ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 虹ヶ咲のアニメを見るたびに好きなキャラが増えていくので、小説でもネタに困らないのが助かります(笑)

 というわけで今回は一応せつ菜回です。


大好き!大好き!!大好き!!!

 かすみに自身の黒歴史を晒され気絶していた歩夢だが、その後なんとか復活し俺への学校案内は再開された。とは言っても完全回復には至っておらず、度々過去の自分の自己紹介を思い出してはわなわなと震えている。コイツのことだ、今まで穢れのない純粋な人生を送ってきただけに黒歴史の刻印がより強く疼いて仕方がないのだろう。まあその傷を煽る高咲やかすみの方が悪いんだけど……。

 

 紆余曲折ありながら、遂に虹ヶ咲の校内へと侵入する。さすが生徒数3,000人を超えるマンモス校と言うべきか、ロビーからして広大だ。1階のホールから天井まで大きな吹き抜けがあり、入口には各教室や部活室の場所を示した案内板があったりと、まるで大型ショッピングモールかのような構造をしている。虹ヶ咲の建物が豪邸だとしたら、俺の通っていた音ノ木坂は家の隣にあるようなボロ倉庫だな。あまりにも格が違い過ぎる。

 

 そうやって現代高校生とのギャップを感じながらも、それ以上に周りから熱気のような目線を浴びまくっていることが気になっていた。

 

 

「なぁ。さっきからジロジロ見られてるんだが……」

「そりゃお兄さんはいい意味で目立ちますから。こんなカッコいい男性が学校に来たら女の子たちは気になっちゃいますって」

「それは分かるけど、なんか気が散って歩きにくいんだよ」

「カッコいいってことは否定しないんですね……」

「その謙虚のなさこそ零さんですからね! 世界一可愛いかすみんと、世界一カッコいい零さん。う~ん、いいコンビです!」

「なんだお前まだいたのか」

「いますぅ~!! 私に隠れて先輩たちとイチャイチャしようたってそうはいかないですから!!」

「えぇっ!? 私そんなことしないよ~!?」

「じゃあ私はしちゃおうかなぁ~♪」

「侑ちゃん!?」

 

 

 騒がしい、実に騒がしい連中だ。俺が周りから見られてるって話からどう歪曲して誰と誰がイチャつく話になるんだか。まぁ仲が良いからこそここまで話が広がるんだろうけど、会話のたびに逐一こんなやり取りをしていたら俺への学校案内がいつ終わるのか分かんねぇな……。

 

 

「お前らとならいつでも誰とでもイチャついてやるから、とにかくこの注目されまくってる状況を――――」

「じゃあ今しましょう! ここならかすみんと零さんの仲の良さを見せつけるチャンスです!」

「誰も腕を組んでいいとは言ってないんだが……?」

「かすみんと腕を組めて照れちゃうのは仕方ないことです。それにこんな美少女に抱き着かれるなんて、もっと誇っていいんですよ♪」

「ほら、歩夢も黙ってないでお兄さんに抱き着かないと。このままだとかすみちゃんに取られちゃうよ?」

「だ、抱き着く!? そ、そそそそんなの無理だよぉ~!!」

「さっきは野生動物と化した歩夢先輩に負けちゃいましたけど、今回はかすみんの勝利みたいですね!」

「お前ら何の勝負してんだよ……」

 

 

 コイツらが更に騒がしくなった&かすみが抱き着いてきたので周りからより一層注目されてしまう。しかも校内で恋愛沙汰が発生していると思われているのか、周りの女の子たちから黄色い声が聞こえてきた。やはり思春期女子ってのは恋バナにテンションが上がるようで、しかもそれが同じ学内の有名なスクールアイドルってんだからなおさら注目されるわな。歩夢たちはスクフェスの一件を経てかなり名が知れてるし、そんな奴らが年上の若い男を学内に連れ込んだとあればこれだけ女の子が群がってくるのも仕方がないか。

 

 

「これは一体何の騒ぎですか? 部活をやっている人たちから騒がしいと苦情が来ていますよ」

「せ、せつ――あっ、中川元生徒会長……」

「あん……?」

 

 

 1人の少女が騒ぎに割り込んできたと思ったら、周りの子たちが一気に押し黙った。さっきかすみがこの子のことを生徒会長って言ってたからそれなりの威厳はあるのだろう。

 綺麗な長い黒髪を三つ編みにし、制服をきっちり着こなしている地味な眼鏡っ娘。如何にも真面目そうで、それでいてお堅い感じがする。社会的な正しさに拘って遊びを知らず、周りから浮いてしまったり嫌われてしまう典型的なタイプに見受けられる。

 

 でもコイツどこかで見たことあるような。まさか――――――

 

 

「この学校の生徒が大学生くらいの男性を校内に連れ込んで騒いでいるという噂が流れています。まさか()()あなたたちの仕業だったとは……」

「またって何ですかまたって!? それだといつも私が元凶みたいな感じじゃないですか!?」

「そうだね、だからこそ私たち3人で一纏めにされてるのは少し心外なんだけど……」

「侑先輩まさか自分だけ助かろうという魂胆ですか!? あ、歩夢せんぱぁ~い……」

「私は今回の被害者だから……」

「れ、零さぁ~ん……」

「自業自得だ」

「味方がいない!?」

「あなたたちは言ってる傍から騒ぎ立てて……」

 

 

 かすみがいる限り静かにしろってのは無理だな。ていうか『また』って言ってたからコイツらは常日頃からうるさくて注意されていたのか。別に何度注意されようが俺には関係ないけど、今日の俺はゲストなんだからコイツらのついでにお説教されるのだけは勘弁して欲しいぞ。

 

 

「大学生の男性というのはあなたのことですね? 初めまして、私は中川奈々と――――――ッッ!?」

「中川ぁ? お前せつ菜だよな? 優木せつ菜」

「れ、れれれれれれ零さん!? どうしてここに!?」

「なに驚いてんだ。まさか気付いてなかったのか?」

「は、はい。まさかいらっしゃるとは思わなくて……。と、とにかくこっちに来てください!!」

「お、おい引っ張るなって!」

 

 

 何故か地味な風貌にイメチェンしているせつ菜に引っ張られ、周りから注目されていたこの場から強制的に脱出する。その際に周りの女の子からは『まさかの略奪愛!?』とか『スクールアイドルと元生徒会長で同じ男性を!? これって修羅場!?』やら『あのお堅い中川さんがあれだけ取り乱す相手、一体どんな男性なの!?』などとの声が各所から聞こえてきた。思春期女子ってのは妄想豊かだな……。

 

 

「お兄さんがせつ菜ちゃんに連れて行かれちゃったよ! 歩夢、取り返しに行かないと!」

「と、取り返すってなに!?」

「ちょっと先輩たち待ってくださいよぉ~!!」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……ここまで来ればもう大丈夫ですね」

「おい、いい加減に説明しろ……」

「す、すみませんすみません!!」

 

 

 せつ菜は握っていた俺の手を離し、綺麗な姿勢でペコペコと謝る。

 コイツの名前が『中川奈々』になっているのも気になるし、慌てた様子でホールから離脱したのも怪しい。周りは人気のない校舎裏であり、こんなところに来ないと話せないことなのか……。

 

 

「まずは『中川奈々』という名前ですが、それが私の本名です。『優木せつ菜』というのはスクールアイドル活動の時の芸名と言いますか……。名前を分けているのには色々理由がありまして――――」

「なるほど、もういいよ。それなりの事情があるってことだろ? それに俺にとっては『中川奈々』でも『優木せつ菜』でもお前はお前で1人の女の子だからな。俺が好きなのはたった1人のお前なんだよ」

「す、すすすすす好きぃ!?!? そ、その不束者ですがよろしくお願いします……」

 

 

 もしかして、俺のことを好きでいてくれる女の子は俺も好きだって事実を言った方が良かったか? なんか一世一代の告白みたいに受け取られちゃったし、なんならせつ菜は完全に俺と添い遂げるムードでいるようだ。もはや顔が真っ赤とか言う次元ではなく、今にも顔から爆発してしまいそうなくらいの湯気が出ている。こうやって軽率に好きだのなんだの言ってしまうから女垂らしって言われるんだろうな……。

 

 

「ちょっとちょっと!? かすみんたちもいるんですよ忘れないでください!!」

「いつもはみんなに大好きを伝えるせつ菜ちゃんも、お兄さんから大好きを伝えられると流石に戸惑っちゃうみたいだね!」

「え、えへへ……」

「いつもリーダーシップを発揮する先輩とは大違い……」

「そうだね。せつ菜ちゃんはいつも活発でみんなを元気付けてくれる印象が強いから、こうしてしおらしい姿は初めて見るかも。零さんに好きって言われたらそうなる気持ちは分かるけど……」

「えへへ……」

「いつまで照れてるんですか!? 顔が蕩けすぎて全部溶けちゃいそうですよ!?」

 

 

 せつ菜は蕩けた笑顔でトリップしたまま戻ってこない。もはや歩夢たちの声なんて聞こえていないようで、俺と2人きりの妄想を繰り広げて幸福感に浸っているのだろう。ライブではいつも凛とした表情を見せている彼女だが、今はただの恋する乙女で到底ファンに見せられるような顔ではない。俺から女の子に好意を示したことは数あれど、ここまで間抜けな表情になった子はコイツが初めてだよ。

 

 そういや結局せつ菜の話を遮ってしまったが、普段は『中川奈々』で生活してスクールアイドルの時だけ『優木せつ菜』になっているとかそんな感じだろう。さっき周りに人がいる状況でかすみがせつ菜の名前を言いかけたのがその証拠だ。詳しい事情は本人が言い辛そうにしていたため敢えて聞かなかったけど、家の事情とか諸々あると思うのでそれはまた追々話してもらおう。

 

 

「さっきからせつ菜先輩だけいい雰囲気になってますけど、かすみんも零さんのこと大好きですから! この愛は例えせつ菜先輩と言えども負けません!!」

「ほぅ……。いつもは皆さんと切磋琢磨してお互いに高め合っていますが、零さん大好きレベルの勝負であれば私も負ける訳にはいきません!」

「おっ、三つ編みを解いて『奈々』から『せつ菜』に変身した! これはせつ菜ちゃん本気だね!」

「えぇっと、2人を止めなくてもいいのかな……」

「女の戦いに割り込むなんて無粋だよ。お互いに1人の男を求めて雌雄を決する。こんな熱い展開見逃せないって!」

「修羅場で熱くなってる奴がいるぞ。歩夢、幼馴染なんだったら宥めてやれ」

「侑ちゃんは心がときめいたらそれに一直線なんで……。つまり無理です」

 

 

 校舎裏で対峙するかすみとせつ菜。イメージ的にはお互いの背後で炎が燃え上がっている感じだろうか。そしてその様子を見て目を輝かせる高咲侑。思うんだけど、もう俺の学校案内っていう目的を誰も覚えてないよな……。

 かすみは元々熱くなる性格だけど、それはせつ菜だって同じだ。スクールアイドルだけでなくアニメやゲームといったオタク趣味も持ち合わせており、それ故に自分の趣味趣向に引っかかればたちまちオタク特有の早口でまくし立てる。今回はその話題が『俺』になっただけ。俺のことが好きなせつ菜が同じく俺のことが好きなかすみにマウントを取られたら、そりゃ黙っちゃいないだろう。

 

 

「こうなったら今度はせつ菜先輩と勝負するしかないですね」

「いいでしょう、受けて立ちます。ルールは零さんに対する大好きエピソードを1つずつ交互に言い合って、出てこなくなった方が負けでどうですか?」

「いいですよ、余裕です」

「おい、人を勝手に勝負のネタに使うんじゃねぇよ……。つうか普通に公開凌辱だろそれ」

 

 

 なんか勢いだけで話が進んでるけど、本人がいる前で褒めちぎり合戦をするか普通?? 鋼鉄のメンタルを持つ俺であってもその対戦の場に居合わせるのは流石に気恥ずかしいんだが……。

 

 

「待って! 誰もこの戦争の参加者が2人とは言ってないよ」

「侑さん? でもさっき『割り込むなんて無粋』と言っていませんでしたか?」

「やっぱり見ていたら我慢できなくなってね。参加するよ」

「も、もしかして侑ちゃんも零さんことを……!?」

「参加するよ――――――歩夢がね!!」

「は?」

「「え?」」

「ふぇ……? え、えぇえええぇええええええええええええええええええ!?!?」

 

 

 高咲は勢いよく歩夢に向かって指を差した。俺たちはもちろん、当の本人もいきなり自分に火の粉が飛んできたのを目を丸くして驚く。

 

 

「歩夢だって隙があればお兄さんの話ばかりしてるからね。むしろお兄さん大好き合戦をするならいなくちゃならない存在でしょ!」

「確かに歩夢先輩って結構愛が重いですからね……」

「相手はたくさんいた方が勝った時の快感が素晴らしいので、歩夢さんも是非参加してください。その上で打ち負かして見せます!」

「おぉ~せつ菜ちゃん燃えてるねぇ~。これだけ期待されてるんだから歩夢も参加しないと嘘でしょ!」

「侑ちゃんが作ったんだよねこの流れ……。でもまぁ、ちょっとだけなら……」

 

 

 歩夢は勢いに乗じて渋々参加をするようだが、ほんのり顔を赤くして嬉しそうにしているあたり少しノリ気っぽいんだよな……。そんなに俺に対して愛を叫んで間接的に凌辱したいのか……? もう誰も制止役がいなくなった以上また俺への学校案内は果たされないようだ。このままだとコイツらの余興に付き合わされるためだけにここに来たみたいじゃねぇか。なんという時間の無駄。

 

 

「それでは早速始めましょう。まずは私のターンですね。私は以前零さんに助けていただきました。複数の男性に囲まれていた私の手を握り、その場から連れ出してくださったのです。それはまるで愛の逃避行のようで、逃げる際に零さんは仰ったんです『俺の恋人』だと。もはやこれは愛の告白。そうです、先程だけでなく既に私は告白されていたのです!! 零さんに好きを伝えられ、私はこう応えました『私も好きです』と。それ以降私は零さんからたくさんの大好きと笑顔をいただき、幸福に包まれたまま一生を過ごす……予定です。これはもう私の勝ちですよね? ワンターンキルってやつです」

「ぐぬぬ、かなり羨ましいエピソードですね……」

「零さんから告白、いいなぁ……」

「相変わらずキザったらしいですねお兄さん」

「おい待て、色々と着色されてる気がするんだが!? 自分の都合のいいように解釈しすぎだろ!!」

「零さん、この世は自分がどう思ったかではなく相手にどう伝わったかなんですよ」

「いやそれっぽいこと言っても騙されんわ!!」

 

 

 正しい歴史としては、ファンたちに囲まれて困っていたせつ菜を恋人の待ち合わせと()()()俺が連れ出したってだけだ。決して愛の逃避行だとか告白だとかはやっていない。あまりにも平気で歴史を改変するものだから歩夢たちも信じてしまっているのがこれまた迷惑。せつ菜はせつ菜はテンションが爆上がりして熱くなってるし、このまま行くと俺とのエピソードじゃなくて俺との妄想シチュエーションを垂れ流すだけになりそうだが大丈夫か……。

 

 

「かすみんだってとっておきのエピソードがありますよ。なんたって零さんと街中で抱き合ったことがあるんです! その時の零さんはかすみんの可愛さと身体にメロメロで、あと1秒長く抱き合っていたらかすみんは確実に襲われていましたね。零さんの心臓もバクバク鳴っていましたし、かすみんだってとてもドキドキちゃいました。周りの人たちからも拍手喝采でかすみんたちのことを祝福してくれたんですよ。もはや結婚式です。これはもう恋人同士と言っても過言じゃないでしょう!」

「そんな貧相な身体でドキドキするわけねぇだろ。心臓が鳴ったのだって女の子に抱き着かれたら男なら誰でもそうなるし、街中とか言ってるけどあの時周りに人は全くいなかったからな」

「辛辣!? あれだけ身体で愛を確かめ合ったのにもう萎えちゃったんですか!?」

「身体という点ではかすみさんより私の方が身長が低く、胸のサイズも大きいです。つまりロリ巨乳という観点でも私が勝利しているってことですね!」

「な゛っ……!? かすみんは妹的な愛くるしさで勝負するんですぅ~!!」

「ほら歩夢も参加しないと。お兄さんのどのポジションになりたいの?」

「え、えぇっ!? 私だったら……零さんの奥さんとか……?」

「恋人をすっ飛ばしていきなり正妻宣言。愛が重いと言われるだけのことはあるね」

「侑ちゃんが言えって言ったんだよね!?」

 

 

 コイツら一体何の戦いをしているんだ……。もはやツッコミを入れる気力もなくなるくらい常に話が斜め上に逸脱しやがる。俺とのエピソードよりも自分が相手よりどれだけ俺と濃厚なシチュエーションにいたのか、その叩き付け合いになっているのは言ってやった方がいいのか……? それだけ自分のことを好きでいてくれるのは嬉しいことなんだけど、やってることはメンコと変わらんな。

 

 

「さて、次は歩夢さんのターンですね。歩夢さんの零さん大好きエピソードはなんでしょうか?」

「う~ん、たくさんあるんだけど、まずは幼い頃に助けてもらったことかな。火事に巻き込まれて逃げられず、何もかも諦めていた私を危険を顧みず助けに来てくれたところとか、夏祭り会場で久しぶりに再会した時に、私のことを忘れていてほぼ初対面みたいな感じだったのにしっかりエスコートして楽しませてくれたりとか、スクフェスではそんな初対面同然の私にエールを送ってくれたりとか、とにかく私、いや私たちのことを大切にしてくれているところが大好きなの。零さんの唯我独尊な性格も私は好きで、だからこそ頼りがいがあって、私は守ってもらっているんだって感覚が安心できるんだよね」

「歩夢先輩……それ、かすみんも分かります!!」

「なるほど、『私』だけでなく『私たち』ですか……。確かに私も同じ気持ちです」

 

 

 さっきまでハイテンションで盛り上がっていた2人だが、歩夢の俺への純粋な気持ちを聞いて共感を覚えているようだ。私たちはどうして争っていたんだろうと言わんばかりの静けさで、2人だけでなく高咲も興奮は止み歩夢の言葉に聞き入っている。

 

 やっぱり最後に勝つのは清楚系の正統派ヒロインってか? 歩夢も再会した当時は俺に久々に会えた感動でキャラがかなり積極的だった記憶はあるが、今では恋愛モノのヒロインにいてもおかしくないくらい純粋になった。そんな彼女の心中はそりゃもう綺麗で透き通っていて、せつ菜やかすみの野望や欲望に着色されたエピソードでは到底歯が立たない。もちろんみんな気持ちの伝え方に違いはあれど俺のことを想ってくれているため咎めることはしないが、やはり歩夢のように純粋に想いを伝えてくれるのは嬉しいよ。

 

 

「そんな過去があったからこそ、いつも零さんのことが頭に浮かんじゃって。侑ちゃんにも零さんの話ばかりしてるし、次はいつ会えるのかなぁとか、会えたらどんなことをお話しようかなぁとか」

「うん、いつも聞かされてる……」

「ウェディングドレスは可愛いものがいいなぁとか、結婚式は身内でやるのか盛大にやるのかどうしようかなぁとか、新婚旅行はどこに行こうかなぁとか、子供ができたら名前はどうしようかなぁとか、子供は何人欲しいかなぁとか、結婚3年目は夫婦仲が疎遠になりやすいからどう対策しようかなぁとか、エッチなことは週に何回しようなぁとか――――」

「ストップストップ先輩!! 妄想を垂れ流しすぎて映像になって見えそうですよ!? それに最後のは先輩らしからぬセリフ!!」

「侑さん、いつもこの歩夢さんに付き合っていたんですね……」

「うん。分かってもらえたらたまに変わってもらえると嬉しいかな……」

「それは……遠慮しておきます」

「――――はっ、私は一体何を!?」

「自覚なかったのかよ……」

 

 

 もはや夢遊病と疑われてもおかしくないくらい夢が現実にすり替わりそうだった。日々あれだけの妄想を聞かされている高咲に同情しちまうよ。これだからかすみにも『歩夢先輩』は重いって言われちゃうんだろうな……。

 

 

「それでせつ菜ちゃん、零さん大好き合戦の勝敗はどうなったの?」

「え~と、考えたんですけど、やっぱりみんな違ってみんないいということで! ほら、零さんの懐は無数の女性を受け入れてくれますから!」

「まぁ皆さんのエピソードも正直羨ましかったですし、かすみんも引き分けでいいですよ」

「私は最初からただ零さんに自分の想いを伝えられたらなと思って……」

「だそうです。自分のことを大好きな女の子に囲まれて、今どんな気分ですかお兄さん? いや、お・う・さ・ま?」

「その言い方やめろ……」

 

 

 気分で言えばそりゃこんな可愛い子たちに好意を向けられているんだから満足感に支配されてるに決まってる。だがその気持ちを素直に吐露するとまた高咲が調子に乗るのでやめておく。

 そうだ、逆にこっちから仕掛けてやるのもアリかも――――

 

 

「高咲、お前は参加しないのか? 出会ってから数時間で見つけた俺の魅力をいくつでも垂れ流していいんだぞ?」

「そうですねぇ……見た目がイケメンで付き合ったらそれだけでステータスになることと、エッチが上手そう、いや上手いってことでしょうか」

「おい……」

「侑ちゃんなんでそんなこと知ってるの!? やっぱり電車の中で何かあったんじゃ……」

「どうしてかすみんを差し置いて会ったばかりの侑先輩に!? も、もう身体を重ねたってことですか!?」

「出会って間もない女性だろうと自分が気に入ればすぐさま手を出す。そして身も心も自分のモノとして掌握する。さすが零さんです、そこに痺れます!!」

「これちゃんと収集つけてくれるんだろうな……」

「つまり虹ヶ咲の中では、私がお兄さんのハジメテの人ってことですよね?」

「侑ちゃん!?!?」

「歩夢が壊れるからそろそろやめてやれ……」

 

 

 高咲の奴、最後にとんでもない爆弾を投下しやがった……。一応断っておくと、俺は確かに手を出したがあくまで密着していただけでハジメテ云々は一切関係ないからな?

 そんな感じで高咲が撒いたタネのせいでまた俺の学校案内が遠くなりましたとさ。本当に今日一日コイツらと戯れてるだけで終わりそうなんだけど大丈夫か……?

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 虹ヶ咲キャラのプロフィールを見て思ったことは、せつ菜って意外と小柄でかすみよりも背が低いことに驚きました。それでいてあれだけ胸があるのでこれはネタにするしかないと思ったのが作中のやり取りです。
 彼女だけでなく普通にスタイルのいい子ばかりなので、零君は困りそうになりですね。何がとは言いませんが……



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