ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 サンシャインの映画のDVD/BDが解禁されたので、満を持して映画で初登場したあの子が登場。


2人の渡辺

 

「相変わらず、ここは何にもねぇな」

 

 

 俺は内浦の海岸沿いを歩きながら、相変わらずの田舎の街並みを皮肉ってみる。もちろんバカにするつもりはなく、東京に比べれば景色も良ければ空気も断然いい。まぁ景色や空気を褒めるのは、何もない田舎を褒める時の常套文句みたいなところはあるけどさ……。

 

 俺が再びここにやってきたのは、千歌たちの呼び出しがあったからだ。どうやらAqoursで新たなイベントに参加するらしく、俺にまたコーチをして欲しいとのこと。それに加え、Aqoursの顧問としてイベントにも出席して欲しいそうだ。最初はそこまで乗り気でもなかったが、山内先生まで引き合いに出されてお願いされたらどうしてもな。だから仕方なく、こうして俺がまた浦の星に出向いてやったって訳だ。

 

 俺が浦の星女学院の教育実習生を終えて4ヵ月、スクールアイドルフェスティバルが終わって2ヵ月、Aqoursの奴らとはこの短期間でお互いの関係が濃密になり過ぎた。しかし、親密になった直後に千歌たちは東京からこっちに帰ってしまったため、教師生徒の垣根を超えてからは特にアクションを起こしていない。テレビ会議でAqoursのミーティングには参加するくらいで、結局デートとか男女の遊び的なものは一切やったことがないのが実情だ。アイツら、俺に会えなさ過ぎて飢えてねぇだろうな……? 出会った頃は純粋だったのに、知らない間に肉食系になってたらどうしよう……。

 

 そんなこんなでアイツらに会うのが楽しみでもあり恐ろしくも感じている中、浦女行きのバスが出るバス停に到着した。

 教育実習生の頃はここに毎日通っていたが、思い返してみればよくその生活に耐えられたよなぁと思う。俺は省エネ主義なので、家と学校や勤務先は近ければ近い方がいい。だから最初はバス通勤に抵抗があったのだが、教育実習終盤はもうそんな生活が当たり前となっていた。バスの本数が少ないためか生徒たちと一緒になることも多く、そんな環境に多少なりとも楽しみを感じていたのかもしれない。だってほら、学校行きのバスの中は当たり前だけど女の子ばかりで、しかも俺を慕ってくれる女子生徒ばかりだったし。

 

 それでも田舎のバスは不便なところもあり、今のように次のバスまで30分以上待たされることはザラにある。でもガチの田舎は午前と午後で1本しか出ていないところもあるみたいだし、これで文句を言っていたらガチ田舎勢から怒られるかもしれない。ま、都会民の俺には関係のないことだが……。

 

 

 特にやることもないのでバス停で次のバスを待とうと思ったら、どうやら先客がいるみたいだ。

 高校生くらいだろうか、対して日差しも強くないのに黒い帽子を深く被っている。服装も黒を基調としてオシャレだし、ファッション雑誌のモデルとして起用されていてもおかしくないくらいの()()()だ。つうか、俺としたことが不覚にも男を見つめてしまっていた。でもそれくらい綺麗な顔立ちをしてるんだよ。

 

 

「こんにちは。どこかへお出かけですか?」

 

 

 うぉっ、いきなり話しかけてきた。この街の人たちはみんな社交的で、見知らぬ土地にいきなり引っ越してきた俺や秋葉を歓迎してくれた過去があるから、特に不思議なことではない。しかし、やっぱりコミュニケーション力の塊に突然話しかけられるとビックリするよ。なんたって都民はコミュ障なんでね。

 

 

「あぁ、浦の星にちょっと用事でな」

「……? あそこって女子高なのに、お兄さんが用事……?」

「お前、俺が何かよからぬことを企んでるんじゃないかって思ってねぇだろうな?」

「だってお兄さん若いですし、女性に飢えてそうな顔してますもん!」

「初対面の年上に向かってヒドい言い草だなお前……」

 

 

 むしろ初対面の男にここまでのコミュ力を発揮できることを褒め称えるべきか? 俺が若いとは言っても、こっちは大学4年生でそっちは精々高校生くらいだろうから、歳の差はそこそこありそうなんだよな。とは言っても歳の差でマウントを取ろうなんて思ってないけどさ。

 

 

「でもお兄さんカッコいいですし、モテそうな気がしますけど……。実際のところ、女性をたくさん食べちゃってるとか?」

「えっ、あぁ、それはない……」

「目が泳いでる……。やっぱり肉食系なんだ!」

「なんでそんなに楽しそうなんだよ……」

 

 

 このガキ、確実に俺で遊ぼうとしてやがるな。しかも女を食うとか食わないとか、やはり思春期男子はその手の話題に敏感ってわけか。こりゃとんでもないガキに捕まっちまったな……。

 ていうか、コイツもそこそこ美形男子だから、女を引っ掛けようと思ったらいくらでも手籠めにできそうな気がする。まぁナンパなんて行為は今時流行らないし、草食系の男子が増えている世の中だ。その手の話題に興味はあっても、自分からは手を出さないのかもしれない。だからこそ、明らかに肉食系に見える俺を面白がって煽っているのだろうか……? あまりにもはた迷惑な話過ぎるだろそれ……。

 

 

「実際、お兄さんって彼女いるんですか?」

「グイグイくるな……。いるよ」

「へぇ、どんな人ですか? カッコいいお兄さんのことですし、彼女さんも素敵な方なんでしょうね」

 

 

 この質問は分が悪い。だって彼女、たくさんいるんだもん。この会話で誰を引き合いに出すか迷うところだが、どうせコイツは赤の他人なんだし、名前を出さなければ誰を話題に持ち出そうが問題ないだろう。そうだな、曜あたりにしておくか。美少年のコイツを見てたら、さっきから曜の顔が脳内にチラつくんだよな。よく顔を見てみれば、曜とも少し顔が似ている気がする。アイツはかなりボーイッシュだから、目の前のコイツとよく似ていると言っても無理はない。

 

 

「ちょっと男勝りなところはあるけど、心は純粋な乙女で、俺に一途なところが好きかな。ファッションセンスも良くて、イマドキの女の子の服も着こなすし、お前みたいな男の服装もナチュラルに着こなす凄い奴だよ。男物も女物も、どれを着ても可愛いってのが反則かな」

「へぇ~。よく見てるんですね、その彼女さんのこと」

「当たり前だ。でなきゃ好きにならねぇからな」

「ふ~ん……」

 

 

 コイツ、さっきから俺の顔を覗き込むように喋りかけてくるからやりにくいったらありゃしない。食い気味の会話といい、まるで俺を試しているかのようだ。なんかただモノじゃない雰囲気を漂わせているので、コイツに並大抵の嘘は通用しないだろう。とは言っても、さっき俺が言った曜に対する想いは本物だ。どうやらコイツも俺が本気であることが分かったらしく、渋々ながら納得しているようだった。

 

 てか、よく考えればコイツはどうして浦女行きのバス停にいるんだ? いきなり俺を女子高に忍び込もうとする不審者扱いをしてきたが、コイツも同じじゃねぇか?

 

 

「お前も浦女に用があるのか? 彼女を迎えに行く途中とか?」

「う~ん、ちょっと違います。実はお兄さんを一目見かけた時から、少し興味があったんですよ。だから話しかけてみたんです」

「なにそれ、ホモ? ゲイ? BL愛好者??」

「どうして話しかけるくらいでそこまで言われなきゃならないんですか……。その口振りからすると、お兄さんって本当に女性好きなんですね……」

「男に話しかけられるよりは、女に話しかけられた方がいいだろ。それが男の性ってやつだ」

「ふ~ん。僕は好きですよ、肉食系の男性って」

「男に好かれてもな……」

「ふふ、そういうところですよ♪」

 

 

 何を喜んでいるんだか。コイツ、もしかして本当にBL思考があるんじゃねぇだろうな? 男が男に向かって好きって、よほど仲の良い間柄で相手を褒める時くらいにしか使わない気がするんだよ。増して初対面で、しかも名前も知らない相手に向かってそんなことを……。いくら美形男子だからって、流石に同性愛者は世間受けしねぇって。

 

 こうやって冷静に相手を観察しているが、もしかして逃げた方が良かったりする? 巷では男をナンパする男という、もはや字面だけでも吐きそうな行為が流行りつつあるらしいので、身の危険を感じる前にそそくさと退散した方がいいかもしれないぞ……。

 

 

「それじゃあ、ちょっと試してみますか?」

「試してみるって何を――――な゛ぁ!? お、お前……!!」

 

 

 コイツ、いきなり俺の膝に馬乗りになってきやがった! しかも誘惑するような妖艶な瞳をこちらに向け、不敵に微笑んでいる。見ず知らずの男にここまで密着するなんて、やっぱりコイツそっち系か……!? となると、この状況は俺の貞操が危ういのでは……??

 

 

「あれ? もしかして……ドキドキしてます?」

「そりゃ男に馬乗りになられたらビビるっつうの……」

「ふふっ、意外とウブなんですね♪」

「俺のことより、男同士でこんなことをしても平気なお前の性根を疑った方がいいぞ……」

 

 

 コイツが何を考えているのかさっぱり分からないが、1つ言えるのは、この状況を誰かに見られたら相当マズいということだ。イケメンと美少年が絡み合っているシーンなんて一部の腐女子界隈では卒倒しそうなシチュエーションだが、こっちからしてみれば堪ったものじゃない。別に男性嫌いとはそういうのではないが、同性にここまで絡まれたら普通に身も毛もよだつだろ。

 

 

「よく見たら、お兄さんって綺麗な顔してますよね。食べちゃいたいくらい……」

「はぁ!? ちょっ、お前どうして近づいて――!?」

 

 

 もはや暴走が止まらないホモ美少年は、自分の顔を俺の顔に近付けてくる。

 このままでは唇と唇が密着するのも時間の問題。どうして男に組み伏せられてキスされる状況になっているのかは不明だが、ここは力づくでも押しのけるしかない。これまで様々な黒歴史を築いてきた俺だが、この歴史を刻ませる訳にはいかねぇぞ……!!

 

 俺はただ我武者羅に、自分の右手を目の前の少年に向かって勢いよく伸ばした。

 ここまで乱暴にされてるんだ、こっちから多少傷付けるような真似をしても問題はないだろ。

 

 

「ひゃっ!?」

「えっ、柔らかい?」

 

 

 俺の右手は少年の身体の一部を鷲掴みにしていた。しかし、それが何かおかしい。掴んだのはコイツの手でも腕でもない。胸元あたりのとてつもなく柔らかいモノに、俺の右手の5本の指が食い込んでいた。当然ながら、男の身体にそのような柔軟性のある部位などはない。そして、俺にとっては馴染みのある感触。もうこの感触を人生で何度味わってきたか分からない。そう、男の欲情を煽る、まさに魅惑の手触り。その正体は――――――

 

 

 そうか、俺はとんでもない勘違いをしていたようだ。

 

 

「お前、女だったのか……」

「あはは、バレちゃいましたか。それよりも、早く手を放して欲しいんですけど……」

「いや、俺を騙した罰だ」

「ひゃぅっ! 指を動かさないでくださいよ!? 見知らぬ女の子の胸を触るだけじゃなくて揉みしだくって、普通に犯罪ですよ!?」

「いきなりマウントポジションを取ってきた痴女に言われたくねぇ!!」

「とにかく早く手を放してください! でないとあの子が来ちゃう……」

「あの子……?」

 

 

「ちょっ、ちょっと!? 月ちゃん、零さんに何してるの!?」

 

 

「えっ、曜!?」

「あちゃ~間が悪い……」

 

 

 いや、それかなりこっちのセリフなんだけど……。知り合いの女の子に見知らぬ女の子に馬乗りになっている現場を見られるとか、もう修羅場と言う名の罰ゲームだろこれ。

 しかし、曜の口振りからすると、散々俺を弄って遊んでいたコイツとは知り合いなのか。目の前のコイツも曜が来ることを分かっていたみたいだし、もしかして俺、最初から罠に嵌められてた??

 

 疑問の渦に苛まれている俺を他所に、曜が月と呼ばれた女の子に鬼のような形相で詰め寄る。曜のあんな顔、初めて見たかも……。

 

 

「ここバス停だよ!? 私じゃない他の人に見られてたら通報されちゃうんだよ!?」

「お、落ち着いて曜ちゃん。ただ少しだけコミュニケーションを取ってただけだから」

「これのどこが少し!? それに零さんは肉食系ってこの前話したよね!? もしかしたら月ちゃん、ここで純潔を失ってたかもしれないんだよ!?」

「曜ちゃん、大きな声でそんなことを叫ぶのはどうかと……」

「月ちゃんのせいでしょ!?」

 

 

 曜が怒っている様を見るのは初めてだけど、意外と大胆なことを平気で叫ぶんだな……。

 それはそれとして、俺が女の子を食ってるってデマは曜が流していたのか。あながち間違いではないのだが、どうりでコイツの察しが良かったわけだ。なるほど、曜から俺のことを聞いていたってことね。それにしてももっと俺を褒め称えるような話題があっただろうに、どうして俺の女癖が悪いことまで話してんだ……。

 

 

 そして、しばらくの間、曜の尋問は続いた。

 その間もずっと月って子に馬乗りにされていたのだが、そこを突っ込むと曜が更にヒートアップしそうなので敢えて黙っておいた。俺は特段Mではないが、マウントポジションにいるのが女の子と分かれば、まぁこの状況も悪くないかなぁ~なんて思ってたり。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「なるほど、俺を試していたのか……」

「ゴメンなさい。最初からお兄さんが神崎さんだって分かって近づいたんです。今日浦女に来るって情報を曜ちゃんから聞いていたので、このバス停で張っていたんですよ」

「もうただのストーカーじゃねぇかそれ……」

「あはは、そうとも言いますね。でも気になってたんですよ、曜ちゃんがここまで入れ込む男性がどんな人かを」

「だからと言って男装して騙す必要はなかっただろ。キスされそうになった時は本気で焦ったぞ」

「キス?」

「よ、曜ちゃん、顔が怖いよ……? スクールアイドルなんだからもっと笑って笑って!」

 

 

 まだ少し騒動の尾は引いているが、事の概要は全てこの渡辺月から話してもらった。

 渡辺月、曜と同じく()()高校生である。曜とは従姉妹同士の関係であり、学校は違うものの、プライベートではよく遊ぶくらい親密な仲のようだ。見た目は俺も騙されるくらいボーイッシュであるが、よく見てみれば身体の細さや綺麗な黒髪、艶やかな唇に美麗な顔付き、なにより年相応に張った胸など、女の子を匂わせる要素は見た目だけでもたくさんある。コイツが最初から積極的に攻撃を仕掛けて来なければ、俺も冷静に彼女を分析することができただろうが、まんまと騙されちまったよ。

 

 ちなみに会話の中で気付いたんだけど、生粋の僕っ子らしい。最初は俺を騙すためにわざと一人称を男モノにしていると思っていたのだが、どうやら素の状態で僕っ子のようだ。

 

 

「曜ちゃんの話ではお兄さんは肉食系だって聞いてたから、少し警戒していたんですよ。曜ちゃんに相応しいかどうか、僕が確かめてやろうと思いまして」

「今度はBLじゃなくてガールズラブの方か? そんな関係なのお前ら?」

「えっ、月ちゃんもしかして……!?」

「違う違う! 従姉妹が変な男に騙されてないか心配してただけだから! そう、ただの家族愛だよ!」

 

 

 それにしてはやけに積極的だったと言うか、名前や性格を聞いていたと言っても初対面で年上の男をあそこまでからかったり、馬乗りになってキスするフリをしたりと、探りを入れるにしてはやり過ぎな気がする。口では否定しているが、まぁ人の本性なんて分からねぇもんだからな。ここは大人として、下手に追及するのはやめておいてやろう。

 

 

「でもビックリしましたよ、まさか曜ちゃんが男の人とここまで仲良くしているなんて。小さい頃から千歌ちゃん一筋だったのにね」

「ちょっ、語弊がありすぎるでしょそれ!? 確かに千歌ちゃんは大切な幼馴染だけど、そんな関係じゃないって!」

「分かってる分かってる。逆に言えば、それだけお兄さんのことが好きなんだ? 私や千歌ちゃんとの関係とはっきり区別するくらい、お兄さんのことがね」

「す、好きって……そ、それはす、好きだけど……」

「あーあーもうお腹いっぱい! 曜ちゃんがここまで乙女な表情をしているの、僕初めて見たよ」

「も、もうっ、すぐ人をからかって遊ぶんだから……」

 

 

 ノリがいいのか性格が悪いのか。どちらにせよ、他人の恋愛沙汰に興味があって首を突っ込みたがるところはイマドキの女子高生って感じだ。こういう奴ほどこっちから攻めてやるとウブな反応をするのだが、曜がいる手前もあるし、ここは素直に静観しておいた方が良さそうだ。触らぬ神に祟りなしってね。

 

 

「それで曜ちゃんは、お兄さんのどこを好きになったの?」

「もういいでしょこの話題は! ほら、早く学校に行かないとミーティングの時間になっちゃうよ!」

「お兄さんは、曜ちゃんのどこを好きになったんです?」

「曜の? 色々あるけど、一番は純粋に俺を慕ってくれる気持ちかな」

「な゛っ!? どうして正直に応対してるんですか!?」

「あはは、曜ちゃんの顔赤すぎ」

「うぅ……」

 

 

 曜の顔が熱くなっているのは見ているだけでも分かる。別に俺は彼女を困らせようと思ったわけではなく、単純に好きな女の好きなところを挙げるくらいは普通だと思っただけだ。それに時間さえあれば、曜の魅力的なところや惹かれたところを1時間は語り尽くすことができる。これでもマイルドに済ませた方なのだが、曜にとっては致命的な大ダメージだったようだ。

 

 

「でもお兄さん、僕にもドキドキしてましたよね?」

「そうだな」

「あ、あれ? 認めちゃうんですか?」

「俺が男に靡くはずがない。つまり、お前が女の子としての魅力があったから見惚れちまったところがあったのかもな」

「ぼ、僕が!? こんな男っぽいのに……?」

「ボーイッシュが極まっている女の子も、結構好きだぞ俺は」

「へ、へぇ……」

 

 

 月は髪の毛を指でくるくると掻き回す。どこかで見たような仕草だが、照れ隠しをしていることくらいは赤みがかった頬を見れば一目瞭然。チョロい――とまではいかないが、やはりSな女の子は防御力が低い。もちろんそれ以前に、異性から容姿を褒められるのは悪い気はしないのだろう。この街は女子高が多いらしいし、異性との関りが少ないであろう女の子は純粋な子が多いのだ。だからなのか、正直μ'sの奴らより、Aqoursの奴らの方がそういう傾向がある気がする。まぁμ'sの一部は俺と付き合い始めて変わったようなものだから、俺のせいかもしれないが……。

 

 

「あ、あまりそうやって女の子を口説いていると、浮気になっちゃいますよ……?」

「問題ない。女の子たちに『俺はたくさんの女の子と付き合ってこそ輝く男』という考えを持たせれば、必然的に浮気じゃなくなるだろ」

「そ、それはそれでどうかと……」

「俺は自分の好きに生きる。女の子を何人好きになろうが俺の勝手だ」

「そこまで傍若無人な男の人、初めて見ましたよ……。ということは、私のことを本気で口説いてたりします……?」

「口説いている」

「ふぇっ!?」

「って言ったら、お前はどうする?」

「えっ、そ、それは……」

 

 

 見事な立場の逆転に、月は焦りに焦って吃るばかりだ。そりゃね、俺とコイツでは経験の差が違う訳よ。こちとら無数の女の子と付き合い、幾多の修羅場を乗り越え、そこで育まれた愛情もある。こんな田舎の片隅の女子高に通って、本やネットの知識だけで男を手玉に取ろうとする奴なんかとは大違いってことだ。ま、そんなウブなところが可愛いんだけどね。

 

 

「そういうところは零さんらしいね。やっぱり肉食系っていうのは間違ってなかったよ」

「別に俺は自分で自分を肉食系なんて思っちゃいねぇけど。つうか、もう俺のことはいいから早く行くぞ。ちょっとでも遅刻したらダイヤが怒鳴ってくるからな」

 

 

 そんなこんなしている間にバスが来た。

 いきなり美少年を気取った美少女に襲われて驚いたけど、女の子に対して百戦錬磨の俺には敵わなかったって訳だ。でも月が魅力的なことだけは確かで、彼女に本気で誘惑されたら俺も男が黙っちゃいないだろう。もし機会があれば、今回のような強襲の形ではなく、ゆっくりとお話してみたいもんだ。

 

 

「月ちゃん? 零さん行っちゃったから、私たちも早く行かないと」

「曜ちゃん……」

「ん?」

「肉食系の男性って、いいね」

「そりゃ零さんはカッコいいし――――って、つ、月ちゃん!? も、もももしかしてほ、惚れ??」

「あはは、冗談冗談♪ 曜ちゃんってば慌て過ぎだって」

「そ、そうだよねぇ……」

「うん、冗談……だよ」

 

 

 それからしばらく、2人からの目線が物凄く熱かった。

 




 月ちゃんのキャラは他の子と同様にかなり肉付けしてあるので、普通の彼女が見たい場合はサンシャインの映画を見てみましょう。とは言っても私も流し見だったので、ストーリーはあまり覚えていないという事実()



新たに☆10評価をくださった

ヴォルフガング・マーサーさん、月渡さん、KRリバイブさん

ありがとうございます!

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