ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~   作:薮椿

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 その後のスクフェス編、後半戦。
 やはりこの小説は、前回と今回のようなゆったりとした雰囲気が似合っていると思います。


笑顔で満ち溢れた世界

 

「さぁ~て、大盛り上がりのミスコンもいよいよ大詰め! 最終審査に残ったのは、この人たちだぁ~!!」

 

 

 テンションMAXなスタッフがステージを指差すと、大きな幕が上がると共に何人かのスクールアイドルが姿を見せた。

 そのスクールアイドルたちは見ているだけでも気品を感じられ、『美』という言葉を具現化する存在だ。観客も男女問わず歓声が凄まじく、それを見れば今ステージにいる女の子たちが如何に美麗なのか分かってもらえるだろう。

 

 ライブのステージで開かれているのは、スクフェスに参加しているスクールアイドル限定のミスコンだ。公式側が各スクールアイドルから、メンバー内でこの人こそという子を1人選抜してもらうよう要請。その選ばれた子たちでミスコンをするという、簡単に言えばスクールアイドルで一番美しい女性を決めるコンテストだ。優勝賞品はなんと、優勝した人が所属するグループメンバー全員に海外旅行券が配られる。だからどのグループも考察を重ね、出場する1人を選抜しているはずだ。

 

 そんなミスコンもいつの間にか最終審査。俺が他のブースを回っている間に予選選考が開催されていたのだが、やはりと言うべきか俺の知り合いのスクールアイドルは全員勝ち残っていた。

 つうか、ステージに立っている女の子たちを見ていると、アイツら本当に学生かと疑っちまうよな。だって見た目も綺麗で身体付きも大人な奴らばかりだから、何も知らない人が見たらプロのモデルかと勘違いしちゃいそうだ。でもスクールアイドルって人前に出て自分を魅せるのが仕事なので、ある程度の容姿が整っているのは当然だけどな。だからこそ、テレビで放送されているような大学のミスコンにも引けを取らない。クイズ会場にもたくさんの人がいたけど、ここだけ別格な理由が納得できるよ……。

 

 

「左から順番に紹介していきましょう! エントリーNo.1、μ'sから西木野真姫さん! エントリーNo.2、A-RISEから統堂英玲奈さんです!」

 

 

 レジェンドスクールアイドルと呼ばれるμ'sとA-RISEからの選出となれば、それだけ周りの期待も上がる。でも真姫、英玲奈ならファンも納得の選出で、紹介された瞬間の会場の盛り上がりが半端ではない。後続に紹介される人からすれば相当なプレッシャーだろう。

 

 ちなみにμ'sからの選出は絵里じゃないのか? と思われるかもしれない。だが、アイツはもう社会人なのだ。スクフェスにはμ's復活ということでライブに特別参加しているだけで、こういったライブ以外のイベントには参加できない。だからアイツは何をしているのかと言うと――――

 

 

「こうして立ち姿を見ているだけでも美しいですね。私も一人の女性として、皆さんの魅力の磨き方を参考にしたいです」

「またまたぁ~! 絵里さんもお綺麗なのに!」

「そんな、私なんてまだまだですって」

 

 

 絵里がまだまだの女性だとしたら、この世の女性のほとんどが魅力なしってことになりそうな気が……。金髪クォーターで誰が見ても美人と分かる容姿、それにスタイル抜群ともなれば、見た目でコイツに勝てる女性は相当限られる。過剰な謙遜は逆に怒りを産むが、今の絵里のポジションがまさしくそうだ。アイツも地味に抜けているところがあるから、コメンテーターとして下手な発言をしなきゃいいけど……。

 

 

「それではどんどん紹介していきましょう! エントリーNo.3、Aqoursより小原鞠莉さん! エントリーNo.4、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会より、朝香果林さん! そして最後は、エントリーNo.5、Saint Snowより鹿角聖良さんです!」

 

 

 魅力たっぷりのアイドル登場に、またしても観客先の熱気が上がる。まあミスコンを観覧する人たちってスクールアイドルのファンが多そうだし、盛り上がるのは分かるけど想像以上だなこれは。しかし観客が沸き上がるのも頷けるくらい、最終選考に残ったメンツに納得できる。鞠莉も果林も聖良も、先に紹介された真姫や英玲奈に引けを取らないくらい大人に魅力たっぷりだ。特に果林はモデルの卵と言えども業界から目を付けられるほどの魅力なので、最終選考の舞台に立つのも当然と言えよう。

 

 

 ってか、さっきから隣でやたら騒いでいる女の子がいるんだが……。もはや周りの観客もテンションが上がりまくりなので、その熱気に水を差したら空気が読めない判定を下されるのは俺の方だ。でもミスコンなのに、女の子でも盛り上がれるんだな。こういうのはてっきり男のための祭典かと思っていたけど――――っ!?

 

 

「理亞!?」

「さすがお姉様、素敵です!! でもその立ち角度だと、お姉様の魅力の伝わり方が3%ダウンしてしまいます。なので斜め30度になるように立ち方を調整して、観客に他の参加者とは違う立ち振る舞いを魅せれば……!! あっ、私に気付いて手を振ってくれた! う、嬉しすぎてクラクラしてきた……」

 

 

 ひ、一人で何言ってんのコイツ!? 隣に知り合いらしき人もいないので、どうやら1人で姉である聖良の魅力に酔っているようだ。まあコイツは重度のシスコンだから、ミスコンという晴れ舞台に姉が立っていることに感動しても仕方がない。それに周りの観客たちも盛り上がって、理亞が1人で騒いでいても不自然じゃないので痛い子扱いされることはないだろう。

 しかしそれらを加味したとしても、近づきたくないのは事実。昨日予選のライブを観に行けなかったことを謝ろうと思ったけど、これは後からの方が良さそうだ。下手をしたら数時間延々と聖良の魅力語りに付き合わされそうだから……。

 

 

 うん、理亞に気付かれる前にここを離れた方が良さそうだな……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「スクールアイドル対抗アスレチックバトルも、いよいよ大詰め! 最後まで残った3グループの中で、一番最初にゴールへ辿り着くのは一体どのグループか?? ワクワクしますね、μ'sの希さん!」

「はい。運動神経抜群の皆さんのことですから、きっと物凄いパフォーマンスを披露しながら障害物を切り抜けていくと思います♪」

「おぉ、ナチュラルにハードルを上げてきますねぇ……。でもそれこそこの企画の醍醐味ですから、思いっきり期待しちゃいましょう!」

 

 

 絵里と同じく社会人なのでイベントには出られない希は、とあるイベントの解説役となっている。実況役のスタッフさんまで巻き込んで選手へのハードルを上げるとか、相変わらずやることなすことがドSだよなアイツ……。ま、選手に選抜された奴らを見る限り、そんなプレッシャーは物ともしない奴らばかりだけどな。

 

 このイベントはスクールアイドルのアスレチックバトルという名で、言ってしまえば様々な障害物を持ち前の身体能力を活かして乗り越えゴールを目指す企画だ。だからこのイベントの選手として抜擢されたメンバーは軒並み運動神経が高い子が多く、μ'sからは凛と楓、Aqoursからは曜と果南、虹ヶ咲からは愛とエマが参戦している。

 

 先程のミスコンでは女性の容姿で魅せていたのに対し、アスレチックでは動きで観客を魅了させる。SNSでこの企画の呟きを遡ってみると、既に予選バトルの時点でアクロバティックな動きが連発されていたらしく、スクールアイドルたちの意外な一面として驚きの声が多く上がっていた。そりゃ俺とは違って他の人はライブでしかアイツらを見られないから、誰がどれくらいの運動神経を持ってるなんて分からねぇよな。

 

 

「ここまで注目されるとテンション上がっちゃうにゃ! 最後も一緒に頑張ろうね、楓ちゃん!」

「はぁ~どうしてか弱い私がこんなことを……。ただ疲れるだけじゃないですか」

「とか言いながら、予選の試合ではノリノリだったくせに! 目立つの好きだもんね」

「はぁ!? 意味分かんないんですけど!?」

 

「果南ちゃん準備はいい? 絶対に優勝しよ!」

「曜ちゃんやる気だねぇ~。水泳部として、勝負事は負けられないの?」

「それもそうだけど、ここでμ'sと虹ヶ咲のみんなに勝ったら、明日の決勝ライブも注目されるかなぁって」

「い、意外と打算的だね……」

 

「おぉ~最後だから障害物も多いねぇ~。でも、それでこそ魅せ甲斐があるってもんだよ」

「愛ちゃんは前向きだね……。私はちょっと不安かも」

「大丈夫大丈夫! 私もいるんだし、一緒に頑張れば……ね?」

「あっ……ありがとう愛ちゃん♪」

 

 

 俺からはみんながどんな会話をしているのか聞き取れないが、各々やる気は十分のようだ。唯一楓だけ怪訝な表情をしてるけど、アイツもアイツで俺と似て面倒事は嫌いなタイプだから、そもそもイベントに参加すること自体乗り気でないのだろう。でもSNSで上がっている動画を見る限り、アイツも曲芸と言わんばかりの動きで障害物を軽々突破している。知らず知らずのうちに自分自身を輝かせ、周りに知らしめようとする性格も俺そっくりだな。

 

 

「皆さんの準備も整ったところで、いよいよスタートの時です! 行きますよ~! 位置について、よ~い――――ドン!」

 

 

 スタッフさんの掛け声と共に、みんなが一斉に駆け出す。

 アスレチックバトルと大層な名前に見合う障害物が各所に設置されており、平均台や杭渡りといったメジャーなモノはもちろん、ハードルをバク転で乗り越える、ジャンプ台を駆使して8段跳び箱を飛び越えるなど、スクールアイドルたちの身体能力をより良く魅せるためだけの障害物もあるようだ。もはや小規模なサーカスと言って構わねぇかもな。

 

 

「おぉ、すっげぇなアイツら。つうか、人間技じゃねぇだろ……」

 

 

 みんなの障害物を乗り越える動きがもはやプロ並みで、観客の声援や歓声もよりヒートアップする。

 凛が華麗なバク転の連打でハードルを3つ飛び越えたかと思えば、曜が圧倒的なジャンプ力で跳び箱を軽々乗り越え、愛が綺麗なバランスで身体がブレることなく杭から杭へ飛んでいく。その他も楓が華麗なロンダートで高所にあるポールを飛び越し、果南も日頃鍛えている力と体力で雲梯(うんてい)を素早く抜け、エマが側転をしながら平均台を突破と、もはや劇団舞台の公演のようだ。こりゃ生放送映えするいい企画だよ。本当にスクールアイドルかと疑問が浮かぶくらいには常人離れした技だけどさ……。

 

 そういや、ようやくまともなイベントを見られた気がする。今まで見てきたイベントは誰かしら何かをやらかしていた(ミスコンの場合は観客の理亞だが)ので、ここまで安心して、そして興奮しながら見られるイベントが来てくれてホッとしている。クイズイベントや歴史館リポートは特にヒドかったから、普通にイベントを観戦できるだけでも安心するよ。参加者本人たちはアスレチックバトルに夢中で、ボケる余裕なんてないんだろうけどね。まあ穂乃果たちやにこたちも本気でやってるだろうから文句は言えねぇけど……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 最後にやって来たのはスクールアイドルグッズ等が売っているショップであり、お土産物の販売も兼ねている。スクールアイドルの全てが詰まっている土産物なので、オタク界隈の人たちだけでなく一般客の出入りも多い。会場限定のグッズはもちろん、既に絶版となっている過去のグッズも多く取り揃えており、一般客からドルオタの興味まで幅広くカバーしている。

 

 そのような理由から、特に宣伝せずとも自然と人は集まる。だけど、ここで可愛い女の子たちの宣伝があれば集客率が飛躍的に伸びるのは目に見えていること。公式もそれが分かっているためか、このブースも歴史館や屋台と同じくリポーターを用意していた。

 

 

「これってことりさんがデザインしたシュシュずら……ですよね!?」

「うん! 自分でデザインしたアクセサリーが販売されるのは初めてだから、なんかドキドキしちゃう♪」

「でも凄い売れ行きずら! あっ、凄い売れ行きですね! マルも後で購入させてもらいます」

「見て見て~彼方ちゃんも着けてみたよ~。似合ってる~?」

「わぁ~彼方ちゃんすっごく可愛い! 可愛い子に着けてもらえて、シュシュが輝いて見えるよ!」

「えへへ、彼方ちゃんですから~」

「自分のアクセサリーが注目されるって、こんなに嬉しいんだね。皆さんありがとうございます♪」

 

 

 そういやことりの奴、自分のデザインしたシュシュが販売されるから買ってくれと何度も催促してきたな。でも男が着けるモノじゃないし、どうやって使えばいいんだよ……。それを直接ことりに言ったら、『もうっ、使い方なんて色々あるでしょ? これをことりだと思って、あんなことやこんなことを……』と、そこから変態特有の早口になったので無視しておいた。相も変わらずいつもそんな調子だから、生放送中に思わずヤベぇ言葉が飛び出さないことを祈るばかりだ。

 

 花丸は緊張を見せながらも、必死にリポーターとしての役目を務めている。所々アイツ特有の語尾が飛び出し、それに気付いて言い直しているあたり緊張は抜けきっていないらしい。でも自分のことをマルと言っていることに気付いてないから、まだまだ標準語には慣れてないみたいだ。まあ善子の中二病と同じく田舎特有の口調が花丸の魅力なので、カメラの前だからと言って改まらなくてもいいと思うけどな。

 

 そして、彼方が真面目にリポーターに徹しているのが驚きだ。いつも眠そうにしているに、今日はカメラが回っているからかいつになく目がぱっちりしている。それでも緩い喋り方はいつも通りだから、雰囲気で眠気を誘われるのは変わらないけど……。

 

 

「凄い……。昔μ'sが着ていた衣装まであるんですね。雪穂さんは着たことありますか?」

「これは『僕らは今のなかで』の衣装で、その時はまだμ'sに入ってなかったから着たことないよ。梨子ちゃんは音ノ木坂にいたんだよね? こういう衣装、アイドル研究部で見たことないの?」

「あぁ……当時の私はピアノ一筋だったので、そもそも音ノ木坂にスクールアイドルがいたことすら知らなかったんですよね。でもまさか転校して、自分がスクールアイドルになるとは……」

「私もだよ。可愛い衣装を着られるのはちょっと嬉しいけどね」

「雪穂さんはモデルさんですもんね。私も曜ちゃんの作ってくれた衣装をもっと綺麗に着こなしたいなぁ」

「大丈夫だよ可愛いから! そうだ、せっかくだからこの衣装着てみる? いい宣伝にもなるしね」

「えぇっ、こんな大勢の前で勘弁してくださいよ!?」

 

 

 先輩風を吹かせている雪穂って、なんか珍しいな。μ'sでも数少ないしっかり者で真面目キャラは板についてるけど、やはり一番年下ってのもあってか後輩感は否めない。先輩のように見えるのも、同じ真面目系である梨子だから話が合うためかもな。これが千歌や善子だったら、楓を相手にして成長したツッコミスキルしか光らず、先輩キャラの彼女なんて見られないだろうから。

 

 つうか、衣装まで売ってるのかよここ。確かにスクールアイドルの衣装なんて中々手に入る物じゃないけど、お土産として買うには少々ハードルが高い。とは言っても記念物と言えば記念物なので、割と買っていく人がいるんだなこれが。特にμ'sやA-RISEの衣装ともなれば、非公式のコスプレ販売店でも高値が付きがちだ。だからこそ公式で販売されている衣装により一層の価値を見出す人がいるのだろう。

 

 そういや、ここでもボケらしいボケは見られなかったな。前半に巡ったイベントやリポート現場が色濃過ぎて、むしろネタはないのかとツッコミを入れてしまいそうだった。そうだよ、何事も普通が一番。騒ぎを起こさず、無難に終わってくれるのが最良。まあネタがあろうがなかろうが、いつもの日常を感じられて俺は嬉しいけどね。ようやく、自分の世界に戻って来たって実感が湧いてきたよ。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「ふぅ、みんな楽しそうで何よりだな」

「ですね」

「うぉっ!? り、璃奈!? お前こんなところで何してんだ……って、そういやお前、どこかのイベントに出てたっけ?」

「出てないです。私は正体不明系スクールアイドルなので、人前には出ないのです」

「今流行りのバーチャルキャラみたいだな……」

 

 

 会場を巡り巡って疲れたから休憩しようと思ったら、いつの間にやら璃奈が隣に座っていた。相変わらずお手製のボードで素顔を隠し、自身の感情をボードに描かれる顔で表現している。ちなみに今は何故かドヤ顔であるため、自分が不思議ちゃん系スクールアイドルだということを自慢しているのだろうか……。確かに俺が出会ってきた女の子の中でも、コイツ以上に謎な奴はいないな。

 

 

「過去の一件が解決して気が楽になっただろうし、お前らもスクールアイドルとして本格的に活動してもいいんじゃないのか? ほら、お前らって俺の目に付かないように隠れて活動してただろ?」

「私は陰の人間だから、イベント事は陽の人間であるみんなに任せればいい。陰の人間はこうして、暗い日陰でジュースを飲みながら佇んでいるのが丁度いい」

「要するに、イベント事が面倒なだけだろ……」

「そうとも言う。でも勘違いしないで欲しい。スクールアイドルに特に詳しい訳ではなく、ミスコンに出られるほどの容姿もなく、運動神経もなく、リポーターとしてのコミュ力もない。だからイベントには出られなかっただけで、サボっている訳ではないと」

「典型的なオタク体質だよなお前……」

 

 

 卑屈だがプライドは高い。うん、コイツは紛れもないオタクちゃんだ。コミュ力はないと言ってるが、アニメやゲーム、電子工作の話になると途端に饒舌になるんだろうなぁ……。一度でいいから普段とは違ったそういう一面も見てみたいけどね。

 

 

「それに、私は基礎体力がないから明日の決勝戦に向けて体力を蓄えないといけない。みんなみたいに今日イベントに出て、明日決勝の舞台に上がるなんて私には無理」

「そうか、もう明日だもんな。楽しみだよ、お前たちのライブ。俺からしてみれば、お前らの生ライブを観るのは初めてだからさ」

「μ'sやAqoursよりも楽しみ?」

「その質問は迂闊に答えちゃいけないと思うが……ま、みんな同じくらいに楽しみだよ」

「無難過ぎて面白くない」

「俺は平等主義者なんでね。それに、俺はお前らが競ってお互いを高め合う姿を見たいだけだ。だからどのグループも等しく応援するよ」

「頑張る。だって私たちは、この時のために生きてきたんだから」

 

 

 過去の一件で、璃奈たちの生き甲斐は『神崎零』になった。辛い過去を払拭できた彼女たちだが、ずっと抱き続けている生き甲斐だけは変わらないのだろう。だからこそ虹ヶ咲は強い。自分たちの生きる意味がそれしかなく、その生き甲斐に向かって常に一直線なんだから。

 

 

「その前に、まずは今日のコラボライブだな。μ'sとAqours、A-RISEとSaint Snow、その他も異色のコラボグループが多いから、それを見て明日への期待を高めないと」

「残念ながら私たちにコラボ相手はいない」

「お前らは良くも悪くも今回ぽっと出のグループだから、そりゃ仕方ねぇだろ」

「ま、馴れ合いは必要ない。零さんがいてくれれば」

「お、おいっ、急に抱き着くなって……!!」

 

 

 これまでスキンシップなんて取ってこなかったくせに、いきなりどうしたんだ……?? 確かにこうして俺と何気ない会話をすること自体、虹ヶ咲のみんなからしたら幼い頃からの夢だっただろう。しかし誰が見ているか分からない会場内で、しかもスクールアイドルに抱き着かれている現場を目撃されたら――――――

 

 

「あ゛ぁーーーーーーっ!? 璃奈ちゃん何してるの!?」

「あ、歩夢!? どうしてここへ!?」

「おー最初に到着したのは歩夢さんだね。零さんはここにいると、みんなに連絡したのが原因かなぁ」

「それ以外に考えられないだろ……って、お前図ったな!? 誰かが来るタイミングを狙ってわざと抱き着いただろ?」

「この状況で最適な言葉、知ってる?」

「なんだよ……」

「てへぺろ」

 

 

 コ、コイツ……!? ちょっと可愛いと思っちまったじゃねぇか……!!

 

 

 その後、歩夢に続いて虹ヶ咲のみんなが続々休憩所に到着し、その度に俺が女の子に抱き着かれている様子を見られてしまった。みんなが抱き着いているのなら私にも抱き着かせろ理論で、こんなクソ暑い夏の中、ずっと抱き枕にされちゃったのは言うまでもない。女の子に揉みくちゃにされるのは大歓迎だけど、場所を弁えてないせいで周りの目が……。

 

 でも、これが歩夢たちの夢でもあったから、強く反抗できないのも事実。それにこうやって女の子に囲まれていると、いかにも俺だけの世界っぽくていいじゃん? そうだよ、これが俺の取り戻したかった日常なんだ。だから、今日くらいは大目に見てやってもいいかな。

 

 まぁ、テレビ中継に映らないことを祈るばかりだが……。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 グループ内の子たちが仲良さそうな光景だけでも満腹になれますが、別々のグループの子たちが楽し気に会話している様子を見るとお腹を壊すくらい満腹になります(笑)
元々スクフェス編はμ'sとAqoursメンバーの絡みを主軸としているところもあり、そこに虹ヶ咲も加わることで零君の日常がどれだけ充実しているかを描いてみました。作者ながらに思うのですが、本当に彼の世界は羨ましいです(笑)


 次回からは、この小説の大詰めとなるAqoursメイン回です。
 未だに零君のことを名前で呼べない彼女たちですが、その心境も大きく変わる時が……


 ちなみに小説の今後についてですが、あと4、5話程度で完結予定です。
 Aqoursとのこれからやスクフェスの決勝戦など、まだまだ見所はたくさんあるので、ぜひ最後までお付き合いください!

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