「セックスですっ!」
美少女幽霊・
だがコイツもただ性行為を意味する言葉を叫びたいから叫んだのではないはず。とにかく理由を聞いてみるか。
「で? どうしてその結論に至ったんだ……?」
「それはですねぇ、零さんたちが見たのは性欲を持て余した死者の魂だからですよ。だからぁ、目の前でエッチなことすれば満足して成仏するはずです♪」
「せ、先生、私の頭が理解を拒んでいるのですが、愛莉さんは何を言っているのでしょう……?」
「俺もだから安心しろ……」
この展開、コイツと初めて出会ったときを思い出す。性行為をしないと成仏しないと駄々をこねていたコイツと出会ったんだ。まさか1年後に同じ展開を繰り広げるとか正気かよ。てか普通に受け入れてたけど、性欲を持て余した幽霊ってなんだよわけわかんねぇ……。
「おい愛莉、それはお前の欲望ではなく本当にあれを除霊するのに必要なことなんだろうな?」
「えぇそうですよ! もうすぐクリスマスも近いじゃないですか? クリスマスは
「なんていうか、想像以上にはた迷惑な幽霊たちね……」
「未だに信じられないけど、本物の幽霊さんにそこまで言い切られると本当なのかなって思っちゃう……」
「というか、女子高にそんな目的で現れるなんて随分と変態な幽霊さんデスね……」
みんなの言う通りあり得ないくらいどうでもいい理由で校舎裏を占拠してやがる……。まあ男からしてみれば、性欲を発散したい悶々とした気持ちを抱き続けるのは身体に毒って分かるけどな。でもアイツら幽霊だし、性欲の発散に未練タラタラって生前どんな生活送って来たんだか……。
ただ幽霊に文句を言っても現状が解決するわけではない。仕方がないけどアイツらを満足させて成仏してもらうしかないか。
「そういやお前とアイツらって同じ欲望を抱いてるけど違いってなんだ? お前は自我があるけどアイツらは魂が浮いてるだけだろ?」
「それは個人が持つ性欲の強さ、性欲を発散したいと言う欲望の強さ、その他エッチなことにかける気持ちの強さ、それが高ければ高いほど幽霊となっても自我が形成されるのです! つまり、魂だけで喋れもしないあの方たちはその程度の性欲だったってことですよ。そんな性欲で現世に留まるなんて迷惑な話ですよねぇ~」
「お前の方が重症なのに呆れるんじゃねぇよ……」
どうやら性行為したいって欲望だけで自我が形成された幽霊になれるらしい。あの世とこの世を行き来したりスマホが流通していたり、性欲を満たせないこと以外は幽霊の方が快適なんじゃねぇか……?
「お前の自慢はいいとして、解決手段ってそれしかねぇのか? また俺と性行為するとか言い出すんじゃねぇだろうな?」
「う~ん零さんとセックスできるのなら願ったり叶ったりですけど、そのためには私がかのんさんたちに憑依する必要がありますからねぇ~」
「えっ、私たち……ですか?」
「はいっ! 私って見ての通り霊体じゃないですか? だから直接人間とセックスして性欲を満たすことはできないのです。ですが憑依で誰かのお身体をお借りすることはできるので、かのんさんたちのお身体を使えばセックスできるってことですよ!」
「ちょっ、私たちの身体ってそれ本気なわけ!?」
「せ、先生とそ、そんな……破廉恥ですっ!」
「俺に文句言うな! てか愛莉、その方法はAqoursのときもダメだって言っただろ……」
「えぇ~っ!!」
どうして今回は行けると思ったんだよ……。
俺と身体を重ね合わせることが解決方法だと聞かされ、かのんたちは顔は夜の暗闇でもはっきりと分かるくらいに赤くなった。ただでさえコイツらは恋愛下手なのに、そこに18禁要素をぶっ込んだらそりゃこうもなるよ。逆に虹ヶ咲の奴らだったらテンション爆上がりで喜びそうだけど……。
そして俺に性行為を止められて心の底から残念がる淫乱幽霊の愛莉。幽霊になってもまだ肉体接触を諦めてないその根気だけは認めてやるけどさ……。
「とりあえずもう少しまともなのはないのか? コイツらへの刺激が強すぎない方法とか」
「う~ん、あるにはあるんですけど面白味に欠けるんですよねぇ~」
「お前は肉欲さえ満たせればなんでもいいんだろ……。とにかくもう1つの方法ってのを教えろ」
「そうですねぇ~。あの魂たちは結局は欲望の残りカスみたいなものなので、セックスをせずとも男女の仲の良さを見せつければ満足して成仏すると思います」
「仲の良さを見せるって、どうやって……??」
「それは抱き合ったり愛を囁いたりじゃないですかね」
「「「「「「へ……??」」」」」」
俺たちは一斉に素っ頓狂な声を上げる。確かに肉欲を満たす行為はNGだと言った。だがぶっちゃけた話、初々しい恋人のような行為ですらコイツらの羞恥心は爆発するだろう。なんたって俺も恥ずかしい。デートの流れで自然にやるならまだしも、イチャつき目的で女の子と、しかも例え幽霊だろうが誰かに見られている状況で堂々とやるのは流石の俺でもキツイ。だが愛莉曰くもうそれ以上の妥協策はないらしく、俺たちの選択は窮地に迫られていた。
「本当にそれしかないんだな?」
「はいっ! 見せてください! あなたたちの愛を!!」
「愛ってそんな、先生とデスか!?」
「せ、先生となんてそんな……私はどっちでもいいけどねどっちでも!!」
「きょ、教師と生徒でそんなことをしてしまってもいいのでしょうか……」
「でもやらないとこの学校が幽霊塗れになるんだよね……。先生と抱き合うなんて……」
「ほ、本当に!? 本当に先生が私たちを……ううっ……」
「やるしかないだろ。なに、この淫乱幽霊を相手にするよりか全然マシだ」
「サラッと面倒な奴だと言ってません? 言ってますよね!?」
性行為したいがために成仏しない幽霊を迷惑がらない奴はいねぇだろ……。そもそも俺にしか狙いを定めていない時点でその願いは叶わないんだから諦めて欲しい。ま、幽霊が憑依できるアンドロイドでも作成されれば別かもしれないけどさ。
そんなわけで、俺も別に乗り気ではないがこの窮地を脱するためにかのんたちを説得する。女の子と抱き合ったりするのは俺は慣れているが、問題はコイツらだ。ただでさえ俺の隣にいるだけで顔を赤くしたりするのに、抱擁なんてしたらその場でショートするんじゃねぇか……?
だがここまで来てやらないという選択肢は取れないため、コイツらの納得は得られなかったが学校のために一応付き合ってくれることにはなった。果たしてどうなることやら……。
~※~
「おぉ~これは動画で見る以上に大変なことになってますなぁ~」
再び校舎裏に戻ってきた俺たちは、物陰から古井戸の様子を窺うことにした。だがさっきの霊魂たちは俺たちの気配を察知したのか、まだ顔を見せていないにも関わらず白い霧の球体の姿を見せてぷかぷかと浮いている。しかも言葉になっているのかなってないのか分からない謎の呻き声を発しており、雰囲気のおどろおどろしさが頂点に達していた。
「一応確認だけど、お前がアイツらにここから離れろって説得することはできないんだな?」
「やろうと思えばできますけど、別の女子高に移動するだけですよ? そんな迷惑をかけていいんですか?」
「お前にしては真っ当なことを……」
「それにですねぇ、あんな自我も持ってない低級の幽霊を最高ランク幽霊の私が相手にすると思いますかぁ? 同じ性欲を持て余した幽霊なのに私とあの霊たちでこの差ですよ? どうせ性欲を持つのであれば、私みたいに超イケメンとセックスしてイキ狂いたいって思うくらい高らかな欲望を持たないと。そうですよね?」
「俺に聞くなよ……」
あたかも自分の欲望が他より勝ってるみたいな言い方だけど、欲望って深ければ深いほど汚らわしくなるから誇るものじゃねぇぞ? でもそのおかげで自我を保った幽霊になっていると思えば幽霊界隈ではそれが正解なのかもしれない。
この場でずっと様子を窺っているわけにはいかないので、意を決して物陰から出ていく俺。だが案の定と言うべきか、みんなはまだ緊張しているのかその場に留まったままだ。まあかのんは目の前で浮遊している霊魂にビビって気絶しそうになってるので、今回コイツが役に立つのか分からないけどな。
「もうじれったいですねぇ~いつまで隠れているんですか? 勇気が出ないのであれば私が後押ししてあげますよ! そうですねぇ~~はいっ、まずはあなたからで!」
「ふぇっ!? 私ですかっ!? あっ――――!!」
まず愛莉に引っ張り出されたのは恋だった。その勢いでよろめきながら俺のもとにやって来る。
男女ペアの姿を視認したのか、白い霊魂たちは俺たちの周りに集まりだす。さっきもそうだったが特に気概を加えてくる様子はなく、ただただ低い唸り声のようなものを漏らしているだけだ。夜の校舎裏に若い男女という、もう卑猥なことしかしませんよ的な匂いを嗅ぎ取ったのかもしれない。
「あの……本当にやるしかないのでしょうか……?」
「ここまで来てやめる選択肢はないだろ。嫌かもしれないけどすぐに終わるから安心しろ」
「い、嫌とか別にそんなことは――――ひゃうっ!!」
変に時間をかけると余計に恥ずかしくなりそうなので、何も考えずに勢いで恋を抱き寄せてしまった。その瞬間、霊たちの呻き声も少し静まったような気がする。向こうの物陰からもみんなの驚きの声が聞こた。
そして一番ビックリしているのはもちろん恋だろう。俺に抱き寄せられた瞬間に身体をビクッと震わせる。コイツの顔は俺の胸元に埋められているため表情は確認できないが、耳が真っ赤になっているので見せられない顔になっているのは確かだ。恋愛に慣れていない女の子をいきなり抱き寄せるのは彼女たちの羞恥心を爆発させる起爆剤としては十分で、息も荒くなっていることから早く事を済ませないと本当にショートしてしまいそうだ。
愛莉はこの抱き合った状態で愛を囁けばいいって言ってたな。恋はそれどころじゃなさそうだし、こっちからやるしかねぇのか……。
「恋」
「は、はいっ! なんでしょうか……?」
「好きだ」
「へ? えぇえええぇええええええっ!?」
「落ち着け。本心だ」
「そうですよね演技ですよね――――って、え゛っ!?」
「お前の世話焼きには感謝してる。俺って怠惰だからさ、誰かにケツを蹴られないとちゃんとしねぇんだよ。だからお前が逐一声をかけてくれたり注意してくれるのってありがたいんだ。なんだかんだ生徒会とかで一緒のことも多いしな、長年連れ添った熟年夫婦みたいで……その、居心地がいいよ。それにスクールアイドルになってからよく笑うようになったよな。お前の綺麗な笑顔、好きだぞ。それにお前ずっと色々抱えこんでいたからな。だからこそ生き生きしてる今を見てると俺も嬉しいんだ」
なにこのクサいセリフ!? 自分で言っていて痒くなってくるんだけど!? しかもこれって愛莉やかのんたち、周りにいる霊たちにも聞かれてるんだよな?? 誰もいない2人きりの空間なら余裕だけど、最初から見世物にされると知っているこの状況は流石の俺でも恥ずかしいって!!
だが、さっきの内容は全て事実で俺の素直な気持ちだ。自分の想いを伝えているってことには何ら変わりない。
ただ恋が正気を保っていられるかだけど……。
「せ、先生……私もそのぉ……先生と一緒なのは居心地がいいと言いますか心が高鳴る――――きゅぅ……」
「な゛っ!? おい恋!?」
あまりの羞恥に耐え切れずに気絶してしまったようだ。なんか厳粛な見た目とは裏腹のとてつもなく可愛い声を出していた気がするが、聞かなかったことにしてやるのがコイツのためだろう。
「おぉ~凄い! 霊魂たちが少し消えましたよ! 恐らく零さんと恋さんの愛に満足したのでしょう!」
「あれでよかったのか……?」
「OKOKです! じゃあ恋さんはこちらで回収するので、次の方どうぞ~!」
なんかテレビの撮影かってくらい事務的な発言をしてやがるけど、そんな軽いシチュエーションじゃねぇだろ……。
この状況で1人楽しそうにしている愛莉と、目の前で恋が撃沈する姿を見て緊張しまくっているかのんたち。いずれ自分の番がやって来るが、やはり恥ずかしさからか自ら物陰から飛び出したりはしない。しかし愛莉がそんな奥手を許すはずがなく――――
「ほらほらビビってたらいつまでもあの霊魂を成仏させられませんよ! 次はあなたが行く!!」
「えっ、私!?」
「次はすみれか……」
愛莉に背中を押されて意図せず決戦の場へ足を踏み入れたすみれ。さっきの一連のやり取りを見ていたためか既に顔は赤く、耳元で少し囁くだけでも気絶してしまうだろう。いつもは持ち前のツンツンした性格が故に自分の弱みを見せない、つまり何とか羞恥心を押し殺そうと頑張っているのに、今回はそれができないほどに調子を乱しているようだ。
正直に言ってしまうと俺も怯んでいないわけではない。あらかじめ覚悟を決めてはいるけどみんなに見られてるし、幽霊だけどたくさんの見世物になっているのは事実だ。それにコイツらに対して自分の気持ちを面と向かってしたことなかったから、そりゃ女の子慣れしてる俺でも緊張するって。
だがこの場に立っている以上は本気でやる。そもそも女の子に想いを伝えるのに嘘偽りはもちろん、適当にだなんて俺自身が許さないからな。
「あっ……」
俺はすみれを抱き寄せる。ちょっと力強く強引だったけど、これくらい俺と密着した方がコイツも緊張は解れる……のか? 実際に彼女の震えは収まっているようで、やはり人肌の温もりってのは相手を落ち着かせる効果があるらしい。これも包容力の権化であるエマの受け売りだけどな。
「い、言いたいことがあるなら早く言いなさいよ……」
「あぁ。お前ってツンツンしてるけど、その実すげぇ面倒見がいいよな。可可ともなんだかんだ言いながら常に気にかけてるし、他の奴らに対しても同じだ。自分の力を誇示しながらもみんなを見てるお母さんっぽいんだよ。俺が仕事で遅くまで残ってる時も気にかけてくれるし、そういうところが嬉しいよ。それに自信満々な性格とは裏腹に、実際に主役になると恥ずかしがるお前の性格、可愛くて好きだぞ。古い言葉でギャップ萌えって言うのか? そういった些細な弱みで可愛さを見せつけられると、お前のことがより魅力的に思えてくるよ」
俺もそれなりに緊張しているが、一度口を開けばすらすらと気持ちが言葉になって出てくる。もっと喋ろうと思えば喋れるのだが案の定すみれも顔を沸騰させて恥ずかしがっており、俺の言葉を聞く余裕はないだろうからここでやめておくことにする。
「ま、まぁ私を褒める言葉としては上出来なんじゃない?? 良かったんじゃないかしら…………でもその……あ、ありがと……」
「!? フッ、どういたしまして」
まさにありきたりだけど、ツンデレのデレる瞬間って最高クラスの可愛さを感じる。王道って言われるくらいだから万人受けするんだろうが、こうして自分に向けられるデレほど嬉しいものはない。女の子を囲んでいるから飽きる、なんてことはないのがツンデレちゃんの魅力だ。コイツもコイツで素直になりたいくらい俺の気持ちを受け入れてくれたと思うと更に嬉しくなるな。当の本人はもう気絶しかかってるけど……。
「おぉ~相変わらず女の子の扱いが上手ですねぇ~。そのおかげでほら、霊魂たちも満足したのか成仏して少し減りましたよ」
「ただお気持ち表明しているだけなのに満足してるのか……」
「でもまだまだいるので、ここで選手交代ですね!」
霊魂たちは順調に成仏している。あと3人で全ての霊魂たちを満足させることができるのか。てか性欲が滾り過ぎてこの世に残ってるのに野郎の言葉なんかで満足できんのか……? いや実際に満足してるっぽいからいいんだけどさ。
だが相変わらず恥ずかしいのか、残る3人も自分からこちらに出てこようとはしない。なので今度もまた愛莉が誰かの背中を押してこちらに無理矢理出向かせた。
次に俺のもとにやって来たのは――――
「千砂都……」
「あはは、こ、こんばんは……」
「なぜここで挨拶? さっきまで一緒にいただろ……」
それくらい緊張してるということだろう。いつも明朗快活な彼女だからこそ恥ずかしがっている姿は映える。
だが緊張していても持ち前の積極性は完全に消えてないようで、羞恥にたじろぎながらも抱き着かれ願望があるのか俺の傍まで歩み寄って来る。その心意気に応えて優しく抱きしめてやると、千砂都も俺の腰に腕を回してきた。先の2人は俺に抱かれるがままだったので、緊張していてもこういった自然な行動1つ1つに個人の性格が出るのが面白いところだ。
「暖かいですね、先生はいつも……」
「お前もな。いつも明るい笑顔でみんなを引っ張って、見てる俺も元気を貰えるよ。やっぱ活力のある子と一緒にいるとこっちまでテンションが上がっちゃうって言うか、気分がいいよな。だからこそお前が『ダンスの大会で優勝しました!』とか『新作たこ焼きを作ったから味見してください!』とか、笑顔で嬉しそうに話しかけてきてくれるのが好きなんだ。そうやってお前からは色々貰ってるからさ、俺もいつか恩返ししたいと思ってるよ。それでお前がずっと明るい笑顔でいてくれるのなら、尚更な」
千砂都は何か言いたげだが言葉にならないようだ。それだけ心に響いているのか。別に俺は普通のことしか言ってないし、女の子1人1人の見たまんまを語っているだけだから特別なことはないんだけどな。
「そ、そんな、むしろ先生には貰ってばかりで……。どちらかと言えば私からもっとたくさん恩返ししたいなぁ~って……」
「そうそう、そうやって元気っ娘が時たま見せるしおらしい姿も可愛いんだよ」
「な゛っ!? あ゛っ……うぐっ……」
「零さんって追い打ち得意ですよねぇ……。とりあえず気絶しかかって動けなさそうなので回収しますね。霊魂完全消滅まであともう少し!」
追い打ちっつうか、言いたいことがたくさんあり過ぎてついつい漏れ出してしまっているだけだ。まあ一度俺の言葉を聞き終わって心の整理をしているときに、また褒められたらそりゃ調子を乱されもするか。しかも相手はまだ恋愛初心者だから、後追いの誉め言葉は追い打ちと言われるのも仕方ないかもしれない。
そして次にこちらにやって来たのは可可だった。今回初めて愛莉に無理矢理連れ出されずにこっち来た子になる。とは言っても恥ずかしさは最高潮のようでずっと身体をもじもじさせている。その様子が愛らしくなってしまい、つい俺の方から歩み寄って優しく抱きしめてしまった。
「ひゃいっ!?」
「悪い。でもこれを望んでたんだろ?」
「そ、それはぁ……ま、まぁ……」
千砂都の時もそうだったけど、普段テンションが高い子がここまでおとなしいとキャラが全然違って見えるな。特にコイツの場合は入学直後から俺の周りをチョロチョロして積極的だったので、こうして借りてきた猫みたいになっているのが珍しいんだ。
「さっきの皆さんとのやり取りを見て、先生って可可のことをどう思っているのか気になってマス……。鬱陶しく纏わりつく子供……とか?」
「ん? ははっ、お前そんなこと考えてたのか? 安心しろ、俺は全然そんなこと思ってねぇよ。むしろお前のおかげで俺の教師人生が彩られてると言っても過言じゃない。執拗に俺に迫って来るのも俺に興味があるからなんだろ? そうやってグイグイ来られると俺もこんな可愛い子に好かれてるんだって、自尊心が高まっちまう。それにお前どこか危なっかしいからな、いつも傍にいて手助けしてやりたいって思う。お前が俺に寄り添ってくれるのなら、俺もそれに応えたいんだ。だから全然迷惑なんかじゃない、むしろ頼ってくれて嬉しいよ」
俺に寄生虫してるときって何も考えてないのか思ったけど、意外と繊細なところがあったんだな。そういう女の子の弱いところに気づけただけでもこの幽霊騒動の収穫はあったかもしれない。さっきも言ったけど、弱い一面を知るとソイツをより好きになったりするしな。
「く、可可も、先生のことがその……す……き……」
「ん?」
「い、いえ、なんでもないデス……」
「なるほどなるほど、聞いていた通りの初心さ。私もそういう時代が――――」
「お前に恥じらいねぇだろ」
「あはっ♪ とにかくあと霊魂さんたちも僅かなので、最後もビシッと決めちゃってください!」
愛莉は羞恥で動けない可可を連れて奥に引っ込む。なんだかんだ性欲を満たしたい願望がありながらも、俺とみんなが2人きりになっている時は茶々を入れることもせず見守っていたり、みんなをこちらに連れ出す手解き(力尽くだが)をしてくれたりと、意外としっかりしてるんだよな。ただの性行為願望の淫乱幽霊じゃないから憎めないんだよ、普段はあんなのだけど……。
そして最後はかのんだ。愛莉に連れ出されて戸惑っているのはもちろん、順番のトリを務める意味でも緊張しているのだろう。千砂都や可可と違って普段からあまり自分を出さない性格も相まって、俺と相対してどうしていいのか分からなくなっているんだと思う。それになにより、幽霊が苦手なコイツにとって周りに浮かぶ霊魂にビビっているに違いない。可可たち4人のおかげでもうかなり数を減らしたが、それでもまだ残っているからな。
「まだ怖いか?」
「は、はい……」
「安心しろ。俺が守ってやるから」
コイツ、校内を歩いている時ずっと俺の服の裾を掴んでたからそれだけ幽霊を怖がっていたのだろう。本人が怖いのを承知で俺たちと一緒にいたとは言え、教師として、そして男としてビビってる女の子に何のフォローもいれないわけにはいかないな。
俺が彼女に近づくと、向こうからもこちらに寄り添ってきた。俺は今までの流れと同じく自然にかのんを抱きしめてしまう。かのんは肩をビクッとさせるが、他の奴らと同じく俺の腰に腕を回してすぐに受け入れた。
「せ、先生は、どうしてそこまで私たちを助けてくれるんですか……? 私がスクールアイドルを始める前も、始めた後も、そして今も……」
「そんなの当たり前だろ。好きだからだよ」
「ふぇっ!?」
「なんか誤解されそうだな……。そりゃ男として魅力のある女の子を好きになるのは当然だろ。最初お前を見たときはこんなに美人で歌も上手い子がいるんだってビックリしたよ。お前はよく自分には何もないって卑下してるけどさ、俺の目を惹く女の子ってだけでも誇れることだぞ。自己肯定感が低く自信も持てない。だけどお前はそれを理由に諦めたりしない。自分の短所を乗り越えて突き進む強さを持ってること、俺はよく知ってる。迷ったりうじうじしているのも、自分の中で正しいと思う信念があるってことだかさ。そういうお前の熱いところ、好きだよ」
またもかのんは身体をビクつかせる。俺の胸に顔を埋めているので表情は見えないが、自分の中で気持ちを整理するのでいっぱいっぱいなのだろう。確かに自分をここまで褒めてくれる存在がいると嬉しくなるよな。
他の奴らと同じくかのんも落ち着くまでに時間がかかりそうだ。見れば霊魂たちは次々と天に昇っていき、遂に俺たちの周りから全てが姿を消した。
「あっ、霊魂たちが全部成仏しましたよ! やりましたね零さん!」
「あぁ。つうか本当にこんな方法で良かったんだな」
「魂の残りカスみたいな方たちで欲望も浅いので、男女がいい雰囲気なシーンを見られただけでも満足なのでしょう。なにはともあれお疲れ様でした!」
「お前もな」
「えっ、零さんがデレた!? これは相思相愛になってセックスする日も近い!?」
「デレのハードル低いなオイ。てか愛し合ってすぐ性行為とか正気かよ。もっと段階ってものはねぇのか……」
「そりゃ好きだからに決まってますよ……」
「ん?」
「なんでもないでーすっ!」
よく分からないが、とにかく古井戸に寄生していた幽霊たちを全員成仏させることができて良かったよ。性欲滾りの幽霊と聞いて最初は馬鹿馬鹿しいと思ってたけど、逆にそのおかげで男女の仲の良さを見せつけるだけで解決できたんだよな。そう考えると俺たちの中だけで解決できて助かったっつうか、性欲以外の他の欲望を持っていたらこうはいかなかったか。無理難題を押し付けられることもなかったのは僥倖だったかもしれない。
そんなわけで無事に事件を解決できたわけだが、その代償として――――
「コイツらどうすんだ……」
「全員マットの上に寝かせてありますから、今ならJKと校内でハーレム青姦&睡眠姦プレイができますね!」
「この世の背徳的要素を詰め込みすぎだろ……」
未だに顔を真っ赤にして
なんか久々にいい雰囲気のまま事件を終えることができそう――――
「そんなわけで、最後のメインディッシュと行きますか!」
「え? もう終わっただろ」
「ここにいますよ!! まだ成仏してない幽霊が!!」
「おいまさか……」
「私の成仏条件はセックスですっ! それも超イケメンで超肉食系の男性を希望!! そして目の前にちょうどいい人材が!!」
「そのギラついた瞳やめろ!! つかいい感じの幕引きだっただろ欲望で穢すな!!」
「私の取っ手のハッピーエンドはセックスなんですぅ~っ!! さあさあヤりますよ!!」
やっぱり、幽霊と絡むとロクなことがないと改めて実感した俺だった……。
今回の話の途中だけを見れば最終回っぽい雰囲気がありましたが、もちろんまだまだ続きます(笑)
今回は緊急事態だったので仕方がありませんが、零君が女の子たちより先に気持ちを伝えるのは珍しいことだったりします。Liellaの面々が想いを素直に伝えられない子たちばかりなので零君が自ら歩み寄った、という感じのお話でした。
零君の想いをここまでみんなとの思い出が積み重なって来たからの結果なのですが、この小説ではそこに至る経緯をあまり詳しく描写してないので、以前のすみれの過去回のように他キャラの過去を掘り下げた話を投稿予定です。
そしてこうして書いてみると自分で作成したキャラながら愛莉もいいキャラしてますね(笑) またどこかで登場させたいと思います!
【付録】※アニメ虹ヶ咲8話の文化祭フィナーレ回を見て思いついた小ネタ
「お兄さん! いい曲できたんですよ! 是非聞いてください!」
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「お兄さん! 私のピアノどうでしたか!? あれからしっかり上達してるんですよ?」
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「お兄さん! みんなのライブさいっっっっっこうでしたね! トキメキが溢れて昇天しちゃいそうでした♪」
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「お兄さん! 合同文化祭楽しかったですね! また来年もやりたいです!」
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「侑、お前さ……」
「はい?」
「似てきたよな、歩夢たちに。俺に依存……いや、なんでもねぇ」
「へ?」