ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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 お待たせしました! ようやくLiella編の第二話になります!
 


いきなり家庭訪問!?

「あぁ、もうこんな時間か。今日はこのくらいでいいか? そろそろ帰らないと暗くなっちまうぞ」

「はい、ありがとうございます!」

 

 

 こうして澁谷かのんとの勉強会は終わった。まだ秋口だが、夏に比べたら日が落ちる時間が圧倒的に早い。コイツの凄まじい集中力を見てるとまだまだやれそうだったが、ここは教師として夜道を女子高生1人で帰すわけにはいかないだろうと考え、ここで勉強会を切り上げた次第だ。まあこの学校のある渋谷は若者の街というだけあって夜でも賑やかなので、そこまで心配する必要はないが一応な。

 

 ちなみにこうして夜近くまでかのんと勉強会をするのは今回が初ではない。定期的に授業や宿題で分からないところを俺に質問しに来るのだ。もちろんこれも教師としての役目なので迷惑はしてないのだが、どうも俺のところばかり来ている気がする。他の先生のところに行っているところを見たことがないっつうか、やたらと一緒にいることが多いような……。俺は教師っつっても大学を卒業して間もないので、コイツら女子高生ともそれほど歳は離れていない。だから千砂都が言っていたように頼れるお兄さん的な感じで他の先生よりも接しやすく、それで俺のところに来ているのかもしれないな。

 

 

「俺はちょっと事務作業をやって帰るから、お前は先に帰ってろ」

「えぇっと、待ってちゃダメ……ですよね」

「何故?」

「えっ、い、いや、先生1人で暗い中を帰れるかなぁ~って」

「それはこっちのセリフだっつうの。ほら、暗くなる前に帰れ」

「は、はい……」

 

 

 なんか超残念そうな顔してんな……。そこまで露骨にテンションを下げられると罪悪感が半端ねぇんだけど……。それでも暗くなる前にコイツを帰らせたいのは本当だし、もし待たせるとしても事務作業がどれくらい掛かるのかも分からないから時間を使わせたくないんだ。

 

 

「それでは零先生、今日もありがとうございました」

「あぁ。気を付けて帰れよ、澁谷」

「あっ、名前……」

「えっ? あぁなるほど……ったく、気を付けて帰れよ、かのん」

「はいっ! 失礼します!」

 

 

 名字で呼んだら空気が重くなるくらいしょんぼりし、名前を読んだら夕方の暗さを吹き飛ばすくらいいい笑顔になりやがる。

 これでもある程度の公私混同は避けているので、授業や他の生徒がいる前だと名字呼び、Liellaの連中や今みたいに2人きりの時は名前呼びにしている。俺はよほど親しくならないと下の名前では呼ばないのだが、一応かのんや他のLiellaの奴らとはそれなりに交流はあるからな。特にLiella結成までの道のりで、己のお人好しが祟って思わず首を突っ込んじまった。だから名前で呼ぶくらいには接点ができたんだ。まあそのせいで可可から執拗に顧問に勧誘されて迷惑してるんだけどさ……。

 

 そんなこんなでかのんを帰らせ、後は自分の仕事を片付けるだけとなった。あいつの勉強を見ていたため定時後の作業になってしまったが、生徒の質問に応えてやるのは教師としての責務なので別に苦ではない。それに明日は土曜日。金曜の夜ってだけでもテンションが上り、少しくらいなら残業をしても精神が摩耗することはない。学生の頃は分からなかったけど、金曜日の夜ってこんなウキウキするものなんだな。こういう考え方をしている時点で俺もオッサンなのかもしれないけど……。

 

 黙々と作業を進めて滞りなく片付ける。ようやく俺も帰ることができるのだが、そこでテーブルに見慣れない1冊のノートが置かれていることに気が付く。名前は書いてない。明らかに俺のではないので中を見てみると、そこには数式が書かれており、まさに今日俺がかのんに教えた範囲のものだった。ということはこのノートの所有者はかのんだろう。

 

 

「来週渡してやるか……って、そういや月曜提出の宿題の範囲が教えた部分だったっけ。だったら今日届けてやらねぇと困るよな……」

 

 

 このまま預かっていては休日の宿題に影響が出てしまう。面倒だけど、アイツの家に届けてやるしかなさそうだ。幸いにも教師だから生徒の自宅の住所は調べればすぐ分かる。女子校の全生徒の現住所にすぐアクセス可能って、字面だけ見れば犯罪臭が半端ねぇな……。

 

 

 

 

〜※〜

 

 

 

 

「ここは……喫茶店?」

 

 

 澁谷宅の前に到着したのだが、入り口におすすめメニューを宣伝する看板、綺麗に手入れされた花と鉢植え、煌めく電飾など、明らかに普通の家ではない。そういえばかのんの奴がウチは喫茶店を営んでいるって言ってた気がするな。普通の自宅だったらどう挨拶をして訪問すればいいのか迷うところだったが、喫茶店であれば客という名目で家に上がり込めるのでアイツと接触するのは簡単そうだ。

 

 とりあえず店に入ってみる。店内は自然を基調とした爽やかな雰囲気であり、特に目を引くのは本物っぽいフクロウの置物。あまりにもリアルなので一瞬フクロウと戯れることができる喫茶店と勘違いしそうだったぞ。てかあの置物、俺を見てる気がするけど本当に置物だよな……?

 

 

「すみません。本日はもう閉店の時間で……」

 

 

 カウンターから若い女性が出てくる。穏やかな立ち振る舞いに落ち着いた雰囲気から、どうやらこの人がオーナーでかのんの母親だろう。つうか他のスクールアイドルの奴らの母親もそうだけど、みんながみんな若く見えるのはやはり子供が美少女だったらその母も綺麗という法則があるからだろうか。ことりやにこの母さんだって今でも若々しいし、千歌の母さんなんて合法ロリと言っても過言じゃねぇからな……。

 

 

「突然すみません。実は澁谷かのんさんの担任で、神崎零と言います。彼女の忘れ物を届けに来たんですけど……」

「まぁ、あの子の!? それはそれはご足労ありがとうございます! ささっ、こちらに! 今すぐ飲み物をお入れしますね!」

「えっ、いやただノートを届けに来ただけなのでそこまでしていただかなくても!」

「何を仰いますか! ありあーっ! すぐにアイスコーヒー持ってきて!」

『えっ、今片付け終わったんだけどどうしたの!?』

「かのんの先生が来てくれたのよ。ほら早くね!」

『お姉ちゃんの!? な、なるほどすぐ持ってくから』

 

 

 奥のキッチンから中高生くらいの女の子の声が聞こえてきた。どうやら俺のためにわざわざ飲み物を手配してくれるらしい。

 

 ていうかどうしてこんな厚い待遇を受けてるんだ俺……? まるで俺と話ができることを待ち続けていたような、そんな感じがするけど流石に気のせいだよな?? 第一アイツの家族とは会ったこともないし。まあ俺の知らないところで俺の名前が出回っているのはスクールアイドル界隈ではよくあることだけど、初対面の人にここまで心待ちにしてるような雰囲気を醸し出されるのは初めてだ。

 

 そんな感じでかのんの母さんにカウンター席に案内され、アイツの妹の澁谷ありあがアイスコーヒーを持ってきてくれた。こちらの考えが追いつく前にいきなりおもてなしをされてもう何が何やら……。

 

 

「かのんーっ! 店に降りてらっしゃい!」

『どうしてー? 片付けならありあがやってくれてるでしょー?』

「いいから早く! すぐにね!』

『えぇ~! すぐ行くから待ってて!』

 

 

 かのんママは2階の居住スペースにいるだろうかのんを呼び寄せる。母親だけならまだしも、生徒本人やその妹まで出てくるなんてそりゃもう家庭訪問の範疇超えてるだろ……。いや元々はアイツの忘れ物を届けに来ただけだから家庭訪問ですらねぇけどさ……。

 

 間もなく階段を降りる音が聞こえてきた。その足音はだらしなく汚い音なので、母に無理矢理呼びつけられてイヤイヤ降りてきているのが丸分かりだ。

 

 

「もう急になに? こちとら新曲の歌詞を考えて――――へっ?」

「あぁ……さっきぶりだなって――――え゛っ!?」

 

 

 2階から降りてきたのは間違いなくかのんで、声も同じだから本人であることに疑いはない。だけど見た目が普段と全く違う。自宅にいるから服装がラフなのは分かるけど、下着をつけていないのか胸の形が丸わかりになるくらいの薄いシャツ、寝間着かと思ってしまうほど色気のないハーフパンツ、何より髪型を上の方で団子にして、おでこ丸出し。それにメガネ装着という、締切に追い込まれた漫画家の女性のようで、気品など全くない格好であった。

 

 

「な゛っ、な゛っ、な゛な゛な゛ななななななな!? せ、先生!?」

「よぉ。なんつうかその……家だと相当ラフなんだな」

「今すぐ着替えてきます!! 今見た私は忘れてください別人です!! いいですかいいですね!! あ゛ぁ゛あ゛ぁああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「ちょっ、おいっ!? また2階に戻っちまった……」

「ふふっ、顔真っ赤にして可愛いんだから♪」

 

 

 まさかこの母親、かのんのあの表情が見たいがために俺がいることを内緒にしてアイツを呼び寄せたんじゃねぇだろうな……。もうこの一連のやり取りだけでも娘をからかおうとする小悪魔的一面が見られる。それに妹のありあもニヤニヤしてるし、この3人の力関係というか、普段どういった会話が繰り広げられてるのか容易に想像できるよ。いつもイジられてんだろうなアイツ……。

 

 

 

 

〜※〜

 

 

 

 

「ほら、忘れ物のノートだ」

「わざわざありがとうございます。えぇっと、中って見ましたか……?」

「そりゃ名前書いてねぇから見るしかないだろ。とは言っても一発目に開いたページの内容が俺の教えた部分だったから、すぐにお前のだって分かったけどな」

「そ、そうですか……」

「あっ、今お姉ちゃんホッとしたでしょ?」

「う、うるさいっ!!」

 

 

 また顔を赤くしてるよコイツ発情期か?? 最近はスマホ1つでいくらでも性知識を付けられるから、今の時代の子はピンク色の脳がより発達していると聞いた。まさかコイツも……??

 そんな冗談はさておき、俺の目的はこれで達成されたのだが、雰囲気的にこれで終わりにはしてくれなさそうだ。飲み物まで出してくれたし、なによりかのんママやありあが俺に興味津々のため素直に退散させてはもらえないだろう。長居するつもりはなかったけど、ここまで手厚く歓迎されたのなら仕方ないか。

 

 

「でもまさかかのんの担任の先生がこんなにもイケメンの若い人だっただなんて、なるほどこれはかのんが惚――――」

「お母さん!! それにその理由が一番じゃないから!!」

「何の話だ?」

「い、いえ何でもないです!」

「私、神崎先生みたいなお兄ちゃんが欲しいなぁ〜。お兄ちゃんになってくれる方法が1個だけあるんだけどなぁ〜。お姉ちゃんが先生と――――」

「あ、ありあ〜〜っ!!」

「あはは、ゴメンゴメン」

 

 

 コイツら一体なんの話をしているんだ?? いや、女の子付き合い百戦錬磨の俺ならなんとなく分かる。でもそう考えるとかのんが俺のことを……? 今まで彼女からの熱い視線に気付いていないわけではなかったが、それも頼れるお兄さん的な感じで憧れの目線を向けられていると思っていた。だけどこの場で感じるラブコメの波動。まさか……まさかな。

 

 

「どうやらかのんが定期的に先生に補習授業をせがんでいるようで、ご迷惑をおかけしています」

「せがむって……」

「教師として当然のことですから。それにかの……澁谷さんは物覚えも良くて、教えているこっちも楽しくなってくるので何の問題もないです」

「!? もしかして今、かのんって呼ぼうとしてました??」

「えっ、あっ……」

「咄嗟に下の名前が出てしまうほどの関係!? ちょっとかのん、そこまでは聞いてないんだけど??」

「べ、別に話す必要はないでしょ!? 私と先生だけの話なんだから!」

「つまりお姉ちゃんと先生は、誰もないところだったら名前で呼び合う秘密の関係ってこと?」

「ち、違う! そんなのじゃないから!!」

 

 

 もう羞恥心で顔が爆発寸前かってくらい赤くなってるぞ……。てかかのんママもありあも相当マセてるっつうか、もう場の雰囲気が修学旅行の女子部屋と化している。別に女子トークを繰り広げるのは良いけど、せめて本人がいないところでやって欲しいよ……。

 

 かのんを見ると相当テンパっているようで、俺に助け舟を出してもらいたく目配せをしてくる。全く、仕方ない。

 

 

「澁谷さんとはスクールアイドル関連で他の生徒よりも接する機会が多かったので、自然と打ち解け合っただけです。だから名前で読んでいるのもその影響で、2人が考えているような秘密の関係ではありません。なのであまり誤解しないでくださると助かります」

「そ、そうですか。でもいつもかのんが先生のことを――――」

「あーっ!! あーっ!! そういうことだから勘違いしないように! ありあもね!」

「わ、分かったから。圧が強い……」

 

 

 なんとか窮地を脱することができたようだ。かのんが『ありがとうございます。助かりました』と目配せをしてきたので、とりあえずこれで良かったんだろうな。

 

 でも俺とかのんの関係を詳しく聞かれたら、実は回答に困ってしまう。コイツが可可と2人きりのスクールアイドルだった時からあれこれと気にかけていたので、他の生徒よりも圧倒的に一緒にいる時間が長い。教師として生徒の支援をするのは当然かも知れないけど、俺はコイツの込み入ったトラウマ事情まで知っており、そのためか必要以上にコイツに入れ込んでしまった過去もあるのでもう単純な教師生徒の関係ではないのかもしれない。まあ全ては俺が女の子に甘くお人好しなせいなんだけどさ……。

 

 そう考えると、かのんが俺に向ける熱い眼差しってやっぱり……。

 

 

「そうだ、せっかくだし家庭訪問っぽいことも聞いちゃおうかしら。先生、学校でのかのんの様子はどうでしょうか?」

「えっ、その話本人がいるところでするの!?」

「私も知りたいです! お姉ちゃんって家だとダウナー気味と言いますか、浮き沈みが激しくてたまに口調も激しくなるし、さっき見ての通り締切ギリギリに追い込む漫画家みたいな格好ばかりしてるので、スクールアイドルみたいな陽キャ活動を真面目にやるようには思えなくて……」

「ちょっ、それ言う必要ある!? てかいいところ1個もないじゃん!!」

 

 

 やっぱりあの格好は家族からも俺と同じことを思われてたんだな……。

 それにしても学校でのかのんの印象か……。この半年、勉強やスクールアイドルの活動を近くで見てきたからコイツの性格や考え方など事細かに理解してはいるつもりだ。コイツから何かと頼られることも多かったしな。

 

 

「そうですね。澁谷さんは内気で引っ込み思案なところもありますが、仲間への気配りができる心優しい子ですよ。理不尽な物言いにはしっかり自分の意見をぶつけて返す芯の強さもあり、だからこそ同じスクールアイドルのメンバーからも信頼されているんだと思います。それに歌唱力も高くて作曲もできる特技を活かしてグループに貢献しようと精一杯頑張ってますし、私から見れば魅力的な女の子ですね。何かと2人でいることも多いですが、私のことを慕ってくれているので、私も彼女に応えたくなっちゃうんですよ。それだけ人を惹きつける魅力がある子だと思います。可愛いし、笑顔も綺麗だし、ずっとのその姿を見てみたいです。彼女のそういうところが好きだから、私も色々気にかけちゃうのかもしれません」

 

 

 一応自分がかのんに抱いている印象をそのまま言葉に出してみたのだが、3人共こちらを見て黙ったままだ。そこまで硬直されるともしかして変なことを言ったのかと心配になってくるぞ……。たくさんの女の子と付き合って早数年、未だに女性に対するデリカシーの無さを指摘されることがある。だからさっきもセクハラ紛いなことを言ってないか怪しいところだが、多分ない……よな?? あれ……??

 

 

「せ、先生……わ、私のことをそんな……うぅ」

「おい今まで以上に顔真っ赤だぞ!? 俺なにか変なこと言ったか?」

「見ないでください! 今の私、とっても情けない顔してるので!!」

「えぇ……」

 

「お母さん、先生の言葉の後半部分ってもう……」

「えぇ……。なるほど、ここまで自分のことを見てくれている男性がいたらそりゃハート掴まれちゃうわよね……」

「お姉ちゃん繊細なところあるし、近くで寄り添ってくれる男性がいたらこうもなるか……」

 

 

 さっきからかのんママとありあがコソコソ話しているが、その内容は俺の耳には聞こえてこない。聞こえてくるのは自分の顔を手で隠しながら呻くかのんの声だけだ。

 

 もう一度自分の言葉を思い返してみると、後半部分って告白になってるようななってないような感じだったかも。学校での様子を聞かれていたのに、いつの間にか俺がかのんに抱く想いを言葉にしていた気がする。思わずいつもの感じで女の子の魅力を語ってしまっていたけど、『教師』としての視点が途中から抜けていたかもな。これは反省。これまでの経験で女の子に直球の想いを伝えることに慣れてたんだよ。

 

 結局かのんの羞恥心の乱れは治ることがなく、かのんママとありあには『ごちそうさま』と言った雰囲気で話をまとめられてしまったので、突然の家庭訪問はこれでお開きとなった。ただノートを届けに来ただけなのにかのんとの関係をここまで根掘り葉掘り聞かれるとは、これから澁谷家の家族には要注意だな。

 

 

 

 

〜※〜

 

 

 

 

「それでは先生、また来週」

「あぁ。夜は冷えるし、ヘソ出して寝るなよ」

「な゛っ!? そんなことしません!!」

「またお姉ちゃんのお話たくさん聞かせてください」

「あぁ。あんな話からこんな話まで全部聞かせてやるよ」

「私の何を知ってるんですか!? そんな変なことしてました!?」

「あはは。じゃあな」

 

 

 店の外で出迎えてくれたかのんとありあに別れを告げてこの場を去った。

 賑やかで雰囲気もいい家族だったけど、俺が来てしまったことでこれからのかのんイジりが加速しそうだな。ま、それも家族の仲がいいからってことで納得しておこう。

 

 

 そして俺が立ち去ってから――――

 

 

「お姉ちゃんって、神崎先生のどこが好きなの?」

「へっ? す、好きとかじゃないから!! 女の子だったらカッコいい先生に興味を持ったりするでしょ。それと同じ!」

「ほんとにぃ〜?」

「もうっ、寒いから部屋戻る!!」

「えっ、ちょっと待ってよお姉ちゃん!」

 

 

 かのんは思い返す。

 

 

『声、綺麗だな』

『似合うと思うぞ、スクールアイドル。だってお前可愛いじゃん』

『いよいよファーストライブか。大丈夫だ、隣に可可がいてくれるだろ。それに観客先には嵐もいる。それでも苦しくなったら俺がいることも思い出してくれ。ずっと見守ってやるから』

『良かったよ、ライブ』

『お前は人の心を開く力がある。言いたいことをド直球に言えるその芯の強さがお前だ。メンバーに誘いたい奴がいたら相手の心に問いかけてみろ。お前に熱い思いがあればきっと届くさ』

『甘えていいとは言わないけど、トラウマが再発して辛くなったらいつでも頼ってくれ。俺は女の子の笑顔が一番好きなんだ。もちろん、お前の笑顔もな。だからその笑顔が崩れそうになったら、俺が全力で助けてやるから』

『過去を乗り越えたからかいい笑顔になったじゃねぇか。今のお前は、この瞬間だけ世界の誰よりも可愛いよ。頑張ったな』

 

 

「先生……」

「ノート、肝心なところを見られなくて良かったね。お姉ちゃん歌詞を思いついたらノートに書くクセがあるから、先生への想いの歌詞も――――」

「う、うるさいうるさい! もう寝る!!」

「本当にわっかりやすいなぁ~ふふっ」

 

 

 そして、かのんたちは家に戻る。

 

 俺がかのんの想いに気が付くのは、まだ先の話だった。

 




 Liella編の第二話、どうだったでしょうか?
 虹ヶ咲編からの続編になりますが、やはりキャラが変わると話の雰囲気もガラッと変わりますね。既に零君に恋心を抱いており、ウブな反応全開のかのん。教師としての自覚があるのか、虹ヶ咲編のようなイケイケではなく落ち着いている零君。それだけでも別の小説かに思えるくらいの雰囲気だったと思います。特に零君が素直に敬語使っているのなんて珍し過ぎて……(笑)

 虹ヶ咲編が零君も歩夢たちもかなり肉食系で恋愛も刺々しかったので、Liella編は割と穏やかで王道な恋愛を展開できたらと思います。(あくまで予定)

 かのんと零君の間に具体的に何があったのかは、またの機会に詳しく描きたいと思います。
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