ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~   作:薮椿
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 零君が胸に秘めている想いが虹ヶ咲のメンバーと、そして、あの人に伝えられる。
 今こそ平穏な日常を取り戻す時!


お前は俺が飼ってやる

「で? どうして盗み聞きなんてしてたんだ? お前のホテルはここの向かい側だろ」

「だって気になるじゃん。零君がどれだけ成長して帰ってきたのかね」

 

 

 俺が歩夢たちと会うことをどこから嗅ぎつけたのかは知らないが、相変わらずの神出鬼没で突然の登場にも驚かなくなってた。秋葉は俺の気配に敏感と言うか、自分の興味を唆られるが俺しかいないため、俺の行動を監視することくらいは余裕でするだろう。それはそれでヤベぇ奴だが、コソコソしているコイツを気配だけで感じ取れる俺も同類なのかもしれない。まあ俺は秋葉に興味があると言うか、向こうが粘着するように絡んで来るから相手をしなければならないって意味合いが強いけどね。

 

 とにかく、秋葉の元へはこちらから進撃しようと思っていたので、わざわざそっちから出向いてくれて手間が省けた。ちょうど虹ヶ咲の面々もいるし、過去の因縁に決着を着ける場にいるメンツとしては最適だ。

 もうね、こんな辛気臭い話はとっとと片付けて、また女の子たちに囲まれる穏やかな日常に戻りたいよ。それにμ'sやAqoursも含め、スクールアイドルたちには万全の状態で明日を迎えて欲しいからな。明日にはグループ間での合同ライブやテレビ撮影、明後日には決勝戦が控えてるから、俺の背負っている余計な枷でアイツらを縛りたくはない。そのためには、未だ秋葉の呪縛に苛まれている歩夢たちを解放し、そして俺自身もコイツと決着を着ける。それこそみんなが笑顔でいられるハッピーエンドだ。

 

 

「成長したとか言ってるけど、別に俺は何も変わっちゃいねぇよ。それこそお前の誘導で、自分を失ったかのように見えただけだ」

「ふ~ん。へぇ~~~~」

 

 

 秋葉にとって、どこまでが自分の想定した範囲内なのか。今の余裕そうな反応を見る限り、敢えて俺を絶望のどん底に叩き込み、そこから這い上がってくること自体も想定済みなのだろう。

 

 コイツは、自分の想定を超える出来事はこの世で起きることはないと思っている。だって、自分が世界中のあらゆる万物よりも想定外の存在なのだから。

 その中でも1つ、自分の認知できる全ての事象から逸脱している奴がいる。それが、俺。だからこそ秋葉は俺にしか興味を持たず、そして俺が自分の予想外の行動をしてくれることに無性の興奮を抱く。その興奮を滾らせるためには、誰かが心の拠り所にしている施設ですら平気で燃やす。それが数時間前に俺に語ったコイツの生き様だった。

 

 

「お前に言いたいことは色々あるけど、それは後回しだ。ますはさっき言いそびれた、歩夢たちへの謝罪からだな」

「あっ、そういえば、私が零さんの話を遮って先に謝っちゃったような……。ゴメンなさい!」

「いいっていいって。それでお前たちの問題も解決したんだから」

「零君が誰かに自分の贖罪を語るなんて珍しいねぇ~」

「お前は自分の贖罪の数を数えた方がいいと思うぞ……」

 

 

 そうは言っても、今更コイツの罪を数えたところで数えきれるとは到底思えないがな……。まあそんなコイツと縁を切らず、生まれた時から今までずっと付き合い続けてる俺も相当心が広いと思う。自分で言っちゃってるけど、秋葉の性格を考えたら一緒にいたいなんて思わねぇだろ? 元からコイツは恋人を作らないタチだが、恋人になる人が不憫すぎるからそれで良かったのかもしれない。

 

 

「秋葉のことは置いといて、俺がお前たちに抱いている気持ちを素直に話すよ。そういや、一度も自分の想いを伝えてなかったと思ってさ」

「もしかして、ライブに来られなかったこと以外に謝りたいことってそれだったんですか!? わざわざそんなことのために……」

「女の子が好意を向けていることを知りながら、それを受け入れて何も返さないって最悪じゃねぇか? それにそんな状況をグダグダ続けていると、どんな事態に陥るのか身に染みて理解してるから……」

「豪快な方だと思っていましたが、意外と繊細なんですね。あっ、悪い意味じゃなくて、ちゃんと私たちのことを考えてくれて嬉しいなぁって!」

「分かってるから大丈夫だよ。いい機会だし、ここで今まで思っていたこと、今の気持ち、全部ぶつけてやるよ」

 

 

 俺が女の子との恋愛で慎重になり過ぎてしまうのは、もはや本能に近い。μ's9人との例の一件以来、女の子の心と向き合うことに関しては誰よりも真面目になった。そのせいで逆に相手に近づくことすら臆してしまい、シスターズとの一件ではμ'sや秋葉から喝を入れられたっけ。今となっちゃいい思い出だなそれも。

 

 だから今回は失敗しない。秋葉の術中にハマった時点でもう失敗してるような気がするが、俺と歩夢たちの間にコイツが入る余地なんてないからな。秋葉がどんな行動で俺や歩夢たちの心を掻き乱そうと、それで俺たちが相手を想う気持ちが変わることなんてない。

 

 

「さっき自分を見つめ直して、分かったことがあるんだ。俺、お前たちの本心をしっかり受け入れてなかったなって」

「そ、そんなことありませんよ! 零さんは突然現れた私たちに、嫌な顔せず向き合ってくれました。正直、私たちって記憶のなくした零さんから見れば得体の知れない集団だったと思います。それなのにも関わらず、零さんは私たちを拒絶しなかった。それで受け入れてないって、どういうことですか……?」

「ぶっちゃけて言うぞ? 俺はお前たちのことを()()()()()()()だと思ってたんだ。馬鹿にしてるとかそういうのじゃなくて、お前たちの境遇を考えると、その言葉こそが端的にみんなを表せる。そう考えていた」

「あながち間違ってはいないと思いますけど……」

「別に相手のことをどう思おうが人の勝手だよ。問題なのはその後。俺はお前たちのことを可哀想だと思っていたからこそ、今度は涙を流させないと決意していた。そう、俺はお前たちの心と向き合っていたんじゃなくて、お前らの不幸な境遇に感化されていたんだ。感化っつっても、悪い意味でな」

 

 

 俺が見ていたのは歩夢たち本人ではなく、悲痛な過去を背負っているからこれ以上悲しませないようにしてやろうという、相手を見下す自分の気持ちだった。つまり、俺はコイツらに向き合ってすらいなかったんだ。もちろん悲惨な過去、苦い記憶、どれも綺麗さっぱり忘れて笑顔にさせてやろうという気持ちが間違っているとは言わない。だけど、それは恋愛が成就した後の結果として成しえるものだ。その気持ちは、女の子の心を汲み取っていない。

 

 

「さっき自分を見つめ直した時、そのことに気付いたんだ。俺が俺としてどう生きてきたかを振り返った時に、ずっとお前たちのことで引っかかっていた。千歌たちに励ましてもらって、心に掛かったモヤは9割晴れたと思っていたが、どうしても残りの1割が解消できなくてな。そして、Aqoursの全員と話して悩みを振り返り切れた時、お前たちの顔が頭に浮かんだ。その時ようやく分かったよ。未だに心配事があるのは、お前たちと真剣に向き合えていないからだって」

「そんなことが……。でも、それって私たちのせいでもあるんですよね? 私たちが自分たちの素性を隠していたり、秘密にしていることが多くて零さんを悩ませてましたから……」

「それを踏まえても、もう少しお前たちとの距離を縮めるべきだったのかもな。お前たちが何者かって警戒し過ぎるあまり、受け身になっていたのは事実だし。そして合宿で事情を知った後は、さっき言った通りお前らとの過去が常に頭にチラついて、まともにお前たちと向き合うことができなかった」

 

 

 俺がイマイチ彼女たちの心に踏み込めていなかったのは、それが原因だと思っている。μ'sやAqoursにはない幼少期からの辛い過去、心酔するほどの愛、積極的な言動、その全てに俺は戸惑っていたのかもしれない。

 

 

「だから、今度こそお前たちとしっかり向き合いたい。昔のこととか嘘を付かれていたこととか、余計な事情は関係ない。大切なのは今の気持ちだ。歩夢、かすみ、しずく、せつ菜、彼方、エマ、果林、愛、璃奈。まだ俺は本気でお前たちのことを見つめられていない。だからこそ、このスクフェスを機に見つけていきたいんだ。まだお前たちの気持ちに応えることはできないけど、俺の中で答えが定まったら、絶対に返事をするから。それまで待っていて欲しい」

 

 

 自分の過ちに気付いたからと言って、すぐ相手の気持ちに応えられるとは限らない。しかも今回は虹ヶ咲のライブを見逃した分、コイツらが俺に届けようとしていた想いも見逃したってことになる。それなのに早まってここで告白しようだなんて真似、コイツらからしても嬉しくないだろう。

 現に歩夢たちは俺の言葉を受け入れてくれたようで、小さな笑みを零していた。これで明日以降のライブは、今日の予選以上の実力を発揮してくるだろう。やっぱり、女の子が輝く姿を見られるっつうのは楽しみだな。

 

 

 とりあえず、これで俺が歩夢たちに対して思っていたこと、そして今の気持ちは全部伝えた。

 もちろん、これで終わりではない。この場には、歩夢たち以外にも俺の過去に関わっている奴がもう1人いる。いや、むしろ張本人と言った方がいいか。俺たちの会話を聞いてどこか満足気な表情を浮かべているが、これでコイツの欲求も満たせたってことか? それとも、俺たちがこのような関係になることも想定済みなのかも……。

 

 

「さっすが零君。相変わらず立ち直り早いね! これだけ早いんだったら、もっと絶望に堕としてあげて良かったかも……」

「笑顔で恐ろしいことを言うんじゃねぇよ……。つうか、結局お前の欲望の終着点ってどこなんだよ? この結果で満足いったか?」

「ま、長い年月をかけて仕込みをしてきた割には普通の終わり方だったけど、満足はできたかな。それに、また欲求不満になったら別の玩具を探すだけだしね」

「その玩具って、いわゆる俺のことだろ? もう余計なことはすんな」

「それは私の勝手だから。玩具に指図される言われはないよ」

「そうだな。その答えこそお前らしいよ……」

 

 

 自分の非道な行いを全く反省していないあたり、神崎秋葉という人間の軸がブレてなくて安心するよ。ここで過去の行いを反省したとしたら、それはそれで拍子抜けだからな。もうここまで長い付き合いだと、秋葉には常に悪魔的のままでいて欲しいって思うくらいだ。歩夢たちの心の拠り所を奪ったことを許すつもりはないけど、十年以上も前のことを蒸し返すつもりもない。それに蒸し返したところで、俺や歩夢たちの今の心境に変化があるとは思えないしな。さっきも言ったけど、もはやコイツの行動云々で俺と虹ヶ咲の関係が揺れることはないんだから。

 

 

「もうこれで終わり? それじゃあ解散かな」

「いや、まだ終わってねぇよ」

「へ? どういうこと?」

「俺がここへ来た一番の目的は、歩夢たちに自分の気持ちを伝えることだ。でも、それ以外にもう1つある。それが――――お前」

「わ、私?」

 

 

 秋葉は珍しく、目を丸くして驚く。コイツのこんな表情を見たのは何年ぶりだっけな。世界のあらゆる出来事はコイツの予想通りであり、自分の予想の範疇を超えた出来事は起こらない。それくらい人間を超越しているコイツだが、流石にここで自分に話を振られるとは思ってなかったのだろう。まあ俺と歩夢たちの雰囲気の良さが最高潮に達しているのに、突然自分に話題の矛先が向いたら誰でも驚くよそりゃ。

 

 

「別に今更お前を咎めたりはしないけどさ、やったことはやったことだし、それを許すことはできない。終わり良ければ総て良しなのは事実だけど、今回は歩夢たちの心の傷もあるから、それで片付けられはしないだろ」

「ふ~ん。じゃあなに? 私がみんなに謝ればそれで解決? それであなたも満足するの?」

「俺が満足するからとかしないとか、謝ることで誰かの心が晴れるとか、もはやそんなの問題じゃない。重要なのは、今後誰かを精神的に追い詰めるような真似をさせないことだ。まあ社会人的に言えば、再発防止策を立てるってところかな。今後こんな障害が起こらないように、俺が事前に防いでやるよ」

「人を障害だなんてヒドイなぁ~。それに、零君が私を止めることなんてできるのぉ?」

「むしろ、お前を止められるのは俺だけだろ。つうか、お前もそれを期待してたんじゃないのか?」

「き、期待って……」

 

 

 いつもしてやったりの余裕な表情しかしない秋葉だが、徐々にその牙城も崩れていく。コイツは自分の予想外が起きることをいつも心待ちにしているが、本気で予見の範疇を超えるとこうして取り乱す。俺の部屋で一度だけ、そんな姿を見たことある俺なら分かる。予想外が発生すること、それはつまり、秋葉の篭絡することと同じなのだ。それこそコイツを攻略する唯一の方法。まぁこの悪魔を攻略したい奴なんていないと思うから、この攻略法を解説しても何の意味もないが……。

 

 とにかく、秋葉がいつもの平常心を失ってきていることは確かだ。表情も少し焦りが見えているため、このまま攻め続ければ勝てる。

 そうだ、俺がこの先みんなと平和に過ごすためにやっておくべきこと。それは――――――

 

 

「お前が本当に望んでいたもの、それは自分自身を満たす欲求なんかじゃない」

「は、はぁ!? 私はいつも自分の欲望に忠実となって――――」

「だが、それを満たせたことはあるか? 満たせたことがないから、何年も俺たちにちょっかいを出してるんじゃないのか?」

「そ、それはぁ……」

「ガキだな、お前」

「あ、あのねぇ……ガキにガキって言われたくないよ!!」

「そうやって挑発に乗ってムキになるあたりガキなんだよ」

「ぐっ、玩具のくせに……」

 

 

 こうして見ると、イタズラ好きで予想外の事態に弱く、心が脆くなると挑発に乗ってくる、まさに子供だ。世界を震撼させるほどの頭脳を発揮することもあれば、俺たちにちょっかいをかけることもあり、こうして子供っぽい反応を見せる時もある。それら全てが秋葉であり、俺の姉だ。なんか、肉親ながらに可愛く見えてきたぞ。楓以外でこんな感情を抱くのは初めてだ。

 

 

「す、凄い……。あの秋葉さんがここまで顔を赤くするなんて……」

「意外と純情なんですね……。雰囲気が掴みづらいお姉さんキャラだと思っていましたが、ちょっと親近感が沸きました」

 

 

 歩夢とせつ菜もそうだが、他のみんなも秋葉の戸惑いに満ちた言動に驚きを隠せないようだ。みんなも俺ほどではないが秋葉とは長い付き合い方だと思うけど、これだけ取り乱しているコイツを見るのは初めてだろう。彼女の裏の顔を知ったせいか、歩夢たちはどこか微笑ましい表情をしていた。

 

 そんな状況に、たった1人だけ不服そうな顔をしている奴がいるが……まぁ、これも自分の犯した罪の償いだと思って我慢してもらうしかないな。

 

 

「えっ、ちょ、ちょっと零君!?」

 

 

 俺は秋葉を部屋の壁に追い詰める。いわゆる壁ドン(死語かもしれないが)ってやつだけど、まさか自分の姉相手にこんなことをするとは俺も想像していなかった。でも秋葉を言い包めるためには、恥ずかしいが多少の荒行は必要だ。秋葉はこれまでにないってくらい顔を真っ赤にしているが、俺だって内心なんつうことをやってるんだと自分で自分にツッコミを入れてるくらいだ。肉親に壁ドンするとか、正気の沙汰じゃねぇよな……。

 

 

「れ、零君……近いって」

「ずっと考えてたんだ。これから平和な日常を送っていくために、どうしたらいいかってな。別にお前の存在を排除しようとしてる訳じゃない。でも、野放しにしておくのは俺にとって都合が悪いからな。ほら、放火の前例もあるし、お前をどうにかできないかなぁって思ってさ」

「なにそれ。まるで私があなたの玩具みたいじゃない……」

「みたいじゃない。玩具なんだよ、俺の」

「は……?」

 

 

 

 

「飼ってやるよ。お前は俺が飼ってやる」

 

 

 

 

「ふぇ……?」

 

 

 

 素っ頓狂な声を上げている様子を見ると、恐らくまだ俺の言っていることが理解できないのだろう。

 そりゃそうだ。今まで自分が世界を玩具にしてきたのに、今度は自分がその立場になろうとしているんだから。俺の言った言葉は冗談でも何でもない。意味もそれ以上でもそれ以下でもない。コイツも巻き込んで、俺の世界を作る。

 

 

「お前なら俺の性格をよく知ってるだろ? 俺はいつもみんなの中心で、みんなもそれを認めてくれる。俺自身もそんなポジションに満足しているし、何より自分の世界が女の子たちによって強固になっていく状態が堪らなく至高なんだ。そう、世界の中心はお前じゃない、俺だ。所詮お前は、世界の中心に立つ者を眺める傍観者でしかないってことだよ」

「そ、そんな……」

「お前も薄々気付いてるんじゃないのか? 自分が生粋のドMだったってこと」

「あっ、あぁ……」

 

 

 俺にメンタルをボロボロにされて、もはや発する声が言葉にすらなっていない。顔も未だかつてないほどに燃え上がっており、大学院生のくせに思春期女子の初恋のような純情さを見せている。元から恋愛に関しては奥手なコイツだが、攻め続けるとこうもポンコツになるとは思ってなかったぞ……。もしかしてこれ、やりすぎちゃった?? しかし、これまで俺たちに仕掛けてきた仕打ちを考えると、この程度の威力の攻撃では到底割に合わない。ま、これ以上の威力でメンタルを破壊したら、もう居ても立っても居られなくなるだろうがな。

 

 ちなみに、俺たちの周りでは虹ヶ咲の面々が何やら騒いでいる。姉弟の壁ドン現場を見て興奮しているのか、それともご主人様による強制奴隷宣告を聞いて背徳感を覚えているのかは分からない。だが、やたら黄色い声が聞こえてくるのでアイツらの性癖を疑っちまいそうだ。何にせよ、歩夢たちが謎に興奮していることは間違いない。

 

 うん、アイツらに触れたら負けのような気がするので、一旦放っておこうか……。

 

 

「世界は俺のモノだから、俺が管理する。またお前が余計なことをしようとしたら、俺が止めてやる。そう、俺がお前の管理をするってことだ」

「……ッ!?」

「お前のおかげで気付いたよ、俺がどんな人間だったかってな。記憶を失った俺を、お前は自分好みに作り替えたと言っていた。だけど、俺にとったらそんなことはどうでもいい。μ'sやAqoursを好きになった気持ちも、歩夢たちを想う気持ちも、誰のモノでもない、全部俺のモノなんだ。その気持ちは俺が出した決断で、そこに他の誰かが介入する余地はない。それでもその気持ちはお前が作った心だと言い張るのなら、ここで俺が作り替えてやるよ。お前との関係共々、もう誰も俺の人生を邪魔させなくしてやる。この俺が、ご主人様だ」

「あっ……そ、そっか……」

 

 

 秋葉の身体から力が抜け、肩も腕も空気が抜けたかのように下がる。俺の言葉がコイツの心に響きすぎて、心臓が破裂寸前なのは彼女の表情を見ているだけで分かる。しかし、どうやら自分の中で折り合いをつけたようで、何かを悟ったような顔をしていた。

 

 

「零君の言う通り、私は探していたのかもしれないね、自分の飼い主様を……。今まで自分の力を誇示して誰かの人生をめちゃくちゃにしてきたのも、それを食い止めて私を支配してくれる人を見つけるため……だったのかな」

「とんだドMだなお前。ま、これに懲りたら、俺たちを変な発明品の実験台にするのはやめるんだな」

「いや、これからもっともっと零君たちと遊ぶよ!」

「はぁ!? お前それじゃ何も変わってねぇだろうが!?」

「今までとはニュアンスが違うよ? これまでは零君たち"で"遊ぶだったけど、これからは零君たち"と"遊ぶ、に変わったから♪」

「それ、お前が加わっただけで俺たちに飛び火するのは変わってないような気が……」

 

 

 いくら秋葉を陥落させようとも、根の性格は全然変わっていないようだ。でもそっちの方が安心するっつうか、これで至極真っ当な研究者になったらそれはそれで寂しいもんな。今回で攻めれば秋葉を自分の想い通りに従えさせられると分かったので、これまでのように好き勝手にされることはないだろう。俺の世界で好き勝手やってもらっちゃ困るってことだよ。

 

 

「零さん! 私たちのこと、忘れてません??」

「えっ、そ、そんな忘れてないよ。いやホントに……」

「零君ってば、私に壁ドンしっぱなしだったからねぇ~どうだろうねぇ~」

「おい、余計なこと言うな!!」

 

 

 部屋中に笑い声が響く。

 それぞれ過去の因縁に縛り縛られの関係だった俺たちが、こうしてお互いに笑顔を向けられる時が来るとは……。想像していなかった訳じゃないけど、実際にその現実が訪れるとやっぱり嬉しいよ。これで、虹ヶ咲のみんなも気兼ねすることなく明日以降のスクフェスに挑むことができるだろう。秋葉も手中に収めたし、これで俺たちの日常は安泰だな。

 

 

 

 

 とりあえず、過去から積み上げられていた問題は全て解決した。

 これこそ俺の選択。合っているとか間違っているとか、それは俺が決めることだ。もう誰にも介入させたりはしない。μ'sもAqoursも、虹ヶ咲も、みんな俺の世界の住民だ。だからこそ、もう離さない。世界の管理者になったからには、みんなの笑顔を守ってみせるよ。絶対に。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 とりあえず、今回でスクフェス編で初回から散りばめていた伏線や問題等は全て解決しました。スクフェス編の当初に今回の章はストーリー性を濃くすると言っていましたが、これまでにない話の展開は如何だったでしょうか? 虹ヶ咲だけでなく秋葉さんとの関係も大きく変化し、個人的には当初から書きたかったことを全て書くことができて満足しています!


 ずっとシリアスパートが続いた最終章でしたが、次回からはいつもの日常に戻ります。
 本編内ではまだスクフェスの1日目なので、2日目と3日目はいつもの緩い雰囲気で物語を進める予定です。

 問題は全て解決しましたが、Aqoursとの関係はこれからがクライマックス!
 未だに千歌たちが零君に対してできていないことがありますが、分かる方はいるかな……?



 今回の投稿分で年内の投稿は終了です。来年もよろしくお願いします!


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