ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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ハーレム王の秘密を暴け!

 秋口に入ってからずっと寒い日が続いていたが、最近は寒暖の変化からか少し暖かい。寒さで断念していた中庭での優雅な昼食も、これだけ暖かければ気温を気にせず嗜めそうだ。仕事の区切りの昼休みに最愛の妹が作ってくれた愛妻弁当を食い、残り時間を心地良い暖かさの中で昼寝をする充実した時間。馬車馬のように働く社会人にとってはまさに砂漠の中のオアシスのようだ。

 

――――と言いたいのだが……。

 

 

「くぅ~~!! 苦手な体育を終えた後のお弁当は全身に染み渡りマスねぇ~!!」

「弁当食ってるだけなのに酒を飲んでるみたいなセリフを吐くな勘違いされるだろ……。つうか、どうしてお前がここにいる?」

「どうしてって、先生を顧問に勧誘しに来たに決まっているじゃないデスか」

「まだ諦めてなかったのか……」

「可可の辞書に『諦める』なんて言葉は存在してマセン!」

 

 

 優雅な昼休みを過ごそうとしていた矢先、可可が俺の隣を陣取って一緒に飯を食い始めた。もはやいつもの光景なので慣れたと言えば慣れているのだが、最近は以前に比べて来る回数が多くなっている気がする。コイツがいると騒がしいから『優雅』なんて時間は容易にぶち壊され、飯を食った後は永遠と宗教のお誘いのような勧誘を受けるだけとなる。それをのらりくらりと受け流しているだけで昼休みが終わってしまうため、最近の俺の昼休みはコイツに支配されてしまっていた。

 

 可可の根気強さは凄まじい。1回や2回ならまだしも、こちらが顧問に興味を全く示していないのにコイツは諦めない。それどころか俺を顧問堕ちさせるためにあの手この手で勧誘してくるため、むしろ勧誘を楽しんでいる節がある。それの裏付けになるかは分からないが、稀に勧誘なしで普通の世間話で昼休みを過ごすこともあった。そう考えるともう勧誘しに来ているというよりは俺と飯を共にしに来ている、という見方もあるかもしれない。

 

 

「可可も毎回ここに来るのは大変なので、そろそろ顧問になってくれると助かるのデス」

「どうして俺がワガママを言ってるみたいになってんだ。お前がしつこいだけだろ……」

「それこそが可可の長所デスから! この根気強さのおかげでかのんも陥落しマシタから、先生もいずれ根負けして顧問に成り下がることでショウ!」

「下がるのかよ!? 誘ってくるのであればもっと持ち上げろ!」

「それは先生の態度次第デスね」

「だからなぜ俺が選別される側なんだよ……」

 

 

 この強引さといい上から目線といい、この短時間で可可という人間の裏側をたっぷりと堪能しちまってるな……。本人は長所と言っているが、確かにそれがいいところでもあり悪いところでもある。コイツがかのんを誘い続けてスクールアイドルを結成しなければ、そもそもLiellaなんてグループは存在していなかったからな。だがその強引さのせいで俺の優雅な昼休みは破壊されてしまっている。いい迷惑って言葉はこういう時に使うのだろう。

 

 

「そもそものお話、先生は虹ヶ咲の顧問をやっていたのデスよね? だったらLiellaの顧問になってくれてもいいと思うのデスが……」

「あぁその話か。別にアイツらの顧問をしていたつもりはない。ただアドバイスをしていただけだ、今のお前たちにやってるみたいにな」

「それはもう顧問をしているのと同義だと思いマス! それにスクールアイドルを教えた経験があるのであれば、可可はより一層先生に顧問になって欲しいデス!」

 

 

 まぁこうなるわな。先日プライベートで侑と一緒にいるところをコイツらLiellaのメンバーに見られてしまい、流石に誤魔化し切れずに虹ヶ咲の奴らとの関係を話してしまった。今までスクールアイドルと関りがないと言っていたのが嘘だとバレ、しかも指導経験持ちということも判明してしまったので当然コイツらの俺を見る目が変わった。特に可可は今みたいに勧誘のしつこさが一回り強くなり、顧問に誘ってくる頻度も目に見えて多くなっている。こうなるから黙っていたのに、これはもう迂闊に女の子と外も出歩けねぇな……。

 

 

「それよりも先生、聞きたいことがあるのデスが……」

「ん? 勧誘を差し置いて別の話題か? 珍しいな」

「は、はい……。えぇっと……」

「なんだよ歯切れが悪いな」

 

 

 さっきまで威勢良く上から目線で勧誘していたのに、一転、今度は頬を赤らめてしおらしくなる可可。相変わらず表情がコロコロ変わるので見ていて飽きない奴だ。

 

 

「あ、あの……虹ヶ咲の方たちとはその……どういったご関係デスか?」

「えっ、関係??」

「はいっ! 侑さんのお話を聞く限り、先生は虹ヶ咲の方々にとても慕われているようなので……」

 

 

 なるほど、想いの男が他の女の子と仲良くしているのが気になる典型的な純情乙女タイプか。そりゃ気になるよな普通は。歩夢たちがかなり特殊で、俺が他の女の子と何をしていようが自分たちも同時に愛してくれればそれでOKタイプの連中だったので、可可のような純粋な疑問を抱くこと自体が普通のことだと忘れてたよ。俺の周りにいる子たちって俺のせいでどんどん恋愛に関する価値観が歪み、俺の周りにたくさん女の子がいるのは当たり前の風潮になっていくからもはや何が普通か分からなる現象が発生したりする。

 

 それにしてもコイツ、そこそこ破天荒な性格をしているのに意外と俺に女がいることを気にしたりするんだな。侑と一緒に歩いている俺を怪しんでストーカーするくらいだし、それだけ純粋な想いを俺に抱いてくれているってことだろう。まあそれはそれで嬉しいからいいんだけど、さてどう答えたものかな。当たり前だけど歩夢たちと肉体関係を持っていることは言えないし、言えるはずもない。現役女子高生たちとただならぬ関係であることは確かだが、流石にそれを公言するほど俺の口は軽くないんでね。

 

 可可はさっきからずっとそわそわしている。さっきの歯切れの悪さといいこの反応といい、恐らくこの質問をすること自体が彼女にとって勇気のいることだったのだろう。好きな奴に付き合っている人はいるのかと聞いて、もしいたとしたら精神的ダメージが半端ない。それを覚悟で質問してくるってことは相当な度胸の持ち主で、何事も恐れない彼女らしい。

 

 

「関係って言われても、俺にとってアイツらは教え子だ。お前が心配するようなことはない」

「し、心配って、可可はただただ興味本位で聞いただけで、べ、べべべべ別に他意はないデスよ!?」

「いやキョドり過ぎでバレバレだっつうの。そもそも俺に他の女がいたとしても、お前はそれを諦める理由にはしないだろ? なんたってお前の長所はしつこさと根性の強さなんだから」

「そ、それはそうデスけど……。虹ヶ咲の方たちは女性としても魅力的で、可可なんかが到底敵う相手ではないデスよ」

「そういうところだけは卑屈だよなお前。お前の好きなスクールアイドルなんだっけ、サニパ、サニパ……サニーパラダイスだっけ? お前いつもポジティブなのに、アイツらを信仰してる時だけは自分を下にするもんな」

「『Sunny Passion』デスよこれから可可の前で二度と間違えないでくだサイ首の骨折りマスよ?」

「こえぇよ! 急に真顔になるな!」

 

 

 好きな相手だろうが躊躇なく抹殺しそうな殺気を放ってたぞ今……。さっきから上から目線の強引さを見せたり、キョドりまくる純粋な面を見せたり、自分の信仰しているグループの名前を間違えられてキレたりと、もう表情変化が豊か過ぎて逆に情緒不安定に思えてくるな……。

 

 

「とにかく、俺が言いたいのは安心しろってことだ。女の子付き合いがないって嘘をついてたのは悪かったけど、それも下手に騒がれないためだ。だから許せ」

「別に怒ってはないデスよ? ただ先生ってやたら女の子の扱いに手慣れていたので、気になっていただけデス。それに可可、先生には虹ヶ咲の方々以外にもまだ関係を持っている女性がいるんじゃないかと睨んでいます」

「えっ? どうして?」

「匂うのデスよ、可可の鼻は犬よりも敏感。この名探偵可可にかかれば嘘の裏の更なる嘘も見抜くことができるのデス!」

「犬なのか名探偵なのかどっちだよ……」

 

 

 口には出さなかったけど、他に女がいると指摘された時は思わず心臓が飛び出そうだった。コイツのことだから適当なことを吹かしているだけだと思うが、その勘の鋭さは俺に冷や汗をかかせるのには十分だ。ただでさえ虹ヶ咲と関係がある男として認知されてしまったのに、それ以外の女の子とも関係があるとバレたら……うん、学校中で噂になり面倒なことになりそうだ。だから秘密の漏洩は全力で阻止したいが、可可の目が輝いているところを見ると俺の裏側を暴露したくて堪らないって感じだな……。

 

 

「さあ先生、吐いてくだサイ! いるのでしょう? もっと他に知り合いの女性がいっぱい!」

「なんだ急に元気になりやがって! さっきまで俺に女がいるかいないかで悩んでたくせに!」

「安心しろって言ったのは先生じゃないデスか! だったら可可はもう迷いません! 先生の秘密を暴くことを!」

「それは迷えよ!? つうか俺の人間関係を暴露しても面白いことは何もねぇぞ?」

「探偵業に面白いもつまらないもありません。これは仕事デスから。仕事に感情は無用なのデス!」

 

 

 なんか真っ当なことを言っているような雰囲気を醸し出しているのもムカつくし、眼鏡をかけてないのに眼鏡をクイっと上げる動作も腹が立つ。心配するなと言ったのは俺だけど、まさかそれをすぐ本気にしてテンションを切り替えるとか、コイツのポジティブシンキングはいい意味で見習うべきものがあるな。

 

 

「超インテリ探偵可可からは逃れられマセンよ! さぁ早く自白するのデス!」

「な~にがインテリだよ馬鹿馬鹿しい。アホっぽい顔して良く言うよ」

「な゛っ!? 言いマシタね! 結ヶ丘の賢者と呼ばれた可可に対してなんたる言い草!!」

「名探偵だったり賢者だったり忙しいなオイ。てかお前ってLiellaの中でも童顔だし、子供っぽいところが……な」

「『な』ってなんなのですか『な』って! そんな悟った顔しないでくだサイ!」

 

 

 Liellaの中でも特に愛嬌があると思っているのはコイツだが、裏を返せば可愛くて愛くるしいというのは子供っぽい顔立ちと言い換えることもできる。しかも表情変化が豊かでたまにクソガキっぽいワガママを言ったりするところも相まって、総じてアホっぽいと一言で片付けてしまった。そのせいで可可は顔を真っ赤にして否定するが、そうやってムキになるところが子供っぽいんだよ。

 

 

「むぅ~こうなったら無理矢理にでも先生の秘密を暴いてみせマス! あとで泣き叫んでも許してあげマセンから覚悟してくだサイ!」

「ちょっ、おい!? どうして俺の膝に乗る!?」

「逃げられないようにするためデス! こ、これで自白するまでずっと可可と一緒にいなければなりませんよどうしマスか?」

「顔赤くなってるぞ恥ずかしいんだろ!? 恥ずかしいならやめておけばいいのに」

「そ、そうやって諦めさせることで逃げようという魂胆デスね!? ふ、ふん、名探偵可可にそんな浅はかな手は通用しまセンよ!」

 

 

 だったら探偵らしく相手から巧みに話を引き出させて推理しろっつうの。これだと警察の尋問じゃねぇか……。

 今の体勢としては、ベンチに座っている俺の膝の上に可可が向かい合って跨っている状態だ。まるで人目を憚らず公園でイチャついている迷惑カップルのようだ。誰がどう見ても恥ずかしい体勢なのだが、それは可可も承知の上らしく、それが分かっていてもなおこの体勢を崩そうとしない。顔を真っ赤にして息遣いも荒いし、今にも爆発しそうな羞恥心を押し殺してこの体勢を維持しているのだろう。

 つうか、そこまでして俺の秘密とやらを知りたいのか。見上げた根性と褒めるべきか、この意地の張りこそ子供っぽいと馬鹿にすべきか……。

 

 

「そもそもこんな状態で自白すると本当に思ってんのか?」

「せ、先生だって恥ずかしくなって冷静でいられなくなるはずデス! その時に隙をついてなんとか自白を――――って、どうしてそんなに澄ました顔をしているのデスか!? 女子高生に馬乗りになられて平気とか、本当に男性なのデスか!? 下半身に付いているのデスか!?」

「失礼だなお前!? ま、こんなことは日常茶飯事だからどうってことねぇよ。いきなり飛び乗って来た時はビックリしたけどな」

「えっ、日常茶飯事??」

「あっ、あぁ……」

「女の子にいつもこんなことをさせているということデスか!? 日常的に!? やっぱりラブラブカップルの関係である女性がいる、ということなのデスね!?」

「ち、違う! そういうことじゃない!」

 

 

 やべ、思わず余計なことを言ってしまった。精神的にもこちらが優勢だったので油断しちまったか。もちろん可可が失言を見逃すはずがなく、ここぞとばかりに追及してきやがる。追及されるだけならまだいいけど、俺が女の子に対して対面座位をさせているという発言はどうかと思うぞ……。妹の楓を始めとした甘え上手な奴らが勝手にやってくるだけで、男から膝に乗ってくるように誘ったことは一度もない……多分。

 

 とにかく、失言をしてしまった以上は自分で尻拭いをしなければならない。あまりコイツに調子に乗られても面倒だからな。

 

 

「世の中にはな、お前の想像を遥かに超えた積極性を持つ女の子がいるんだよ。お前のように恥ずかしがったりせず、むしろノリノリで俺の膝に飛び込んでくるような奴らがな」

「そ、そうなのデスか? 凄い……。可可はこの体勢を維持するだけでも心臓がバクバクしていマス……」

「だろ? アイツらからしてみればただ俺にじゃれてるだけなんだ。いわゆる猫なんだよ。だから俺がさせてるとか、ラブラブカップルとか、そんな甘い妄想は捨てろ。アイツらは目をギラつかせて俺を狙う肉食系動物なんだから」

「い、意外と苦労されていたのデスね……」

「あぁそうだ。分かってくれたのなら嬉しいよ」

 

 

 ま、俺の言ったことの半分くらいは嘘なんだけどな。俺から直接させることはないが、ラブラブカップルかと言われたら一部そういった雰囲気もあるかもしれない。でも楓や虹ヶ咲の奴らなんて本当に肉食系で身体でのスキンシップも躊躇がない子ばかりだから、たまに俺の意思なんて関係なくグイグイ迫って来ることがあるのでそこは苦労しているポイントだったりする。男にとって相当贅沢な悩みだよなこれ……。

 

 

「おい、納得したのならそろそろ降りろ。貴重な昼休みを対面座位のまま終わるつもりか? 学校でイチャつく迷惑カップルだと思われるぞ」

「ふぇっ!? そ、そうデスね……」

「また急に恥ずかしがりやがって……。さっきの勢いはどうしたんだよ」

「さっきは先生の秘密を暴こうと躍起になっていマシタが、よくよく考えてみれば可可、とんでもないことを……!?」

「あれだけ指摘してやったのに今更気付いたのかよ……」

「でもこの体勢で先生に迫った女の子はみんな肉食系で、ラブラブカップルはいない……。となると、可可はその第一号になろうとしてる……??」

「おいどうしたさっきからブツブツ言って? 第一号ってお前、俺たちはそんな関係じゃねぇだろ」

 

 

 もしかして俺の声、聞こえてない?? Liellaの奴らは羞恥心が正常でない状態で考え事をすると周りの声が全く聞こえなくなる習性があるらしい。今も可可が何やら不穏なことを言っており、どうやら俺の膝を降りる気はなさそうだ。

 

 このままだとコイツを膝に乗せたまま昼休みが終わりかねない。午後に向けて体力を蓄えるために昼寝をしたいのにこれでは不可能だ。仕方ないから自分の世界に迷い込んでいるコイツを正気に戻してやるか。

 

 俺は可可の両肩を掴み、揺さぶってやる。

 

 

「おいしっかりしろ。妄想に耽ってる場合じゃねぇぞ」

「ふえっ!? あっ、先生!? って、ち、近い……ッ!! 先生の顔が可可に……ふわぁっ……あぁ……!!」

「落ち着け! また気絶しようとしているぞ気をしっかり保て!」

「せ、先生の顔が近いデス! 息がかかりマス! それに先生の声が可可の耳に入って……ッ!!」

「なに訳の分からないことを言ってんだ耳フェチかよ!? こんなところを他の生徒に見られたらまた変な噂が――――」

 

 

 

 

「騒がしいと思って来てみれば、まさかあなた方だったとは……」

 

 

 

 

「れ、恋……」

 

 

 いつの間にか俺たちの目の前に恋が仁王立ちで立っていた。こめかみに怒りのマークが現れており、明らかにキレている。そして気付けば周りには多数の女子生徒がおり、男女の交遊を間近で見られて興奮しているのか黄色い声を上げていた。

 

 

「違うんだ。誤解だ」

「いつも言っていますよね? 教師たるもの生徒の模範であるべきだと。それなのにも関わらず、中庭で女性を抱きしめようとしているなんて……」

「だから違うって!」

「とりあえず、この件は理事長へ報告します!」

「だから違うんだって!! てか起きろよお前も!!」

「ふにゃぁ……」

 

 

 どうやら恋や周りの女の子たちは俺が可可を抱き寄せようとしていたと思っていたらしく、白昼堂々と不純異性交遊をする教師というレッテルを張られてしまった。つうか、何かあるたびに変なレッテルを張られてる気がするな……。

 

 そして、可可は昼休みの間ずっと気絶していた。いい加減に恋愛弱者を卒業して欲しいよ……。

 

 




 作者の私自身がこんなことを言ってはお終いかもしれませんが、零君に自白させるよりも侑にこっそり聞いた方が簡単にハーレム王の実態を暴けるかも……?

 それにしてもLiellaメンバーの恋愛クソ雑魚描写をほぼ毎回描いているせいか、毎回誰かしら気絶してるような気がする……(笑)
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