ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常2~   作:薮椿

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Sunny Passionの騎士

 冬の厳しい寒さも次第に和らぎつつあるこの時期、スクールアイドル界隈はまたも盛り上がりを見せていた。時期に限っていないような気もするが、今日はイベントということもあり熱気も凄まじい。『もうすぐ春到来! 寒さを全て吹き飛ばせ!』なんてキャッチコピーを掲げたスクールアイドルイベントで、言ってしまえばただのライブだ。複数のグループが集まって交代交代で、そしてあちこちの会場でただライブをするだけの単純なイベント。このキャッチコピーもイベントの開催し過ぎでマンネリ化しないよう苦し紛れに掲げているだけだろう。これなら梅雨明けとか、暑中見舞いとか、なんでもこじつけられそうだ。

 

 スクールアイドル界隈はここ最近でまた異様な盛り上がりを見せている。かのんたちのLiellaが活躍しているのももちろんだが、他のスクールアイドルも軒並みレベルが高い。黎明期と言ったところか、μ'sやA-RISEがいた頃と比べるとグループの数も多く、それだけ他のグループから歌やダンスの知見も得られるためより洗練される。つまりお互いに高め合えるライバルが多いってことだ。そりゃレベルも上がるわな……。

 

 そして俺は結ヶ丘のスクールアイドルの顧問としてイベントに参加――――はしていない。Aqoursや虹ヶ咲の時もそうだったが、指導しているからと言ってイベントの参加調整などの雑務までは引き受けていない。それらのマネジメントを含めてすべてアイツらにやらせる、それが成長になるんだよ。いや別に自分でやるのが面倒だとか、そんなことはないから。

 

 そんなことはさて置き、流石に教え子たちのステージを見ないわけにはいかないので会場には既に到着している。会場とは言っても渋谷の街のいたるところでライブをするそこそこ大規模なイベントのため、そこらかしこに広範囲にファンたちがいて妙に歩きづらい。こりゃ連絡を取り合ってもかのんたちと合流するのは難しそうだ。

 

 億劫になるほどの人混みでテンションが下がる。そんな感じで人の波の中を練り歩いていると、突然誰かに手首を掴まれた。驚く間もなく引っ張られ、人の波から強制的に連れ出され道から外れる。

 

 

「な、なんだ!?」

「私です。お久しぶりです、神崎先生」

「お前――――サニパの聖澤(ひじりさわ)か?」

「しっーーーー!! 大きな声で名前を言わないでください!」

「あん?」

 

 

 俺を拉致したのはSunny Passionの聖澤(ひじりさわ)悠奈(ゆうな)だった。近くには相方の(ひいらぎ)摩央(まお)もいる。

 会うのは2度目なのにどうして名前の確認をしたのか。それは俺の記憶力がないわけではなく、2人共それなりの変装をしていたからだ。よく見なければサニパの2人だと分からないくらいで、俺もコイツらの声と雰囲気から何となく察せるくらいであり、元の面影は薄い。

 

 

「何の用だ? しかもそんな変装までして」

「申し訳ございません。実は神崎先生にお願いしたいことがございまして……」

「お願い? 人を裏路地に拉致するってことは相当切羽詰まってるみてぇだな」

「そうなんですよ! ちょっくらボディガードを引き受けてくれませんか?」

「は? ボディガード??」

 

 

 結論から先に話すスタイルは嫌いじゃないが、あまりにも唐突なお願い過ぎて目を丸くするしかない。人を拉致っておいていきなりボディガードになれって、そんな横暴は流石の俺でもしないと思うぞ……多分。

 

 

「一体どういう経緯なのか説明してくれ」

「はい。私たちも今回のイベントに参加していることはご存じだと思います」

「あぁ、可可のウザイほど騒いでたから知ってる」

「参加すること自体は何も問題ないのですが、最近は有名になった影響からかファンの皆様に囲まれることが多くなってしまいまして……。もちろん、私たちに注目してくださるのは嬉しいことです。そうなのですが……」

「ファンの人たちの中でもすこぉ~しアタックが強い人たちがいて、こうして都会のライブに来るたびに頭を悩ませているんですよ。別にその人たちを無下にするとかそういうのじゃなくて、ただ単にライブ外で強く迫って来るのをやめて欲しいだけなんです。ライブ中なら熱狂的に応援してくれて全然OKなんですけどね」

「なるほど、プチ厄介オタクみたいなもんか」

 

 

 ファンに悩まされるとは贅沢な話だ。ただコイツらの人気は現在のスクールアイドル界隈でもトップを争うほどで、ぶっちゃけるとLiellaよりも断然に上だ。アイツらもアイツらでそれなりの地位を築いているが、サニパの2人が立っているステージにはまだ遠い。それくらいの高位にいる奴らだ、そりゃ厄介オタクの1人や2人は生まれてしまうだろう。そうか、それで変装してたのかコイツら。

 

 そんな奴らがいるんだったらイベントの運営やらマネージャーやらに連絡してとっとと摘まみ出せばいいのに、ソイツらであろうともしっかりファンとして扱うその度量、感服する他ない。どんな奴であろうともファンであれば切り捨てることはせず、あくまで自分たちが自衛することでファンの熱意を冷まさないようにしている。なんとも律義だが、なんとも難儀なことだ。

 

 

「理由は分かったけど、どうして俺なんだ?」

「それは男性が近くにいれば私たちに近寄りがたくなると思いまして。普通に握手やサインを求めてくださるだけであれば歓迎なのですが、拒否しているのにも関わらずプレゼントを執拗に渡してくる方も多いので……」

「そういうこと! それで身近にいる知り合いで、近づくのすら躊躇する魅力のある男性と言えば、そうっ! 神崎先生しかいないわけですっ!」

「なんでテンションたけぇんだよ……。つうか1度会っただけなのに、よく俺をボディガードとして信用しようと思ったな」

「神崎先生のことはかのんさんたちからたくさん聞いていますので。とても頼りになる方だと」

「美化し過ぎだ……。ま、アイツらのステージまでまだ時間あるし、会場に送り届けるまでなら引き受けてやってもいい」

「おぉっ! ありがとうございますっ!」

「ありがとうございます。お手数をおかけしますが、何卒宜しくお願い致します」

 

 

 元気よく頭を下げる聖澤と、丁寧に頭を垂れる柊。こうして見るとコイツらもしっかりキャラが濃い。まあ仮にもアイドルなんだから当たり前と言えば当たり前か。

 そんなこんなで突発的にSunny Passionのボディガードを引き受けることになった。だがこれがとある引き金になることを、この時はまだ知らず――――

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

 裏路地から脱出した俺たち3人は、人混みを練り歩きながらライブの会場へと向かう。コイツら有名人だから顔は余裕で割れているはずなのだが、変装しているのもあってか周りから気づかれる気配はない。そりゃサニパほどの人気者がこんな人混みの中を歩いているとは誰も思わないわな。それにもし変装した芸能人が自分の近くにいたら実際に気付けるのかって話でもある。

 

 そうやって高を括っているとフラグになるのでこれ以上は言及しない。それにここに来ているのはスクールアイドルのファンばかりだから、スクドル特有のオーラを感じ取ってもしかしたら気づかれる可能性もある。そうなると油断しない方がいいか。

 

 

「もし見つかったとして、男と一緒にいるのがバレたらお前らの名誉に関わるんじゃねぇか? いや、バッシングを受けるのはむしろ男の俺か」

「その時はそうならないように私たちがしっかりと守ってあげますよ! マネージャーとか言っておけば誤魔化せるんじゃないですかね」

「なんとも適当な……」

「そう考えると、神崎先生にボディガードをお願いしたのは少々軽率だったのかもしれません……」

「いや、別にいいよ。困ってるお前らを放ってはおけないしな。女の子の悩みは見過ごせねぇよ」

「ふ~ん、かのんちゃんから聞いていた通り本当にお人好しなんですね」

「それは俺が一番嫌いな言葉だ」

「頼んでいる立場から言うのもおかしな話ですが、私たちはお互いにそこまで交流がありません。それなのにも関わらず二つ返事で引き受けてくださって、これをお人好しと呼ばずに何と呼ぶのでしょう」

「知るか」

 

 

 ちょっと人を助けただけでお人好しとか、だったら世界のほとんどの人間がそうなっちまうぞ。俺なんかよりもみんなでお手手を繋いでお互いに支え合っているスクールアイドルの奴らの方がよっぽどだろ。俺は後腐れがないようにしたいだけ、つまり俺がやりたいからやってるだけなのにな。

 

 

「俺は誰であろうと助けるような奴じゃない。可愛い女の子のお願いであれば動く、ただの欲望塗れの男だよ」

「か、可愛いって……。そういうことをサラッと言っちゃう人かぁ……」

「いや一般的な目で見た感想だろ。ルックスもオーラも完璧、そんなお前らにお近づきになりたい奴はたくさんいる。そんな奴らを差し置いて俺だけ特別に隣にいられるんだ、そんな最高のポジションは他にねぇだろ」

「高圧的で尊大。しかしその中に心を掴まれるほどの優しさがある。なるほど、かのんさんたちが言っていた通りですね」

「なに言いふらしてんだよアイツら……」

 

 

 そうやって俺のことをペラペラと喋る奴がいるから、スクールアイドル界隈でスクールアイドルキラーなんて噂が広まるんだよ。そのせいで出会ったことのない女の子たちから警戒されるからやめて欲しい。

 

 ちらっと2人を見てみると、頬を染めて少し照れているようだった。そりゃ自分のことを可愛いと褒められて嬉しくならない子はいないだろうが、コイツらはスクールアイドルでもトップクラスだからファンレターや動画のコメントなどで自分たちへの称賛文句は聞き飽きていると思ってた。柊は表情を悟られたくないのか顔を逸らし、聖澤は髪を指でくるくるしている。意外と分かりやすい仕草をするのなコイツら。いくらトップのスクールアイドルと言えども年頃の女の子ってことか。

 

 

「そういやボディガードを頼みたいなら拉致しなくても、普通に連絡を寄越せば良かっただろ。かのんたちを通せばコンタクトはすぐ取れたはずだ」

「いやいや、そんなことをしたらかのんちゃんたち嫉妬しちゃうじゃないですか! ただそれはそれで可愛い反応をしてくれると思うので、からかうのが楽しくなっちゃうかも……あれ、惜しいことした?」

「嫉妬するのかアイツら……?」

「それはもう容易に想像できますね。Liellaの皆さんは事あるごとに先生のお話をするので、彼女たちが如何にあなたのことが好きなのか丸分かりです」

「それなのにかのんちゃんたちに『神崎先生をボディガードにしたいから貸して!!』なんて言ったら、もう卒倒なんてレベルじゃ済まないですよ絶対。もしかしたら私たちを女狐扱いして刺してくるかも……」

「被害妄想も甚だしいなオイ。アイツらめちゃくちゃ純情だから大丈夫だって」

「まあさっきのは冗談ですけど、決心をした時の女の子の積極性は半端じゃないですから、あまり油断しない方がいいですよ」

 

 

 ちょっと褒めただけで顔を真っ赤にして羞恥心に悶える苦しむアイツらが積極的に? あまり考えられねぇな。でも先日秋葉が『そろそろ覚悟しておいた方がいいよ♪』って含みのある笑みを浮かべながら脅してきたから、それと何か関係があるような気がしてならない。そういやその頃からアイツらが俺に向ける目線がより一層熱くなった気がする……。

 

 

「神崎先生ってそれだけ優しいのなら、Liella以外の女の子にもモテたりするんじゃないですか?」

「だと良かったんだけどな」

「女性を先導して引っ張ってくださるその力強さは、男性としては魅力的だと思いますが……」

「現実が物語っている。期待させて悪かったな」

「「…………」」

 

 

 なんだコイツら、まだ俺のことを疑ってんのか? 最初に出会った時もやたらと俺の女性関係を怪しんでたし、コイツらとはあまりこの手の話をしたくない。とは言っても溢れ出ている男としてのオーラがコイツらを靡かせているらしい。中々罪な奴だな俺も。

 

 そんな疑いの目を向けられながらも着実に目的の会場まで近づいていく俺たち。念のためスマホでマップを開きながら歩いているのだが、その最中にメッセージの通知が大量に届いていた。やれ『お兄さん今どこにいるんですか』やら、『内浦からライブの生放送見てます』やら、『虹ヶ咲の出番までには絶対に来てください』やら、『みんな会場に集まって、音ノ木坂の同窓会みたいになってるから早くおいでよ』やら、その他多方面からの連絡を含め今日はやたら女の子たちからのメッセージが来る。元スクールアイドルの奴ら、現スクールアイドルの奴らどちらもいるが、やはりスクールアイドルの肩書を背負っている以上はこういったライブイベントは気になるのだろう。

 

 とりあえずメッセージは無視することにする。人の波の中で携帯の画面を見続けるわけにはいかないし、何よりこの2人を送り届けるのが先決だからな。

 

 そしてそんなこんなしている間に目的の会場が見えてきた。

 

 

「ほら、あれだろ? お前らがライブをするステージって。ったく、あちこちにステージを設置するんじゃねぇよ……」

「せ、先生……」

「どうした聖澤? 柊も、そんなにそわそわして」

 

 

 さっきまで意気揚々と俺を追い詰めていたコイツらだったが、雰囲気が一変、周りを気にして緊張感が増している様子だ。確かに少しざわついている。その理由は耳に飛び込んできた周りからの言葉ですぐに分かった。

 周りのファンたちからは『あれ? あの子たちサニパじゃない?』やら、『まさか悠奈ちゃんと摩央ちゃん!?』やら、まだ正体バレしていないものの疑いの目は次第に強くなっている。そしてその小さな騒ぎが周りのファンにも伝染するようになり徐々に噂が広まっていく。これは騒ぎになるのも時間の問題だ。そうなればファンが押し寄せるリスクもあるし、それ以上に2人が言っていた厄介オタクたちがやって来る可能性もある。そしてこの状況でコイツらの正体がバレでもしたらどうなることか……。

 

 そうか、ようやくボディガードとしての仕事が舞い込んできたわけか。仕事がない方が平和という警察と似た感じだが、こうなってしまったからには仕方がない。守ってやるか。

 この場を穏便に解決し、コイツらを会場に送り届ける方法。それは――――

 

 

「お前ら、もっと俺に近づけ。身体が密着するほどな」

「えぇっ!? そ、そんないきなり……」

「そんなことをしたらより一層の騒ぎに……」

「いいから早く」

「で、でもいいんですか……?」

()()! ()()!」

「「は、はいっ!!」」

 

 

 少し圧力をかけてしまったが、その勢いのおかげか2人は俺に密着しそうなくらいに近づいてくれた。それを見た俺は2人の腰に腕を回す。この光景、女の子2人を侍らせていて見る人によっては羨ましく、また別の人によっては嫌悪するだろう。だがそれでいい。群衆の注目を『あの2人はサニパなのでは??』という疑いから、『なんでこの人混みの中でイチャイチャしてるんだアイツら??』という避けるべき奴らという認識に変えられればそれでな。それにコイツらから抱き着いてもらうことで、『サニパだったら人前で男に抱き着くような真似はしない』という錯覚を利用できる。

 

 もちろんその作戦は見事にハマり、周りからの声が『あのサニパが男を連れてるわけないか』だの、『あんな街中でいちゃつく非常識な人たちがサニパなわけない』だの、俺たちへの注目は次第に薄れている。そして疑いが伝染するのも早ければ誤解が伝わるのも早く、周りの人間たちから見て俺たちはもはや通行人Aというモブキャラ当然の扱いになっていた。

 

 少し様子を見て俺たちへの目が完全に消えたのを確認し、2人の腰に回していた腕を解く。

 

 

「ふぅ……。大丈夫かお前ら?」

「へっ、あっ、はい、大丈夫です……。あ、ありがとうございました」

「そ、その、か、感謝します……」

 

 

 なんか周りから注目されている時よりもそわそわしてないかコイツら? さっきの騒ぎでそこまで緊張したのか、それともいきなり俺に密着しろと言われてドキドキしたのか、まさか腰に手を当てられただけで羞恥心を揺さぶられたとかクソ雑魚メンタルじゃねぇだろうな……? まあコイツらも男と付き合ったことはなさそうだから、いきなりボディタッチされたら驚くだろうけどさ。

 

 

「おいいつまで立ち止まってんだ。行くぞ、悠奈、摩央」

「そ、その……な、名前……いえ、何でもないです。行きましょう、零先生」

「そうですね、零先生!」

 

 

 恥ずかしそうにしたり嬉しそうにしたり忙しい奴らだな。

 俺の後ろを歩く2人は、こちらに聞こえないくらいの小声で話していた。

 

 

「名前を言われた時に思わずビクッてしちゃったよ。驚いたのもそうだけど、強い声で、男らしく物凄い力で心をガチッと掴まれた、そんな感じ……」

「腕の力も強くて、私たちを守るという気概がひしひしと伝わってきました。これが男性、なのですね……」

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「えぇっ!? サニパさん、先生と一緒にいたのデスか!?」

「そ、そうなんだよねぇ~。あはは……」

 

 

 無事にステージ裏の待合室についた俺たち。そしてLiellaの面々は俺とサニパが一緒にやって来たことに対して口を開けて驚くばかりだった。まさか本当に取られたとか思ってねぇだろうな……。

 とりあえず事情を説明したことで納得してもらえたが、どこか腑に落ちない表情をしているので、やはり何の連絡もなしに他の女の子と一緒にいたことに思うところがあるのだろう。裏では虹ヶ咲の連中を始めとして、他の女の子とたくさん交流があるんだけどな。ただコイツらには虹ヶ咲の奴ら以外のスクールアイドルとも関りがあることを隠しているので、そう嫉妬されても仕方がないんだけどさ。

 

 

「いやぁ~かのんちゃんたちが零先生を好きになる理由が分かったよ!」

「そうですね。あれほど頼りになる方であれば、気になってしまうのも頷けます。魅力的な男性ですね、零先生」

「「「「「零、先生……??」」」」」

「魅力的なんて、俺からしたら当然のことだ。普通のことをあまり褒めるんじゃねぇぞ、悠奈、摩央」

「「「「「悠奈!? 摩央!?」」」」」

「なんだよさっきからうるせぇな……」

 

 

 さっきから5人が声をハモらせている。もしかしていつの間にか名前呼びになってることに驚いてるのか? 俺だって2人に名前で呼ばれてちょっとビックリしたけど、俺もさっきコイツらを救出する際に勢いで名前を呼んでしまったので、もはや気にするようなことではない。

 

 

「ねぇねぇ、また零先生を貸してくれないかな? すこぉ~しだけでいいから、ウチの学校に来てもらって練習を見てもらうとかさ。ダメ?」

「「「「「ダメっ!!」」」」」

「おぉう、こりゃ相当だねみんな……」

 

 

 俺は別にいいのだが、それを伝えたら最後コイツらの嫉妬心が爆発しそうなのでやめておく。つうかコイツらがここまで対抗心を剥き出しにするのも珍しい。やはり先日秋葉と一悶着あったのかもしれない。変なことを吹き込まれてなきゃいいんだけど……。

 

 そういえば、()()()()からのメッセージを全部無視してたんだった。さっきからポケットの中の携帯が何度も震えていたので、恐らく無視を決め込んだ以降も何度もメッセージを寄越しているのだろう。依頼された仕事は終わったから早いところ返信してやるか。あまり待たせすぎるとまたうるせぇからなアイツら。

 

 そうして携帯を手にしてこの場から離れようとしたとき、唐突に後ろから大声で話しかけられた。

 

 

「先生! お互いに名前呼びになっているなんて何があったのデスか!?」

「うおっ!?」

 

 

 メッセージに返信することに完全に意識を向けていたせいか、加えてコイツらはコイツらで話をしていると思っていたため油断していたせいか、後ろから不意に話しかけられて柄にもなく声を上げてしまった。

 その反動で手に持っていた携帯を落としてしまう。変に斜め方向に落としてしまったせいか、不運なことにかのんたちがいる場所へと滑り落ちてしまった。

 

 

「あっ、携帯落としましたよ先生――――ん? えっ!?」

「どうしたのよかのん」

「こ、これって……」

 

 

 かのんは俺の携帯を拾い、その画面を見て固まっている。そしてみんなが同じく画面をのぞき込んだ。

 イヤな予感がした、と思ったときにはもう遅い。

 

 あの携帯には女の子たちからのメッセージがたくさん着信しており、その通知が諸に画面に表示されている。しかもご丁寧に今の状況を顔写真付きで報告して来る奴らもいる。そして今でもその通知はひっきりなしに来ている状況。実際にかのんたちが画面を見ているこの最中にもメッセージが届いているようで、連絡が届いた旨の通知音が鳴っていた。

 もちろんその通知には送り主、つまり()()()()の名前が載っており、スクールアイドルに詳しい奴であればその名前を見れば誰なのか一瞬で分かるだろう。写真付きのメッセージであれば更に一目瞭然だ。しかも俺が関わっているスクールアイドルは全員がこの界隈の有名人。コイツらであればすぐに察せるはず。

 

 その読みはまさにその通りで、メッセージが来るたびにスクールアイドルに詳しい可可が送り主の名前とそのグループ名を叫んでいた。俺と彼女たちの関係が、その叫びで次々と繋がっていく。

 

 

 なるほど、遂にこの時が……来てしまったみたいだ――――

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 今回は久々のサニパ回でしたが、最後の最後でこのLiella編を通じて明かされてこなかった事実が遂に明るみに出ようとするまさかの展開でした(笑)

 ここからは零君とかのんたちの関係の変化の動きを中心に、あと3話程度でLiella編を完結させる予定です。

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