侑の迷う心と新キャラ登場。
虹ヶ咲楽園計画。お兄さん――――神崎零さんのお姉さんの秋葉さんがお兄さんを好きになる素質のある女の子たちを集め、お兄さんを主として君臨させようとするとんでもない計画だ。しかもその女の子たちを生徒として構成されているのがこの虹ヶ咲学園であり、私を除いた全員がお兄さんに恋心を抱いているらしい。そんなことができるのかと思うけど、実際に自分自身がその渦中にいるからこの状況を受け入れざるを得なくなっている。
ただ唯一、私だけはお兄さんに好意を抱かない女子生徒して入学させられている。その理由はお兄さんに対して恋の盲目にならない女性という立場でお兄さんをサポートさせるのが狙いらしい。こっちの事情なんて全く考えていない人員配置で怒りを通り越して溜息しか出ない。普通の進学校だと思って生活していたのにいきなり変な計画に加担させられ、その事実を伝えられて数日が経つはずなのにまだ混乱してるよ……。
秋葉さんからその話を聞いた後、虹ヶ咲学園の景色が変わった気がする。お兄さんの話をする子が目に見えて増えたし、自分の身なりやオシャレに気を使う子も増えた。しかも私の教室や学科の生徒だけじゃない、全ての生徒がだ。あまりに異様な光景に私がここにいるのが場違いな気がしてくるんだよね……。
「はぁ~……」
「どうしたの侑ちゃん? お疲れ?」
「いや、改めて自分の境遇を認識して落胆してるだけだよ。どうしてこうなっちゃたかなぁ~ってね」
「えっ? どうしたのいきなり……?」
同好会の部室で歩夢と次のライブの段取りを決めていたけど、余計な雑念のせいで全然集中できない。その様子が疲れているように見えたのか歩夢に心配される始末。まあ疲れていると言えば疲れてるけどね。肩身が狭い思いをしてるからって意味で……。
そういえば秋葉さんの計画って歩夢たちは知ってるのかな? 内容が衝撃的過ぎて当たり前のことを聞くのを忘れていた。思い立ったが吉日、せっかくだし聞いてみよう。
「ねぇ。歩夢って秋葉さんの計画のこと……知ってる?」
「えっ、なにそれ?」
「いや、知らなかったらいいんだ。生きていく上で知る必要のないロクでもないことだから」
「侑ちゃんどうしたの!? とても遠い目をしてるけど……?」
そりゃあね、いきなり変な計画に巻き込まれた挙句にサポートしての立場に強制任命されたら誰でもそうなるよ。1人の男性のために何百人もの女の子を用意して、その女の子たちに囲まれる楽園を作る? もはや常識が逸脱するどころか宇宙の彼方まで飛んでちゃって理解できないんだよね……。その計画を知って以降は学園の雰囲気も変わったみたいで、正直少し居づらさはある。まあ歩夢も他のみんなもそんな堅苦しい思いは一切していないだろうし、この違和感を察知してるのは私だけだろう。
「あっ、もうこんな時間だ。ゴメン歩夢、ちょっと行ってくる。さっき言ってた
「うん、行ってらっしゃい」
とにかく今は計画のことは忘れよう。考えても私だけでどうにかなる問題じゃないしね。そもそもあの神崎姉弟が良い意味でも悪い意味でも変人で狂人だから、私から何を言っても体よく丸め込まれるだけだろう。あれ? もしかして私……味方が誰もいない??
~※~
とある人を迎えに学園のロビーに向かうと、間もなくその人がやって来た。
赤いメッシュの入ったロングヘアに革ジャンと、だいぶロックなファッション。如何にもイケイケな風貌をしている女性であり、スクールアイドルフェスティバル関連で私が過去にお世話になった人だ。
「こんにちは侑ちゃん。迎えに来てもらって悪いね」
「いえいえ! お話したいと言ったのはこちらなので、薫子さん」
三船薫子さん。苗字から分かる通り栞子ちゃんのお姉さんだ。元々スクールアイドルとして活動しており、引退後は以前開催されたスクールアイドルフェスティバルの実行委員を務めていた経歴がある。それ故にスクールアイドル界隈や内部事情に詳しく、雑誌やネットでは得られない知見で色々勉強させてもらっていた。
そして今日も色々とお話を聞ければと思って待ち合わせをしていたけど、それ以外にももう1つ理由がある。それは薫子さんがこの学園の教育実習生になったこと。スクフェスの時にお世話になったこともあって、そのお礼も兼ねて今日はお話を聞きがてらお祝いをする予定だ。まあ私ができることと言えば学園の学食でランチをするくらいだけど、ここの学食は有名レストランのメニューが並んでるからそれなりに豪華にはなる……よね?
「そういえばさ。この学園、なんか雰囲気変わった? 教育実習生になる前に打ち合わせで何回か来たことはあるけど、その時と比べて女の子たちの雰囲気が違ってるような気がするんだよねぇ~」
「っ!?」
「元々この学園の子たちは可愛い子ばかりだったけど、今はより魅力に磨きがかかっているというか、もうその辺の男がここに迷い込んだら楽園すぎて卒倒しちゃうんじゃない?」
「そうですよね!? やっぱり分かりますよね!?」
「えぇっ!? どうしたの急に迫真のそうな顔をして……。まぁそうだね、みんながみんな恋する乙女って感じで異様な光景に見えるかな」
「やっと……やっと会えました!! この状況に疑問を感じてくれる人に!!」
「えっ? いきなりテンション高くなってない?? 涙流しそうになってるけど!?」
今までハブられてたこの状況を打破してくれる人が現れたんだから、そりゃテンション上がっちゃうよ!
当たり前だけど歩夢たちを含め、ここの生徒は自分たちが置かれている状況を異常だとは思っていない。だからこそ同じ感覚を共有できる仲間ができて思わず涙が出そうなくらい舞い上がっちゃったんだ。
仲間発見により嬉しさに満ち溢れていた私は、その勢いのまま薫子さんにこの学園の創設理由、現在進行形の計画の実態、この学園の女の子たちが入学できた真の理由、その全てを話す。最初は当然『なにそのアニメや漫画のような話は……』と驚いていたけど、私の真剣な様子を見てか話をしっかりと受け止めてくれた。
「なんていうか、違和感の正体が想像を絶するほど意味不明な計画だったからビックリだよ……」
「信じたくないとは思いますが、何もかもが事実なんですよね……。別にその計画を阻止しようとは全然考えていないんですけど、異様な空間に1人だけ放り込まれた感じがして少し居づらいなぁと思ってるだけです」
「それでその計画のためにサポートに駆り出されてるわけでしょ? 苦労してるね、ホント」
「分かっていただけただけでも気持ちが軽くなりました。お兄さんからはスクールアイドルのマネージャーとして学べることはたくさんあるけど、それ以上に大変なこともたくさんありますから。特にツッコミとか……」
「ボケとツッコミが成り立ってるなんて、聞く限りでは普通に楽しそうだけど?」
「普通にボケてくれるだけならまだ可愛いものですよ……」
お兄さんを相手にする場合はその唯我独尊な性格に付き合っていくのもそうだし、日頃から行われる女の子たちに対するエッチな行動を監視する必要がある。最近は同好会メンバーの何人かとデートをしたみたいで、流石にそこで何が行われているのかまでは把握していない。だけどお兄さんとデートをした人は決まって女の子としての魅力が上がっている気がする。いや歩夢たちは元から魅力だらけなんだけど、もうこっちの目が痛くなるくらい女子として磨きがかかっているみたいで……。一体何があったんだろう……?
「でも侑ちゃん、別にイヤそうではないよね? ただ単に呆れているだけって言うか」
「まあイヤではないですよ。別にお兄さんや歩夢たちと一緒にいて楽しくないってことはないですし……。それとこの学園の実情に疑問を抱くのとは別問題ですから」
「そうだねぇ……。でも誰も不幸になってないどころか、生徒個人が各々自分を磨き上げて、その結果学園自体の魅力が上がれば学園としてもプラス。入学する生徒を成績だけではなくて容姿で決めているのは難色だけど、実際にこの学園の偏差値は日本上位、部活もインターハイを常に首位。成績が結果として現れている以上教育面で咎めることもできないね」
「そうなんですよねぇ……。やっぱり我慢するしかないのかなぁ……」
薫子さんの言う通り、この学園は世間からも認められるほどの結果を残している。生徒の学力も問題なし、部活も常勝、海外交流も盛んなことから文句の付けようもない。だから学園の方針云々のネタで秋葉さんの計画を論破することはできないんだ。別に最初から反抗するつもりはないけど、たまに湧き上がってくるこのいたたまれない気持ちを誰かにぶつけて気分を発散する時の話題として欲しいだけだよ。さっきも言った通り結局私だけではどうしようもないから。
「それにしても私はその神崎零くんって人の方が驚きだよ。これだけの女の子たちを虜にしちゃうなんて、男優とかタレントか何か?」
「いえ、本人曰く普通の男子大学生だそうです。あの人のような普通がいてたまるかって話ですけど……」
「一夫多妻制って言葉は知ってるけど、現代社会でその制度を利用している人がいたことに驚きだよ。もしかしたら私たちはこれまでの常識を覆すような革命に立ち会っているのかもしれないね!」
「なんで嬉しそうなんですか……。勝手に巻き込まれてるこっちの身にもなってくださいよ……」
「あはは、ゴメンゴメン。でも型にはまらない我が道を行くって感じ、私好きなんだよね。会えるなら一度会ってみたいよ」
「会えますよ。今日来ますから」
「えっ、そうなの!?」
うわぁ~目がキラキラしてるよ……。最初は薫子さんのこと仲間だと思ってたけど、今はもうお兄さんに興味津々じゃん……。そういえば薫子さんも自由気ままに海外を飛び回ったりする自由人だから、我が道を行くって意味ではお兄さんと似ている。だからこそ一夫多妻制上等という常識を逸脱しまくりのお兄さんに惹かれているのかもしれない。やっぱり変人同士は引き付け合うのか……。
このままだと薫子さんまでお兄さんに取り込まれ兼ねない。薫子さんには申し訳ないけど、お兄さんが来る時間を適当に誤魔化して遭遇しないように仕向けよう。せっかくこの状況に違和感を覚える貴重な仲間(多分)ができたから、ここで失うわけにいかないもんね。
お兄さんが来る時間までもう少し。手遅れにならないように薫子さんを教育実習生就任歓迎会って名目で食堂へ連れて行くことにする。
「薫子さん! とりあえず食堂へ行きましょう!」
「なになに焦ってどうしたの??」
「早く行かないともうすぐお兄さんが――――」
「俺がどうかしたか?」
「お兄さんが来たら話がややこしくなるので――――って、え゛ぇえええっ!? お、お兄さん!?」
「すげぇ分かりやすい反応だな……」
いつの間にかお兄さんが私の背後に立っていた。あまりに突然だったので思わずノリツッコミのような反応をしてしまう。
時間を見てみるとまだお兄さんが来る予定時刻前だ。いつも時間ギリギリに来るはずなのに今日に限ってどうして余裕を持って来ちゃうんだろう……。今日に限って運が悪い。そういえば最近変なチョコで酔わされたり、水で服を溶かされたり、挙句の果てに謎の計画に加担させられたりとロクな目に遭っていないから、お兄さんと出会ってから自分の運が地に落ちてる気がする。
「おっ、もしかして君が神崎零くん?」
「あん? なんだこの赤メッシュ?」
「ちょーーーーーーっと!? 失礼ですよ!!」
「いやだって俺の学園に異分子が紛れ込んでるからさ」
「それでも言い方ってものがありますよね!? この方は三船薫子さん。栞子ちゃんのお姉さんですよ」
「へ~。品行方正なアイツと比べて姉の方は随分と遊んでるようだな」
「だ~か~ら~っ! 失礼ですって!!」
「あははっ! 思った通り面白い人だね!」
「それで許しちゃうんだ……」
初対面の人に対しても容赦ないのがお兄さんの性格で、曰く自分の能力が高すぎる故に尊敬に値する人にしか敬語は使わないらしい。なんとも唯我独尊だけど、それを笑って済ませられる薫子さんも懐が広すぎる。凡人の私にはこの2人の独特のノリについていくのがやっとかもしれない。あれ、まさかまたツッコミ役にされるの……??
「で? 栞子の姉が俺の学園に一体なんのようだ?」
「もう我が物顔だね……。私、この学園の教育実習生になったんだよ。今日はその打ち合わせに来ただけ。だから君のシマには長くいないよ」
「その口振り、この学校の実態を知ってるかのようだな。どこから聞いた? まさか侑……」
「えっ、そ、それは……」
「私から無理を言って教えてもらったんだよ。前に来た時とは学園の雰囲気や女の子たちの魅力が段違いに変わった気がしたからね」
「ほぅ、意外と分かるんだなそういうの」
「スクールアイドルをやってた時期があったから、他のグループを観察している間にそういった目だけは良くなっていたのかも。女の子の変化は特に気付きやすいよ」
薫子さんのフォローのおかげでお兄さんからの追及は逃れられた。他人にはあまり口外しないように言われてたから、お兄さんに目を向けられた時は挙動不審になっちゃった。栞子ちゃんが姉さんは世渡りが上手いって言ってたけど、今のお兄さんへの対応を見てる感じまさにその通りだと思う。当たり障りなくお兄さんの気を損ねないようにしているようだ。まあお兄さんも別にたった1つの言葉でキレるような人じゃないけどね。このまま薫子さんが穏便に話を済ませてくれれば万事解決だ。
「この学園の内情を知るのはいいけど、余計なことはすんなよ。ま、しようとしたところで俺たちに潰されるのがオチだろうけど」
「へぇ~、凄い自信だね。やっぱ学園をモノにした男は心も尊大だ。ますます興味が出てきたよ」
「あまり俺に入れ込むとすぐに惚れるぞ。他の男が見えなくなるくらいにな」
「それはこの学園の生徒のように?」
「そうだ。俺が幸せにする子たちだ」
ちょっ、ちょっと薫子さん踏み込み過ぎじゃない?? 上手いこと話を流してくれると思ったのにお兄さんに興味津々なためか、初対面なのにどんどん会話が深く掘り込まれていく。具体的にはお兄さんがどう返答してくるか試しているかのように、薫子さんはやや挑発的な口調になっている。お兄さんもそれを察知してかお得意の自尊自大を発揮していた。流石に喧嘩にならないよね? 大丈夫だよね? 胃がキリキリ痛みそうだから早く終わってぇ……。
「君が只者ではないってことはよく分かったよ。私は人を見る目がある方だと自負してるけど、君以上に自信に満ち溢れ、それを態度で示せている人はいない。だからこそそれが仇になって欲しくないんだ。これだけの女の子たちがいて、その中の誰か1人でも不幸になると考えると……ね。そう思うとこの学園、そして異質な計画は私は擁護できない。常識もさることながら、明らかに世間、世界から見てもルール違反だからね」
薫子さんの目は真剣だった。そしてその意見は至極真っ当で、お兄さんに現実を突きつけるかのようだ。夢のような妄想に浸っている暇があったら現実を見ろと遠回しに言っているようにも見える。お兄さんには付き合っている女性が多々いるようだけど、流石にこの学園ほどの人数は抱えていないだろう。だからいきなり大勢の女の子をモノにすることができるのか? 全員を幸せにすることはできるのか? そもそも世界から見たらルール違反だけどいいのか? など、私が言いたくても言えなかったことが遂にお兄さんに投げかけられる。
だけどお兄さんは一瞬も怯まなかった。それどころか薫子さんに近づくと、なんと壁際に追い込んだ。いわゆる壁ドンの形となるが、それには私も薫子さんも、周りにいた生徒たちもみんな驚いている。
そしてお兄さんは薫子さんの目を真っ直ぐ見つめて口を開く。
「全員幸せにできるかだと? できるに決まってるだろ! 何故かって? 俺だからだ! 俺が成すことやること何事も不可能はない! 森羅万象宇宙全て何者も何事も俺を否定することはできない! 俺を好きになった女の子は全員笑顔で幸せにする。それが俺の流儀だ! 誰にも口出しさせないし、なんなら反抗してきた女の子も全て俺が取り込んで幸せにしてやる! それにルール違反だぁ? いいかよく聞け! 俺がルールだ! 俺が世界の中心。ルールとは俺自身。俺が正義だ!!」
私も薫子さんも、みんな唖然としている。
心がギュッと鷲掴みにされる感じがしていた。言っていることはめちゃくちゃなのに、お兄さんならできる、お兄さんなら大丈夫、お兄さんなら……と納得してしまっている。もはや社会の規律とか常識とか関係ない。あまりの迫力と威圧、説得力によって私たちの中のルールを根底から書き換えられてしまう。間違っていたのは私たちだと、そう思わされてしまう。いや、そんな洗脳みたいな強制力じゃない。自分自身でそう納得してしまっているんだ。私たちがついていくべき人。私たちを導いてくれる人。それがお兄さんだと意識づけられそうだった。
そして少しの沈黙を挟み、薫子さんが苦笑した。
「凄い横暴。だけど妙に納得させられちゃうのはなんでだろうね。初対面なのにここまで心を掌握されるなんて。侑ちゃんが手を焼く理由が分かったよ」
「そうか。だったらそれでいい。これに懲りたら俺のやり方を否定してレスバトルを仕掛けないことだ。今度は本気で心を動かされて俺に付き従うようになっちまうぞ」
「はは、その可能性はあるね。だったらそうならないように私は退散させてもらいますか」
「あぁ。悪かったな、追い込んだりして」
「うぅん、大丈夫。むしろちょっとドキッとしたしね♪ それじゃ、またどこかで!」
薫子さんはウィンクをするとそそくさとこの場から退散してしまった。余裕そうに見えたけど内心では少し焦っていそうにも見えたのは気のせいだろうか。まあ男の人に無理矢理壁ドンされたら女性だったら誰でも驚くよね。そういや私も押し倒されてお兄さんの自論を間近で、顔と顔が至近距離の位置で聞かされたことがある。なるほど、これがお兄さんの女性の心を掌握するテクニックか。意外と効くんだよねぇあれ……。
「侑」
「は、はいっ! あっ、ゴメンなさい。計画のことを勝手に話したりして……」
「いいんだ別に。それより、お前にも悪いことをしたな」
「へ?」
お兄さんが謝るなんて意外だ。お兄さんと出会って1ヵ月くらいだけど、これまでこうして神妙な面持ちで謝られたことは一切ない。さっき自分がルールだって言ってたのにその直後に謝るなんて、よほど後ろめたいことがあったのかな?
「悪いことをしたって?」
「アイツに計画のことを話して、自分の立場について相談してたんだろ? それはつまりお前が窮屈な思いをしてたってことだ。違うか?」
「そ、そうですね……。でも、さっきのお兄さんの言葉を聞いて心は軽くなりました。お兄さんについていくとは言いませんけど、近くで様子を見守るくらいならいいかなって」
「そうか。それでお前の中で腑に落ちたのなら良かったよ」
お兄さんのことも、計画のことも完全に認めたわけじゃない。でもお兄さんの隣にいるだけならもう窮屈な思いはしないと思う。お兄さんや歩夢たちが今後どういった関係になるのかを見届けたい。私が何か自発的にフォローすることはないけど、見守るくらいだったらもう心がモヤモヤすることはないだろう。はぁ、もう私、本格的にお兄さんに捕まっちゃってるなぁ~……。でも、居心地は悪くない。
「俺も反省だ。女の子を幸せにしてやるとか言っておきながら苦労させちまったみたいだしな」
「幸せ――――って、それ私のことですか!?」
「当たり前だろ。お前も含まれてんだよ」
「『俺を好きになった女の子は全員笑顔で幸せにする』って話でしたよね!? 私は別にお兄さんのことなんか……!!」
「いずれそうなるさ」
「なりませんから、絶対に!!」
「いつものお前に戻ったな。悩んでるお前よりぷりぷり怒ってるお前の方が可愛いぞ」
「あっ……。ふ、ふんっ!」
自分でも顔が熱くなっているのが分かる。悟られないようにそっぽを向いたけどバレてるよなぁ絶対……。
可愛いって言われただけでこれだもん。チョロいなぁ~私。でも、悪くないと思っちゃうのが悔しい。もしかしたら心のどこかでお兄さんのことを認めつつあるのかもしれない。
『あまり俺に入れ込むとすぐに惚れるぞ』
お兄さんが薫子さんにかけたこの言葉が、私の心の中にずっと残っていた。
そんなわけない。ない……よね?
こうして見ると零君のキャラでよくこの小説が総合評価1位を取れたなと思います。今となっては彼のこの性格なくしてこの小説は語れませんし、私も大好きなのですが、万人受けするキャラではないと思っているのでここまでやってこれたのが意外です。それでも零君のこと好きだよと言ってくださる方も多いので、ハーレム主人公としては魅力あるのかな?
今回初めて薫子さん登場。ぶっちゃけ今後話に絡ませる予定はなく、ただ単に零君にあのクソ長セリフを言わせたいがために登場させました(笑)
小説が面白いと思った方、是非ご感想や評価をよろしくお願いします!