ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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 これが零君の日常。羨ましいと思うのか大変だと思うのか……


ハーレム王はデートも多難

 俺クラスになると女の子とのデートなんて幾度となく経験しているが、一度たりとも飽きたことはない。それはもちろん相手が変わればデートの内容も大きく異なり、遊園地や水族館といった定番スポットから、ショッピングモールで買い物や食べ歩き、中には自宅デートと毎回多種多様なシチュエーションで俺を楽しませてくれるからだろう。俺は元々遊び歩くのが趣味ではないのだが、度重なるデート経験で女の子が好きそうな場所は大体把握しているデートマスターとなっている。なんかもう女性向けのレンタル彼氏として小遣いを稼げそうだな……。

 

 そんなことを考えながら俺の向かう先はデートの待ち合わせ場所だ。人が大勢集まる噴水広場なので目的の人物が見つかるか怪しかったが、先に向こうが俺に気付いたようで、手を振りながらこちらに駆け寄ってくる。

 

 

「こんにちは、零さん!」

「あぁ。待たせて悪かったな、しずく」

「いえいえ! 零さんとの2人きりのお出かけが楽しみで、ずっとドキドキして待ってたら時間なんてあっという間でした!」

「そこまで喜んでくれるのなら来た甲斐があるよ。で? 今日はどこに行くんだ?」

「こっちです!」

「お、おい!」

 

 

 しずくは俺の手を握って嬉しそうに走り出す。急ぐようなデートじゃないってのにここまで舞い舞い上がっちゃって、コイツの心が行動にまで現れているようだ。いつもは女の子を先導する立場の俺だが、今日はしずくに全てを任せてみよう。たまには女の子に手解きされるのも一興だろ? いやエロい意味じゃなくて……。

 

 しばらくして、しずくの誘導でとある喫茶店の前に到着する。見たところ若者カップルが多く、如何にもデートスポットって感じだ。テラス席にはカップルたちがお互いにスイーツを食べさせ合っており、ラブラブとした桃色の雰囲気が漂っている。正直に言ってしまうと露骨に甘々とした雰囲気は好みではないのだが、彼女がここをご所望とあれば俺も勇気をもってこの空間に踏み入ってやろう。

 

 店に入ると、めちゃくちゃ美人な女性店員が俺たちを出迎えてくれた。名札には『綾小路』と書かれており、大和撫子の言葉がピッタリの高校生くらいの子だ。

 

 

「いらっしゃいませ! お二人ですか?」

「はい」

「現在カップルキャンペーンを開催しておりまして、カップルでご来店いただいた方はお食事からお飲み物まで全品半額になります。お二人はカップル……みたいですね♪」

「お、俺たちは――――」

「はい、そうです♪」

「え゛っ……!?」

 

 

 店員に勘違いをされたから否定しようと思ったら、しずくは満面の笑みで堂々と嘘をつきやがった。何故勘違いされたのかは明白で、俺たちは出会ってからずっと手を繋いだままだったからだ。しかもいつの間にかお互いの指と指を絡め合う恋人繋ぎになっており、そんな様子を見たら誰でも勘違いするだろう。

 てかしずくの奴、手を握る力が強くなってねぇか?? 決して俺を離さないという意思表示か、流石ヤンデレ属性を持っているだけのことはあるな……。

 

 それよりもコイツ、最初からこれを狙ってたのか。何の躊躇いもなく清々しい顔でのカップル偽装はやはりコイツの演技力があってこそだろう。案の定店員にカップルと思い込ませることに成功している。

 そんなこんなで疑似恋人同士になった俺たちはカップル席へと案内された。

 

 

「ここ、前にかすみさんと璃奈さんと3人で来たことがあるんですよ。その時に食べたケーキがとても美味しくて、零さんとも一緒に食べたくてまた来ちゃいました!」

「女の子って甘いモノ好きだよな。スクールアイドルをやってんだからカロリーは気にしろよ」

「う゛っ……。でも今日は特別です! 筋トレをしている人にもあるじゃないですか、チートデイって食事制限をせずたくさん食べていい日が。それと同じです!」

「お前のことだから心配はしてないけどさ……。で、どのケーキなんだ?」

「これです!」

「これって――――え゛っ、7段重ねのパンケーキ!? 食ったのか? これを3人で??」

「はい♪」

 

 

 メニューの写真からでも伝わってくるこの迫力。虹色7色のホットケーキの間に生クリームとイチゴが挟み込まれる形で積み重なっており、もう見ているだけで胸焼けしてしまいそうだ。女の子は甘いものは別腹とよく言うが、身体の小さい1年生組がこれを完食できたことに驚きだよ……。

 

 正直食べきれる自信は全くないのだが、しずくが俺とこの店へ来るのを楽しみにしてくれていた以上ここで引くのは申し訳ない。だから覚悟を決めるしかないか。

 しずくは7段重ねのパンケーキを注文する。そしてしばらく他愛もない世間話をした後、程よくして例のケーキが運ばれてきた。大きさが大きさなのでそこそこ立派なワゴンに乗って……。

 

 さっき俺たちを出迎えてくれた店員がケーキをテーブルに置く。

 実物を目の前で見てみるとメニューで見るよりも数倍も圧巻で、しずくと向かい合って座っているはずなのに相手の顔が見えなくなるくらいだ。それでいて見た目も派手で、如何にもSNS映えしそう、ていうかそれ目的で作られているのが分かる。確かにかすみとか好きそうだなこういうの……。

 

 どこから手を付けようかと迷っている最中、何故か俺たちのテーブルから離れない店員。見てみるとハンディカメラを抱えており、俺たちを撮影しようとしていた。

 

 

「えぇっと、どうして撮ってるんだ……?」

「どうしてって、カップルキャンペーンのために決まってるじゃないですか♪ 全品半額の特典を適用するには、カップルらしくスイーツを食べさせ合っている様子をビデオ撮影すること。これが条件です!」

「はぁ!? 聞いてないぞそんなこと!」

「いやこのキャンペーンは有名も有名なので、それを承知で来られたのかと。それに彼女さんはもう待ってますよ♪」

「えっ……?」

 

 

 しずくの様子を見てみると、頬を赤く染めながら口を半開きにしている。もう俺に食べさせてもらう気満々で、店員の煽りもあってかやらなければならない雰囲気が形成されていた。カメラは既に回っているみたいだから、もはや逃げ道はないか……。それにしずくがこれを楽しみに俺をここに連れて来たのだから、男らしく応えてやるのが責任ってものだろう。仕方がない。

 

 俺はテーブルの向かいに人に食べさせてあげる用の長いスプーンを手に取り、タワーケーキが崩れないように注意しながらクリームを1口サイズすくう。

 そしてしずくの小さな口にスプーンをゆっくりと入れ込む。しずくはケーキをパクっと咥えると、あまりに美味しかったのか直後に幸せそうな表情を向けた。

 

 

「いい『あ~ん』でした! とても初々しくてこれ以上にないってくらいいいPVになりそうです!」

「ケーキの美味しさももちろんですけど、零さんに食べさせていただいたことが嬉しくて、より美味しく感じちゃいます♪」

「いい笑顔ですね! ラブラブカップル過ぎて嫉妬しちゃいそうです」

「ラブラブねぇ……」

「はいっ! 最近付き合い始めたばかりなので零さん緊張しちゃってるんですよ」

「まぁ! 彼氏さんも可愛いですね♪」

「なにこの羞恥プレイ……」

 

 

 たかがケーキを一口食べさせただけでこの盛り上がりよう。店員さんも俺たちと同年代くらいなので、やっぱ若い女の子ってこの手の話題が好きなんだな。俺は女の子付き合いに慣れ過ぎているせいか、今更こんなことではテンションは上がらないのでこの場に置いてけぼりにされている。そもそもの話、俺たちカップルじゃねぇんだよなぁ……。しずくの演技が完璧すぎてバレてないけど。

 

 

「それでは愛の告白タイムと行きましょう! 彼氏さんから彼女さんへの熱い告白を見せてください! ここで見せつけたラブラブ度によって、お食事のお値段が半額以上になりますよ! やりますか?」

「いや、やらな――――」

「やります!!」

「はぁ!?」

 

 

 告白するの俺なんだけどどうして勝手に決めてんのコイツ!? しずくは目を輝かせて店員の策略に乗りやがった。店員も引っかかったと言わんばかりの黒い笑顔をしている。完全にコイツに遊ばれてるだろ俺たち……。

 

 

「それでは彼氏さん、告白をどうぞ!」

 

 

 カメラを回しながら俺を煽る店員と、期待を込めた眼差しで俺を見つめるしずく。場の雰囲気が告白ムードになっているせいか到底回避できる状況ではない。ここはもう腹を括るしかないか……。

 俺は大きく深呼吸をして、しずくと目を合わせた。

 

 

「好きだよ、しずく……」

「ッ!?!? は、はいっ! 私も大好きです!!」

 

 

 とびきりの笑顔。とんだ羞恥プレイだったけど、この笑顔が見られたことだけは満足していいかもしれない。

 

 

「お互いに初々しさが堪りませんね! いいラブラブ度を見せてもらったので、お値段全品4分の1になります♪」

「わぁ~! これで今日はたくさん食べられますね、零さん!」

「いやこのタワーだけで腹いっぱいだろ。ていうかこれを食いきれるかも分かんねぇし……」

 

 

 幾度とない羞恥プレイを受けながらも何とか全ての試練を乗り越えた俺。最終的にカップルだとバレなかっただけでも御の字と言ったところか。しずくの演技の良さと俺が微妙にやる気のなさを出して緊張したと思わせられたおかげか、出来立てほやほやカップルだと思われたみたいだしな。

 

 その後はしずくのハイテンションに何とか付き合いながらも、命からがらタワーケーキを完食した。女の子とのデートは大歓迎なんだけど、しばらく甘いモノは勘弁して欲しいよ……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 しずくの一件から間もなく、またしてもデートの予定が入った。連日デートは女の子の知り合いが多いので別に稀なことではなく、むしろ日常茶飯事だったりする。もちろん誘われたから渋々とかでもなく、俺はデートの関してはいつも前向きだ。たくさんの女の子と付き合っているだけあって個々人との時間をあまり作れないこともあるから、必然的に1on1になれるいい機会だと思ってるよ。

 

 ちなみに今日のお相手は――――

 

 

「零さん、こっち」

「璃奈、早いな。まだ待ち合わせまで時間あるだろ」

「楽しみ過ぎて居ても立っても居られなかった。お店、予約してあるから行こ」

「あ、あぁ……」

 

 

 璃奈は自然に俺と手を繋いで歩き出す。普段のコイツはボードで顔を隠しているから引っ込み思案だと思われるかもしれないけど、話してみると意外と積極的な子だ。本人もお喋りは大好きと公言しているくらいだし、今もこうして俺の手を握りながら導くことくらいはやってのける。それに胸の小ささを気にして俺に揉ませて大きくしようと画策していたくらい大胆な積極性があるから、俺からしたら引っ込み思案な部分があるって方が疑われるよ……。

 

 そうして璃奈にリードされながら向かったお店は――――

 

 

「ここ」

「マ、マジで……?」

「ん? どうしたの?」

「い、いやなんでもない……」

 

 

 ここって、この前しずくと行った例の喫茶店じゃねぇか……。しかもまだ忌々しいあのカップルキャンペーンが継続中のようで、ご丁寧に看板まで新調して設置してやがる。そういや璃奈も以前にしずくたちとここに来てあのケーキを食ったって言ってたな。あれ、ということは……?

 

 

「ここのタワーケーキ、とても美味しいの。だから零さんとも一緒に食べたいと思って」

「そ、そうか。そりゃ楽しみだな……」

 

 

 やっぱりぃいいいいいいいいいいいい!! しずくと食べた時も腹に来て倒れそうだったのに、また同じ地獄を味わうのか??

 しかも懸念点はそこだけではない。以前はカップルとしてここに来たけど、恐らく今日も同じノリで入店しようとしている。そうなると店の人に俺と璃奈の関係だけでなく、俺としずくの関係まで怪しまれる。つまり俺が浮気しているクソ野郎ってレッテルが貼られそうで……。

 前と同じ店員が接客するとも限らないが、なるべくバレないようにしないと。せっかく璃奈が俺を誘ってくれたんだ、コイツを悲しませたくはないしな。

 

 

「あっ、これキャンペーン中に撮ったカップルの写真だって。私たちもここに飾られたりするのかな……?」

「なに!? あっ……ッ!?」

「どうしたの?」

「いや虫が止まってから追い払ったんだ……」

 

 

 あぶねぇ……。もう少しで俺としずくがケーキを食べさせ合っている写真を璃奈に見られそうだった。咄嗟に看板から引き剥がしたおかげで対処できたが、これ本当に入店して誤魔化しきれるのか? まあ璃奈のことだから説明すれば分かってもらえるかもしれないが、できることならコイツには俺たちが新鮮なカップルという体でいて欲しい。デートに来てるんだ、女の子に気負わせたくはないだろう?

 

 様々な不安点を抱えつつも、俺たちは入店する。

 

 

「いらっしゃいませ! お二人ですか?」

 

 

 前と同じ店員じゃねぇか!?!? いやいや落ち着け、客は数人しかいない店員の顔を覚えられるが、店員からしてみれば無数に来る客の顔なんていちいち覚えていないはずだ。しかもカップルキャンペーン中だから普段以上にたくさんの客が来るだろうし、俺たち以上にラブラブした奴らなんていくらでもいただろう。だから印象の強さって意味でも大丈夫、俺の顔は覚えていない絶対に。

 

 

「2人です」

「現在カップルキャンペーンを開催しておりまして、カップルでご来店いただいた方はお食事からお飲み物まで全品半額になります。お二人はカップル……って、あら? う~ん……」

「どうかしましたか? 私たち、そ、その……恋人同士です」

「い、いえ、申し訳ございません。お席にご案内しますね!」

 

 

 なんか俺の顔をじっと見つめられたんだけど本当に大丈夫かよこれ……? 席に案内されている時も首を傾げて不思議そうにしていたし、もしかしてもうバレてるんじゃねぇだろうな……。

 璃奈はたどたどしく嘘をつき、またしても偽カップルがここに生まれる。バレてるかもと疑惑を抱かれつつ案内された席に着く俺と璃奈。そして前回と流れで店員にキャンペーンの説明をされ、璃奈は例のタワーケーキを注文する。ここまでほぼデジャヴなんだけど、穏便に事が進んでくれることを祈るばかりだよ。最悪愛の告白をするってのはいくらでもやってやるから、前回来店した事実だけは気付かないで欲しい。

 

 しばらくしてタワーケーキがワゴンで運ばれてくると、俺たちのテーブルの上に配置される。何度見てもその大きさに驚かされるが、今回は前回の地獄を知っているからこそ既に胸焼けが半端ない。璃奈は胃袋が大きいと思えないが食いきれんのかこれ……。

 

 

「それでは彼氏さん、彼女さんにケーキを食べさせてあげてください! 勝手は……分かっていらっしゃいますよね?」

「え゛っ!?」

「カメラを回しておきますねー! そう、前と同じく……」

「な゛っ……!?」

 

 

 店員はプロ意識がゆえに笑顔を崩さないが、青筋が立っているのが見えた。

 バレてる!! 完全にバレてた!! 言葉にはしていないが伝わってくる謎の殺気。『あなた、以前別の彼女とここに来ていましたよね? 今度は別の女性とカップルでご来店ですかそうですか……』と言いたげな表情が伝わってくる。笑顔が怖いとはまさにこのことか……。

 

 

「零さんに食べさせてもらえるの? ちょっと恥ずかしいかも……」

「そうですよ! 私の見立てでは彼氏さん、『あ~ん』をするのがとても上手いと思いますから……。女性を悦ばせるのも得意そうですよね……」

「やっぱりそういうの分かるんですか?」

「はいっ! なんたってたくさんのカップルを見てますから! 中には何度も来店してくださる方もいるようで……」

 

 

 基本笑顔なのにところどころドスが聞いた声になってるからこえぇよ!! それに俺の俺を見つめる時だけ目が鋭くなり怒ってますアピールが丸分かりだ。もう自分が『あなたが二股をしているのは分かってますよ』と気付いていることすら隠しもせず、むしろそれを意味ありげな言動として俺に圧をかけてきやがる。店内だから雰囲気を壊さぬよう黙ってくれてはいるみたいだが、外だったら確実に不倫野郎と罵倒されていただろう。

 

 璃奈は恥ずかしいのか目を瞑ったまま口を小さく開く。これだけ期待されていたらやるしかないんだけど、目の前には何も知らず純粋に恋人ごっこをやっている女の子、隣には全てを知っていて青筋を立てながらカメラを回す女性店員。しかし、どうにもこうにも、やりにくいねぇ……。

 

 俺はしずくの時と同じく長いスプーンを取り、タワーケーキから1口すくって璃奈に食べさせてやる。すると璃奈は愛くるしい笑顔でケーキを頬張った。まるでというか、もう小動物の餌付けと全く変わらないな。いや馬鹿にしてるわけじゃなくて、マジで可愛いから。

 

 

「どうですか? ()()()さんからの愛情は?」

「うん、美味しい。前に同じものを食べた時も美味しかったけど、零さんに食べさせてもらえるとより美味しく感じるかも」

「そうですよねー。皆さん同じ感想なんですよねー。どうですかねー()()()さん?」

「そ、そうだな……」

 

 

 璃奈はしずくと全く同じ感想を述べる。それを同じと知っているのは俺だけではなくこの店員もで、それを知ってかまたしても俺に圧をかけてくる。璃奈は俺とのデートを存分に楽しんで幸せの絶頂みたいだが、俺は場の空気が悪すぎて胃に穴が開きそうだぞ……。

 

 

「次は愛の告白をお願いします!」

「告白……?」

「はい! 彼氏さんから彼女さんへ告白することで、このケーキが何倍も甘く美味しくなるんですよ! それにケーキのお値段も半額以下になるかもしれません」

「そ、そうなんだ……。零さん」

「あぁ、やるよ……」

 

 

 店員からの煽りもあってまたしてもやる雰囲気になってしまった。でもやる以上は事務的に済ませるのではなく、しっかり璃奈の心に言葉を届けたい。例え偽りのカップルだとしても今は2人きりでデートしているのは変わらないからな。まぁ別の子に告白してるシーンを見たこの店員がどう思うかは知らないが、璃奈にバラす気はないのようなので最悪の事態にならないことだけは安心か。

 

 俺は大きく深呼吸をして、璃奈と目を合わせた。

 

 

「好きだよ、璃奈……」

「っ……!? わ、私も……大好き! 好き!」

 

 

 いい笑顔……ではないが、表情を作れないにしても頬を紅潮させ恍惚な顔をしている。表情作りが苦手だとか言ってたけど、女の顔はしっかりとできるみたいだ。この瞬間だけは誰かに見られていることも忘れて2人きりの空間にいるように思えるな。

 

 

「はい浮気……いえ、告白大成功ですね!」

「今さっき本音が出てなかったか……?」

「なんのことでしょうか。私はカップルたちを応援する、いわばキューピットです」

「どこのキューピットが鬼のような形相で人を睨むんだよ……」

「ん? 何の話?」

「いや、なんでもねぇよ。ほら、ケーキ食っちまおう」

 

 

 その後は璃奈にまた『あ~ん』をして欲しいとせがまれたり、それを見ていた店員が『浮気野郎は死すべし』の雰囲気を醸し出していたり、先日と同様にタワーケーキに撃沈したりと、俺のデートはまたしても多難であった。女の子とのデートは大歓迎だけど、今度は心の安寧を保てるようなところに行きたいよな……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 そして後日、俺はまたデートの待ち合わせをしていた。

 その相手は――――

 

 

「ゴメンなさい、モデルの仕事で遅れちゃって。待った?」

「よぉ。お前の出てる雑誌を立ち読みして時間を潰してたから平気だ」

「そこは買って読んでくれてたらポイント高かったのに」

「お前以外に興味ないから、他の奴らが載ってる雑誌に金を払いたくねぇな」

「も、もうっ……100点よ」

 

 

 今日は果林とデートの約束をしていた。いつものように待ち合わせをし、今日も女の子の先導でデートをする予定だ。俺の手を何の躊躇いもなく握った果林は、俺を引っ張る形で歩き出す。

 そしてしばらくして辿り着いた先は――――

 

 

「で? どこに行くつもりだ?」

「実は前に1年生たちが食べたっていうケーキが気になっていて、今日はそこに行こうと思うの」

「1年生たちが――――まさか!?」

「ほら、ここよ。タワーケーキが美味しいお店で、期間限定でカップルキャンペーンをやっているらしいの。だ、だから、その……零さんと一緒に来たくて……」

 

 

 やっぱりぃいいいいいいいいいいいい!? 別にコイツらが悪いわけではないが、デートで行った店くらい仲間内で共有して被らないようにこっそり配慮とかしてくれ!!

 その時、背筋に悪寒が走る。振り向いてみると店の前を掃除している店員が――――

 

 

「いらっしゃいませ! あら、また随分とお盛んなことですね……彼氏さん♪」

 

 

 また、コイツかぁああああああああああああああああああ!!

 そしてまたこの店員に()()で接客された。それはもうとびきりのくろーーーーーーーっい笑顔で……。それに今日は前よりもかなり露骨に俺に圧をかけてきやがったし、なんか果林を見て顔を赤くしていたしどういうことなんだ……?

 

 ともかく、どうやら俺のデートはどう足掻いても穏便には終わらないらしい……。

 

 

 

 

 余談だが、あの店員どこかで見たことがあるんだよな。名札に掛かれていた苗字は『綾小路』、他の店員が『姫乃』って呼んでいたか。普通に可愛い子だったから、俺と縁があればまたどこかで会えるだろう。この喫茶店で会うのだけはもう勘弁だけど……。

 




 零君くらい女の子付き合いが多いとデートスポットが被ることなんていくらでもありそうですよね。そしてデート中に他の子に見つかるイベントも多そうで……。修羅場ネタも面白いと思うのですが、この小説は女の子同士の仲が良すぎるのであまりそういった展開にはならなさそうです。

 今回出てきた綾小路姫乃はアニメにも出てきた子で、今後この小説にも登場予定です。零君との出会いはそれなりに最悪になってしまいましたが……



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