ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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結ヶ丘女子高等学校パンツ盗難事件

「おい恋――――っていねぇのか。いねぇんだったら部屋に鍵かけとけよな……」

 

 

 またしてもクソババア、もとい理事長の命令によって生徒会の様子見を任された俺。面倒だと思いながらも生徒のためと思いこうして放課後に様子を見に来てやったのだが、生徒会室は何故かもぬけの殻だった。そういえば今日はスクールアイドルの練習があるって可可が言っていたので、もしかしたら今はそっちに出向いているのかもしれない。それでも施錠されてないのは迂闊すぎるけど……。

 

 机の上を見てみると、作業し終わったであろう書類が乱雑に置かれている。品行方正で礼儀正しく、風紀を重んじる恋は当然ながら身の回りの細かいことにも気を配るタイプ。例え書類のような紙束であってもきっちり整え、ファイルに挟むなどして丁寧に管理する性格のはずだ。やや潔癖症の毛があるアイツなのだが、だからこそこうして散らかったままになっているのが気になる。よく見たら床に書類が何枚か落ちており、アイツにしてはかなり杜撰な管理だ。

 

 

「ったく、仕方ねぇな……」

 

 

 生徒の尻拭いをする教師の鏡。どうして教師たるこの俺が地に這いつくばって書類を引っ掻き集めなきゃなんねぇのかねぇ……。

 そんな惨めな気持ちになりながら片づけを進めていると、傍に何やら布きれが落ちているのことに気が付く。綺麗な純白でシミ1つない。もしかして恋のハンカチだろうか。雑に置かれた書類といい、ハンカチを落としてるといい、アイツにしては珍しいこともあったもんだ。

 

 

「女の子の落としたハンカチを男が拾って届けてあげるとか、そんなテンプレラブコメみたいな展開を今更味わうことになるとは――――ん??」

 

 

 女子のハンカチにあまり男の手垢を付けたくないという配慮から指でハンカチを摘まんで持ち上げたのだが、この布、どうも変だ。持ち上げたときの重力で布が垂れ、その全体像が明らかとなる。その全体は普通のハンカチの形状である四角ではなく三角。しかも二層になっていて大きな穴が1つと小さな穴が2つ。女の子の腰下くらいの大きさと、ちょうど脚が2本入るくらいの穴だ。しかも何故かいい匂い。

 

 ずっとハンカチだと思い込んでいたがこれは違う。これは――――ッ!!

 

 

「パ、パン――――ッ!!」

 

 

「練習に行くことを優先して生徒会室を片付けないで出るなんて、恋にしてはドジねー」

「す、すみません……」

「まぁまぁ、それだけ私たちとの練習を大切にしてくれてたってことで、ね?」

 

 

「うぉおおおおおおおおおおいっ!?」

 

 

「「「えっ、先生!?」」」 

 

 

 一瞬で雪崩のように展開が進んだので説明すると。

 

・俺が摘まんでいた布がハンカチじゃなくてパンツだったことが判明

 ↓

・その瞬間にすみれ、恋、千砂都の3人が生徒会室に入ってきた

 ↓

・俺はその驚きで咄嗟にパンツをポケットに隠してしまった(イマココ!)

 

 

「先生、いらしていたのですね……」

「あ、あぁ、いつもみたいに生徒会の様子を見に来てな……」

「いつもみたいに?」

「はい。生徒会の仕事は大変だろうって、先生がよく私の様子を見に来てくださっているのです」

「恋ちゃんのために? ふ~ん……」

「恋のためにねぇ……」

「な、なんですかその目!?」

 

 

 色々起こって状況整理に時間がかかったが、どうやら俺は自分で自分を窮地に追い込んでしまったようだ。生徒会に置いてあったってことは、今俺のポケットに入っているパンツは恋のものだろう。そして状況証拠だけを見たら俺が盗んだと思われるのは確実。驚いてしまったとはいえ何たる失態なんだ……。てかそもそもどうしてパンツが床に落ちてたんだ?? そもそも練習着に着替えるだけなのにどうして下着まで脱いでるんだ?? 意味不明なことが多すぎる!!

 

 とにかくこのパンツを早めに俺の手元から離したいが、黒い服を着ている男のポケットから純白のモノが現れたら確実に目立つ。千砂都とすみれの注目が恋に向いている今がチャンスなんだろうけど、恋は俺の方をチラチラ見て助けを求めてくるので隙はない。とりあえずまずは話を合わせておくか。

 

 

「俺が生徒会の手助けをしてるのは教師としてだからだ。お前らが嫉妬するほどの他意はない」

「し、嫉妬って、そんなことあるわけないじゃないバカなの!?」

「あ、あはは、そう見えました?? いや~全然そんなつもりなかったんですけどね~……」

 

 

 自分の本心隠すの下手すぎかコイツら。明らかに羨ましそうな目と表情をしてたのバレバレだっつうの。これだから恋愛下手は……。

 ま、今はそんなことより気になっていることを明るみにするのが先か。

 

 

「それよりどうしてこんなに部屋が汚いんだ? 書類が床に落ちてたぞ」

「すみません! 片付けてくださったのですね! 実はスクールアイドルの練習の時間が迫っておりまして、急いで支度をして生徒会室を離れたものですから……。時間がなかったので更衣室ではなく着替えもここで済ませていたので、その時に山にしていた書類を崩してしまったのかと……」

 

 

 なるほど、コイツのパンツが落ちていた理由はそれか。よく見たら生徒会室の端にある机に恋の制服が畳まれて置かれており、この部屋で着替えをしていたことは明白である。急いでいたのでパンツだけ床に落としてしまい、それを何も知らない俺が拾ってしまった、というのがここまでの流れだろう。それでも下着まで着替えた理由は分からないが、女子には女子の理由があるのかもしれない。

 

 うん、大方は理解した。理解したうえで今の状況はヤバいと実感する。女子が着替えをしていた部屋に男が忍び込み、そこでパンツを盗んだという傍から見たらそう思われかねないこの状況。やはり早いところポケットの中に入ってる純白パンツを手元からおさらばさせないと……。

 

 

「それで練習が終わったらこの部屋の片づけをしようと思ったのですが、先生がやってくださったのですね、ありがとうございます」

「ま、まぁ教師として……な」

「な~んだ、だったら私たちが手伝いに来る必要なかったわね」

「うん。あの恋ちゃんが片づけを手伝って欲しいって言うから何があったんだろうって思ったけど、先生のおかげで大丈夫だったね」

 

 

 パンツを盗んだ(故意ではない)事実があるのに感謝されているなんて心がいてぇ……。別に取ろうと思って取ったわけじゃないけど、衝動的にポケットに隠したのも女の子のパンツに対する執着が僅かながらあったからだろう。正直女の子のパンツなんて見慣れてはいるが、だからと言って興奮しないかと言われたらウソになる。女子高校生のパンツって語感だけでも唆られるものがあるだろ? 男ってのはそういうもんだ。いや、こんなことを言ったら俺が本当に故意で盗んだみたいになるからやめよう……。

 

 

「他にも生徒会の仕事が残ってるって言ってたわよね? せっかくここまで来たんだし、手伝ってあげるわよ」

「そうだね。練習後で疲れてる状態だと1人じゃ身が入らないだろうし、私たちも手伝うよ!」

「ありがとうございます。助かります」

「ほら、アンタなにやってんのよ」

「え?」

「恋が着替えるから出てけってこと」

「そ、そうだな……」

 

 

 マズい、着替えが始まったらパンツが存在しないことがバレてしまう。だからと言って俺が犯人だと証拠付けるものは何もないが、ただでさえ今でも緊張感が漂ってる(俺だけ)のに更に張り詰めた空気(俺だけ)にはしたくない。かと言ってパンツを持ったままこの場を去ろうものならパンツ盗難事件が学校中まで広まってしまい、そうなるともはや収拾がつかなくなる。どうすんだよこれ……。

 

 

「ほらほら、早く出て行ってください。もしかして女の子の着替えを見たいっていう変態さんですか?」

「んなわけねぇだろガキが粋がるなよ」

「彼女いない歴=年齢の男だったとしても、流石にそんな真似はしないわよ。多分……」

「おいそこは自信を持って言い切って欲しかったんだが……」

 

 

 そりゃ見たいか見たくないかで言ったら見たいだろ、男なんだから。この欲望だけはいくら歳を取ろうと変わることはないだろう。男には誰しも表には出さないだけで裏では誰にも言えない性癖を拗らせてるもんだ。その欲望をコントロールできる奴が大人なのだろう。

 

 

「あっ……えっ!?」

「ん? どうしたの?」

「し、下着が……ない??」

「えぇっ!? 周りに落ちてないの??」

「探してみたのですがどこにも……」

「ということは誰かが持ち去ったとか、そういう話じゃないでしょうね……」

「そんな……」

 

 

 まあバレるよな。パンツがないことに気づかれるのは遅かれ早かれの問題なので特に驚きもしない。問題なのは俺の手中にあるパンツをどう手放すかだけだ。

 恋のパンツを持っているのが実は目の前にいる男とは知らず、盗まれた可能性があると思い込んで緊張感を走らせる3人。まあ盗まれてると言えば盗まれてるし、盗まれてないと言われたら盗まれてないんだけどさ……。

 

 

「盗まれたとは言ってもここは女子高ですよ? 同性の下着を盗むなんてあまり考えられない気がしますが……」

「そりゃ普通犯人は男でしょ? そしてこの学校に唯一いる男といえば――――」

「おい、どうして俺を見る……」

「別に~。ただこの学校の男ってアンタくらいだから」

「いや流石に先生はないと思うよ。彼女いない歴=年齢だけどそんなことをする人じゃないってみんな知ってるでしょ?」

「千砂都お前、俺のことを信頼してるのか馬鹿にしてんのかどっちなんだ……」

「もちろん信頼してますよ! 下着を盗むなんて心が寂しいことをするわけないじゃないですか。ねぇ~先生♪」

「いややっぱ馬鹿にしてねぇか!?」

 

 

 そりゃ学校に男は俺だけだから疑うのも無理ねぇか……。実は同性愛者がいて恋のことを密かに想い焦がれてる奴がいるのであれば話は別だが、女子高って意外とそうところあるからな。まあ純情なコイツらのことだからレズビアン云々などの俗物的思考にはならないだろうから、必然的に俺が標的にされるわけだ。しかもそれが合っているから怖いところ。さて、どう切り抜けたものかな……。

 

 

「しかし誰が盗んだにせよ、今日私は生徒会室で着替えをしたのですよ? 下着を盗むのであれば普通は更衣室を狙うはずでは?」

「確かにおかしいわね。だとしたら犯人の狙いは最初から下着じゃなくて、この生徒会だったってことかしら。たまたま恋の下着を見つけたから男の欲望に負けて、衝動的に手に取っちゃったとか」

「同じ男性としてどうですか先生? 女の子の下着を見つけたらそういう気持ちになっちゃうんですかね?」

「俺に聞くなよ……。でも男だったら並々の性欲くらいはあるんじゃねぇの。知らねぇけど」

「じゃあ先生もそうなることあるんだ……」

「ねぇよ!! てかまだ俺のこと疑ってんのか!?」

「冗談ですよ冗談! 先生って変なところありますけど、それなりに誠実だってことも知ってますから!」

「それなりって……」

 

 

 素直に褒めるってことを知らないのか千砂都の奴……。

 それにしても更に状況が悪くなりやがった。そもそもコイツらが生徒会室に来る以前に俺が1人でここにいたってことだけでも疑われて当然の状況だ。一応俺を信頼してくれているっぽいから犯人と断定はされてないけど、それでも容疑者候補になっていることには変わりない。ただ疑われないために外部犯の犯行に話を持っていくと学校中を巻き込んで大ごとになってしまうので、そういった騒動はあまり起こしたくない気持ちがある。

 

 てなると未だにポケットに忍ばせているこのパンツを今見つかった扱いにして、犯人は最初からいなかった説で押し通すしかないだろう。だが俺が見つけてしまうと『先生が持っていたんじゃないですか??』とまた難癖をつけられるので、あくまで誰かに見つけてもらう形にしたいが……そんな方法あるのか??

 

 

「とりあえず、かのんか誰かに連絡して保健室から替えのパンツを持ってきてもらったら? 流石に汗のついた練習着のままでいるのは気持ち悪いしね」

「どうして下着まで着替えてるのかって思ったらそれが理由か」

「あれ? 普通そうしません? 運動部とかは替えの下着を持ってきている子、結構いますよ?」

「女の子の事情なんて男の俺が知るかよ。ほら、かのんに連絡するなら早くしてやれ」

「そうですね、お願いしてみます」

 

 

 これはチャンスだ。替えのパンツさえあればいったんは犯人捜しの流れは止まるから、その間にどさくさ紛れてこの部屋のどこかにパンツを落としておけばいい。幸いにもまだ部屋中を細かく探されてはいないから、さっき恋が探した時には見逃していたとか言っておけば大丈夫だろう。

 

 恋がかのんに電話で状況を伝え、保健室から替えのパンツを持ってきてもらうことになった。とりあえずこれで俺への疑いの目はなくなりそうで一安心だ。あとは未だポケットに幽閉されているこのパンツを誰にもバレず外界に解き放ってやれば万事解決。やっぱり世の中って上手いこと回るもんだな。生徒会室でコイツらと鉢合わせした時は下着ドロボー扱いされて退職の未来が思い浮かんだから……。

 

 

「ということで先生、今日は千砂都さんとすみれさんに生徒会の仕事を手伝ってもらいます」

「そうか、だったら俺は必要ないな。あまり遅くなるなよ」

「はい。お気遣いいただき、ありがとうございます」

 

 

 よし、俺が帰る流れになったからこれでみんなからの目が逸れる。ようやく隙ができたので、適当にその辺にパンツを落としておけばそのうち誰かが気付くだろう。その頃には俺はこの場からとんずらしているので、誰も俺がパンツを拾って焦っていたとは思わないはずだ。これで俺の勝ち。余裕だったな。

 

 

「あっ、先生!」

「な、なんだよ千砂都……」

「また新作のたこ焼きを発明しまして、今日みんなにおすそ分けしようと思って持ってきてるんです! さっき温めたので先生もお仕事中のおやつにどうぞ!」

「あ、あぁ……」

 

 

 俺を引き留める気かコイツ。とっととこの場から脱出して晴れ晴れしくなりたいのに……。

 いや落ち着け。ただたこ焼きを受け取るだけだ。トラブルが起きるはずもない。今はもうウィニングラン。ここから大逆転敗北なんてありえねぇから。

 

 千砂都がたこ焼きが入っているだろう弁当箱を持ってこっちに駆け寄ってくる。

 だがその時、彼女の足元にまだ回収しきれていない書類が落ちていることに気が付いた。何か嫌な予感が俺の全身を駆け巡る。千砂都の足が床の書類を踏む。踏まれた勢いで書類が滑り、彼女の体制が崩れ、その身体が俺の方へ――――

 

 

「きゃっ!?」

「ちょっ、あぶねっ!?」

 

 

 千砂都の身体を受け止めて、なんとか転倒することは防げた。言っても俺も後ろに壁がなかったらそのまま仰向けで倒れていたので助かったよ。

 

 

「ちょっと千砂都、大丈夫?」

「うんヘーキヘーキ! 先生が助けてくれたから!」

「すみません、私が片付けなかったばかりに……」

「いいよいいよ、お弁当も中身出てなくて大丈夫そうだしね。先生、ありがとうございます!」

「ったくお前いつも危なっかしいよな。気を付けろよ」

「はいっ! 先生、温かいな……」

 

 

 どうして転びそうになったのに嬉しそうなんだよコイツ……。

 まあいいか。トラブルはあったけど俺の勝ち確定ルートは変わらな――――

 

 

「あれ? 先生ポケットから何か出てますよ?」

「へ? あ゛っ……!?」

「なにそれハンカチ? 真っ白で薄くて、結構女々しいの使ってるのねアンタ……って、恋? どうしたの?」

「あっ、いや、どこかで見たことがあるような気が……」

 

 

 ヤバい!! 千砂都を受け止めた衝撃でポケットからパンツが少しはみ出てしまった!! 黒い服に白いハンカチ(パンツ)なので少しでも頭が出てればそれはそれは目立つこと。しかも恋はこのハンカチ(パンツ)を見て自分のパンツであることを思い出そうとしている始末。勝ち確定の状態から一気に背水の陣。やっぱ俺の人生って穏便にいかねぇな……。

 

 でもどうする? このまま黙っているだけだとバレる。起死回生の一手を打たなければ本当の本当に犯罪者になっちまう。素直に返却すればまだ罪は軽くなっただろうが、ポケットに入れたままこの場を立ち去ろうとしていたことはここの全員が知っている。だから今バレたときの罪状は……想像したくもない。千砂都の身体を支えているので身動きも取れず絶体絶命。恋が思い出す前に、ポケットのパンツが取り出される前になんとかしねぇと……。どうする……ッ!!

 

 

「恋ちゃん、替えの下着持ってきたよ――――」

「かのんさん!?」

「かのん!?」

「えっ、なんですかこの空気……」

 

 

 生徒会室に入ってきたのは替えの下着を持ってきたかのんだった。目の前の状況を見て驚いているようだが、すぐに澄ました表情になると俺に向き直る。

 

 

「先生、ちょっと用事があるんですけどいいですか? あっ、下着ここに置いておくね恋ちゃん!」

「は、はい……」

「さ、行きましょう!!」

「おい!」

 

 

 俺はかのんに手を引かれて生徒会室から図らずとも脱出できた。恋たちはぽかーんとしていたが、そりゃ下着を持ってきたはずなのに急に俺を連れ出すものだからその反応にもなるだろう。

 つうかかのんの奴、一体俺をどうしようっていうんだ……??

 

 あまりに突然の出来事に、俺も頭に『?』を浮かべるしかなかった。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 そして、かのんに廊下の途中まで連れてこられると、ようやく手を離された。

 

 

「危ないところでしたね」

「…………どういうことだ?」

 

 

 何か全てを見透かされているような、そんな気がする。背筋に悪寒が走る。

 

 

「そのポケットに入ってるのって、恋ちゃんの下着……ですよね?」

「…………いや、違うけど」

「恋ちゃんから電話をもらった時、そこに至るまでの出来事も全部話してくれました。私の予想ですけど、もしかしたら先生が落ちていた恋ちゃんの下着を別の何かと勘違いして拾って、その直後にみんなが来たから衝動的にポケットに隠してしまった、と思っていたんですけど違いますか? 生徒会室に入ったとき先生とても焦ってるみたいでしたし、さっき先生のポケットから出てた白い布みたいなもの、よく見たら下着っぽかったのでそういうことかなぁ~っと」

「お前、俺が焦っていたことが分かったのか……?」

「先生のことはいつもよく見てますから……」

 

 

 サラッと怖いことを言われた気がするが聞かなかったことにしよう。

 それにしても、あの一瞬でそこまで察する力があるなんて観察力が高い奴だ。流石はLiella随一の常識人、普段から一歩引いて周りを見ているその観察眼が活きたのだろう。ここまでバレるともう隠しておくのも馬鹿馬鹿しくなってくるな。

 

 

「あぁ、お前の言う通りだよ。参った」

「やっぱり。だったら私が返しておきますね。練習場所に来る途中に落ちていたって言えば多分信じてくれます。急いで生徒会室を出てきたから服のどこかに引っかかって、その途中で落ちたとか、色々言い訳できますし」

「ホントか!? わりぃ、ありがとな」

「いえいえ! 先生にはいつもお世話になっているので、恩返しです! それではまた!」

「あぁ」

 

 

 ようやくポケットに入っていたパンツが外界に解き放たれ、かのんに渡った。

 

 衝動的とはいえ間違えてパンツを隠してしまったことを何一つ咎めず、むしろ受け入れてくれたかのん。すげぇいい子じゃねぇか。俺が思春期男子だったら間違いなくその優しさに惚れてたぞ。笑顔で立ち去る様も絵になってたし、恩返しって言われたけど今度何かアイツの望むことを叶えてやるか。

 

 そんな感じで、波乱万丈なパンツ盗難事件は幕を下ろした。

 なんか、色々ありすぎたせいでどっと疲れた。今日は残業をほどほどにして早く帰るか……。

 




 大体こういうネタの落ちって最後にはバレて何かしらの制裁を浴びるのが普通ですが、今回は聖母かのんのおかげで何もお咎めなしでした! 実際に彼女はこういうことも笑って許してくれそうな気がするので、オタク男子の私としてはお気に入りの子です(笑)



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