ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 今回はシスターズ回ですが、1話の中で3つの話がある短編集となってます。改めてシスターズの魅力を感じていただけたらと。

 でも雪穂が割を食ってる感は半端ないですが……




※今回の時系列は零君たちが音ノ木坂を卒業する前です。


シスターズの日常

【高坂雪穂は超苦労人】

 

 

 

 私は亜里沙と楓の3人で旅行をすることになったので、今その旅行先を決める打ち合わせをしている。

 ちなみにその打ち合わせを青空の下の野外カフェでしているんだけど、亜里沙も楓もカフェの特製パフェに夢中で打ち合わせは一向に進まない。ま、この2人と一緒にいると話の主題から脱線することなんていつものことだから、今更咎めたりはしないけど……。

 

 でもこのままだと亜里沙も楓も目的を忘れちゃいそうなので、ここは私が舵を切ってあげますか。

 

 

「ねぇ、そろそろ旅行について話し合わない? このままだとただのお食事会になっちゃうよ」

「あっ、パフェが美味しいからすっかり忘れてた!」

「そういえば、そういう名目で集まったんだったね」

「いや名目じゃなくてそっちが本命だから……」

 

 

 亜里沙はいつも通りマイペースだけど、楓も楓で自分の興味が唆られるものがあるとそっちに熱中してしまい、本来の目的を見失ってしまうことがままある。だからそんな2人を軌道修正させるのが私の役目。高校入学の時に楓と出会った頃は亜里沙のこの性格も相まって苦労したけど、今では私が面倒を見てあげることが普通になってるから、本当に慣れって怖いよ……。

 

 

「まずは行き先を決めなきゃだけど、亜里沙と雪穂はどこへ行きたい?」

「う~ん、せっかくだから日本の文化を思う存分感じられるところがいいかな」

「相変わらず和風テイストが好きなんだね。そうなるとホテルよりも旅館、温泉旅行にするのがいいかも。雪穂はどこか行きたいところある?」

「私はまぁ……2人の行きたいところでいいよ」

「雪穂も相変わらずだねぇ~。欲がないと言うか、冷めてるって言うか……」

「別に私はみんなで行けたらそれでいいってだけだよ」

 

 

 この3人で旅行をすればどこへ行っても楽しいのは目に見えている。まあ楓もそれを踏まえてどこへ行きたいのか私に聞いてきたんだと思うけどね。移動時間や費用の面を考えて、この打ち合わせの前にあらかじめ決めておけば良かったかな?

 

 

「どうせならお兄ちゃんも一緒に行けたら良かったのになぁ~」

「うんっ! 零くんが一緒だったら絶対に楽しいよね!」

「仕方ないよ。一応受験生なんだから」

「穂乃果ちゃんたちに勉強を教えるから家に残るって言ってたし、零くんって意外と律儀だよね。一緒に旅行できないのは残念だけど、流石に勉強の邪魔はできないし」

「それもこれもお兄ちゃんを拘束してる穂乃果先輩のせいだ。穂乃果先輩さえいなければ穂乃果先輩さえいなければ穂乃果先輩さえいなければ穂乃果先輩さえいなければ穂乃果先輩さえいなければ穂乃果先輩さえいなければ……」

「楓、いつもの病気発症してるから落ち着きなって……」

 

 

 また始まったよ……。楓は零君のことになるとすぐに熱くなる上に、そこにお姉ちゃんが絡んでいると大体この発作が発症する。もちろん本気で憎んでる訳じゃないって分かってるけど、楓もいつまで経っても治らないなぁこの性格。零君曰く、楓のこの様子を巷ではヤンデレって言うらしい。精神が異常なほどに病んでるけど時折デレを見せる――――らしいんだけど、どう見てもデレてはないよねこれ……。

 

 中学生時代から亜里沙の天然っぷりに大きく振り回されていたけど、高校に入ってからは楓も加わって、私がフォローする手間が二倍になった。慣れたとはいえ、こうして会話が脱線し過ぎるのは毎回困っちゃうよ……。

 

 

「そうだ! 私たちが零くんの家に行けば、それで解決じゃない? 楓も零くんと一緒にいられるし、私たちも零くんと1日中一緒だしね!」

「なに言ってるの亜里沙……? 流石にそれは――――」

「えっ、もしかして亜里沙って……天才!? 確かにお兄ちゃんがいるところこそ私の聖地なんだし、他の観光スポットなんかよりもお兄ちゃんと一緒にいる方が断然いい!」

「いや、いつも一緒にいるでしょ……」

「それじゃあ、私たちの旅行先は零くんと楓の家に決定だね♪」

「それってただのお泊り会じゃ……って、どうせ聞いてないからもういいや……」

 

 

 こうしてツッコミを入れることすら放棄してしまうほど、この2人が生み出す超展開には慣れている。こうして人って毒されていくんだね……。

 

 

 

 

【絢瀬亜里沙は超天然】

 

 

 絢瀬亜里沙。私が中学生の頃からずっと一緒にいる親友です。

 彼女は身の回りの何事にも興味を持ち、自分の打ち込むことはどんなに些細なことでも全力で取り組む一途さを持っている。そして菩薩の心を持っているかってくらい優しく、先生や同級生からも人一倍頼りにされている存在。

 

 そんな聖人のような親友ですが、親友であるがゆえに困った言動が多いのも知っている。

 言うまでもなく、彼女は天然な性格。それも"超"が付くほどのド天然で、返答に詰まったり思わずツッコミを入れてしまうこともしばしば……。

 

 

「ねぇ亜里沙。私にホーム画面のスクショを送って来たでしょ? 突然どうして自分のスマホのスクショを……?」

「その時ね、うっかりスマホを落としちゃって画面が割れちゃったんだ。でもそれがお花のような模様で割れちゃって、綺麗だと思ったから雪穂に見せたかったの♪」

「え、え~と……あ、あのね亜里沙、スクショしても割れた画面は映らないよ……?」

「えっ……あっ、そ、そっか!!」

「…………」

 

 

 このように、こっちが説明するまで自分の行動のミスや問題に気付かないこともある。まあこういうところが可愛いって思う男性もいるし、むしろそっちの方が多数派だと思うけど、私は亜里沙や同じうっかりさんのお姉ちゃんを昔から見慣れてるから、もう呆れて溜息しか出ないんだよね……。

 もちろんいつも天然を発揮してるわけじゃないけど、だからこそこうして天然ボケの行動を炸裂されると衝撃が大きい。これが亜里沙の魅力と言えば魅力なんだけど……。

 

 次はこんなエピソードを。

 

 

「ど、どうしよう雪穂!?」

「どうしたのそんなに慌てて。とりあえず落ち着いて」

「だって財布を落としちゃったんだもん! 落ち着いていられないよ!!」

「なるほどね。気持ちは分かるけど、私も一緒に探してあげるから安心して。そうだ、μ'sの皆さんにも連絡したいから、どんな財布なのか教えてくれる? 形とか色とか」

「う、うん……あっ、これだよこれ! こんな感じの財布!」

「…………そ、それは新手のボケ?」

「どういうこと?」

「ズボンの後ろポケットから出したそれが、探してた財布じゃないの……?」

「あ……あ゛ぁ゛あああああああああああああっ!? ゴ、ゴメン雪穂! いつもは後ろポケットに入れないからつい……」

「…………」

 

 

 この後しばらく私は無言になっちゃって、その間も亜里沙がずっと謝っていたのは記憶に新しい。こうして慌てている原因が自分の天然さだったなんてこと、もう何度見てきたか分からない。人前では普通にしっかり者だから、私や楓といる時は安心して無意識に気を抜いちゃうのかな……?

 

 そう楓。あの悪戯好きで小悪魔な楓すら困惑するエピソードもあったりする。

 

 

「私、亜里沙みたいな天然な子は初めて見たよ。でも、純粋な子ほど黒に染めやすいけどね……♪」

「天然……? 髪はお姉ちゃんとは違ってパーマをかけてるから、天然パーマじゃないよ? それにこの髪の色は地毛で私のお気に入りだから、いくら親友の頼みでも絶対に染めたりしないもん!」

「い、いやそうじゃなくってね……」

 

 

 楓は亜里沙を弄ろうとしたのに、逆にカウンターをもらって戸惑ったりすることもある。

 そして、極めつけはこれ。

 

 

「亜里沙って意外と胸が大きいよね。ロリ巨乳は世間からの需要が高いよ~♪」

「高校生になってから急に大きくなり始めたんだけど、私としては大きくなって良かったかな」

「確かにその胸さえあれば、お兄ちゃんも絶対にイチコロ――――」

「だって大きい方が、赤ちゃんが母乳を吸いやすいでしょ? 私いつか立派なお嫁さんになって、子育てを楽しむのが夢なんだ! 早く赤ちゃんのお世話とかしてみたいの!」

「そ、そっか……」

「ん? どうしたの楓?」

「いや、なんか亜里沙が眩しすぎて自分に罪悪感が……」

 

 

 こんな感じで、楓が際どい話題を振ってもスルーどころか、純白度100%の心を無意識に曝け出して楓に懺悔させる。この時だけは亜里沙の天然な性格が本領を発揮する瞬間だったりする。私でも楓の相手は苦労するのに、それをノーダメージでカウンターするのは尊敬しちゃうよ……。

 

 

 

 

【神崎楓は超ブラコン】

 

 

 

 私たちは零君からシスターズって呼ばれているらしく、その理由はもちろん私たちがみんな誰かしらの妹だからだ。しかも零君曰く、妹は妹でもブラコンとシスコンの集まりだから奇妙な連中――ということらしい。

 確かに亜里沙は姉である絵里ちゃんのことが大好きだし、楓は零君のことを心酔していると言ってもいいほどのブラコンだ。対して私は……うん、お姉ちゃんのことは普通のお姉ちゃんと思ってるだけだよ。お姉ちゃんがμ'sのリーダーや生徒会長をやっていた頃に、ちょっと心配してあげるくらいの普通の妹だから。

 

 私の話はさて置き、問題は楓だ。

 楓のお兄ちゃん好きは一般的に許容し難いものとなっており、友達として誰よりも近くで彼女の話を聞いてる私なら分かる。もう病気だよ、楓はね……。

 

 

「楓って家事が得意だよね? 料理も洗濯も掃除も……。まだ高校生なのに、どうして家事をしようと思ったの?」

「そりゃ私は綺麗好きだからね。対照的にお兄ちゃんとお姉ちゃんってズボラでしょ? だから私がしっかりしないと、家が汚れ塗れのゴミ屋敷になっちゃうよ」

「ふ~ん……」

「なにその期待外れ感を醸し出してる顔は……」

「いや、もっと人様の前では公言できない答えが返ってくるものかと……」

「ということは、雪穂は人様と認められなくてもいいから裏の回答を聞きたかったと」

「別にそういう訳では……」

「いいよいいよ言い訳しなくて。そっかぁ~聞きたいか~♪」

 

 

 うわぁすっごく嬉しそう……。私が余計なことを言ったばかりに、楓の発揮しなくてもいい欲求を刺激しちゃったみたい。この小憎たらしい顔は、明らかに際どい発言で相手を困らそうと画策している時の顔だ。長い間ほぼ毎日一緒にいるので、もう顔を見ただけでこの小悪魔の考えてることは大体分かるようになってきた。なんか、私ってつくづく亜里沙と楓に毒されているよね……。

 

 

「今私ってお兄ちゃんと2人暮らしでしょ? だから家事を一手に引き受けることにメリットしかないんだよねぇ~♪」

「あの……聞いてないんだけど?」

「例えば、洗濯物を洗う時にお兄ちゃんの服の匂いを嗅げたり、食器を洗う時はお兄ちゃんの使ったお箸を咥えてみたり、お兄ちゃんの毛布をクリーニングする時はそれに包まって、お兄ちゃんの香りに囲まれたり――――」

「あぁもういいからいいから! 段々声も大きくなってるし、周りに聞こえちゃうって!」

「はぁ? まだ話したいことの100分の1も話せてないんですけど??」

「どうして私が悪いみたいになってるの……」

 

 

 楓は傍から見たら間違いなく奇行だと思われる行動を自慢話として話す。しかもその間にテンションが上がって自然と声が張るため、毎回こうして私が失速させてあげないと周りの目が痛くなる。兄のことを好きだって気持ちは伝わってくるけど、伝える相手は私くらいにして欲しいよ……。い、いや変な意味じゃなくて、単純に耳が痛くなりそうなこんな話を他の人に聞かせたくないだけだから。

 

 しかしこれだけだと、普通のブラコンで片付けられる範囲だ。

 だけど楓はそこらのブラコンとは一回りも二回りも違って――――

 

 

「妹として、兄の体調管理をするのは大切だよ。ちゃんといい香りや味がするかを確かめて、健康かどうかをチェックしないと。そのためにはお風呂のお湯だって……♪」

「なにニヤニヤしてるの気持ちわる……。まさか飲んでるの……?」

「えっ、飲まないの?」

「そのさも当然かのように質問するのやめて……。ていうか、飲むわけないでしょ汚いじゃん」

「お兄ちゃんは汚くない!! この世のどんな万物よりも清潔で、お兄ちゃんの存在があらゆる穢れを浄化することを知らないの!? ここまで一緒に付き合ってるのに!? いくら親友でも、お兄ちゃんを侮辱したらここで首折るからね!!」

「えぇ……」

 

 

 こうして、零君のことになると発狂するレベルで暴走する。これが零君の言っていたヤンデレ妹ってやつらしいけど、確かに狂気だよこれは……。

 楓が重度のブラコンなのはμ'sでも周知の事実だし、楓の零君に対する態度を見ていればμ's以外の人でも分かる。でも分かっていてもなお極限を振り切った暴走には毎回驚かされてしまう。この世の中には色んな趣味を持った人たちがいて、その人たちはそれがさも当たり前のように生きていると思って住み分けをした方がいいかもね。素人が気軽に足を突っ込んじゃうと、こうして殺人宣言をされるくらい怒られるんだから……。

 

 

 ちなみに、ここに亜里沙が加わると別の意味で面倒なことになる。

 

 

「昨日ね、お姉ちゃんが財布をなくしたって慌ててたんだけど、実は後ろのポケットにあったんだよ。天然なお姉ちゃんも可愛いでしょ♪」

「お兄ちゃんは天然ボケはしないけど、寝起きでぼぉ~っとしている時は子供みたいで可愛いよ!」

 

 

 こうしてお互いの姉と兄の自慢話が始まる。 

 そして極めつけは――――

 

 

「雪穂も穂乃果ちゃんの可愛いところとか知ってるでしょ? ほら、雪穂も話してみて!」

「えっ、私はいいよ……」

「穂乃果先輩って可愛いというよりドジっ子だから、雪穂ならいいエピソード知ってそうだよね。こりゃどんなうっかりエピソードが語れるのか楽しみだなぁ~♪」

「うんうん! 雪穂は周りのこともよく見てるし、面白い話たくさんできそう!」

「え、えぇっと……」

 

 

 このように、理不尽に話題を振られるのはもはや定番オチとなってしまっている。亜里沙は純粋だからこそ無茶振りをしていると気づいておらず、逆に楓は分かっていながら無茶振りをしてくるので相変わらずの小悪魔、いや悪魔だ。関わりたくない話題が私に飛び火してくることなんて日常茶飯事だから、いつも通り慣れちゃってるけどね。

 

 あぁ、この2人のペースに順応してきている私が怖い。むしろこの2人をある程度手懐けていることに対してご褒美が欲しいくらいだよ。いや、ホントに……。

 




 私からはこれだけ、3人共みんな可愛いっす! 以上!!
 シスターズの構成ってアニメでのサブキャラ2人+この小説のオリキャラ1人の組み合わせなのに、この3人のグループ回も多く穂乃果たちよりも目立ってるような気がします(笑)


 次回は零君たちが音ノ木坂を卒業した直後の話で、穂乃果、ことり、海未の3人と卒業旅行に行く話です。もちろんこの4人の旅行なので、騒がしくない訳がなく……()



 ここからは宣伝になりますが、本日の早朝に『BanG Dream!』、通称バンドリの新作小説『ガールズバンドの子たちに甘やかされる日常』を投稿しました。ラブライブ小説が肉食系ハーレムなのに対し、向こうは草食系ハーレムとなっています。どういう意味かはあちらを読んでご確認ください!
(まあ1話目は企画小説の時に投稿した話の焼き増しですが……)

 この小説と同様にキャラを知っている前提のお話ですが、知らなくてもオリジナル小説として楽しめる……かも?

 もしよろしければ、是非あちらの小説にも感想と高評価をよろしくお願いします!

URLで飛ぶ方は↓から
https://syosetu.org/novel/186595/

それ以外の場合は私のユーザーページより小説にアクセスしてください。

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