ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 起承転結の『転』の回。
 前半は楓視点で、前回の最後で零君と雪穂たちが出会った時間系列よりも前の話。後半は雪穂視点で、零君と出会った後の話となります。


妹たちの決意

 

 私の全てはお兄ちゃんのためにある。

 私の人生はお兄ちゃんによって導かれ、私のアイデンティティもお兄ちゃんによって形成されたと言ってもいい。

 

 私は幼い頃からずっとお兄ちゃんに遊んでもらっていて、話す言葉も身体の動かし方も、世間の常識も何もかもお兄ちゃんから教えてもらった。お父さんは海外の大学の教授、お母さんは女優の仕事、お姉さんは研究に没頭しがちだったせいで、最も私の身近にいたのがお兄ちゃんだ。

 

 そうやって溺愛されていたせいか、私の人生の楽しみがお兄ちゃんと一緒にいることになった。友達と遊ぶ暇があったらお兄ちゃんと遊ぶ。だから私は小学生の頃から掃除や洗濯、料理などの家事スキルを身に着け、将来お兄ちゃんに尽くすために躍起になっていた。

 

 もうその頃から惚れていたのかもしれない。幼い時は恋愛感情を抱いているなんて思わなかったけど、今思えばそれは紛れもなく恋だったのだろう。

 実の兄妹だからとか、周りの目が痛いとか、そんなものは関係ない。私の世界にはお兄ちゃんと私しかいないんだから、世界の外にいる連中の目を気遣う方がおかしい。私たち以外の人間なんていないも同然。恋人同士になった今だからこそ余計にそうだ。

 

 これからはずっと一緒。ずっと隣にいる。

 お兄ちゃんが音ノ木坂に入学する年、お兄ちゃんは学校の近くへと引っ越した。まだ中学生だった私は追いかけることもできず、途方に明け暮れ――――はしなかった。逆に来年から2人暮らしができるチャンスだと思い、そのためにその1年で私は家事スキルを完璧に仕上げた。そう、全てはお兄ちゃんの側にいるために。

 

 そして、私が音ノ木坂に入学する年、お兄ちゃんに尽くす完璧な妹となって家に転がり込んだ。

 そこからはもう至高の毎日。毎朝お兄ちゃんの寝顔を見ながら起こしてあげて、朝食を作ってあげて、一緒に学校へ行って、一緒にμ'sの活動をして、一緒に帰宅して、一緒に夕飯を取り、たまに一緒にお風呂に入り、たまに一緒に寝る。もう私の人生の全てがお兄ちゃん色に染まった。

 

 そんな最高の生活の中で恋人同士になり、現在に至る。

 だから私にはもう、お兄ちゃん以外に必要なくなった。友達も仲間も、何もかも。

 

 

 そう、思っていた。

 

 

 思いたかった。

 だけど、何故か心が苦しい。

 

 

 違う、これはお兄ちゃんと離れ離れになった寂しさのせいだ。

 ()()()()は関係ない。

 

 

 お兄ちゃんさえ、いればいいんだ。

 

 

 そう、お兄ちゃんさえ――――――

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「お兄ちゃん、昼食できたよ。ゴメンね、帰ってくるのが遅れちゃったせいでご飯も遅くなって……」

「別にいいけど、何があったんだ? お前、今朝は早く帰ってくる気満々だったのに」

「ちょっと邪魔者がね……。そんなことより、早く席に着いて!」

 

 

 お兄ちゃんは大学生になった。大学は高校までとは違って朝から夕まで授業――ではない。今日のように、朝のみの講義で昼からは帰宅して家にいることもある。大学生が人生の夏休みと言われるのはそれが理由だ。

 

 今日は高校が午後から入学式のため、在校生は午前の始業式だけで終わり。だから私も早く帰宅して、お兄ちゃんに手厚い昼食を振舞っているという訳。なるべくお兄ちゃんには贅沢させてあげたいしね。カップラーメンでお昼を過ごすなんて言語道断だから。

 

 それに、私はお兄ちゃんにご奉仕をしている瞬間が人生で一番楽しい。それが私の生き甲斐であり、生きている意味でもある。お兄ちゃんがいなかったら、私がこの世に存在する必要もないんだから。

 

 

 だけど、今日はどうも様子がおかしい。お兄ちゃんは黙々と昼食を取っている。いつもなら会話の話題が途切れたりすることはないのに、空気が少し重い。お兄ちゃんに限って大学の環境に慣れず疲れているってことはないと思うから、もしかして――――――

 

 

「お兄ちゃん、私の料理美味しくなかった? さっきから手が全然動いてないようだけど……」

「ごちそうさま」

「えっ、待って待って! まだこんなに残ってるのに!? 身体の調子が悪い……とか?」

 

 

 お兄ちゃん、怒ってる……? いや、私の料理を食べてそんなことはないだろう。いつもは美味い美味いと言って笑顔を見せてくれて、私はその表情を見るのが何よりも至高なのに……。

 

 お兄ちゃんは箸を置いて、その場で立ち上がった。

 

 

「お前、俺にこんなマズい料理を食わせる気か?」

「え……?」

 

 

 お兄ちゃんが何を言っているのか、さっぱり分からなかった。

 私の料理が不味い……? お兄ちゃんが今までそんな文句を垂れたことはない。それに、私の料理はお兄ちゃんの愛がふんだんに込められているはず。料理は愛情。私の料理が不味い訳がない。私の人生の全てをかけて、お兄ちゃんの好みの味付け、食感、盛り付け――ありとあらゆる技術を身に着けたはずだ。それなのに不味い?? これまでそんなことを言ったことは一度もないのに、今日に限ってどうしてこんなことを……。

 

 お兄ちゃんがテーブルから立ち去ろうとしたので、私は咄嗟にその進路を遮る。

 このままだと、お兄ちゃんが私を拒絶したままになってしまう。だから、何としてでもそれを避けないと……!!

 

 

「どけ」

「具体的にどこが悪かったか教えて? もう一度作り直すから!」

「その必要はない。マズいモノを食わされて、食欲がなくなったんだよ」

「ゴ、ゴメンね……」

 

 

 お兄ちゃんが怖い。でも、ここで引く訳にもいかない。お兄ちゃんに拒絶されっぱなしなんて、私が生きている意味がなくなってしまう。そんなの耐えられない。ただでさえ、今日は耐えられない日だったのに……。

 

 

「部屋に戻って昼寝したいから、早くドアの前からどけ」

「嫌だ! 気に入らないことがあるのなら遠慮なく言ってよ!」

「だから飯が不味いって言っただろ」

「私の料理に限ってそんなことない!! あっ、もしかして大学の環境に慣れずにストレスが溜まってるとか? だったら、私をストレスの捌け口にしていいから! 私の身体はお兄ちゃんの身体なんだよ? だから好きに使っていいの! 乱暴にされてもいい、私はお兄ちゃんを感じられればそれでいい!」

「早くどけ」

「どうして!? もう何度もエッチしてるのに、どうして今日だけは抱いてくれないの!? 私にもっとお兄ちゃんを感じさせてよ!」

「…………それが本音か」

「え……?」

「何でもない、ちょっと出かけてくる」

「ちょっ、お兄ちゃん!?」

 

 

 お兄ちゃんは無理矢理私のガードを通り抜け、リビングを後にした。

 さっきは昼寝をするって言ってたのに、突然出かけるなんて……。そんなことよりも、お兄ちゃんに見捨てられたことの方が問題だ。お兄ちゃんからの愛を感じられなかったら、私は生きている意味がない。咄嗟に自分の身体を差し出したのも、どんな形でもいいから愛を感じたかったからだ。お兄ちゃんから与えてくれるなら、それが純愛であろうが苦痛であろうが何でも構わない。それくらい、お兄ちゃんが好きなんだから。

 

 今まではお兄ちゃんの愛を感じられなくなることなんてないだろうと思っていた。恋人同士になり、その可能性はより一層薄くなったはずだ。

 だけど、拒絶された。そんな、そんな……!!

 

 

「お兄ちゃん、どうして……」

 

 

 私にはお兄ちゃんしかいない。ぽっかり空いたこの心を埋めてくれるのは、お兄ちゃん以外にあり得ない。

 今日の午前中、ずっと我慢していた。朝食の時はまだ耐えられた。だが、それ以降はもう虚無だ。新しいクラスも、始業式も、何もかもがどうでもいい。私の頭に浮かぶのはお兄ちゃんの笑顔だけ。それ以外には何もいらないんだから……。

 

 

「くっ……」

 

 

 その時、脳裏に嘗ての親友であった2人の顔が浮かぶ。

 μ'sを含め、あの2人は私の引き立て役。お兄ちゃんと結ばれるために、私自身の魅力を上げる手段の1つに過ぎない。そして、私とお兄ちゃんが恋人同士になった以上、あんな奴らはもう必要ないんだ。所詮、私が人生を円滑に歩めるようにするための駒。そんな駒の分際で、今日の帰りに声をかけてきて……。

 

 そう思っているはずなのに、どうしてこんなにも心が痛いの……?

 あの2人と別れてから、家に帰るまではずっとそうだった。私はお兄ちゃんさえいればいいのに、これからお兄ちゃんに私の料理を振舞える喜びがあったはずなのに、帰宅途中ずっと心が締め付けられていた。

 

 今もそう。私がお兄ちゃんを求めるたびに、あの2人の顔がチラつき心が痛む。

 

 こんなことなら、最初から友達になんてなるんじゃなかった。

 やっぱり、私にはお兄ちゃんがいてくれればそれでいい。

 

 だから、お兄ちゃんにまた求めてもらえるように、今度は失敗しない。そのためにはまず料理を作り直さないと。このまま拒絶されっぱなしだったら、私が私でなくなってしまう。お兄ちゃんが私の心を掴んでいるように、私もお兄ちゃんの心を掴み取っているはずなんだ。私たちは相思相愛。そこに、誰1人として入り込む隙間なんてない。

 

 それが、あの2人であったとしても――――――

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 私と亜里沙は神崎家に向かう途中、偶然にも零君と出会った。

 どうやら零君は私たちを探していたようで、私たちどちらの携帯にも連絡が入っていた。私たちは楓とどのように話し合うのかを議論することに集中していたから、零君からの連絡に全然気づかなかったよ。そして彼に出会うまで、私たちよりももっと楓の近くにいる人のことをすっかり忘れていた。灯台下暗しっていうのはこのことを言うのかな……?

 

 私たちは場所を公園に移した。

 私たちとしても、零君から楓が今どんな様子なのかを聞きたかったところだ。彼ならいつどんな時でも的確な助言を与えてくれる。どれだけ考えても楓の気持ちを汲み取れない今の私たちには、もう彼に縋るしかなかった。

 

 

「なるほど、アイツとお前らにそんなことが……」

 

 

 私たちは零君に、今日起こったことの全てを話した。

 音ノ木坂の新入生歓迎会でライブをすること、楓がノリ気ではなかったこと、そして、彼女から縁を切られてしまったことを。その話をしている間にも楓に決裂された時のことを思い出し、私も亜里沙もまた気持ちが沈んでしまいそうになったけど、零君がいるという安心感が私たちの正気を保ってくれた。一緒にいるだけでここまで救われるなんて、本物のヒーローみたいだね……。

 

 

「それで真姫たちに頼まれて、お前らが俺の家に来ることになったのか」

「はい。でも結局勢いだけで、楓とどう向き合うかは行き当たりばったりなんですけどね……」

「そうか。確かに、それだとお前らの声は楓の心には響かないな」

「えっ、零くん、楓の様子がおかしい理由を知っているんですか?」

「あぁ、朝からテンションが低かったからなアイツ。その時はまだ確証がなかったけど、お前らに対して冷酷に振舞うアイツを想像したら、何となく分かったよ」

 

 

 やっぱり、楓のことを知るなら一番近くにいる人に聞くのが手っ取り早かったね……。もし零君に相談することに気付いていたら、私たちもあそこまで心が締め付けられずに済んだかもしれない。まぁ、今となっては後の祭りだから、楓と真っ向から向き合える方法を考えよう。そのためには、彼女の悩みの種を教えてもらわないと。

 

 

「結論から言うと、アイツは寂しいんだよ」

「「寂しい?」」

 

 

 今日の楓を思い出すと、あまりそういう風には見えなかったけど……。なんか何もかもやる気のない感じで、いつも以上に自分の気に触れるような人には容赦がなかった気がする。寂しいというよりかは、むしろイライラしている印象だった。

 

 

「お前らも知っての通り、アイツは超が付くほどのブラコンだ。アイツが音ノ木坂に入学したのも、俺と一緒の学校に通いたかったから。そうすれば起床から登校、下校からおやすみまでずっと一緒だからな」

「おやすみって……」

「い、いや、1日中一緒にいられるって比喩表現だ分かれよ!」

「そっか! 楓の様子がおかしくなったのは、零くんが大学に行っちゃったからじゃないですか?」

「うん、俺もそうだと思ってる。アイツにとっての生き甲斐は俺だから、その俺と一緒に学校に行けなくなって寂しいんだろう」

 

 

 確かに言われてみれば、この4月から零君は大学に行ってしまい、楓は1人で登校せざるを得なくなった。お兄ちゃん大好きっ子の彼女からしてみれば、愛しのお兄ちゃんと一緒にいられる時間が減ることは私の想像以上に辛いことなのだろう。

 

 でも――――

 

 

「でも、それだけであそこまで不貞腐れたりするんですかね……? 登下校は一緒じゃないにしても、家だと2人きりな訳だし……」

「楓にとっては些細なことじゃないんだよ。わざわざ俺と一緒の高校に入学して、親元を離れて2人暮らしをしようと転がり込んできた奴だぞ?」

「だけど、零君が卒業したらいずれは1人で学校に通うなんてことくらい、分かっていたはずですよね? 零君が留年でもしない限り、卒業するのは零君の方が早いなんて普通のことですし」

「それは楓も分かり切っていたはずだ。でも、自分が想定していたよりも虚無感が半端なかったんだろ。今日という日を実際に迎えて、それを痛感したんだと思う。兄と通学できないことなんて『たかが』と鼻で笑われるかもしれないけど、アイツにとってはそれが全てだったんだよ」

 

 

 ようやく楓の苦しみが分かった。私はお姉ちゃんとそういう関係ではないから理解することはできないけど、彼女の性格が兄によって成り立っていることはよく知っている。零君の言う通り、私も少し『たかが』そのくらいのことと思ってしまった。だけど楓にとっては重要な問題で、自分の心にぽっかり穴が空いてしまうほどだったんだ。私たちが楓の悩みに気付けなかったのは、もしかしたら『たかが』で軽んじていたからかもしれない。神崎楓という人物を知って入れば、誰にでも辿り着けそうな問題だったのに……。

 

 亜里沙も事の概要は全て把握したようで、黙っているところを見ると、私と同じように自分の中で情報の整理をしているようだ。

 楓の悩みの原因が零君と一緒にいられないことだったら、もう私たちの出る幕はない。彼女を救ってあげられるのは、他の誰でもない零君だけなんだから。

 

 

「という訳だ。雪穂、亜里沙、お前たちが楓を救ってやってくれ」

「「え……?」」

 

 

 零君の考えは私の考えとは全くの逆。私と一緒に亜里沙も驚いたので、彼女も楓のことを彼に任せるつもりだったのだろう。

 それにしても、私たちが楓を救う……? 彼女が悩んでいる原因は零君と一緒にいられないことなのに、どうやったら私たちが救ってあげられるの……?

 

 

「どうして私たちがって顔してんな……。アイツの心は今、何も満たされず空洞になっている。だから、何かでそれを満たしてやらないといけない」

「それこそ零くんの出番なんじゃないですか? 楓は零くんを求めているんですから」

「亜里沙の言う通りですよ。私たちが楓に会いに行ったとしても、また逆上されちゃうのは目に見えてますし……」

「アイツを満たしてやれるのは俺じゃない、お前たちなんだよ」

 

 

 私たちが楓を……? 冷たい目で絆を断ち切られた私たちに、一体何ができるんだろう……。

 

 

「もし仮に、俺が楓の欲求を満たしてやったとする。でも今のアイツでは、満たした分だけ消費しちまうんだ。俺から愛情を注がないとは言っていない。だけど、愛情を注いだら注いだ分だけ浪費して、次はこれまで注いだ愛情よりも更に強い愛情を求めてくる。そうなったら最後、楓は俺に完全に依存してしまう。これまでもそこそこ依存していた方だけど、ここで俺たちが方法を間違えば、アイツはもう二度と元の自分には戻れない。注がれた愛情を使い切ったら、次の愛情欲しさに自ら精神の崩壊を起こしかねないからな」

 

 

 愛しの兄が離れ離れになったと思い込み、自分から依存することで虚無感を満たそうとする。それが楓の考えだったのか。私たちとの縁を切ったのも、自分の心を満たしてくれるのは零君しかいないと信じているからだろう。それに彼女の性格上、零君以外の誰かに慰めてもらうことはプライドが許さなかったんだと思う。

 

 もしここで零君が楓に愛情を与えたとして、楓が『その方法だったら自分の心が満たせる』と信じ込んでしまったらお終いだ。その方法とは、零君からの愛を感じるために、自ら自我と精神を傷付けるような真似をする。そうなってしまったら、彼の言う通りもう元の彼女には戻れなくなるだろう。

 

 

「俺では今のアイツを本当の意味で満たせない。アイツが元に戻らない限りはな。でも、お前たちだったらできる。この1年間、俺と同じくらいアイツの隣にいたお前らならきっと」

「私たちが……」

「あぁ。楓にとって、雪穂と亜里沙こそが人生で初の、本当の親友なんだ。幼稚園でも小学校でも中学校でも、アイツのカリスマ性は多くの人を惹きつけた。表の性格だけを見れば人当たりもいいから、生徒や教師問わずみんなに信用されていた。でもお前たちも知っての通り、アイツの裏の性格は傲慢で人を見下し、誰とも構わず小馬鹿にする。その性格が災いして、アイツの中で本当の友達ってのはいなかったんだ。元々、兄である俺以外の人間は存在価値もないと思ってるくらいだったからな。だからこそ、アイツを真の意味で救えるのはお前たちしかないない。そんな楓と親友になり、固い絆で結ばれたお前たちならきっと……」

 

 

 そういえば、楓は自分自身の過去の話を一度もしたことがなかった。もはや彼女と一緒にいる時間が長すぎて、過去のことなんてとっくに世間話か何かで話したものとばかり思っていたから……。

 

 言われてみればそうだ。私たちは楓が零君を追いかけて音ノ木坂に来たことは知っていたけど、それ以前のことは何一つ聞いたことがない。

 そうか、私たちは楓にとって初めての―――――

 

 

「雪穂、行こう。楓のところに」

「そうだね。親友が傷付いているのに、私たちが立ち止まっていられないよ」

 

 

 私も亜里沙も、抱いている想いは同じようだ。

 私は亜里沙と、そして楓と、もう一度3人で笑い合いたい。彼女とは出会ってまだ1年だけど、そんじゃそこらの1年とは濃密さが違う。μ'sとして一緒に練習して、助け合って、時には泣いて、時には笑い合って、親友として毎日他愛もない話をして、くだらないことで笑って――――――思い出話だけでも1日中語り尽くせるくらいだ。

 

 さっきまで気持ちが沈んでたけど、零君と話し合ったおかげでもう自分の心の曇りは完全に晴れた。

 伝えよう、私たちの想いを。

 

 

「ついでなんだけど、楓と話し合うついでに俺が謝っていたって言っておいてくれ。家から抜け出す時、割と厳しいこと言っちまったからな……」

「「イヤです」」

「お、おいっ!? 笑顔で否定すんな!?」

「そういうことは自分で伝えるものですよ」

「自分の気持ちには素直にならないと」

「さっきまでのお前らだったらブーメランだっただろその言葉……。はぁ、分かったから、早くアイツのところへ行ってちょいと救ってやれ。頼んだぞ」

「「はいっ!」」

 

 

 あの日々を取り戻すため、楓の笑顔を取り戻すため、私たちは行く。

 もうさっきまでのようにウジウジ悩んだりはしない。楓の心に、真っ向から向き合おう。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 楓のブラコンをここまで壊したのは初めての気がしますが、これで彼女が如何にお兄ちゃん好きかを分かってもらえたと思います。やはりオリキャラは原作キャラとは違い、どう弄ってもいいので小説を執筆する側としても楽ですね(笑)
まあこれも4年以上、楓というキャラを皆さんに知ってもらっているがゆえにできることなんでしょうが()


 次回はいよいよ完結編です。シスターズの絆の強さ、是非ご覧ください!



新たに星10をくださった

Pureピークさん

ありがとうございました!

この小説が気に入られましたら、是非お気に入り、感想、評価をよろしくお願いします! 
小説を執筆するモチベーションに繋がります!

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