ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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 あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!


 年明け1発目ですが虹ヶ咲メンバーとの再会編の最終話です。
 今回は普段よりちょっと短め&侑視点でお送りします。


2人の恋人

 お兄さん――神崎零さんの歓迎会が終わり、歩夢と2人で帰路に就く。

 お兄さんの話によると私たちはみんなお酒に酔って暴れていたらしく、無駄に消費された体力が回復していない中での解散となった。酔った最中にお兄さんに何をしでかしたのか記憶が鮮明で、歩夢と共に今でも後悔と羞恥心に襲われている。歓迎会の片付けをする際もお兄さんの顔が見られなかったりと、昼間では考えられないくらいお兄さんのことを意識していた。結局酔っぱらっていたせいで満足に動けない私たちの代わりにお兄さんが片付けを主導してくれたし、なんなら気分が悪くなっているところを介抱してくれたりと、お客さんなのにとても迷惑をかけちゃったな……。

 

 もう辺りは真っ暗で、道を歩いている人はほとんどいない。いっそのこと人の往来が多く騒がしければ気が紛れたものの、これだけの静寂だと逆に私たちの思考を邪魔する雑音がないせいで余計に後悔の念と羞恥心が肥大化する。今日は流れのままに解散となってしまったので、今度お兄さんに会った時は誠意をもって謝ろう。お兄さんは『俺の身内のせいだからいいよ。むしろ謝るのは俺の方だ』って言ってくれたけど、迷惑をかけたことは変わりないからね。

 

 そんな感じでどんより気分でお互いに黙ったまま夜道を歩く。しばらくして、隣にいる歩夢が口を開いた。

 

 

「なんだかんだあったけど、私は楽しかったなぁ。侑ちゃんはどうだった?」

「えっ? う、う~ん……私の知らないみんなの一面が見られて新鮮だったかな」

「あはは……みんな零さんがいるといつも以上に生き生きしてるもんね」

「それは歩夢もでしょ。いつもよりテンションが一回りも二回りも高くて、正直手に負えないかと思った」

「えぇっ!? そんなにかなぁ?」

 

 

 お兄さんを常に目で追っていたり、目を合わせられただけでも顔を赤くし、話しかけられるたびに声が裏返りそうなくらい気持ちが舞い上がってるのは見ているだけでも分かった。まさに恋する乙女を具現化したような存在で、私の見たことのない歩夢ばかりだったんだよね。小さい頃からずっと一緒だった幼馴染の新しい顔を見られて新鮮だったけど、それをお兄さんにしか見せないんだと思うとちょっぴり妬けるかな。

 

 他愛もない会話で心が少し落ち着く。もしかしたらこのどんよりとした雰囲気を取っ払うために会話を切り込んだのかもしれない。気持ちがちょっと暗くなってたから助かったよ。

 

 

「それにしても凄い人だったなぁお兄さん。上手く言えないけどその……あんなに存在感のある人っているんだなぁって」

「そうだね。今でも隣にいるだけで緊張しちゃうもん。侑ちゃんは零さんの印象ってどうだった?」

「傲慢で自意識過剰。唯我独尊で高飛車。自己顕示欲の塊で自分が世界で一番偉いと思っているナルシスト。あと変態さん」

「け、結構言うね……。でもそのおかげかな、零さんの隣にいると安心するんだよね。これだけ存在感のある男性に私は守ってもらってるんだって」

「まあ確かに貫禄はあるし、お兄さんに頼っておけば安心っていう気持ちは分かるよ。変態さんなのは流石に擁護できないししたくもないけど……」

「それもその、零さんの良さの1つだよ! ほら、優しく導いてくれる的なそんな感じ! それでいて少し強引なのも良くて、零さんに羽交い締めにされたら私、されるがままになりそう……♪」

「歩夢、今絶対にエッチな想像してるよね……」

「ふぇっ!? そ、それはその……!!」

 

 

 この場にいないのに歩夢にこんな反応をさせるなんて、やっぱりお兄さんは恐ろしい人だ……。今日の歩夢ってずっとこんな感じな気がするけど、これは歩夢自身が淫猥な思考の持ち主なのか、それともお兄さんにこんな性格になるように仕込まれたのか……。あのお兄さんのことだから何でもアリなのがこれまた怖いんだよね……。

 

 

「と、とにかく、侑ちゃんも零さんの良さが分かるときが来るよ!」

「そうなのかなぁ……。まあ歩夢の言う通り、手を引いて引っ張ってくれる安心感はあるよね。自分の人生を共に歩んでくれている……みたいな?」

「そうなんだよ! もうず~っと傍にいたい!」

「そ、そこまで!? 歩夢ってお兄さんの話をするとき本当に嬉しそうだよねぇ……」

「えへへ、そうかなぁ~♪」

「凄い、今日一番の笑顔……」

 

 

 甘いモノを食べている時やスクールアイドルとしてライブをやっているとき以上に嬉しそう。明るい笑顔というよりは表情が蕩けていると言った方がよく、まさに恋する乙女って感じだ。こんな恍惚とした歩夢を今まで一度も見たことがない。

 歩夢がスクールアイドルを始めた一番の理由はお兄さんだ。過去に自分を助けてくれたお兄さんに成長した自分を魅せるため、お兄さんに想いを伝えるためにスクールアイドルになった。好きな人のためにここまで頑張れるなんて、今の私には分からない感覚だな。そういった意味では歩夢は自分の夢を叶えつつあるんだよね……。

 

 

 私も、そういった相手、好きな人ができたら――――――

 

 

 って、どうしてここでお兄さんの顔が思い浮かぶの!? いやいやいやいやいや、あり得ないあり得ない! 傲慢で自意識過剰。唯我独尊で高飛車。自己顕示欲の塊で自分が世界で一番偉いと思っているナルシスト、超ド変態のお兄さんのことなんて好きになるはずがない! だって考えてもみてよ、電車の中で身体を触ってくるような人だよ!? そして私はその被害者なんだよ!? 好きになるとか絶対にあり得ないでしょ、うん!

 

 

「侑ちゃん、さっきから首を横に振ってどうしたの……?」

「へっ!? い、いやお兄さんのことなんて考えてないから!!」

「零さんのこと? そういえば侑ちゃん、今日零さんと2人きりになってたよね? その時に何かお話しなかったの?」

「………したよ、たっぷりした。お兄さんがどれだけ歩夢たちのことを本気なのかとか、私の夢を応援してくれるとか、そ、その……私のことを可愛いとか……」

「流石は零さん、相変わらず手が早いというか……。でも零さんに応援されたり褒められるのって嬉しいでしょ?」

「確かにまぁ……うん」

 

 

 自分のことしか考えていないような人だと思ったけど、私の話には静かに耳を傾けてくれた。自分の欲の深い夢を受け止めてくれて素直に嬉しかったんだよね。それはお兄さん自身も欲深いからってのもあるかもしれないけど、同じ欲望を持った人に出会えて、それを認めてもらえて安心したよ。

 

 お兄さんと会話をしていると分かる。あの人はこっちの目を見て話す。会話だったら普通のことかもしれないけど、意外と出来る人は少ないんだよね。

 お兄さんに見つめられるとなんだか心の奥まで見透かされているような感じがして恥ずかしい。でもそのせいかお兄さんはこちらの心情や考えを汲み取ることが得意のようで、だからこそ私の心に寄り添うことができたんだと思う。暖かかったんだよね、その時のお兄さんが。

 

 

 暖かかったと言えば、抱きしめられた時は心がポカポカしたなぁ……。ぎゅっと抱きかかえられて、男性の力強さを感じた。そしてその後、抱擁されながら下の名前を呼ばれた時は心が――――って、また思い出しちゃいけないことを思い出してる!! 煩悩退散煩悩退散!!

 あの時から定期的にお兄さんに抱きしめられた時の記憶がフラッシュバックして悶々としてしまう。そして脳内に妄想として広がるたびに身体が熱くなって胸がドキドキするので本当に迷惑。うん、迷惑迷惑迷惑!!

 

 

「ねぇ、もしかしてだけど……侑ちゃんも?」

「はぁ!? そ、そんなことは断じてないから!!」

「そ、そうなんだ……。でも、顔真っ赤だよ……?」

「う゛っ……!? そ、そんなたった1日で意識しちゃうとかどれだけチョロいのって話で……」

「でも零さんの場合はそうなっちゃうのも仕方ないというか、栞子ちゃんもそうなっちゃったし……。それに零さんの前だとみんなヒロインにされちゃうんだよ。自分がどんな自分であっても、零さんは私たちを魅力的にしてくれる、とっても不思議な人」

「信じられない。信じられない……と思いたい」

 

 

 自分の中で気持ちの整理がついていない。男性のことを考えてここまで身体が熱くなったのも、心が揺れ動かされたのも全部初めてだから。歩夢が『ヒロインにされる』という中々のパワーワードを放ってたけど、もしかしたら私もそうなのかも……。これが『恋』、なのかなぁ……。まだ分かんないや。それにお兄さんには歩夢たちがいるし……。

 

 

「歩夢はさ、お兄さんがたくさんの女性を付き合っていても平気なの? ほら、μ'sやAqoursの人たちとも知り合いだってお兄さん言ってたじゃん?」

「う~ん、零さんだったら仕方ないかなぁって。それだけ器の大きい人だってみんな分かってるからね。それに零さんは私たち1人1人のことをしっかり愛してくれるから」

「そうなのかなぁ……」

「それもいつか分かるよ、きっと」

 

 

 1人の男性に複数の女性が添い遂げる異常事態。でもそれを違和感なく受け入れようとしている私もいる。そうやって順調にお兄さんの世界に飲み込まれ、そして慣れていく自分が一番怖いかも……。

 歩夢もそうだけど、他のみんなもお兄さんと1つになる気満々だ。お兄さんによって極上の幸せを与えられ、誰も不幸にならない、そんな日常。今日1日だけでもみんながどれだけお兄さんに対して好意を抱いているのか分かり、お兄さんがいることでいつも以上に和気藹々としていた。そう考えるとそんなお兄さんが作る世界も悪くない……のかなぁ? 悪くないとか思っている時点で私も毒されてるような……。

 

 

「それにしても、自分の夢を出会って1日目の人に話すとは思わなかったよ。お兄さんが相手だと自分のことを自然と喋っちゃうんだよね」

「そうだね。零さんは自分のことを包み隠さずに全部話してくれるから、私たちもその影響を受けちゃうのかも」

「確かに……。でも出会ったばかりの女の子に『自分を好きになってくれた女の子はみんな幸せにする』とか宣言したり、『可愛いコスプレを見たいから着ろ』なんて命令したりする普通? 私に嫌われるとは思わなかったのかな?」

「嫌われないと思ったから話したんじゃないかな。それに例え嫌われても零さんなら自分への好感度くらいすぐに逆転できるからね」

「まさか、私も逆転されようとしてる……? いや別に警戒していただけで嫌ってたわけじゃないけど」

「もしかしたら侑ちゃん、1ヵ月後、いや来週にも恋人に……?」

「あーーーー聞こえない聞こえない! なーーーーんにも聞こえない! なんかお兄さんの手のひらで転がされているようで癪だもん!」

「今日の侑ちゃんとてもツンデレさんだね♪」

「デレてないし!!」

 

 

 アニメや漫画で誰かにツンデレと言われて否定するシーンがあるけど、そのキャラの気持ちがよくわかったよ。だってツンデレじゃないもん。お兄さんをからかったり、声を荒げてツッコミを入れてツンとした態度を取るときもあるけど、決してデレてはいない。気付いていないだけではと言われるかもしれないけど、いやデレてないから。うん、デレてない。

 

 

「あぁ~もうお兄さんの話は終わり! 次はいつ会うか分からないし、もしかしたら一生会うかも分からないんだから悩んでも無駄無駄!」

「あっ、そのことなんだけど、私たちの練習を見に来てくださいって零さんにお願いしたら『いいよ』って言ってくれたんだ! だから定期的に見に来てもらおうと思って!」

「え゛っ、また来るの??」

「うん。零さんって今大学4年生で、教員免許も取得済みでもう大学でやることがないから暇なんだって」

「へ、へぇ……」

 

 

 お兄さんが目の前にいなくてもこんなにモヤモヤしてるのに、今度顔を合わせたら私一体どうなっちゃうんだろう……。しばらく会うことはないだろうと信じて心の平静を保っていたけど、お兄さんの暇具合を聞くにすぐに再会しそうだなぁ……。とりあえずまたお兄さんに身も心も掴まれないためにも己の精神力を鍛えておかないと。

 

 

 そして気が付けば、私たちの住むマンションの前に到着していた。結局帰宅中はお兄さんの話題一色で途切れることがなく、あの人の存在が歩夢の、そして私の中でとてつもなく大きくなっているのを実感した。今日はお兄さんのことばかり考えて疲れたから早く寝よう。

 

 

「それじゃあ侑ちゃん、また明日!」

「うん、おやすみ歩夢。お兄さんにかまけて夜更かししちゃダメだよ」

「そ、それは……」

「やる気満々だった!?」

「ゆ、侑ちゃんも同じだよね!?」

「どこが!? むしろ一刻も早くお兄さんを頭の中から消し去りたい! そうしないと私――――あ゛ぁ゛あああああもうっ! なんか熱くなってきたからもう帰るね!!」

「侑ちゃん!? ふふっ、素直じゃない侑ちゃんも可愛いなぁ♪」

 

 

 ツッコミを入れたくなるような言葉が聞こえたような気がするけど聞こえなかったフリをしておこう……。

 そして私は超特急で部屋に帰ると、そのまま倒れ込むようにベッドにダイブする。月明かりに照らされた暗い部屋の中で、私は枕を抱きしめながら天井を見つめる。頭の中の()()()は、まだ消えない。

 

 

「ホントに迷惑……」

 

 

 それからしばらく、身体と心の火照りは止まなかった。

 




 自分で描いておいて言っちゃうのもアレですが、侑ちゃん可愛いですね(笑)
 アニメで主人公ムーヴをしているからこそヒロインとして零君に攻略されているのが描いていて堪らなくなります!

 今回は2回目の侑視点でしたが、恐らくそういった話が今後も増えていくと思われます。零君と女の子たちの関係を客観的に分析したり、メインヒロインの中では唯一まだ抵抗している方なので彼女の心情の変化も描きやすいためです。あとは零君の前でツッコミを入れられる貴重なキャラなので(笑)

 前書きにも書きましたが、今回で長かった再会編は終了です。次回以降は虹ヶ咲メンバー主体のいつも通りの短編集になる予定です。




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