最終回と言っても、いざ執筆してみると内容がいつも通りで変わらず……()
「千歌。お前何してんだ……」
「えへへ、来ちゃいました♪」
朝起きたら高海千歌に添い寝されていたという、善良な男子なら誰しもが羨む状況になっていた。しかもただ添い寝されていただけではなく、薄いシャツ1枚で俺を抱き枕にして、発達過程の思春期ボディをこれでもかと言うくらいに押し付けている。高校時代の俺なら思春期が故の性欲が爆発して、相手の有無を言わせず襲っていただろう。それくらい今の千歌の格好は扇情的だった。
だが、俺はもう立派な大人。千歌たちとの教師生徒の壁はある程度取り払うことができたとはいえ、彼女たちの顧問を続けていることに変わりはない。だから顧問が教え子を襲ったり、増してや欲情したりなんて――――――
するに決まってんだろ!!
なんだよこのカラダ!? 幼さが残る顔をしてるくせに身体だけは肉付きが良く、抱きしめたいと思うほどに見てるだけでも柔らかそうなのが分かる。やはり田舎育ちで活発な女の子は身体もワガママに育つのか。それでいてシミ1つない綺麗な白い肌、反則級だろコイツ……。
「零さんが望むなら……私はいつでも準備OKですから!!」
「自分の身体を利用して男を誘うとは、お前もやるようになったな。でも俺の前でそんな格好をすることが何を意味するか、そこんところは分かってんだろうな? 純潔を保ったまま帰れるとは思うなよ……」
「わ、私は零さんが良ければ何でも――――」
千歌がもじもじしながら自らを差し出そうとしたその時だった。
俺の部屋のすぐ外でドアが軋む音、そして、顔を沸騰してるかってくらい真っ赤にした女の子が佇んでいることに気が付く。
「曜!? お前もそんなところで何してんだ!?」
「い、いやぁ零さんと千歌ちゃんがいい雰囲気だったので、ちょっと興奮していたと言いますか何と言いますか……」
「ってことは覗いてたのかよお前……。覗きで興奮するって相当陰険だな」
「ひゃっ!?」
「な゛っ!? 急に喘ぐな!」
「さっきもそうだったんですけど、零さんのSな発言にドキッと来たので……」
「曜ちゃん、変態さんみたいだね♪」
「お前が言うなよ……」
薄いシャツ1枚で男のベッドに忍び込む奴が、誰かを『変態』と罵る権利は全くない。それとも同族を見つけられて嬉しいのか。どちらにせよ俺は思考回路が尋常ではない女の子たちに囲まれピンチだということだ。これだけ淫猥さを露呈されると、逆にこちらから襲ってやろうとは思わないんだなこれが。もはやμ'sでこの手の対応には慣れているため疲れはしないのだが、そのせいでツッコミスキルも板についてしまった。俺から攻め立てれば千歌も曜もすぐ手籠めにできるのにそれをしないなんて、俺自身も大人になったと実感するよ。
脳内お花畑ちゃんに対しては、あしらいながら接してやるのがこちらの心身共に楽だったりする。ただ一部の女の子は俺のサディストな態度に妙な欲情を抱き、己の欲求を更に爆発させるから注意が必要だ。そう、今の曜みたいにな。段々と例の淫乱鳥と同じ思考回路になっているあたり、将来が怖すぎてならない。まあ俺も旅館で曜に手を出しちゃったから、人のことは言えねぇけどさ。
その時、俺の部屋にまたしても女の子の影が現れる。
「もう2人共、零さんを起こしてきてって言ったのに何してるの?」
「梨子!? お前まで来てたのか??」
「おはようございます、零さん。お目覚めはいかがでしょうか?」
「お前なぁ、この状況を見て快適に起きられたと思うか……?」
「で、ですよね……」
身体の凹凸がくっきり浮かび上がるくらい薄着の子と、俺たちの様子を部屋の外から覗きながら興奮している子。たった2人だけだが、普通の女子高校生ならまずそんな頭のイカかれた行動はしない。梨子もそんな状況を見て事情を察したようで、親友たちの痴態に顔を引きつらせていた。
ちなみに梨子は私服にエプロン装備(裸ではない)という家庭的な格好であり、近くにいる同級生2人と比べたら健全も健全である。それに彼女から少しいい香りがするので、もしかしたら朝飯を作ってくれているのだろうか。壁ドンのシチュエーションが好きだったり、百合モノに興味があったりとコイツもコイツで偏屈趣味を持っているのだが、やっぱり家庭的な女の子は素直に惚れちゃうね。今も梨子が入って来なかったらどんな修羅場になっていたか、そんな想像はしたくもない。
「零さん、今日の朝食は私が作ったので、是非ご試食をお願いします! 下で待ってますね♪」
「試食じゃなくても別に普通に食うけど……ま、楽しみしてるよ」
「ありがとうございます! ではお着替えが済みましたら、リビングへご足労をお願いします」
梨子は寝起きの眠気すらも吹き飛ばす眩しい笑顔を振り撒き、俺の部屋から去っていった。
あぁ~やはり女の子が料理を作ってくれるシチュエーションはいい。王道だけど、自分へ尽くす愛を感じられるのが堪らねぇんだよ。多股を正当化するつもりはないけど、これこそ複数の女の子と付き合っている利点と言うか、色んな女の子の様々な面を見られるのはそれだけで充実感が得られる。そうだよ、俺はこの感覚を味わうために生きてるんだよ。
そうやって俺が幸福に浸っていると、ベッドと部屋の入口から目線が2つ向けられた。
言わずもがな千歌と曜だが、2人からはどこか納得がいっていなさそうな不満足さを感じる。
「な、なに……?」
「いや、梨子ちゃんには甘いんだなぁ~っと思って」
「明らかに私たちに対する態度とは違いましたし……。まぁ私は少しぞんざいに扱われてもいいんですけど……」
「「え?」」
「え……?」
曜の発言に俺と千歌は耳を疑ったが、本人は訂正するどころかヤバい発言をしていることに気付いていない模様。
なんだろう、Aqoursの子たちと付き合っていくのはμ'sと同じかそれ以上に大変な気がしてきたぞ……。
~※~
どこかに出かける用事もないので適当に着替えた俺は、梨子の朝食を嗜むためリビングへ向かう――――最中だった。
階段を降りようとしたらそこに善子が立ちはだかっており、自慢のツリ目で俺を睨みつける。なんで怒ってるのかは知らないけど、俺また何かしちゃった?? μ'sと付き合い始めて5年目だが、未だに女の子に対するデリカシーは皆無なので、もしかしたら堕天使様の勘に触ることをしてしまったのかもしれない。いやでもさ、さっきの騒ぎは千歌と曜のせいだから。俺悪くないよな??
「お前も来てたんだな」
「なによ、来ちゃダメなの?」
「いや別にそこまで言ってないけどさ、ってか怒ってる?」
「怒ってないわよ。それより、ちょっとこっちに来なさい」
「えっ、ちょっ、引っ張るなって!」
善子は俺の返答も聞かず、手首を握って俺を力任せに引っ張る。
そしてそのまま2階の廊下を逆走し、彼女が行きついた先は――――――
「こ、ここトイレじゃねぇか!? ちょっと、オイ!?」
「いいから黙って入る! 私だって恥ずかしいんだから! 全く、変態の相手は疲れるわ……」
「はぁ?」
怒ったり呆れたり、挙句の果てには何故か俺と一緒にトイレに入るという謎の奇行。ツンデレのコイツが自ら俺を個室に監禁するなんて、千歌と曜と同じく遂に脳内にお花が咲き始めたか?
いや、そんな冗談を言ってる場合じゃないか。冷静に考えて、なんなんだよこの状況。トイレに善子と2人きりとか、この家には千歌たちや楓もいるってのにここでおっぱじめる気かよ?? 逆レイプはそこまで好きなシチュエーションではないのだが、コイツが勇気を出すってのなら……まぁそれはそれで受け入れてやってもいいかな、うん。
「聞いたわよ。アンタ好きなんだってね」
「何が?」
「――――――女の子に排泄処理してもらうの」
「ぶっ!? お、お前なに言っちゃってんの!? そんな偏屈な趣味はねぇっつうの!!」
「でも聞いた話によると、アンタはご主人様体質を振りかざして、毎朝別の女の子を使役してトイレを手伝わせてるらしいじゃない」
「根も葉もない事実を公然で語るな! 誰だそんなデマ流した奴!」
「南ことりさんと矢澤にこさんよ。『私たちの彼氏は1人でトイレができないから、善子ちゃんが手伝ってあげてね♪』って頼まれたんだから」
「アイツら、あとで覚えてろよ……」
今頃善子に襲われている俺を想像して、アイツらはほくそ笑んでいるのだろうか。考えれば考えるほど憎悪の念が沸き上がってくる。人に介護プレイ好きな変態という在りもしないキャラを植え付けやがって……。
しかし、そんなプレイが嫌いかと問われたら、実は完全に否定できない。確かに俺は攻める側の立場の方が好きなのだが、別に女の子に卑しく主導権を握られるのもそれはそれで悪くないと思っている。性欲を持て余している男子諸君なら分かってもらえるだろう、女の子に介抱される悦びを。ニート生活をしている自分を甘やかしてくれるその快楽を。そう考えると、女の子に甲斐甲斐しく世話をされるのも悪くない。
でも正直、家事を楓や秋葉に全て任せて形だけの主としてこの家に君臨しているあたり、日常生活からして女の子に世話させられてるんだけどな……。
「で、するの? しないの? こ、恋人同士になったんだし、ちょっとは手伝ってあげてもいいわよ!」
「なんだ、してくれる前提で俺をトイレに連れ込んだんじゃないのか? まさかここに来て怖気づいちゃったとか?」
「な゛っ!? わ、分かったわよ、やればいいんでしょやれば! ほら、とっととズボンを脱ぎなさい!」
「おい引っ張るな! そんなムキになるなって、悪かったから!」
少し煽ってやろうと思ったが、いつもの善子とは違って今日はやけに積極的だ。いやこんなことで積極的になられても反応に困るのだが、いつもは挑発してもここまでグイグイ来ることはないので驚いてしまった。いくらことりやにこに吹き込まれたとは言え、自分から男をトイレに連れ込んだりズボンを脱がそうとするなんて、コイツもコイツでμ'sの一部メンバーと同じくお花畑への道を歩み始めている。千歌も曜もそうだけど、Aqoursの今後が心配になるな……。
するとその時、トイレのドアが勢いよく開け放たれる。
その衝撃に俺も善子も身体をビクつかせるが、そんなものとは比べ物にならない威圧が漂ってきたことで、俺たちは自然と畏まってしまった。
「あなたたち、廊下まで声が漏れていますけど、一体何をしていらしたのでしょうか……」
「ダイヤ!? お前まで来てたのか……」
「千歌さんや善子さんだけだと、零さんと何をしでかすか分かったものではありませんでしたから。案の定、早朝から不純異性交遊をされているので見張りに来て正解でしたわ」
「してねぇよ! 俺は痴漢に襲われてるだけだ!」
「誰が痴漢よ!? アンタが1人で用も足せないって聞いたから、私もこうして勇気を出しているんじゃない!」
「なるほど、普段零さんが女性を侍らせて何をしているのか、大体理解できました」
「なんかお前ら、あらぬ知識を植え付けられ過ぎじゃね……?」
誰と出会ったせいで脳内が桃色になってるのかは知らないが、やはりコイツらとμ'sを合わせるべきではなかったのか……? 確かに内浦にμ'sが来た時からコイツらの性格が良いようにも悪いようにも変わった気がする。俺に対して積極的になってくれたのは嬉しいが、今のように無駄な知識を覚えたせいで余計な誤解すらも信じるようになったのはマイナスだ。
だが、これが俺の日常だったりもするんだよな。騒がしいと言えば騒がしいが、ほのぼのとしていると言えばほのぼのとしている。そこにμ'sだけでなくAqoursも溶け込んでくれたので、それはそれで喜ぶべきことなのかもしれない。俺の世界にようこそって意味でな。
しかし、μ'sの淫獣たちが振り撒いた誤解のウィルスだけは除去しておかないと……。
「いくら私たちの仲が進展したとは言え、生徒会長として不純異性交遊は認めません。ただでさえ1人の男性に対し複数の女性という社会的にあり得ない状況なのですから、それ以外の不純行為は何があっても避けてもらいませんと」
「分かってるけどさ、お前も相当度胸あるよな」
「えっ? どういうことですか?」
「だってさ、いくら騒いでいたとは言えここはトイレだぞ? よく勢いよく開けられたよな。既に俺が脱がされているかもしれないのに……」
「そ、それは……!!」
「へぇ、ダイヤも意外と期待してたんじゃないのぉ? コイツのあらぬ姿を合法的に見られると思ってね」
「そ、そんなことは……!!」
俺と善子のダブルパンチに、さっきまでとは攻守逆転。ダイヤは耳まで顔を真っ赤にしてわなわなと震え出す。
正直、言われっぱなしだと癪だから悪あがき的な感じで攻めてみたのだが、まさかここまで効果があるとは……。それに善子の攻めに対しても激しく動揺しているので、もしかしてコイツも意外と脳内桃色……??
「と、とにかく! もうすぐ朝食なので早くリビングへ来てください!」
「あっ、誤魔化したわね」
「いいですか!? 朝食が冷める前に着替えて来ること、それでは!!」
結局顔の沸騰は収まらないまま、負け惜しみに等しい言葉を残しつつトイレのドアを勢いよく閉めた。
なんだろう、今すっごく清々しい。澄ました顔をしている女の子ほど、裏ではどんなドス黒い欲求が渦巻いているのか分からないもの。その裏の顔を白日の下へ晒した時に見せる顔ったらもうね。あまり考えたくはないけど、ダイヤもいずれ……?
「そういやさ、どうしてお前は俺のトイレを手伝おうと思ったんだ? もしかしてお前も千歌やダイヤと同じ……?」
「ふ、ふざけんじゃないわよ!! あ、ああああんな変態共と一緒にしないでくれる!?」
「動揺し過ぎで丸分かりだから……。でも普段ツンツンしているお前がこんなことをするとは、人っていい意味でも悪い意味でも変わるもんだな」
「別に卑しい気持ちばかりって訳じゃないわよ。せっかくアンタから告白してもらって、私も返事をしたのに、ここ最近はずっと会えなくて……その、寂しかったと言うか……」
善子は頬を染めながら俯き、ツンデレの"デレ"を思いっきり協調させながらもじもじする。
なるほど、要するに構ってもらいたかっただけか。連絡はほぼ毎日取り合っていたものの、こうして顔を合わせるのはスクフェスの打ち上げ以来だから、そりゃ寂しくもなるわな。実のところ、俺も久々にAqoursの面子に会えて嬉しいんだよ。まあ添い寝だったり覗きだったり、はたまたトイレで逆レイプなど、再会を喜んでいる暇は全然ないんだけどさ……。
でも同じ気持ちをコイツの口から聞けて、ようやくAqoursに再会したという現実を受け入れられた気がする。素直に想いを伝えられないからこうしてトイレで2人きりになろうと画策するあたり、相変わらず善子は善子らしい。
「可愛いな」
「は、はぁ!? か、かか可愛くなんてないわよ!?」
「いいや、可愛いね」
「も、もう付き合ってられないわ!! トイレを手伝ってあげようと思ったけどやめた! 精々1人で垂れ流すことね! 無様に水溜まりを作った姿を、笑いながら撮影してやるんだから!!」
そう怒鳴り散らし、善子もダイヤと同じくトイレのドアを勢いよく閉めて出て行った。
そうやって人の挑発に対してチョロいところもまた微笑ましいんだよな。もちろん可愛いってのは本音だけど。
そして、俺からもアイツに怒鳴りたいことが1つ。
「だから、トイレは1人でできるっつうの!!」
To Be Continued……
読み返してみればみるほど最終回には見えないのですが、こうしてAqoursとバカ騒ぎするのは久々で、しかもここまで親密にお互いの距離が近いのはやはりスクフェスの一件があったからこそだと思います。そして千歌たちが零君に対して積極的が過ぎるのも、成長の証……かも?
スクフェス編では恋愛やシリアスな描写をたくさん描いてきましたが、やっぱり今回のようなエロギャグが一番好きですね(笑)
次回は最終回の2本目。Aqoursはもちろんですが、μ'sの面々も登場しますよ!