ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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 至って普通の日常回の前編。
 虹ヶ咲編も50話以上連載してきたので、その中で印象付けられた各キャラを思い出しながら見ていただければと思います!


【最終話】恋色passions!(前編)

「『今大会人気1位の虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、その実力を遺憾なく発揮して大会優勝!』か。ホントに止まんねぇなアイツら……」

 

 

 とある秋の日の昼下がり。虹ヶ咲学園の校庭のベンチに座りながらスマホでニュースを見ていると、スクールアイドル関連の記事が目に入ったので詳しく読んでいた。そこには歩夢たちが直近の大会で優勝した際の写真が堂々と掲載されており、その注目っぷりたるや下手な芸能人よりも上だろう。スクールアイドル専門のまとめサイトに掲載されるならまだしも、一般人が読む普通のニュースにビッグ記事として載ること自体が異常だ。それだけ世間からスクールアイドルの、そしてアイツらの注目度が高いことが窺える。

 

 最近はスクールアイドル界隈の勢いが凄まじく、μ'sやA-RISEが環境を牛耳っていた時よりも圧倒的にグループの数が多い。それだけ界隈が盛り上がれば世間にも情報が伝わり、こうして一般のニュースにも掲載されるわけだ。アマチュアでもアイドルが故かみんな容姿が良くて可愛いため、世間の注目を集めるのは必然だったのかもしれない。それに今となっては小中学生までスクールアイドルをやる時代だから、そりゃ否が応でも一般大衆の目に触れるわな。

 

 その中でも今は歩夢たちの功績が凄まじい。元々俺と再会する前も人気はあった方だが、俺が指導して以降はほとんどの他を寄せ付けないほどの実力と魅力に仕上がっていた。アイツらに対抗できるグループともなれば、綾小路姫乃がいる藤黄学園、彼方の妹の遥がいる東雲学院、そして俺の指導が歩夢たち以外で唯一入っており、スクフェスでの優勝も果たしたAqoursとそのライバルのSaint Snowくらいだ。レジェンドクラスのμ's(解散済)やA-RISE(プロ行き)がいたらまた別だろうが、虹ヶ咲の同期って意味だと対抗馬はさっきの4グループくらいだろう。

 

 

「零さん」

「ん? あぁ歩夢か」

「昨日はありがとうございました。私が夢に思い描いていたことを全部叶えてもらっちゃって」

「別にいいよ。あれが俺のやり方で、それが生き方だしな」

 

 

 まさかのご本人登場。コイツが美少女なのも相まって芸能人にバッタリ出会ってしまったような感覚だ。

 

 歩夢は俺に深々と頭を下げてお礼を言う。どうやら俺とのお泊り会で自分のやりたいことを叶えてもらってご満悦のようだ。まあその過程で少々、いやかなり性交配的なことを行ってしまったのだが、その相手と翌日素面で対面するのは結構恥ずかしいな……。ただ歩夢はそのことさえも大切な思い出となっているようで、今は緊張すらいないように見える。ま、女の子が満足してくれさえすれば俺はいいんだけどさ。

 

 そんな歩夢は俺と同じベンチ、しかも密着寸前の距離に腰をかけた。普段のコイツであれば遠慮しがちな性格なのでこういう時は絶対に座っていいか許可を求めてくるのだが、今回は何も言わずに穏やかな表情のまま、さも俺の隣にいるのが当たり前のように座りやがった。別にいいんだけど、ここまで積極的な歩夢はスクフェス開催前の正体が不明だった頃のアイツにそっくりだ。元々愛の根が深い奴だから、男女問わず惚れ込んだ人に対してはこうなるのだろう。

 

 

「あっ、それ私たちの記事ですね。もしかしてこの前の大会のライブご覧になってくれたんですか?」

「そりゃお前らの指導役なんだから見るだろ。それにお前たちの功績は毎回しっかりチェックしてるよ」

「そうだったんですね。ずっと零さんに見られてると思うと恥ずかしいな……」

「俺にアピールするためにスクールアイドルになったくせに良く言うよ」

 

 

 コイツらがスクールアイドルになったのは何を隠そう俺のため。もし俺と再会した時のために己を磨く手段としてスクールアイドルを選んだんだ。俺のために自分の魅力を上げることを欠かさず、俺のためだけに努力した結果がこれだ。今では世間一般に注目されるくらいのグループになっている。昨晩の歩夢を見てもらえれば分かる通り、俺への愛だけでここまでのし上がってきた、まさに愛の化身とも言えよう。

 

 歩夢は他の誰よりも俺に献身的であり、俺のために全てをかけて尽くしてくれる子だ。ありきたりな感想だがそれだけ自分のことを好きでいてくれることが嬉しいし、コイツから伝えられる愛に応えたいと思ってしまう。俺がお泊りにくることを想定して色々準備していたことのように、俺のために炊事洗濯料理なにからなにまで世話をしてくれる。その一途な愛の強さは他の奴らの誰にも負けないだろう。愛が深い女の子は重いとよく言われるが、俺は大好きだぞ。

 

 

「零さん♪ 何してるんですか?」

「うおっ!? かすみ!?」

 

 

 またしても突然、今度はかすみがベンチの後ろから俺の首に腕を回して抱きついてきた。もう何の躊躇いもなくその慎ましやかな胸を押し付けてくるあたり、俺との様々な交流(不純異性交遊的な意味も含め)を経て羞恥のハードルが下がっているのだろう。

 

 

「あっ、それかすみんたちのライブ映像じゃないですか! 本人がいないところでもかすみんの可愛さを勉強しているなんて、零さんってば勤勉ですねぇ♪」

「そうだな。お前の可愛さをもっと知ればお前のことをもっと好きになれると思ってさ」

「えっ、ちょっ!? いきなりデレてどうしたんですか!? いつもだったら軽くスルーするのに!」

「そうは言ってもこれが本心だからなぁ……」

「歩夢先輩!! 零さんとうとう頭おかしくなっちゃいましたよ!? かすみんを素直に褒めるなんて!!」

「普通に褒めてるだけだと思うよ……」

 

 

 いやかすみの可愛さは俺が一番良く知ってるぞ。自分の可愛さをとことん追求し、自分が世界で一番可愛いと思っているコイツだが、それは何も間違っていない。つい頭を撫でたり抱きしめたくなる愛嬌、小生意気でからかいたくなる後輩感、エッチなことにも積極的など、男が惹かれて申し分ない要素が揃っている。こんな子に人懐っこく抱きつかれたら(今のように)好きにならない奴はいないだろう。ペットのような可愛がりたくなる可愛さがある……っていったら家畜扱いされたって怒っちゃうか?

 

 

「くんくん、なんだか卑しい匂いがしますねぇ……。歩夢先輩もしかして昨晩……」

「ふえけっ!? な、ななななんのことかな!?」

「いやバレバレですよその反応……。なるほど、零さんもう遂に全員とやることヤっちゃったんですね……」

「お前らが事あるごとに誘惑してくるのが悪い。それにお前らがその方法で手っ取り早く愛を感じられるってのなら、俺は一切拒まないぞ」

「こんなに可愛い女の子たちと関係を持っちゃって、本当に零さんは悪い人ですねぇ〜♪」

「それにしては嬉しそうだな。ま、俺だから許されてることだし、そもそもこれだけの女の子を幸せにするのは俺にしかできないことだからな」

「そういうところだと思います、私たちがみんな零さんに惹かれている理由。頼り甲斐があって、自分を絶対に幸せにしてくれると確信できる。だからこうしてもっと一緒にいたくなっちゃうんです」

 

 

 歩夢は頬を赤らめ、その表情はまさに恋する乙女。俺の腕に絡みつき、そのまま肩に自分の頭を預けてくる。同時にかすみの抱きつく力も強くなり、歩夢の言った『もっと一緒にいたい』というのを行動で体現していた。この積極性はμ’sなど他の奴らにはない特性で、俺に対する押しの強さは他のグループとは違ってピカイチだ。

 

 

「零さん? 歩夢さんにかすみさんも、校庭でとても大胆ですね……」

「ん? あぁせつ菜か」

「せつ菜先輩もこっちで零さんと戯れましょうよ〜! 歩夢先輩の反対側がまだ空いてますから!」

「えぇっ!? い、いいのですか……?」

「そりゃいいだろ別に。むしろ遠慮する必要はない」

「せつ菜ちゃんって好きなことには何でも全力だけど、零さんのことになると結構恥ずかしがり屋さんなところあるよね。可愛いなぁ♪」

「か、からかわないでください歩夢さん! うぅ、分かりました行きます……」

 

 

 せつ菜はおずおずと俺の隣に腰を掛ける。

 いつもであればみんなを引っ張るリーダー的な役割として、ステージの上では堂々と、漫画やアニメの話では嬉々として何事も全力全開のコイツだが、恋愛や性的なことに関しては免疫がなく今のように戸惑いを見せてしまう。そういえば果林が考案したセクシー衣装をいつも顔を赤くして否定しているって噂が流れてたな……。

 

 

「えぇっと、零さんは一体ここで何をされていたんですか?」

「お前らが優勝した大会の記事とか、ライブの映像とかを見てたんだよ。もちろんお前のソロパートの映像もな。お前は動きのキレも良いから指導する立場として逆に学べることも多いんだ」

「そ、そんな私のライブが零さんのお勉強に!? 恐れ多いです……」

「何言ってるんですかせつ菜先輩! 先輩は虹学スクールアイドルのパイオニアで経験も豊富なんですから、もっと誇って良いんですよ!」

「うん! せつ菜ちゃんからはスクールアイドルのことを教えてもらってばかりで、いつも助かってるよ!」

「み、皆さんまで……」

 

 

 かすみと歩夢の素直な褒め言葉に羞恥心を揺さぶられたのか、俺の身体で紅潮している表情を隠そうとしているせつ菜。そのせいで俺に密着しすぎていることに気づいていないのだろうか。これを言ったらまた恥ずかしがりそうだから敢えて言わないけどさ。

 

 俺もせつ菜から色々学ばせてもらっているのは本当で、俺の知るスクールアイドルの中でもコイツのパフォーマンス力はトップクラスだ。それだけスクールアイドルが大好きで入れ込んでいるからだろうが、大好きなことに全力になれ、その大好きを誰かに伝えることを夢としているってのも能力が高い理由だろう。その熱いハートに俺は惚れてしまったのかもしれない。そしてコイツから伝わってくる愛もも燃えるようなくらい力強いので、受け取る立場としてもそれだけ自分に情熱を注いでくれていることに感謝したくなってくるんだ。

 

 

「もうせつ菜先輩ったら零さんに抱きつきすぎですよ〜!」

「ひゃっ!? あっ、すみません思わず……!!」

「敢えて黙ってたのにわざわざ言うなよな……」

「大好きなことに全力なせつ菜ちゃんが零さんの前だとこうなっちゃうの、結構珍しいよね」

「そ、それは零さんが大好きだからですよ! 大好きで大好きすぎて、どうしたらこの高ぶる気持ちをコントロールできるか毎回わからなくなって、気づいたら恥ずかしくなっちゃってて……」

「なるほどお前らしいな。ま、燃えるほど熱い愛を向けてくれているってことは分かるよ。さっき抱きつかれてた時も腕をもってかれそうだったからな」

「それは失礼しました……。でもそれだけ零さんのことが好きだってことです! これは本当の本当、燃え上がる炎のように熱く!!」

「分かった分かってる!! 途端に熱くなるのな……」

 

 

 借りてきた猫のようになっていたかと思えば、俺へのアピールタイムになった瞬間にこの熱血具合である。でもそれがコイツの魅力的なところであり、情熱的になる姿と恋する初心な女の子っぽい反応のギャップがこれまた可愛い。そういった表情がコロコロ変わる元気っ娘、俺は大好きだぞ。

 

 それにしても学校内で女の子に囲まれるこのシチュエーションにも慣れてきた。今回は校庭という野外だが、この学校の女の子たちはみんな俺に好意を抱いている子ばかりなので特に気にもされない。だから俺たちの近くで練習をしている女子ベースボールの部員たちも、こちらを気に留めることなく練習を続け――――

 

 と、思った矢先に目に映る。バットで打たれたベースボールの球が大きく軌道から逸れてこちらに向かっているところを。そして歩夢たちに囲まれているせいかここから逃げ出せず、このままだと俺の顔面にあのボールが直撃する未来を――――!!

 

 どうする……って、もう考えてる時間がねぇ!! このままだと……ッ!?

 

 

「とうっ!!」

「えっ――――うぐっ!?」

「危ないところだったね、零さん!」

「えっ、愛ちゃん!?」「愛さん!?」「愛先輩!?」

「な、何が起こったんだ……? あっ、そういうことか……」

 

 

 いきなり俺の目の前に現れたのは愛。さっきの一瞬で何が起こったかのというと、愛が俺の膝に飛び乗ってきて、それとほぼ同時に装着していたグローブで俺に直撃予定だったボールをキャッチしたらしい。コイツの見た目から察するにいつもの助っ人活動でベースボール部の練習を手伝ってたんだろうが、まさかあの離れたグラウンドからここまでボールの速度に負けずに走ってくるなんてとんだスポーツお化けだな……。

 

 

「えへへ、我ながらナイスキャッチ! いやぁこれでスリーアウト、愛さんたちの攻撃だよ!」

「攻撃だよ、じゃないですよ先輩! いきなり目の前に現れてビックリしたんですから!」

「あはは、ゴメンゴメン! それよりみんな何してるの? 零さんと野外プレイしてる感じ?」

「エロいことしてるみたいに言うな。ただお前らが載ってるニュースとかライブ映像とかを見てただけだ」

「ふ〜ん。だったら愛さんも一緒に見ちゃおっかな? えいっ♪」

「ちょっ、どうして抱きつく!?」

「だって零さんのことだから、歩夢たちに抱きつかれでもしながらみんなで動画見てたんでしょ? だったら愛さんも抱きつかないと平等じゃないじゃん!」

「どういう理由だよそれ!?」

 

 

 愛は正面から俺に抱きついてスマホを覗き込もうとする。だが横からと後ろからの歩夢たちとは違って正面からでは明らかに一緒に画面を見られるような体勢ではない。そのせいかでより密着してきて、思春期女子にしては育ちすぎている胸が俺の胸に……!? 相変わらず超柔らかいな反則だろこの肉丘……。

 

 

「愛さん、ベースボール部の助っ人の方はよろしいのですか? 野外でこんなことをしている私が言えたことではないかもしれませんが……」

「大丈夫大丈夫! さっき練習続けておいてってサイン出しておいたから!」

「助っ人なのに練習の指導もできるなんて、愛ちゃんって本当に凄いね。スポーツもできるし勉強もできるし、文武両道で羨ましいなぁ」

「まあ自分を磨きに磨いた結果かな? その磨き上げた理由が目の前にいるんだけどね」

「俺のことか」

「そうっ! 零さんに見合うイイオンナになるためって思って色々経験してたら、いつの間にかこうなっちゃった♪」

「そんな軽々しく言えるほどヤワじゃないけどな、お前の努力と才能は……」

 

 

 愛は控えめに言わなくても天才の類だ。歩夢の言ったとおりスポーツから勉強まで万能。様々なスポーツ部の助っ人に出向き、勉強も誰かに教えられるくらいであり、それでいて日頃から美容、筋トレ、アイ活など自分磨きを欠かさない。コイツだけ1日が24時間以上あるのかと錯覚してしまうくらいの活動量であるが、それも何もかも効率良くこなせる才能が故だろう。もちろん才能と天才と言われる以前に多大な努力が積み重なっていることは、俺たちはみんな知っている。その全てが俺のためなんだ。

 

 

「こうして愛さんがイイオンナになれば零さんも満足できるっしょ? イイオンナを自分のモノにできて、好きなだけ抱けるってステータスがあるんだもん。零さんのそんなドSな欲求を満たすために愛さんはここまで自分を磨き続けたんだから」

「フン、そうだな。お前のような誰からも頼りにされて、誰からも憧れられる女の子を好きにできるのが一番優越感を満たせる。しかもお前の魅力が上がれば上がるほど、俺はどんどん満足できるぞ」

「そうそう、他の男性から愛さんを見る目が熱くなるほど、そしてエッチになるほど零さんは実感できるもんね。コイツは俺のオンナ、コイツとエッチできるのは俺だけなんだってね」

 

「歩夢せつ菜先輩! なんか2人が怖いこと話してますよ!?」

「2人がこういった性格なのは知ってたけど、いざ目の前で欲望塗れの会話を聞くとビックリするね……」

「ドSとドSが混じり合うとこうも刺々しくなるのですか、納得です……」

 

 

 己を磨くことで俺の優越感を満たそうとしてくる愛。俺の性格を良く分かっているからこそであり、彼氏のことを第一で動いてくれる欲望めいた優しさがある。自分が有名になればなるほど俺の恋人としての価値も上がる。うん、結構なことじゃないか。普通に可愛い子を抱くだけでも満足感は高いが、こうやってステータスがたくさん付いている子を抱けるのはもっと興奮できるからな。

 

 そういった忠義の高さだけではなく胸も大きくスタイルも抜群。俺の好みになるために自分を徹底的に磨き上げる。それが愛の魅力だ。

 

 

「あれ……?」

「ん? どうした歩夢?」

「なんか美味しそうな甘い香りがして……」

「真っ先に気付くなんてさっすが歩夢! 食い意地張ってるねぇ〜」

「も、もう愛ちゃん!!」

「あはは、ゴメンゴメン♪」

 

 

 確かに腹の虫を呼び覚ますくらいの甘い香りがする。女の子たちに囲まれているので既にいい香りの空間にはいるのだが、これはシャンプーとか香水の類ではなくお菓子の匂いだ。

 

 

「あれ? 零さんにみんなも! そんなに抱き着き合ってどうしたんですか?」

「エマ? あっ、お前が持ってるそれって……」

「これですか? さっき調理部の子と一緒に作ったカップケーキです!」

 

 

 たまたま近くを通りかかったエマ。この甘い香りはアイツが作ったらしいカップケーキから発せられていた。

 そしてエマは俺たちが集団で、しかも野外で戯れているのを見て目を丸くして驚いている。そりゃ人の往来があるような校庭で男女がくっついているってだけでもおかしいのに、男1人に女の子4人が前後左右から群がってる状態だからな……。てかもう囲まれ過ぎて周りから俺の姿って全然見えてねぇんじゃねぇか……?

 

 

「エマっちのカップケーキ美味しそ~! 1つ貰っていい?」

「いいって言うか、元々みんなのために作ったから遠慮なく頂いちゃっていいよ!」

「ありがとうございます! いただきますね!」

「エマ先輩の作るお菓子、かすみん大好きなんですよね~!」

「ありがとうございます、エマさん。でも食べ過ぎないようにしないと……」

「は~いみんなどうぞ~♪」

 

 

 作ったお菓子を笑顔でみんなに分け与えるとか、幼稚園の先生が子供にお菓子を配ってる風景みたいだな。もうコイツのやることなすことに全部に母性を感じられ、今もみんなのお母さんにしか見えない。誰もが頼りにしてしまう優しさがあり、包み込んでくれる暖かさがあるなんて並の人間では備わってない能力だ。そりゃコイツの子供になりたいって奴がいてもおかしくねぇよな……。

 

 

「あっ、でも零さんは両手が塞がってますね」

「あぁ、コイツらに密着され過ぎてるせいでな。ていうか食ってる時くらい離れたらどうだ?」

「「「「イヤ(です)」」」」

「えぇ……」

「分かりました! でしたら私が食べさせてあげますね♪」

「えっ!?」

「はい、あ~ん♪」

「ちょっ、えぇっ!?」

 

 

 エマはカップケーキの生地を指で一摘まみし、それを俺に向けて差し出した。この歳にもなって女の子に食べさせてもらうとか……って思ったけど、昨晩歩夢に晩飯をご馳走になった時も同じようなことあったっけ。でもあれは2人きりだったのに対し、今回は周りに傍観者が多数いる状況だ。歩夢たちに見られている中で食べさせてもらうのは普通に恥ずかしい。あとで食べるって選択肢もあるが、ここまで笑顔でやる気になってる彼女を見てると何とも断りづらい。

 

 仕方ないので口を開けてカップケーキの一摘まみをいただく。

 うん、甘い、超甘い。ケーキの甘さもあるがこの雰囲気とエマの愛情も感じられて甘さが際立っている。女の子の料理なら基本何でも美味いと思ってしまう(せつ菜の料理は除く)俺だが、やはり場の雰囲気と愛情ってのは料理を美味しくさせるな。特にエマの料理は母が子供に愛を注ぐ時のような母性も感じられるから非常に美味い。なんとも優しい味がするのもそのためだろう。

 

 

「よく食べられましたね~偉い偉い♪」

「頭を撫でるなよ……」

「あっ、ゴメンなさいつい……。でも零さんいつも頑張ってるから癒しを与えたいなぁ~って」

「もう十分に癒しを貰ってるよ。特にお前は笑顔も、声色も、雰囲気も、仕草も、見たり聞いたりしてるだけで心が落ち着くんだよ。もう俺の側から手放したくないって思っちまうくらいだ。これも子供が母親から離れたくない気持ちと同じなのかもな。つまりそれくらいの癒しがあるってことだ」

「零さん……はいっ、ありがとうございます!」

 

 

 この前コイツが秋葉の罠で母性が爆発した際に俺をバブらせようとしてきたが、危うく陥落しそうになるくらいには俺はコイツを求めていた。女の子に囲まれる生活は楽しいけどそれだけ大変なこともあるので、それを抱き留めてくれる存在が1人は欲しいところだ。その適任なのがエマ。癒し系スクールアイドルを名乗っているだけのことはあり、一緒にいるだけで安心するんだよな。歩夢たちが俺と一緒にいると安心すると言っているようなのとはまた別で、コイツといれば事件が起きない(秋葉の罠はあったが)というか、のんびり日常を過ごせるのが魅力だ。そして甘やかしてくれる。これだけ男の求める要素があれば好きになるには十分だろう。

 

 

 てなわけでこの後も歩夢たちに密着されながらエマにカップケーキを食べさせてもらった。女の子に囲まれる生活も当たり前になっている毎日だが、こうして身近に女の子の好意を感じられる環境っていいよな。愛の言っていた『優越感』が大いに満たされそうだ。

 

 そしてもちろん、虹ヶ咲の女の子たちはコイツらで終わりではない――――

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 1人1人零君に対するキャラの在り方や魅力を描いた回になりましたが、やっぱり1年以上も同じキャラ達で連載を続けていると愛着が凄いです(笑)
 もちろんキャラ1人1人を語るのに1話で収まるはずがなく、次回の中編が璃奈、彼方、しずく、果林、栞子。後編で最終回予定が侑となります。


 そういえばこの話の投稿前にアニメ虹ヶ咲の2期が決まりましたね。まさか13人もの大所帯になるとは思ってもなかったので、この小説での扱いも大変過ぎてどうしようか迷ってます(笑)
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