ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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 虹ヶ咲アニメ2期の影響を受け、虹ヶ咲の話も書きたくなっちゃったので堪らず投稿しちゃいました(笑)

 時系列としては虹ヶ咲編の特別編『侑とμ's』の回以降、Liella編突入前のお話となります。



【特別編】侑と歩夢は彼の家で一晩を過ごす(前編)

「んんっ~~ちょっと休憩」

 

 

 高咲侑です。

 自室で勉強を始めて数時間、集中し過ぎて張った身体を大きく伸ばして一息入れる。音楽科に転科してからしばらく経つけど、元々音楽スキルがほぼゼロの私にとっては宿題を片付けるだけでもまだ一苦労していた。もちろん自分で選んだ道だから苦ではない。歩夢たちのため、そして自分の夢のために、苦労しながらも楽しんで音楽を学べていると思う。そのせいで時間も気にせず集中しちゃってみんなに心配されたりするんだけどね……。

 

 忙しいのは音楽科の勉強だけではない。スクールアイドル同好会のマネージャーとしてみんなの練習メニューを考え、お兄さん……神崎零さんにそのメニューを添削してもらったりと、同好会の作業も並行して行っている。特にお兄さんの添削はそれなりに厳しくて作成したメニューを差し戻されることも多いため、場合によっては夜遅くまで練習案を考えていたりもする。だけどこれに関しても苦だとは思っておらず、お兄さんにスクールアイドルのマネージャーとして教育して欲しいと依頼したのは自分なので、むしろ厳しくされるのは大歓迎。μ'sやA-RISE、AqoursやSaint Snowと言った名だたるグループを見てきたお兄さんだからこそ、こちらから学べることは多い。

 

 そんな感じで今日も音楽科の勉強とお兄さんからの課題を着々と進めていた。気づけばもう夕方。昼食を取ったのがさっきのような感覚に陥るほど集中していたみたい。あまり根を詰めすぎるとまたみんなに心配をかけちゃうからほどほどにしないと。特に歩夢は心配性だから、1時間に何回も『大丈夫? あまり無理しないようにね』とかメッセージを送ってきちゃうんだよね……。いや心配してくれるのはありがたいけど、あまりのメッセージ量に1回ドン引きしちゃったことあるのは内緒……。

 

 とりあえず、適当に夕飯の準備でもしようかな。あっ、でも買い物に行かないと冷蔵庫に何もなかった気がする。最近時間があるときは音楽科の勉強やお兄さんの課題をやってるから、あまり買い出しにも行ってなかったんだよね……。面倒だけど気分転換にもなるし出かけよう。

 

 そう思った矢先、携帯にメッセージが入る。また歩夢からかな?

 

 

「えっ、お兄さん?」

 

 

 驚くのも無理はない。お互いに連絡先は知っているものの、大抵私が事務連絡をするくらいでお兄さんから連絡をしてくることはほとんどないからだ。わざわざ向こうから来るなんてよっぽどのことなのでは……??

 

 そう考えてメッセージの内容を見てみると――――

 

 

『俺の家に飯を作りに来い』

 

 

「はい……?」

 

 

 結論だけを書いた非常に簡潔な文章。言いたいことを的確に相手に伝えるいい文章。流石は来年から教師になる人、文章力がある―――――って、そんなわけあるかぁああああああああああああああああああああああああ!!

 

 なにこの内容!? いきなり飯を作りに来いってどういうこと!? 百歩譲ってそれはいいとしても何故に命令口調!? それが人にモノを頼む態度なの!? たかだか数文字の文章なのにツッコミどころが多すぎるのがお兄さんらしいというかなんと言うか……。

 

 まずどうしてこんな突拍子もない依頼をしてきたのかを聞こう。

 そう思っていると続けてメッセージが届いた。

 

 

『今日は楓も秋葉も用事でいないから飯を作る人がいないんだ。だから来い』

 

 

 いや理由は分かったけど、どうして人に作らせようとするの!? しかもまた命令口調だし!! 全くあの人はもう……。

 このまま無視してもいいけど、後で絶対に詰め寄られるので仕方なく応答することにする。

 

 

『自分で買いに行ったり出前を取ったりしたらいいのでは?』

『お前の作った飯が食いたい。それだけだ』

 

 

 な、なにそれ……。ちょっとドキッとしちゃったじゃん……。

 

 

『いいから来てくれ。飢え死にする』

 

 

 相変わらず一方的なんだからもう……。こうやってメッセージでやり取りしているだけなのに肉食系の片鱗が見える。そういうところが男らしいのかもしれないし、なんなら歩夢たちなら二つ返事で飛んで行くだろう。残念ながら私はお兄さんに惚れてもないし、もちろん恋愛的に好きではない。お兄さんの言葉を借りるなら相棒ポジションだ。お互いにお互いの夢のために支え合っていく仲。歩夢たちはお兄さんに従順でお兄さんの言うことならなんでも喜んで聞いちゃうけど、私をそう簡単に従わせられるとは思わない方がいい。ていうか私が最後の砦にならないとお兄さんにツッコミを入れる人がいなくなっちゃうからね……。

 

 

 だけど――――

 

 

『分かりました。行きます』

 

 

 あ゛ぁ゛ああああああああああああああああどうして行くって言っちゃうかな私!! これじゃあ即堕ち2コマって言われても反論できないよ……。

 別にさっきの私とメッセージに返答した私が二重人格なわけではない。お兄さんには人を従わせる圧力があるっていうか、恐らく私自身も口では抵抗しているけど心ではその王様ムーヴを受け入れているからだと思う。お兄さんの隣にいるのって……まぁ心地いいし。なんだかんだ付き合ってあげるあたり、お兄さんにツンデレとか言われそうだな……。

 

 その後はお兄さんから電子マネーが10,000円分送られてきて、これで食材を買って来いとのことだった。2人で10,000円分の食材費ってどれだけ食べるつもりなの……? 手間賃として少し着服させてもらおう、うん。

 

 するとまたしても携帯にメッセージが入った。まだ何か言いたいことがあるのかと呆れそうになったけど、送り主はお兄さんではなくて歩夢だった。

 

 

『今日も勉強お疲れ様! もしよかったら晩御飯を作りに行きたいんだけど、いいかな? 忙しいと思うから迷惑じゃなければだけど……』

 

 

 見てよこの健気さ。これがお兄さんとの差ってやつだね。依頼してくる立場なのに横暴な口調のお兄さんと、控えめで心の底から私のことを心配してくれる通い妻のような歩夢。やっぱり持つべきものは幼馴染――――と言いたいけど、心ではお兄さんのお世話をしに行ってあげたいと思っているあたりお兄さんから逃げられないんだろうなぁ私……。ていうか私、お兄さんから離れられなくなってない?? もしかして依存?? 気持ちわるっ!!

 

 それはともかく、これはいい機会だ。せっかくだから歩夢も誘ってみようとメッセージを入れたら、秒で返信が返って来た。

 

 

『行く! すぐ準備するね!』

 

 

 短い文章だけど勢いは伝わってくる。。歩夢は私の部屋の隣の部屋に住んでいるけど、今頃めちゃくちゃテンションが上がっているのが見えてないのに分かるよ。なんかちょっと隣が騒がしいし……。

 歩夢、というより他のみんなもそうだけど、お兄さんの話題を出すだけで舞い上がっちゃうくらいだからね……。

 

 そんな感じで急にお兄さんの家にお邪魔することになった。そういえば、男性にご飯を作ってあげるのって初めてなんだけど大丈夫かな……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 食材の買い出しのため歩夢と一緒にスーパーにやって来た。私がカートを引き、歩夢がいい野菜やお肉などを歴戦の主婦のような観察眼で見極めカートに入れていく。歩夢とは何度も一緒に買い物に来たことがあるけど、今の歩夢がちょっと怖いよ。目が本気。本気と書いてマジだ。それだけお兄さんのために少しでもいい食材を選んでいるのだろう。

 

 

「あゆむぅ~いつまで選んでるの~……」

「ゴメンもうちょっと待って! 零さんの身体に入れるものだから、今あるモノの中で最高のお肉を選ばないと!」

「いや気を使い過ぎだって。早くしないとお兄さんが餓死しちゃうよ」

「う゛っ、それは困るかも……。でも零さんに料理を作ってあげるんだよ!? そんなの最高級のおもてなしをしないとダメ! 妥協はできないよ!」

 

 

 歩夢がここまで自己主張を強めるのは珍しい。いつもは割と引っ込み思案だけど、お兄さんのことになると途端に目が血走ってハイになる。どれだけお兄さんのことが好きなんだって話だけど、私も恋をして好きな男性ができたらその気持ちが分かるのかな。そしてこういう時にどうして真っ先にお兄さんが思い浮かぶかなぁ……。

 

 

「そういえば侑ちゃんは零さんに料理を作ってあげるのは初めて?」

「そうだけど、それがどうかした?」

「だったらとても驚くと思うよ。零さんってとても美味しそうに料理を食べてくれるし、いっぱい褒めてくれるんだぁ~♪」

「歩夢、幸せで顔が崩れてる……」

「だって零さんの笑顔は私の笑顔だもん。今日は一緒に頑張ろうね侑ちゃん!」

「う、うん……」

 

 

 歩夢からのハッピーオーラが凄まじすぎる……。人は恐怖ですくみ上がると頷くしかできないって言われるけど、その逆も然りでここまで幸せを振りまかれたら否定なんてできない。だから歩夢の幸せそうな様子を見たら頷くしかできないよ……。

 そもそもお兄さんに褒められたくて料理を作りに行くんじゃなくて、命令されたから仕方なく作りに行ってあげるだけなんだから。お兄さんの笑顔のためとか、そんなの関係ないから。って、これツンデレっぽいなぁ私……。

 

 お兄さんが褒めてくれる。褒めてくれる、か……。

 

 

『美味しいよ。ありがとな、侑』

『お前料理上手いんだな。もう俺の嫁に来い』

『あはは、お前って俺に頭を撫でられるとすぐに振り払うもんな。でも今日は本当に助かったから、感謝させてくれ』

 

 

 あ゛ぁあああああああああああああああああああっもうっ!! どうしてこんな妄想が流れ込んでくるの!? 本当に迷惑!! 忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ……。

 

 

「ど、どうしたの侑ちゃん? 急に頭を抱えて……」

「歩夢の妄想癖が移ったのかもね……」

「も、妄想!? 私いつもそんなことしてた!?」

「いや自覚なかったの!? お兄さんのことになるといつもそうだけど!?」

 

 

 そうツッコミは入れたものの、最近は私も妄想の世界に囚われてしまうことがあるのでブーメラン発言かもしれない。それでも四六時中お兄さんのことを考えている歩夢よりかはまだマシだと思いたい。こうやって人と比較をして自分を正当化していかないと自我を保てなくなるなんて、もう昔の私とは全然別人のようだ。でもそうだとしても別によく、むしろこっちの世界の方が心地良いと感じてしまうくらいには毒されている。私もこの雰囲気に相当調教されちゃってるなぁ……。

 

 

「そういえば侑ちゃんは零さんに何を作ってあげるの?」

「えっ? 私は歩夢の手伝いでいいよ。ほら、歩夢の方が料理上手だし、お兄さんも美味しい料理を食べられた方がいいでしょ」

「それは違うよ侑ちゃん。料理は愛情。零さんの一番の大好物は私たちの愛情なんだから」

「愛って、別にお兄さんに対してそんな感情はないんだけど……」

「あれ、そうだったんだ」

「なにそのきょとんとした顔!? 私がお兄さんのことを好きだと思ってたの!?」

「侑ちゃん最近零さんの話題多いから、てっきりそうかと思ってた♪」

「屈託のない笑顔で勘違いするのやめてもらっていいかな!?」

 

 

 もしかして、歩夢以外のみんなにも勘違いされちゃってるのかな……? お兄さんに自分の気持ちを曝け出したあの屋上の一件はみんなに見られていたわけだけど、確かにお兄さんLOVEなみんななら私のあの発言は告白に聞こえても仕方なかったのかもしれない。思い返すとまた恥ずかしくなるからこれ以上は掘り返さないでおこう。

 

 そしてさっき歩夢の手伝いでいいとは言ったが、私の妄想では褒められる描写が強制的(決して故意ではない。ここ重要)に流れ出した。つまり潜在的にお兄さんに料理を褒められたいと思っているってこと……? まあ褒められること自体は悪くないから、仕方ないか……。

 

 

「分かった。私も何か作るよ。歩夢がいない最初はそうするつもりだったしね」

「本当に!? 侑ちゃんと一緒に料理できるの楽しみだよ♪」

 

 

 全く、女子高生2人に料理を作らせるために家に呼び寄せるなんて超贅沢だよあの人は。しかも本人のいないところでこうして本人の話題で盛り上がる。これを知ったらふんぞり返って優越感に浸るんだろうなぁ……。

 

 そんなこんなで買い物を終え、お兄さんの家へと向かった。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「こんにちは零さん! 侑ちゃんからお呼ばれして来ちゃいました! 急に来てご迷惑ではなかったですか……?」

「別にいいよ。お前ならいつでも歓迎だ」

「そ、そうですか!? ありがとうございます♪」

「侑も来てくれてありがとな」

「呼ばれたので仕方なく、ですけどね」

 

 

 歩夢とお兄さんの家にお邪魔したけど、意外にも歓迎ムードで驚いた。傍若無人で唯我独尊のお兄さんのことだから、もっとこう『よく来たな』みたいに来てもらって当然のような言動を想像していたんだけど、蓋を開けたら素直にお礼を言われて拍子抜けだ。いつも尊大に振る舞っているわけではなく他人への感謝ができる人だってことは知ってるけど、私へのメッセージの内容を見たらどうも……ね。

 

 家に上がらせてもらって早速夕食の準備に取り掛かる。本来ならもっと余裕を持って来られたんだけど、スーパーで歩夢の慎重な食材選び、そしてお兄さん関係の話題で歩夢とドンパチやっている間にいい時間になってしまった。それに関しては流石にお兄さんに『遅い』って言われちゃったけど……。

 

 

「…………おぉっ!」

「な、なんですかさっきからジロジロ見て……」

「やっぱりさ、エプロン姿の女の子が自分の家のキッチンに立ってると興奮するよな」

「気持ちわるっ!? 見ないでください!!」

「いや見るべき光景だよ。目を逸らせない」

「そうだよ侑ちゃん! そのために2人でお揃いのエプロンも買ったんだから!」

「それは歩夢が勝手に買っただけでしょ!? 私知らなかったんだからね!?」

「いい仕事だ歩夢」

「はいっ! 侑ちゃんの可愛いところ、もっともっと知ってもらいたいですっ!」

 

 

 なにこの公開処刑!? もしかして歩夢を呼んだのって失敗だった!? もうお兄さんと一緒にいる世界が独特過ぎて何が地雷なのか分からない……。

 帰りたいけど2人がそうはさせてくれないから観念して残ることにする。ぶっちゃけて言えばお兄さんにジロジロ見られるのは日常的だから今更騒ぎ立てることでもない。恥ずかしいから慣れてはいないけど、さっきはお兄さんのセクハラ(?)発言に反応してしまっただけだ。ちなみに日常的に見られているのは仕方なく、お兄さん曰く『男は可愛い子を目で追ってしまうもの』らしい。可愛いって、私なんかより歩夢たちの方がよっぽど魅力的だと思うけどなぁ……。

 

 いつまでもお兄さんの相手をしていると本当に日が暮れるので、歩夢と一緒に料理を始める。2人での共同料理はもちろん、各々個人でも料理を進めていく。まさか1人暮らしで身に着けた料理スキルを突然男性に向けて発揮するなんて思ってなかったから少し緊張する。歩夢はお兄さんに対して作り慣れているようだから相変わらず手際が良く、傍から見ていても新婚夫婦の妻にしか見えない。こんな健気な子に料理を作ってもらえるなんて、お兄さんって本当に幸せ者だよ。私はまぁ、オマケってことで。

 

 ちなみに私たちが料理をしている最中、お兄さんはリビングのソファに寝転がって悠々としていた。女の子に料理を作らせるだけ作らせて、自分はのんびりですかいい身分だよ全く。でもそれが許されるのがお兄さんだから仕方がない。そうやって納得してしまう自分も自分だけど……。

 

 たけどただ寝転がっているだけではなく、携帯を触っていたり料理をしている私たちの後姿を見つめたりしていた。気を張っているからかその視線には気づいていたけど、男性の立場に立ってみるとこの状況が天国だって言いたい気持ちも分からなくはないかな。お揃いのエプロンを着た女子高生2人がキッチンに立つって、女の私からしてもドキッとしちゃうようなシチュエーションだもん。

 

 

「零さん、料理できました!」

「おおっ、サンキュ」

「お礼が事務的ですね……。もっと感謝の気持ちはないんですか? 嬉しすぎて涙が止まらないとかとか……」

「ありがとな、侑」

「うっ……」

 

 

 急にお兄さんに頭を撫でられる。憎まれ口には憎まれ口で対抗してくるのがいつものお兄さんなのに、出迎えてくれた時を含めて今日はやたらと素直だ。そのせいで手を振り払おうとも思わず、そのまま黙ってお兄さんの撫で回しを受け入れていた。その手は大きくて暖かく、お兄さんに褒められ、認められていると実感できて心が落ち着く。なるほど、これは歩夢たちが求めちゃうわけだよ。今の私、多分とても顔が赤い。だって熱いもん、全身が……。

 

 

「れ、零さん……」

「もちろん歩夢も、いつもありがとな」

「い、いえいえ! 零さんのためならいつだって……♪」

 

 

 歩夢もお兄さんに撫でられる。そりゃ餌をねだる子猫のような愛嬌で期待されたら誰でも甘やかしたくなっちゃうよね……。

 歩夢はもうお兄さんしか見えていなさそうな恍惚な表情でうっとりしている。もうお兄さんに褒められ、撫でられるだけのために生きていると言っても過言ではなさそう。赤面しているのはもちろん、その溢れ出る喜びは隣にいる私にも伝わって来る。お兄さんもお兄さんで撫で慣れているのか微笑ましい表情をしているし、なんという甘々空間。その雰囲気に私も巻き込まれており、不本意だけど悪くないと思ってしまう。私、こんなチョロかったっけ……??

 

 そんな穏やかな空気の中、私たちはダイニングのテーブルについて食事を取る。私と歩夢が隣同士で座り、向かいにお兄さんがいる構図だ。

 こうしてお兄さんと一緒に食卓を囲むのは初めてで、そして自分の料理を振る舞うのもこれが初めて。だからどんな反応をされるのか気になっていたけど――――

 

 

「このオムライス、歩夢が作ったのか。見た目も味も何もかも楓に匹敵するくらいだ。美味すぎて箸が止まらないって言葉、本当にあったんだな……」

「零さんのために、この想いをたっぷりと込めましたから……。あっ、お口にソースついちゃってますよ! 取ってあげますね♪」

「あぁ」

「――――はいっ、取れました! あっ、手にも少し飛んじゃってますね。タオル持ってきます!」

「あぁ」

「お茶がもうなくなりそうですね。――――はいっ、どうぞ♪」

「あぁ、サンキュ」

「ちょっ、ちょっと待って!! メイドさんか何か!? いやメイドさんでもここまでしないよ!?」 

 

 

 次から次へとお兄さんに世話を焼く歩夢にビックリして、食事中だけど思わず大声でツッコミを入れてしまった。更に驚いたのはお兄さんも当然のごとく歩夢からの奉仕を受け入れていることだ。お兄さんの家にお呼ばれしたときはいつもやっていることなのだろう。さっきは冗談交じりで新婚だとか言ったけど、もう完全にラブラブ夫婦だよこれ……。

 

 

「もしかして――――侑ちゃんも零さんにご奉仕したいの!?」

「したくないよ!? 料理を作ってあげただけで満足でしょ!? ね、お兄さん!?」

「あぁ、お前のから揚げも美味いよ。俺の好きな竜田揚げにしているところがベストだ。ん? そういやどうしてお前が俺の好みの揚げ方を知っている?」

「歩夢から聞いたんですよ。聞いてもないのに勝手に聞かされたんですけど……」

「そっか。でもその気はなかったけど、結局は俺の好みに合わせてくれたってことだろ? そこまで俺のことを考えてくれたのなら嬉しいよ」

「そりゃ料理を振る舞うのであれば、その相手の好みに合わせるに決まってるじゃないですか……」

「それでもだよ。お前が俺の好みを知って、俺のために作ってくれたって事実だけでも嬉しいんだ。実際に美味いし、歩夢の料理に負けてないよ。ありがとな」

「は、はい、こちらこそ……」

 

 

 なにその笑顔!? 思わずしおらしくなっちゃったよ!? 

 今日はお兄さんが素直過ぎて調子が狂うというか、的確に心をくすぐられている感じがしてドキドキしてしまう。あぁなるほど、今までこうやって女の子たちを落としてきたのか。そりゃ笑顔で手料理を食べてくれて、ここまで褒められたら誰でも惚れちゃうよ。歩夢が何度もお兄さんの家に通いたいって気持ちが少し分かった気がする。お兄さんの幸せそうな顔を見るとこっちも幸せになりそうだからね。

 

 時間が経って、私たちは料理を全て綺麗に食べきった。

 後片付けをして、もう帰るだけ。だけなんだけど、なんだかちょっぴり寂しい気がしてならない。それは歩夢も同じようで何やらそわそわしていた。

 

 

「せっかくだから泊っていかないか?」

「「えっ?」」

「いつもだったらこれでさよならだけど、今日はなんだかお前らともっと一緒にいたい気分なんだ。だからどうだ?」

「は、はいっ、是非!!」

「でも着替えとかないし……」

「楓のを借りればいい。俺から連絡しておくから」

「そ、それなら私も……いいかな」

 

 

 承諾してしまった。最初はお兄さんからのミッションが全部片付いたらすぐ帰る予定だったのに、どうやら私もこの穏やかな雰囲気に飲み込まれてしまったらしい。帰るのが惜しくなっていたところに家主であるお兄さんからの提案。そんなのもう乗るしかない。実はお兄さんと一晩を過ごすのは初めてなんだけど、別にいいかなって思えてきちゃった。それくらいこの3人の空間の居心地がいいみたいだ。

 

 いつもはお兄さんと一緒だと色々事件に巻き込まれるけど、このいい雰囲気。今日という今日はのんびりできそう――――

 

 

「そうだ! せっかく3人でお泊りすることになったので――――お風呂、一緒に入りませんか!?」

「えっ?」

「ふぇっ? え゛ぇ゛ぇ゛ぇええええええええええええええええええええええええ!?!?」

 

 

 のんびりできそうと言ったのも束の間、歩夢からの爆弾投下で一気に現実に引き戻される。

 お兄さんと歩夢。3人で初めての一晩。これ、どうなっちゃうの……??

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 1話で完結させるつもりが妄想が膨らみに膨らんで、結果的に前後編となってしまいました(笑) そして自分が書きたかった描写は次回に持ち越しなので、下手をしたら次回も文字数が膨らんでしまいそうな気が……

 虹ヶ咲のキャラはもちろん全員大好きですが、その中でも侑は容姿良し、性格良しで私の好みに合致するのでこの小説でもメインで出したくなっちゃったりします。多分彼女がいなかったら今回のような虹ヶ咲特別編を書こうとは思ってなかったかも……?

 そんなわけで次回は後編で、お風呂パートと就寝パートを予定しています。
 そして、もしかしたら虹ヶ咲のアニメ中にまた特別編として何話か虹ヶ咲の話を投稿するかもしれません。Liellaのお話を期待してくださっている方には申し訳ございません!!







 思ったけど侑さんこれ、零君を好きじゃないってもう無理があるような……
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