われただけだ。こういった騒がしい場所は苦手なんだがな……」

 

 

 まさかのまさか、先生たちがいるなんて思いもしなかった。山内先生は現行で千歌たちの担任をしているので、ここへ来る理由は分からなくもない。でも笹原先生がわざわざこんなところへ足を延ばすなんて、本当にあのお堅い鬼教師かこの人……? 公序良俗に厳しい性格なので、スクールアイドルなんてチャラいものには興味がないと思っていた。でも2人と一緒に飲んだ時はμ'sに感謝していると言った話をしていたため、こっそりと応援にでも来たのだろうか。いつもながらにツンデレというか、何というか。こんなことを口に出したら絶対に殴られるな……。

 

 

「そういえば、神崎君はお一人ですか?」

「俺、親しい人が全員スクールアイドルなんで……。みんな予選のために控室にいるんですよ」

「そ、それは残念ですね……。それで、今は1人で会場巡りですか?」

「ま、まぁそんなところです……」

「ん? 何か起こっているのか?」

「へ? ど、どうして?」

「さっきから誰かを探すように、周りの人混みを眺めているだろ。時が経ったとはいえ、私は3年間お前の担任だったんだ。お前の怪しい行動なんてすぐに読める」

「怪しいって……」

 

 

 驚いた。まさか出会って十数秒でこちらの状況の大枠を掴むとは、やはり問題児(俺)を3年間シメ続けてきただけのことはある。俺の行動は先生に読まれ過ぎて、3年生の頃なんて何か行動を起こす前に制裁されそうになってたからな。災いの芽を潰すとはまさにそのことで、中には何も企んでないのに理不尽に説教されることもあった。うん、思い返すだけでも懐かしいよ。

 

 しかし、バレてるなら隠す必要もないか。最初は俺たちの問題に部外者を巻き込みたくないと思っていたが、俺が知りえる中でこれほど頼りになる人たちはいない。さっきも言ったが探索する側の人員不足が深刻なので、ここはある程度協力してもらうよう依頼してみるか。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「という訳なんで、ソイツらを見かけたら俺に連絡くれませんか?」

「高海さんも小原さんも、相変わらずと言いますか何と言いますか……」

「高坂も星空も、大学生になって全く成長していないな……」

「ごもっともで……」

 

 

 もはや文句を言うどころか、呆れてモノも言えない気持ちは痛いほどよく分かる。成長しないことを嘆くべきなのか、それともいつまでも変わらぬお茶目な性格に安心感を覚えるべきなのか。まあどちらにしたって俺たちに迷惑が降りかかるのは言うまでもない。それに何が一番怖いかって、面倒事を押し付けられるこの状況に慣れてしまっていることだ。問題児を躾ける先生の気持ちって、まさに今のような感じなんだろうな。俺を説教していた笹原先生の気持ちがようやく分かった気がするよ。

 

 

「なんだ、その悟ったような顔は?」

「いやぁ先生たちって苦労してんだなぁと思って。同じ人間が何度も騒ぎを起こすと、怒るどころか呆れて何も言えなくなっちゃいますよ。それなのに笹原先生は、一度も手を抜かず俺を制裁してましたよね?」

「何事も、やるなら本気でやるのが私のモットーだ。それに、手を脱たらお前が更に調子に乗ることくらい容易に想像できる。しかし、結局お前は3年もの間ずっと騒動の目であり続けたがな。過去にこれほどまでに手を焼いたのは、皮肉なことにお前の姉くらいだ」

「ま、可愛い子ほど手を焼くってことで」

「可愛くもなければ手が焼けて溶け落ちていたぞ馬鹿者が」

 

 

 何年経っても、笹原先生の言葉のキレは変わらない。いや、むしろ生徒教師の関係ではなく教師同士になったことで、先生の言葉は数年前よりも容赦がなくなっている。笹原先生と同等の立場に立てるなんて想像もしてなかったけど、この人には一生勝てねぇんだろうな……。現に今も口で言い包められっぱなしだし。

 

 

「まぁまぁ……。とにかく、高海さんたちを見つけたら、神崎君に連絡しますので。もし自分1人でどうしようもなくなったら、私たちに相談してくださいね」

「ありがとうございます。先生はいつまで経っても俺の先生なんですね」

「当たり前です! それに神崎君を一番心配しているのは、何を隠そう笹原先生なんですから」

「なるほど。まあ笹原先生ってツンデレですもんね」

「お前たち、私の拳が飛ぶ前に逃げた方がいいぞ」

「「いたっ!?!?」」

 

 

 警告してから拳が俺たちの頭上にぶち当たるまで一瞬しかなかったんだが!? 失神しそうなくらいの痛みとあまりの理不尽に言葉すら出ねぇ……。これはあれだ、自室でオナニーをしている時に母親がノックをせずに入ってくる理不尽さと一緒だ。警告から行動までに猶予がなさ過ぎんだよ。

 

 

「もうっ、笹原先生は容赦なさ過ぎです! これでも同じ教師なのに……」

「だったら教師らしい振る舞いをしろ。人を煽ったりするな。それにお前の背が低すぎて、ちょうど殴りやすい位置に頭があるのもなんとかしろ」

「最後の理不尽は公判で勝てますよね!? これはツッコミを入れていいですよね??」

「仲いいなアンタら……」

「ったく……。とりあえず、私たちも会場を回りながらアイツらを探してみる。この人混みだ、お前だけでは骨が折れるだろ」

「ありがとうございます。でも第一は先生たちがスクフェスを楽しむことですから、アイツらのことは頭の片隅程度でいいですよ。それじゃ!」

 

 

 先生たちがスクフェス会場に来ていることは意外だったけど、これで待ちに待った捜索人員が増加した。先生たちにこんなことを頼むのはおこがましいけど、快く引き受けてくれるあたり、やっぱり頼りがいがあるよ。こりゃ同じ教師の立場になろうとも、この2人にはずっと頭が上がりそうにねぇな……。

 

 

 

 

「神崎君、誰かのために走り回るのは昔から変わりませんね」

「自分の女のためなら何でもできる、ということだろう。いかにもアイツらしい」

「もう、たまには素直に褒めてあげればいいじゃないですか? ホントにツンデレさんですね♪」

「また脳を割られたいか……?」

「じょ、冗談ですって!! あ、あはは……」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 先生たちと別れた俺は、穂乃果たちの捜索を再開する。とは言っても、手掛かりなしの状態で闇雲に探すという時間の浪費は避けたい。Aqoursのライブまでは残り40分を切っているので、ここはイチかバチかになってもアイツらがいそうな場所をピンポイントで狙い撃ちするのが最善だろう。幸いにもμ'sのライブまでは1時間半ほどあるので、先に千歌と鞠莉に的を絞って探すことができる。せめてみんなが一緒にいればいいのだが、行動が奇想天外な奴らばかりだからどこをフラついてんのか想像もできない。さっきから無駄に駆け回って疲れてきたし、運動不足の人間にここまで走らせるとか拷問かよ……。

 

 アイツらの居場所としてパッと思いつくのが、屋台が軒を連ねるエリアだ。千歌、穂乃果、凛は食を取ることに並々ならぬ楽しみを抱いているし、鞠莉はお嬢様が故に祭りの屋台飯が物珍しくて目移りしている可能性がある。最初は迫る予選のために満腹にはしないだろうと思い、アイツらが屋台巡りをしていることは考慮外としていた。

 でも、よく考えてみればアイツらのことだからそんな前提は通用しないだろう。腹が満たされてライブで動ききにくくなるなんて、そもそもお構いなしと考えているかもしれない。それ以前に、満腹で動きづらくなるなんて考えてすらいない可能性が非常に高い。まあ伊達に問題児じゃねぇってことだな。

 

 そんな適当な推理……というより、もはや願望を抱きつつ屋台エリアに来たのだが――――――

 

 

「いたよ……」

 

 

 スクールアイドルとして、予選直前にこのエリアで買い食いしてるって意地汚いなコイツら……。もっと自分たちがスクールアイドルだという自覚と品位を大切にして欲しいもんだ。しかもご丁寧に4人全員が集まっているので、お互いに屋台巡りをしていたら偶然出会って、そこで意気投合し今に至るのだろう。全く、面倒ばかりかけさせやがって。

 

 それにしてもアイツら、やたら屋台の隅にいるけど何してんだ? 人と屋台の多さで危うく見過ごしそうになったのだが、穂乃果たちは何故か屋台と屋台の陰になる場所に集まっている。Aqoursはともかく、μ'sは有名人だから周りにバレないように配慮してるのか……? そもそもそんなことを考えるなら、人の目に触れるところで堂々と買い食いしてるのが間違いなんだけど……。それにこんなところでコソコソするくらいだったら、とっとと自分たちの控室に戻ればいいのに。

 

 とにかく時間もないし、早く戻るように伝えるか。

 

 

「おい、そんなところで何やってんだ」

「Wow!? せ、先生じゃない!?」

「あのな、もうすぐで予選なのにフラフラ歩き回ってんじゃねぇよ。特にAqoursの出番まで1時間で、セッティングの時間を考えたらあと30分ぐらいしかねぇだろ。果南から千歌に何度もコールが入ってるはずなんだけど、気付いてなかったのか?」

「えっ、あっ、ホントだ!? い、いやぁスクフェスのパンフレットを見てたら、屋台の料理がとても美味しそうだったからつい夢中になっちゃって……」

「気持ちは分からなくはないが、予選が終わってからでもいいだろ別に……」

「そ、そうだね。あはは……」

「……?」

 

 

 一見するとただの日常会話だが、俺には物凄い違和感があった。千歌の奴、俺に対してタメ口だったか? いや、絶対に違う。普段は天真爛漫で猪突猛進なお騒がせちゃんだが、意外にも年上に対する敬意だけはしっかり払える人間だ。これも旅館の娘として躾けられたのだろうが、だからこそ俺に対してまるで同い年かのような喋り方に違和感があるのだ。

 

 様子がおかしいと言えば、凛と鞠莉もさっきから黙ったままなのが気になる。食べ歩きをしていたくせにここまでテンションが低いなんて、元気が取り柄のコイツらからしたらおかしい。俺が来るまでに一体何があったんだ……?

 

 

「さ、さぁそろそろ戻りましょう!」

「戻りましょうだぁ? 穂乃果、さっき誰に向かって言ったんだ?」

「へっ? な、なんのことです……あっ、なんのこと?」

「今更言い直してもおせぇよ。このメンツの中でお前が敬語を使う奴はいない。千歌といいお前といい、さっきから話し方がおかしいぞ? まるで2人が入れ替わったかのような……い、入れ替わった?」

 

 

 すると、俺たちの会話に凛が焦りながら口を挟む。

 

 

「流石にもう隠し切れないよ2人共! だからもう言っちゃうね」

「う、うん……」

「はい……」

「あのね零くん。零くんがさっき言った通り、穂乃果ちゃんと千歌ちゃんが入れ替わっちゃんだにゃ!」

 

 

「は、はい……?」

 

 

 もうね、何が起こっているのか把握する前にクラクラして倒れそうだよ。だって迷子になったと思ったら今度は入れ替わりって、次から次へと問題が起こり過ぎだもん。終わらない騒動、降りかかる厄介事。神様は常に俺に試練を与え続けないと死ぬ病気か何かのかな……?

 

 

「凛たちが屋台巡りをしていたらね、偶然千歌ちゃんたちと出会ったんだ。聞いたら千歌ちゃんと鞠莉ちゃんも同じ目的だったから、そこで意気投合したんだよ」

「それで私たちは一緒に食べ歩きをすることになったんだけど、その途中で人の波に押されちゃって……。千歌と穂乃果さんがゴッツン!! ってなっちゃったのよ」

「なるほど、それで身体はそのままで中身だけが入れ分かっちゃったと」

「はい、その通りです……」

「まさかこんなことになっちゃうなんてねぇ……」

 

 

 なんか、穂乃果が敬語で千歌がタメ口だと違和感があるな。性格から何まで似た者同士の2人だけど、俺に対する口調が差別化の1つだったので、現状は非情に紛らわしい。

 

 さて、ここからどうすっかなぁ……。

 そして今日の俺、ずっと頭を悩ませてる気がする。スクフェスの1日目の午前中で、身体の糖分を使い切ったらどうしよう……?

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 最終章はこの小説では珍しく長編モノなので、肝となる場面になるまではちょっぴり盛り上がりにかけるのが悩ましいところです。
 それにしても、零君の苦労が半端ない気が……。もはやいつものことですが、彼も海未や梨子と同様にお疲れキャラになってますね(笑)


 どうでもいいですが、『Let's Go! ピカチュウ』『Let's Go! イーブイ』をやっているせいで投稿が遅れって言う話……()



まだ評価を付けてくださっていない方、是非☆10評価を付けていってください!
小説執筆のやる気と糧になります!



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【概要】
 参加者各々が好き好きにラブライブ小説を執筆し、それらを私が毎日1話ずつ投稿するというものです。作家ごとに世界観や登場させるキャラも違うので、毎日新鮮な気分でラブライブワールドを楽しめます!

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